なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

99 / 123
絶対ニ負ケラレナイ!?


此処ハ、コノ戦場ダケハ

 古鷹を島へと送り出したアルファはその後、海上に繁茂したバイドの殲滅を一日掛かりで終えリンガへと帰投していた。

 

『ヤレヤレ。

 御主人ニモ参ッタモノダ』

 

 イ級からの指示で遅れて合流したパウ・アーマーとアサガオに溜め息を吐くようにごちる。

 以前より顕著ではあったがイ級は自身の防衛を疎かにし過ぎている。

 確かにアサガオとパウ・アーマーのおかげで何故か復活した上二つに増えていたネスグ・オ・シームという素晴らしい精神汚染物の早急な抹殺とフォース作成に欠かせない『バイドの切端』の取得にも繋がったのだから結果的にありがたいものの、やはり苦言の一つも呈さねばなるまい。

 尤もフォースが増えればそれだけで汚染の拡大源に成りかねるため、今のところフォースの増産のつもりはないので余程の件でも起きなければ『バイドの切端』は地下室の肥やしになり続けるだろう。

 ともあれイ級の事への敕言は確定なのだが、この際なので宗谷と木曾にも協力してもらおうかと考えながらイ級の居る場所へと戻ったアルファだったが…

 

「第三十八問!」

「第八回遠征さい○まスー○ーアリーナ二日目!!」

「……残念。

 これは最終日のものだ」

「なん……だと……?」

 

 アルファの視界に飛び込んできたのは残念そうに携帯端末の画像を見せる元帥と愕然とするイ級の姿だった。

 顔があったら目を点にしてあんぐりと口を開けているだろうアルファに気づきもせずイ級は信じられないと言葉を発する。

 

「馬鹿な……クリスマスコス那珂ちゃんwith満潮、霞、曙、叢雲、不知火@猫耳の『ツンデレにゃんこれ隊』のこの並びは二日目のみの筈だ!?」

「確かにその通りだ。

 だがな、よく見たまえ」

 

 その言葉にイ級は画像をためつすがめつ確認して驚愕に声を上げる。

 

「……これは、虎耳か!?」

 

 心底悔しそうに漏らすイ級にその通りとニヒルに笑う元帥。

 

「やっと気付いたようだな?

 非常に残念な事に、本人達の強い希望からそれ以降使用の叶わなくなった幻の『ツンデレにゃんこれ隊』唯一の回となった第八回遠征の○いたまスーパー○リーナでは二日目に猫耳を、そして最終的には虎耳を使った。

 遠目故間違いやすい問題だが見事に引っ掛かるとは。

 これでは『那珂ちゃん検定』の一級はやれても最優の特一級は譲ってはやれんの」

 

 どや顔で嘯く元帥にまるで潜水艦相手に単縦陣を敷いたかのように悔しがりくそっと吐き捨てるイ級。

 

『………』

 

 馬鹿と混沌がよく煮えた空間にどう反応すべきか悩み、それすらアホらしいと言うことに気付いたアルファは取り敢えず考えるのをやめ尋ねることにした。

 

『ナニヤッテンダアンタラ?』

 

 諸々ぶん投げたその質問に漸く帰還に気付く二人。

 

「戻ってたのか?

 何はともあれお帰りアルファ」

「バイドに関する偵察に出たと聞いていたがどうだったのだ?」

 

 アルファの帰還を知った途端に二人とも真面目になるが、アルファは辛辣に問を重ねる。

 

『ンナコトヨリナニヤッテンダヨアンタラ』

 

 異様にやさぐれた態度にかなり戸惑いつつイ級が答える。

 

「…いや、会談が一段落して後は俺一人で決められない問題だけになったから、一先ずアルファを待ってる間雑談でもと話してたら元帥が俺の那珂ちゃんへのファン力を検定してくれるって」

『………』

 

 話す内どんどんアルファは呆れ混じりの怒りを抱えているような雰囲気を纏い始めたのでイ級の説明も言葉尻が弱くなる。

 いっそ爆発された方がましな空気が数分間漂い、アルファは溜め息を吐いた。

 

『…………ハァ』

 

 まるでいっても無駄だと言いたげな溜め息を吐いたアルファに流石に物申したくなる二人だが、下手に怒らせると不味いと思い次の句を待つ。

 

『……言イタイ事ハアリマスガ、最低限責務ハ果タシテイタヨウナノデ今回ハ置イトキマス』

 

 とりあえず許されたらしく二人は内心で安堵すると空気を真面目に切り替えるよう報告を促した。

 

「で、バイドの気配はどうだったんだ?」

『残念ナガラ気ノセイデハアリマセンデシタ』

 

 念のための調査で実際にバイドの発生が起きていたという報告を受け、二人とも意識が真面目から真剣に切り替わる。

 

「詳細の聴聞は可能か?」

「こっちは構わない。

 というか聞いていってくれ。

 アルファ、報告を」

『了解』

 

 完全に切り替わった空気の中、なんでこう落差が激しいんだろうと密かに思いながらアルファは報告を始める。

 

『発生箇所ハスリガオ近海。

 規模ハA級バイドヲ含メタ中規模程度トイウ状態デシタ』

「A級か…」

 

 苦いものを含んだ様子のイ級に元帥は確認をとる。

 

「A級という等級はどの程度の驚異と考えるべきなのだ?」

「深海棲艦に当て嵌めれば鬼・姫級のみで構成された艦隊相当と考えて構わない」

「姫級の、それも艦隊か…」

 

 イ級の答えは実際の脅威より大分甘くしたものだが その答えでもおおよそを把握した元帥も眉間に皺を寄せる。

 同時にそれをたった数機で撃滅しうるR戦闘機の性能にも肝を冷やしていた。

 

「最終的な敵の総数はどうだったんだ?」

 

 アルファが帰投している時点で撃滅ないし完全に無力化は終えていると確信しイ級はそう尋ねた。

 

『スリガオ二展開サレテイタバイド群ハ海上ニテ小型C級以下ノバイド体500カラ700ニヨリ生態系ヲ形成。

 次イデ確認サレタA級バイドハ『ネスグ・オ・シーム』及ビ『ノーメマイヤー』ノ二体ト…』

 

 言うべきか瞬巡したが書くし通しきれないと考え正直に答えた。

 

『バイド汚染ヲ発症シタ駆逐艦『時雨』ト『響』ノ二隻ヲ確認シ、ソレラ全テノ撃滅ヲ完了シマシタ』

 

 その報告に空気が一気に重くなる。

 

「…そうか」

 

 絞り出したようなイ級の返事には感情を圧し殺そうという苦々しさが隠しきれていない。

 

「もう少し詳しい報告は望めるか?」

 

 そう更なる詳細を望む元帥。

 そこには感情は微塵も含まれておらず、冷酷なまでに冷徹に徹し職務に当たる軍人としての姿があった。

 しかしその内心はあまり穏やかとはいえない。

 鳳翔の報告書にあったバイド汚染の感染と拡大への懸念が現実となった事。

 一隻の姫級に対し最精鋭の一艦隊を充てねば対抗しえない自分達が万が一700体も集まっていながら中規模程度と言い切られてしまうバイドのその程度(・・・・)の敵と相対した際の被害予想。

 その際に発生するだろうバイド汚染を患った艦娘への対処手段。

 それら全てが元帥にとって頭痛の種として頭の中に蔓延っていた。

 しかしそれらを纏めて飲み込みおくびにも出さない元帥のその様子にアルファは元軍人として好感を覚えつつ報告を続ける。

 

『通常バイド体トノ戦闘二関シテイレギュラーハ起コリマセンデシタ。

 デスガ、A級バイドネスグ・オ・シームノ撃破後、異相空間内二古鷹ノ反応ヲ感知シマシタ』

「古鷹が?」

 

 何故その場に居合わせたのか分からず鸚鵡返しに問うイ級に元帥は割って質問を挟む。

 

「その古鷹というのは鳳翔の報告にあった、バイド化した艦娘の変化を調べるために保護している古鷹の事か?」

『ハイ。

 古鷹ハ姫ヨリバイド捜索ヲ請ケ負ッテイタ深海棲艦ヨリ情報ヲ貰イ先行調査ヲ行ッテイタソウデス』

「無茶しやがって」

 

 心配そうに案じたイ級にお前がいうなと言いたいのを堪えアルファは報告ヲ再会。

 

『救援ノ必要ヲ感ジ私ガ異相空間内に直後二途中響ノ妨害ニヨリノーメマイヤーノ巣ヘト誘引サレソレト交戦シ撃破。

 ソノ後、時雨ニヨル浸食ヲ受ケバイド汚染ノ進行ガ進ンデイタ古鷹ノ救援二成功シマシタ』

「色々言いたいけど、とにもかくにも無事でなによりだ」

 

 古鷹が無事だと聞きイ級は安堵の息を吐くと元帥が疑問点を問いただす。

 

「救援と言ったが具体的には何をしたのだ?」

『私ノ細胞ヲ投与シ強制的二沈静化サセマシタ』

「おいおい…」

 

 いくら古鷹の半分がバイドとはいえ、そんな無茶をすれば汚染は更に進行してしまう筈。

 怒るべきか悩むイ級のな代わり元帥が疑問を投じる。

 

「その方法は常套的に行う処置なのか?」

『イエ。

 デスガアノ時、時雨ハ自ラノ波動ヲ当テルコトデ古鷹ノバイド汚染ノ進行ヲ促シ完全ナバイドニシヨウトシテイマシタ。

 活性化シタバイドノ進行ヲ留メルナラ衝動ヲ拡散サセタ上デ沈静化サセルノガ理想デスガ、ソノ時間ハナイト判断シリスクハ承知ノ上デ件ノ手法ヲ執リマシタ』

 

 賭けに出ねば間に合わなかったと言うアルファにイ級はそれなら仕方ないと納得し、ふと気になったことを尋ねる。

 

「ところでだ。

 その細胞を投与したってのはどうやってだ?」

 

 その質問にアルファはついにこの時が来たかと内心に緊張を走らせる。

 たった一言、いや句読点一つ間違えるだけで自分は変態のレッテルを貼られてしまう。

 なぜだかそう確信したアルファはバイド中枢へと向かう時と同じだけの覚悟で慎重に言葉を選ぶ。

 

『勿論経口投与デスガ?』

 

 医療要語で余計なイメージを封殺し他の意図はないというニュアンスを強調。

 更に他の手段があるのか不思議がる事で一気に押しきろうと謀るアルファ。

 一見完璧に見える一手だが、予想の中でも最悪に近い切り口で元帥から疑問が漏れた。

 

「経皮投与ではないのか」

 

 何気ない呟きであったが、その呟きはアルファの内角ギリギリのストライクゾーンをぶち抜いた。

 しかしアルファもその一投に慌てることなく照準を会わせ打ち返す。

 

『ソノ手モ考エマシタガ、ソレダト古鷹ノ身ヲ蝕ム波動モ同時対処スルノハ困難デシタ』

「成程…」

 

 腑に落ちきらなさそうながらも納得したと息を吐く元帥に乗り切れたと勝利を見たアルファだが、

 

「ちなみに細胞を飲ませたって言ったが、何を飲ませたんだ?」

 

 こ こ で ま さ か の 大 暴 投 。

 

 狙ったのかと言いたくなるタイミングでとんでもない質問をぶん投げたイ級に軽くない苛立ちを覚えてしまったが、おくびにでも出せばそこから予防線が崩れ元の木阿弥になってしまうと何気ない様子を装い嗜める。

 

『ソレ、今スグニ説明ガ必要デスカ?』

 

 あまり増長させるような質問はどうかと嗜めればイ級も理解して謝罪を述べる。

 

「悪い。つい気になったまま口から出ちまった」 

『イエ』

 

 いつもと違う対応に違和感こそ感じているようだが優先順位を間違えずに引き下がるイ級になんとか打ち返せたと内心でガッツポーズを握りアルファは報告に戻る。

 

『ソノ後、古鷹ノ鎮静ヲ確認シタ後古鷹ノバイド化サセヨウト目論ンダ時雨ト響ノ両名ト相対シ、バイド化ノ経緯及ビソノ目的ノ真意ヲ知り得た後ニ二人ヲ完全撃滅シマシタ』

 

 此処さえ乗り切れば後は崩れる要素はない場所まで無事に進み安堵しながら報告を終えるアルファ。

 

「目的って、島風達と同じバイドの星にするってやつじゃないのか?」

 

 バイドの本能の一つである繁殖。

 島風達がその本能を基に行動していたのだから、古鷹の事も含め時雨達も同様の理由からの行動なのだろうと推察していたイ級が首を傾げる。

 

『イエ。

 二人ハ時空ノ壁ヲ越エ過去ヲ改編シヨウトシテイマシタ』

 

 過去を? と鸚鵡返しに問い返してしまうイ級を尻目に元帥は納得したと溢す。

 

「そうか。

 だからスリガオだったのだな…」

 

 スリガオはソロモンにも近く過去へと跳ぼうとするなら適した場所と言えなくもない。

 

「…古鷹もやっぱり、変えたいと思ったのか?」

 

 そう尋ねたイ級。

 そんなことが可能なのか疑問に挙がらないのはそもそもバイドが未来からの脅威であるからであり、今更そんなことを聞くことはないからだ。

 

『未練ハアッタソウデスガ、古鷹ハ私達トノ『今』ヲ選ンデクレマシタ』

「……そっか」

 

 バイドになってしまったことで辛いことばかりの筈なのに、それでも『今』を選んでくれた古鷹にイ級は心から尊敬と感謝を新たに抱いた。

 

「やはり古鷹は大天使だった」

「まったくだ」

 

 そしてそれを台無しにするイ級。

 しかも元帥までもが同意するという始末。

 

『ナンデオマエラハソウナンダ』

 

 コメディが挟まれる危険領域は抜けたと思いきやまだだった事実にアルファはつい素で言ってしまう。

 

「古鷹が天使だから仕方ないな」

「寧ろ女神。

 いや慈母神古鷹でもありだな」

 

 しかしアルファのツッコミもどこ吹く風と古鷹に訳のわからない称賛を並べ立てる二人。

 もういっそフォース叩き込んでやろうかとかなりじゃすまない物騒な思考に陥るアルファだが、それは最後の手段だと自制心を働かせていると元帥が問いを投げた。

 

「それで、先程感染の経緯を聞き出したと言ったが原因は何だったのだ?」

 

 どこかの海域ならば早急にその海域の侵攻禁止を言い渡さねばならぬと確認を取る元帥にアルファは言いにくそうに答えた。

 

『二人ハ如月ノ被験者ダッタ』

 

 そう答えた途端、元帥から表情が消え静かな殺意を纏う。

 

「……奴か」

 

 白い手袋に包まれた拳がまるで革手袋のようにギチリと音を発てる。

 見るからにキレかけている様子の元帥に未だ如月の事を聞かされていなかったイ級は元帥に振る。

 

「誰だそいつは?」

「…知らせていなかったのか?」

 

 初耳だという態度にそう確かめるとアルファはエエと肯定する。

 

『御主人ハ激情家デスノデ機会ヲ伺ッテイマシタ』

 

 嘯くアルファについ先日の事を思いだし元帥も納得の苦笑を溢す。

 

「確かに。

 知っていたら会談など叶わなかったろうな」

 

 くつくつと笑う元帥にやや拗ねつつイ級は改めて説明を求める。

 

「で、話からして如月ってのが相当な糞野郎だってのは分かるがそいつは何者なんだ?」

「如月牛星。

 奴は天才的な頭脳を持つ艦娘の建造に関わっていた研究者であったが、非人道的手段を講じることに何等躊躇しない異常性から収監されていた筈の男だ。

 ついでに言えば現在行方不明になっている元横須賀所属の戦艦大和は奴が主導に当たり建造されている」

 

 それだけでおおよそを把握してしまったイ級から僅かづつだが黒いオーラが立ち上ぼり始めてしまう。

 

「……へぇ」

 

 たった一言にも満たない感想だが、それだけでその機嫌が最下層を下回り続けているのは一目に解ってしまった。

 

「んで、そいつは今何処にいんだ?」

「口惜しいことに所在不明だ。

 特別攻撃隊装備の対抗馬を製作しようとしていた派閥の者の手により秘密裏に連れ出された後の足跡は分かっておらん」

 

 特別攻撃隊、詰まる所『特攻兵器』の名にイ級のオーラが靄から陽炎にその量を増やす。

 

「久々にそのくっそ忌々しい名前を聞いたな。

 つうことは何か? 特攻兵器が採用されてなけりゃ北上達はバイド兵器を持たされてた可能性があったってことかよ」

 

 煮えたニトロの如く危険な雰囲気でそう確めるイ級に元帥は『切り札』を投じた。

 

「その前にだ。

 これで眺めて一度落ち着かぬか?」

 

 そう懐から『切り札』こと『那珂ちゃんのサイン入りブロマイド(浴衣姿)』を差し出すと、途端にイ級の黒いオーラが霧散しミラーボールよろしく煌めきだした。

 

「お れ は し ょ う き に も ど っ た ぞ」

 

 正気どころか完全にトチ狂った様子でブロマイドを崇め奉るイ級。

 

「那珂ちゃんは世界を救う。

 私の見立てに間違いはなかった」

 

 清々しい笑顔で嘯く元帥だが、シリアスで進めたいアルファにしてみれば堪ったものではない。

 とはいえあのままイ級が爆発するよりは余程マシな状況なのだから元帥を非難することはできない。

 

『チナミニアノブロマイドハ御主人対策ニ?』

「策意なく私物だ。

 こうでもせんと落ち着かぬと見せたが、思いの外効いたな」

『出来レバ多用ハ控エテ貰イタイ』

「同感だ」

 

 必要とはいえ真剣な空気が断続的に途切れるのはやはりいい気分ではない。 

 そうしてブロマイドに対し謎の礼拝を数分間繰り返したイ級は先程に比べて非常に落ち着いた様子で尋ねる。

 

「このブロマイド欲しいんだが」

「悪いがそれは私用で撮った一点物ゆえくれてやるわけにはいかんな」

『ソッチジャネエダロ』

 

 掴みか本気か判別の着かない切り出しと返しにそう突き刺すと、漸く空気が真剣なものに戻る。

 

「で、艦娘をモルモットにした挙げ句バイド兵器を作ろうとした気違いは本当に生きてるのか?」

 

 予備知識もなくバイドに近付いて唯で済むとは思いづらくそう尋ねると元帥が苦い顔で頷いた。

 

「奴は私達が『結晶体』と呼んでいたバイド兵器の研究中に姿をくらませておる。

 それを指示していた者の話では奴は『これを制御するには数百年分の技術革命が必要だ』という言葉を最後に姿を消したそうだ。

 状況証拠ばかりで根拠は薄いが、私が如月が生きていると確信している」

 

 そう説明を終えた元帥にイ級は妙な引っ掛かりを感じた。

 

「……」

『ドウシマシタ御主人?』

「…いやな」

 

 どう説明したらいいか迷いながらイ級は思ったまま口にする。

 

「なんか引っ掛かるんだよ。

 こう、したいことが見えないっつうか、何をしたくてんな気違いな真似をしてるのかはっきりしないっつうか…」

 

 自分でも何を言っているのかと思いながらそう言うイ級。

 

『研究ソノモノガ目的ダカラデハ?』

 

 『手段』そのものが『目的』であるゆえに一貫性が見えないのではと言うアルファ。

 元帥もその意見に同意するのだが、イ級はだったらと聞く。

 

「じゃあなんでバイド兵器を諦めたんだ?」

「『……』」

 

 『目的』が研究そのものであるなら数百年分の技術革命を必要とするバイド兵器はまさにうってつけの『目的』足り得た筈。

 しかし如月はバイドの研究を取り止め姿を消した。

 それがどうにも引っ掛かっていた。

 

「確かに。

 今までは手に余るから諦めたとばかり考えていたが、そもそもあの手合いが手に負えない程度の理由で諦めるものか?」

 

 否。

 長い年月を策謀が渦巻き権謀術中が交錯する場で日本と艦娘のためにと時には敵対する者を闇に葬り手を汚してきた元帥はそれはあり得ないと言い切れる。

 と、そこまで至り元帥は一つ仮説を思い至る。

 

「まさか、奴にはバイドさえ己の研究の足掛かりでしかなかったというのか?」

 

 如月は自らが欲するなにかをバイド得ることが叶い、故に汚染のリスクを背負う前に姿を消した。

 そうであるなら奴は……

 

「駆逐棲鬼よ。

 これは私個人の頼みだ」

 

 もしそうであるなら奴は一定以上の成果を出している筈。

 それほどまでに如月牛星という男は天才であり、狂っている。

 

「この先、もし深海棲艦になった艦娘(・・・・・・・・・・)を見付けることがあったら助けてやってくれ」

「……おい」

 

 その頼みが何を意味するのか理解したイ級はもう那珂ちゃんが居ても抑えられない程の憤怒を抱きながら答える。

 

「そいつはもう手遅れ(・・・)だ」

 




ギャグとシリアスがミルフィーユのように重なりかつ艦娘は一切姿を見せない。

これは本当に艦これ二次創作なのだろうか?

因みにご説明しますとギャグを挟んだのは当初シリアス一辺倒にした結果イ級が暗いわオーラが消えないわと堕ちまくって変な方向に勝手に進んでしまった挙げ句会談が中途でお釈迦になってしまったためです。

次回も会談ですが、今度は元帥が落ちかねない事態に……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。