なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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なんでそうなったの……?


え?

「で、どういう事なんだ明石?」

 

 宴も闌を越え、俺は明石を前にそう問い質していた。

 

「さぁ、なんのことやらさっぱり…」

 

 しらを切る気かこのやろう。

 だったらはっきり言ってやるしかないな。

 

「なんで磐酒提督と大淀がFXで有り金溶かした人みたいな顔になってるのか心当たりはないと、そう言い切るんだな?」

 

 作画崩壊とかいう次元を越えた、放置しておいたら樹海にでも消えて行きそうな空気の二人。

 その問いに明石はさっと目を逸らす。

 

「り、リアルに証券で失敗したんじゃ…」

「じゃあ瑞鳳のエスコート・タイムとシューティング・スターの開発に使った資材は何処から捻出した?」

「うっ!?」

 

 問いに一筋の汗を流す明石。

 

「やっぱりお前が原因か!?」

 

 家の資材じゃ飽きたらずとうとう人様にまで迷惑を描けてんじゃねえよ!?

 

「アルファ、明石をお仕置き!!」

 

 ただの触手じゃ済まさん。

 アルファさえ二度と御免だと言ったゴマちゃんの刑に処してやる!!

 

「あ、まてまて」

 

 逃げようとした明石がアルファを初めとしたR戦闘機に取っ捕まったところで磐酒提督が復活し留めてきた。

 

「確かに使われた資材の量は痛手だが原因は別だ」

 

 痛手になるぐらい使い込んだのは事実か。

 やっぱりゴマちゃんの刑は確定だな。

 磐酒提督は少し迷った様子を見せてから唐突に言った。

 

「三日後、元帥閣下がリンガに来る。

 その内容が…」

 

 そこで一旦切る磐酒提督。

 

「駆逐棲鬼との会談なんだよ」

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はいっ!!!!????

 

「済まないが用事を思い出した!!!!????」

 

 全速離脱を図るも武蔵に捕まってしまった。 

 

「離してくれ!!??

 面倒事はこりごりなんだ!?」

「残念だが受け入れてくれ。

 じゃないとこっちの存続に関わる」

「それなら仕方ないけどなんでバレた!?」

 

 理由が理由だけに逃げるのは諦めるが、そもそもなんで海軍(海自?)の一番偉い人に俺達の所在がバレたんだ!?

 

『鳳翔ノイイ人ガ元帥デスヨ』

「マジデカ!?」

 

 そういう大事なことは先に言っとけアルファ!!??

 

「というか、まさかお前が教えたのか?」

『ハイ』

 

 なんでだよ!!??

 

『今件ノ事後処理ハアチラトノ提携ノ必要ガアッタノデ提かく督及ビ艦娘ヘノ配慮ヲ条件ニ教エマシタ』

「…そうか」

 

 つまり逃げたらその約束は無くなると。

 

「武蔵、もう逃げないから離してくれ」

 

 正直釣られた魚みたいにされてるのは勘弁。

 

「本当だろうな?」

「これ以上迷惑を掛ける気はねえよ」

「そうか」

 

 漸く手を離してくれて解放される。

 あー、もう。

 

「なんでこんなことになったんだ?」

 

 飛行場姫の依頼が元帥との会談になるなんてどうなってんだよ?

 こうなりゃなるようになれ。

 考えるのを放棄して俺は磐酒提督が、来る前に放たれた爆弾の片付けに向かう。

 

「R戦闘機でうやむやになってたが、ちび姫はR戦闘機装備して大丈夫なのか?」

 

 双胴空母になったことで瑞鳳とちび姫の装備スロットは一人辺り半分の二つと合体して増えた計5つ。

 その内訳はちび姫が62型と同じく艦戦も兼ねる艦爆と艦攻。

 瑞鳳はお馴染み艦これ最強の艦戦の震電改と遂に登載されたR戦闘機『R―9ADエスコート・タイム』

 そして共有部分の第5スロットに『R―9Dシューティング・スター』。

 エスコート・タイムはパウにも搭載されているデコイ機能を更に強化した機体で、一度に多数のデコイを展開した上でそのデコイも自爆だけでなくそれぞれがスタンダード波動砲を発射可能とかなり凶悪な機体だ。

 そしてシューティング・スターは今までで一番ふざけんなと言いたくなる機体。

 ただしバルムンクは例外な。

 こいつのコンセプトは超長距離狙撃。

 その最大射程はなんと38『万キロ。

 地上から月までの距離をまるごと圏内に収める馬鹿機体だ。

 いや、まあさ、宇宙空間ならそれぐらい射程は必要なのかもしんないよ?

 でもさ、サイズダウンて他のR戦闘機の射程が軒並み十分の一まで落ちてスタンダード波動砲で二、三十キロ。

 古鷹のメガ波動砲でも40キロ、必殺のΔウェポンでさえ300キロ以上の射程は確保できないんだから比較しなくても洒落じゃ済まな過ぎる。

 これはあれか?

 瑞鳳の決め台詞のアウトレンジを意識してのチョイスなのか?

 だったら瑞鶴が島に来たらシューティング・スターまた増えるのか?

 だとしてもアウトレンジって言葉を調べ直してこい。

 さておき、共有部分は文字通り艦娘の瑞鳳とちび姫を繋げる特殊な部分。

 それ故に妖精さんの加護が掛かった艦娘の装備も深海棲艦の装備も乗せられそうにないと思ってたんだが…。

 そう尋ねると明石が何故か自慢気に口を開く。

 

「それは勿論私の腕がいいからだよ」

「ちがうよ」

 

 どや顔を決めようとした明石をちび姫が否定した。

 

「たぶんね、わたしのおとうさんがにんげんだから」

 

 ………………。

 

「……そうなの?」

 

 核でなんもかんもまっさらになったような異様に静かな空気の中、俺は逆に冷静になった状態にでそう聞いてしまう。

 そんな空気に全く気付かない様子でちび姫はうんと頷く。

 

「ひめがいってたの。

 うまれてすぐおばちゃんにあずけられたって」

 

 戦艦棲姫……おばちゃん呼ばわりされたお前は泣いていいと思う。

 というかさ、

 

「姫の娘だとは聞いてたがまさか『ドグラガッシャン!!!!』え?」

 

 なんかすごい音にそちらを見れば、なんでか磐酒提督と大淀がテーブルに頭から突っ込んでテーブルがぶっ壊れてた。

 

「大丈夫か?」

 

 大淀なんて眼鏡壊れてるし。

 たんこぶとか痛そうなんだが…

 

「だいじょばない」

「大問題です」

 

 本気で心配になる様子でそう言う二人。

 いやまあね。人類種の天敵と子を設けた同胞が居た上目の前の小さな姫がその混血だと言われたらそりゃ混乱もするわな。

 

「あ、そだ」

 

 磐酒提督は地位に目を眩ますような輩ではないけど、一応言っとかないとな。

 

「今の話はオフレコで頼む。

 下手なことになったら姫が全員で連合艦隊組んで襲撃とかやりかねないからさ」

 

 そう言うと磐酒提督は了解したと困った様子で苦笑する。

 

「今の言い方だとその娘は他の姫からも大事にされているように聞こえるが確かなのか?」

「らしいぞ。

 少なくとも預かってたらしい戦艦棲姫は大事に育てていたそうだ」

「……そうか」

 

 あれ?

 なんか今、妙に安堵してなかったか?

 ……気のせいか。

 

「取り敢えず先ずは会談だな」

「解ってる」

 

 チート持ちの転生者とはいえただの駆逐イ級になんで会談なんか求めるかね?

 

「そう言うわけだから、木曾。

 皆を連れて先に島に戻っててくれ」

「お前一人で残るつもりか?」

 

 俺の頼みに木曾は不安だと言う。

 

「懸念は分かるけどさ、いい加減氷川丸を拘束し続けておく訳にもいかないし、今回みたいな事がそう起きるはずは無いだろうけど不安は無くしておきたいんだよ」

 

 完全に忘れてたけど、明石と木曾と氷川丸は鎮守府を脱走しているし、北上達も状況はほぼ変わらない。

 おまけに古鷹はバイド化、春雨は深海棲艦化、宗谷と酒匂に至っては深海棲艦が艦娘化したイレギュラーばかり。

 極めつけにちび姫が人間との混血だって判明した現状誰一人残しておくのも不安が大きい。

 そう理由を説明すると、木曾は不満たらたらたという空気を発しながらも納得してくれた。

 

「仕方ない。

 今回ばかりはイ級を置いていくしかないな」

「護衛にノー・チェイサー達は残しておくからさ」

「当然だ」

 

 本当はそっちに付かせたいけど言ったら怒るだろうからここは妥協しておく。

 そう折れたところで北上がだったらと提案を持ち上げた。

 

「いっそのことノー・チェイサーだけじゃなくてイ級に載せれるだけR戦闘機載せておこうよ」

「は?」

 

 何を言ってんですか北上さん?

 

「そいつはいいな。

 ストライダーは修理待ちだけどアルファとパウとフロッグマンとミッドナイト・アイとアサガオで丁度全部埋まるしな」

 

 いやいやいや。

 

「ミッドナイト・アイを置いていかれるのは流石に不安だから。

 それにアサガオは戦闘用じゃないし」

 

 工作機なのに烈風より強いけど。

 ミッドナイト・アイも千代田の件では全く役に立たなかったけど、彩雲を超える策敵能力は安全な帰途を確保するために外して欲しくない。

 

「エスコート・タイムとシューティング・スターは貸さないわよ」

 

 誰が貸せといった?

 

「そうじゃなくて、そこまでせんでも…」

 

 大丈夫と言いたかったが、全員から無言のプレッシャーが雨霰と降ってきました。

 

「…わかりました。

 だけどせめてミッドナイト・アイだけは連れてってくれ」

「…解った」

 

 なんとかそう纏まりファランクスと爆雷が外されそこにアサガオとフロッグマンが、ダメコンを載せていた空きスロットに宗谷が改装時に持ってきた女神を積めていく。

 

「なんというか、ずっと一緒に戦ってきた愛銃を下ろすのは抵抗あるな」

「分かる分かる」

 

 俺のぼやきに北上がうんうんと首を振る。

 

「工作艦に改装されて下ろされていく魚雷管の姿は堪えるものだったね」

「酒匂も特別輸送艦に改修されたときそうだったよ。

 一度も実弾撃たせて貰えなかったけど」

 

 しっかり落ちをつけるな。

 ファランクスを木曾に預けしまかぜ達は宗谷に渡す。

 

「しかし宗谷はダメコンと縁深いよね」

 

 爆雷をしまいながら不意にそう言う。

 そういや氷川丸でさえ見付けられない女神をワ級の頃にも見付けてたよな。

 絶妙なタイミングで女神を差し出された事を思い出していると宗谷は運が良いだけだよと謙遜した。

 

「艦娘になったら輸送能力も無くなって他に取り柄も無くなっちゃったしね」

「自虐的になるなよ。

 取り柄

なんて無くても仲間だって事は変わらないんだぞ」

「……そうだね」

 

 ごめんなさいと謝る宗谷。

 

「でも凄いんだよ。

 性能はアレだけど運なら雪風以上なんだから」

「そうなのか?」

 

 宗谷は氷川丸と同じく航行可能な状態で保存されてるのも理由なのかな?

 

「なんと驚きの100。

 これには鈴谷さんも驚いたね」

「ちょっと待て」

 

 運が3桁って素でそれかよ!?

 どこかの不幸戦艦とか空母が聞いたら泣き出すレベルじゃねえか。

 

「100なんてなんて羨ましい……」

 

 って、そういやここにも一人居るじゃねえか。

 

「そんなにあるなら少しぐらい分けて欲しいわよ」

 

 その内頭のパゴダマストだがガラパゴスだかって飾りが茸になりそうなぐらいじめじめしてるんだけど。

 そんな山城に宗谷は困った笑みを浮かべる。

 

「出来るならそうしてあげたいけど、ちょっと無理かな」

「慰めはいらないわよ」

 

 お前は何がしたいんだ?

 拗らせ拗ねる山城に宗谷はでもと言う。

 

「私は山城が羨ましいよ?」

「……」

「私は船体が小さいから大きな砲も重たい酸素魚雷も持てないから、山城みたいに大きな砲が沢山積めるのが羨ましいと思うな」

「…そんなに誉めたって所詮欠陥戦艦よ」

 

 そう微笑む宗谷にそっぽ向きながら言う山城。

 微妙に頬が赤くなって緩んでるだが、チョロすぎないか?

 いや、宗谷が天使なだけか。

 

「でも、扶桑型が居たから伊勢型も長門型も大和型も欠陥戦艦にならずに済んだんだよね?」

「……それは…そうかもしれないけど……」

「私は山城の事を尊敬してるよ。

 山城が居たから長門や大和は大きな砲を撃っても壊れない強い艦になれたってちゃんと分かってるから」

 

 そう頭を撫でると感極まったのか山城は宗谷に抱き付いた。

 

「測量艦の癖に生意気よ」

「……ごめんね」

 

 そう言う山城の声は微妙に涙ぐんだようにくぐもり、宗谷は静かに頭を撫で続ける。

 

「宗谷マジ天使」

 

 あの拗らせきった山城を宥めて癒すなんて天使どころか女神でもいいかもしんない。

 

「口から駄々漏れになってるぞ」

「構うもんか」

 

 あの娘のためにならあの大和だって倒せる気がする。

 というか害する奴は超重力砲で塵も残さず薙ぎ払う。

 

「ん?」

 

 宗谷の天使っぷりに癒されていて気付かなかったけど、なんでか磐酒提督がちび姫を抱っこしてた。

 あ、瑞鳳に帰して大淀と食堂から出ていった。

 

「どうしたんだ?」

「う~ん」

 

 何があったのか聞いてみると瑞鳳は首を傾げる。

 

「なんか、姫ちゃんを抱っこさせて欲しいって言われたんだけど…」

 

 説明し難いという雰囲気の瑞鳳に埒があかなそうだからちび姫に尋ねてみる。

 

「なんでまた許したんだ?」

 

 俺が知る限りちび姫は抱っこされるのはあまり好きそうではない。

 というか、瑞鳳以外だとあつみもとい宗谷だけしか抱っこなんてさせてない。

 鳳翔さえ嫌がるのだから体型とかじゃなくて信頼出来るかどうかだと。 

 因みに俺は馬扱いされる。

 しかも面白がった北上が島に生えてる椰子の革とかで乗馬用の鞭を拵えたりしたもんだからさあ大変。

 他のイ級とかに被害が及ばないようちび姫の気まぐれでお馬さんごっこに駆り出される事も有るんだよ。

 どこぞの業界では御褒美でも俺には苛めだからな。

 閑話休題

 ちび姫は質問に首をこてんと傾ける。

 

「ん~とね、あのひとはいいかなっておもったの」

 

 どうやら本人もなんとなくらしい。

 

「あ、でも、なんかなつかしいにおいがした」

 

 ……どんな匂いだよ?




ようやくやれた日常的ほのぼの回。

次回はいよいよ明石の丸呑みプレイ……なんてことはなくまたイ級がはっちゃける予定。

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