なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

71 / 123
よくわからない。


改めて深海棲艦って

「あー、なるほどね」

 

 1番冷静に状況を見ていたであろうパウ・アーマーのパイロットの妖精さんに事情を聞いて、なんでダメコンが発動したのかとか空気が最悪なのかと理由を把握したわけなんだが、俺の結論は特にということも無かった。

 

「事故ならしょうがないな」

 

 故意ならともかく、大井のあれは不注意が招いた事故ってならしょうがない。

 寧ろ喰らったのがダメコン持ってた俺で良かったぐらいだ。

 

「相手の言い分を信じるってのか?」

「そうは言うけどさ」

 

 木曾も北上も納得が行かないって顔をされても、俺だってダメコン使ったぐらいで他に死人も出てないんだし別段どうこうという考えは沸かないんだよ。

 

「それを言ったら俺も武蔵にやらかしてるし、おあいこじゃないか?」

「甘すぎだよイ級」

 

 北上も苦言を投じるけど、やっぱり恨もうとは思わないんだよな。

 

「それにさ、向こうは瑞鳳達に場所の提供をしてくれてるんだし、多少はな」

「多少…ねぇ」

 

 なんか含みがある言い方をして北上がちらりと球磨と千歳を一瞥してから唐突に質問してきた。

 

「もしさ、もしだよ。

 向こうがイ級の事知ってて今回の演習に球磨と千歳を組み込んでたとしたらどうする?」

「…おいおい」

 

 いくらなんでもそれはないだろ?

 軍の某に詳しくはないけど、士気的な意味でも二人が俺を助けて沈んだって事実は揉み消されて俺が沈めたって事になってるはず。

 

「もしもって言ったじゃん。

 そうだったらどうするって仮定の話だよ」

「……」

 

 日差しが強いせいかうっすら汗をかいた北上が言うから、俺はそんなありえないことをされた場合を考えてみて……

 

「バルムンク」

「え?」

「ストライダーにバルムンク積ませて全部まっ平になるまで泊地にぶち込んでやる」

 

 なんて冗談を言ってみた。

 

「「「「「「………」」」」」」

 

 ……あれ?

 さ、流石に冗談が過ぎたかな…?

 皆が皆ドン引きしちゃったよ。

 

「…バルムンクって?」

 

 海風に冷えたのかちょっと震え気味の千歳が尋ねてきた。

 

「核ミサイル。

 ちなみに今は廃棄してあるから手元には無いぞ」

 

 と言っても何故かパウ・アーマーの補給リストからは補給可能の文字が消えないんだけどな。

 もしかして波動で作ってるのか?

 

「か、かか、核ってまさか…」

「ピカだよ」

 

 何故か顔色を真っ青にしながら北上が言うと皆揃って血の気が引いてしまった。

 曙なんて復活したばかりなのにまた卒倒しちゃってるし。

 うん。やり過ぎちゃった。

 

「あの、流石に冗談だよ?」

 

 そう今の発言を無かった事にすると起きたパニックが少しだけ静まる。

 

「ほ、本当に冗談なの…?」

 

 涙目でそう尋ねる千歳にちょっと可愛いかもと不謹慎な事を思いつつ頷く。

 

「流石に核はマズイだろ?

 あんなものを持ち出すなんてあっちゃいけない。

 なにより二人が入ったのも偶然なんだし使う理由は無いさ」

「え、ええ!!??

 勿論です!!??」

 

 なんか必死に肯定する千歳。

 

「ああ、もう。

 イ級の冗談は本当に心臓に悪いんだから」

「スマンスマン」

 

 春雨にも通じてなかったし、俺の冗談のセンスが絶望的みたいだな。

 妖精さんなんかタミフルって旗をバタバタさせてるし、今後はブラックジョークは控えよう。

 

「でだ。

 結局どうなったんだ?」

「え?」

「え?じゃねえよ。

 引き上げるなら準備もあるんだしそこんとこはっきりしねえと」

 

 出来れば俺達だけ帰る事にしてアルファに木曾達の護衛を任せる形にさせて貰いたいんだよな。

 

「私達の負けだ」

 

 何故か視線を合わせないように目だけ明後日の方向を見ながら武蔵が言う。

 

「制空権の喪失、旗艦大破、おまけに連合艦隊を持ち出し過失とはいえ実弾まで使ったんだ。

 これで勝ちを名乗れる輩がいたら見てみたいものだな」

「…そうか」

 

 ゲームだったら戦術的敗北とか言われるんだろうな。

 とはいえそう言ってもらえるならその決定に従うだけだし。

 

「じゃあ改めて、厄介になるということで」

「ああ。あまり歓迎はしないがな」

 

 溝のある感じはするが、それぐらいの距離があったほうがお互いのためだろう。

 なんか大井も落ち着いたみたいだしとりあえず解決でいいのかな?

 

 

〜〜〜〜

 

 

 で、リンガに戻って来たわけなんだけど。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 なんでか戻るなりこの世の終わりを前にしたような青葉が俺に土下座をかまして来たわけなんだが?

 

「……どうしたんだ?」

 

 まったく訳が分からないぞ?

 とりあえずアルファに事情を聞いてみる。

 

『隠レテ余計ナ詮索ヲシテイタノデ明石ニ施行シタ仕置キヲ彼女ニモ施行シヨウト思イマシテ。

 提督カラ許可ハ頂イテマスガ御主人ノ判断ヲ必要ト考エ待ッテイマシタ』

「……」

 

 ええと、つまりなんかやらかそうとしてアレの餌食になりかけていると。

 

「お願いですもう金輪際余計な真似は考えも致しませんのでどうかどうか貞操だけはお許しください」

 

 必死に嘆願する青葉にどうしたもんかと困るしかないんですが…。

 

「というか、一体何を知ろうとしたんだ?」

 

 内容次第じゃ許すわけにもいかないし。

 確認を求めるとアルファが答える。

 

『島ノ所在地ト構成スル面子ニ着イテデス』

「別にそれぐらいなら…」

 

 春雨と古鷹の事情さえ知られなければ別に構うような……って、まさか。

 

「もしかしてあつみにか?」

『インタビュート称シタ誘導尋問デシタ』

「やれ」

 

 うちの天使をだまくらかそうとした罪は重い。

 

「いやぁぁぁぁああああ!!??」

 

 R戦闘機四機掛かりでどこかへと引きずられていく青葉。

 勢いで許可しちゃったがこれ、やばくね?

 

「雉も鳴かずば撃たれまいに」

「今までの報いよ」

 

 連れ去られていく青葉を何故かそれを見ていた泊地の艦娘達のほうが清々しい笑顔で見送っていく。

 

「今更だけど本当にいいのか?」

「青葉にはきつい灸が必要だって前から思われていたんだよ」

「提督の説教さえ聞かなかったぐらいだしね」

 

 よくそれで今まで大丈夫だったな。

 

「最後の一線は越えてなかったから私刑にするわけにも行かなかったけど、やってくれるなら俺達からしても調度いい」

「これで性根が入れ代わってくれたら万々歳ね」

 

 まさにアオバワレェか…。

 

「戻ったみたいデスネ」

 

 そんな感じでなんともいえない気持ちになっていると金剛が出迎えに来た。

 

「oh、武蔵も駆逐棲鬼もどうして大破してるデスカ?」

「ちょっと事故があってな」

「自業自得だ」

 

 そう言うと金剛はそうデスカと戸惑い気味に納得する。

 

「それはそうと金剛。

 ちょっと大淀に聞きたいことがあるんだけど執務室にいるかしら?」

 

 そう千歳が尋ねると金剛が微妙な顔をする。

 

「大淀だったら青葉が連れてかれた部屋にいるネ」

「マジかクマ!?」

 

 え? なんで大淀がアレの餌食になってんだ?

 

「理由は知りませんが、なんでも任務失敗の責任を取っての事らしいネ」

 

 なにをやらかした大淀?

 

「アルファ、知ってるのか?」

『イイエ。

 デスガ、我々ガ関知スル必要ハ無イカト』

「そう…なのか?」

 

 無関係と言うにはタイミングもそうだし内容もアレなんだが…

 

『トモアレ先ズハ損傷ヲ修復シテカラニスルベキカト』

「いや、そこまで借りを作る気は無いんだが?」

 

 正直返す当ても無くはないが手段がなぁ。

 渋る俺に業を煮やしたとばかりに武蔵が俺を掴みあげる。

 

「いいから来い。

 こちらにも面目というものがあるんだ」

 

 それをこっちもと言いたいが禅問答を繰り返してもしょうがないのか?

 

「おやぁ?

 武蔵は駆逐棲鬼を気に入った見たいデスネ」

「まあ、いろいろやらかしたからね」

 

 背後でそんな会話をする二人を尻目に入渠ドッグに引きずり込まれてしまう。

 そうして無理くり連れていかれたのは入渠ドッグという名の浴場だった。

 

「なんか、スーパー銭湯みたいなんだな」

「どんな銭湯なんだそれは?」

「サウナとか露天とかいくつも種類が一度に楽しめるやつ」

「露天と蒸し風呂を一度に…?

 面妖な」

「全部一緒って言ってもちゃんと区分けされてるからな?」

 

 艦これって現代設定だよな?

 生まれも育ちもリンガだから知らないだけかも。

 そう訝みながら武蔵は艤装を戦艦と札の下がった巨大なコインロッカーみたいな専用の置き場に預けて蓋をすると、修理中とのランプが光りシャッターが閉まる。

 

「あの中で修理するのか?」

「あれは工廠への直送路だ。

 深夜帰還した艦娘達以外にはあまり使われないが修理が終わったらそのまま保管庫に送られるぞ」

 

 意外とハイテクというか効率的だな。

 うちだと明石が寝てる時は起きるまで待つか直接バケツぶっかけて終わりだし。

 

「……さて、ここまで連れて来たはいいがお前はどっちなんだ?」

「どっち?」

 

 それって性別的な?

 

「工廠に送るか入渠設備で事足りるかという意味でだ」

 

 呆れつつ武蔵がそう指摘する。

 確かにそうなんだけど、実は知らないんだよな。

 

「正直分からない」

「は?」

「いつもは資材を喰って自己修復させるか修復剤被ってるんだが、俺って生物なのか?」

 

 半機械半生物って辺りなんだろうけど、今更ながら深海棲艦は謎が多いこと多いこと。

 

「イ級」

 

 と、どうしたもんかと悩んでいるとあつみが中身が入ってるらしいドラム缶を持ってきた。

 

「修復剤風呂用意シテモラッタヨ」

「お、おう」

 

 風呂場に五衛門風呂よろしくなドラム缶のちぐはぐさに戸惑っていると武蔵がまた俺を掴みあげるあつみに問う。

 

「これに入れるのか?」

「ウン」

「解った」

 

 あつみの言葉にまるで天麩羅かフライでも揚げる要領で俺の尻尾を持って頭からドラム缶に突っ込んだ。

 

「おいぃぃぃいっ!!??」

 

 沸騰しているかのようにじゅうじゅう音を起てて蒸発していく修復剤と合間ってマジに揚げ物になった気分だぞおい!?

 まあいつもこんな感じなんだけどな!?

 

「…本当に修復剤だけで回復するんだな」

 

 呆れ混じりにそう呟く武蔵になんでだとおもいつつ、修復剤が全部消え完全回復したのを確認して俺はドラム缶から這い出る。

 

「武蔵ノ分モアルヨ」

「あ、ああ」

 

 戸惑いつつあつみからバケツを受け取り風呂場に向かう武蔵。

 

「すぐに終わるから待っていろよ?」

 

 そう言い残して大破した服を脱ぎ専用のごみ箱にほうり込むと湯気の向こうに姿を消す。

 髪を解いた武蔵とかマジでレアなものを拝めたのはかなり役得だな。

 生肌?

 性欲無いし今更だし島では拝めない素晴らしい山があろうとなんとも思わないよ。

 ………泣きたくなってきた。

 あつみと待つこと10分程で武蔵が戻って来た。

 

「待たせたな」

 

 頭にタオルを巻いてるのにどうして身体には巻いてないんだと突っ込みたいのを堪えいやとだけ言っておく。

 

「で、この後は?」

 

 自由だと言うなら宛がわれた部屋に篭っているつもりなんだが。

 

「提督ガ工廠ニ来テッテ言ッテタヨ」

「工廠にか?」

 

 別に構わないけど機密情報とか問題無いのか?

 そう疑問に思っているとあつみが言った。

 

「瑞鳳ノ艤装ノ話ガアルッテ言ッテタ」




 ちうことで皆様からの要望により大淀は犠牲になりました…

 後、イ級は気付いていませんが北上に振られた時からぶちギレモードの黒いオーラが出掛かって、妖精さん達の手旗信号で真実だったら本気でバルムンク持ち出す可能性があるからとにかくしらを切るようにと連絡しあっていたと言う。

 次回は瑞鳳と改装と後は訓練までいけるかな?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。