なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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普通から縁遠いところにいるよな俺…


なんだかんだで

 なんだかんだで漸くリンガに着いた訳なんだが。

 

「おもいっきりアウェーだね」

 

 出迎えは困惑と警戒が入り交じった艦娘達の視線という実に気持ちの良くないものであった。

 まあ当然そうなるよな。

 だからこそ、念のためアルファにはフォース装着状態で亜空間に待機してもらっているんだけどな。

 

「分かってた事だ。

 それよりも瑞鳳を」

「ああ」

 

 警戒を解除するかはあちらの提督次第だが、とにかく今大事なのは瑞鳳の無事を確保すること。

 チビ姫の艤装から下ろされたベッドに寝かされた瑞鳳に、それを見ていた何人かの小さな声が聞こえたがそれを無視し霧島に確認する。

 

「どっちに運べばいい?」

「こちらよ」

 

 そう促す霧島に氷川丸と木曾がベッドを押して運ぶ。

 

「ままぁ…」

 

 運ばれていく瑞鳳に付いていこうとするチビ姫だがそれを制する。

 

「瑞鳳が大事なら我慢しろ」

「……うん」

 

 行きたいのを堪えた様子で頷くチビ姫。

 珍しく聞き分けが良いのは氷川丸やあつみから諭されたからか?

 絶対に離れないと暴れられるよりはいいし、普段もこれぐらい聞き分けがいいと助かるんだがな。

 

「北上、お前も二人を頼む」

「いいの?」

 

 自分達が離れたらいきなり仕掛けられるかもと言外に心配する北上に声を潜め大丈夫だと言う。

 

「アルファが亜空間で待機している。

 それにノー・チェイサー達も出る準備をしているしな」

 

 流石にそれは無いと思うが、仕掛けられて1番避けなければならないのは動けない瑞鳳と機銃さえ持っていない氷川丸の二人を人質にされることだ。

 空は飛べないがフロッグマンは地上でも運用可能でかつバブル波動砲の強酸は意外と汎用性が高いし、ストライダーとフロッグマンを加えた木曾と北上の二人なら被害さえ考えなければ瑞鳳と氷川丸を守りながら脱出する事も出来るだろう。

 

「分かった」

 

 そう言うと急いで氷川丸に合流していく北上。

 

「さてと、」

 

 クラインフィールドを展開できるよう準備しつつ注意深く周囲を見回す。

 取り巻きと化した艦娘達は砲や弓といった類こそ構えていないが、艤装を装備し即座の事態に備えている。

 

「あつみ、俺の側を離れるなよ」

「ウン」

 

 姫だけあってチビ姫は精神的には脆いが肉体の耐久性は高い。

 だがあつみは妖精さんの加護が付与されていてもエリワの域を出ていない。

 それに加え中破しているのだから狙われたら一溜まりもない。

 緊張感が絡む中、そんな空気をぶち壊す声。

 

「Hey!

 久しぶりネ!!」

 

 うん、聞き覚えのある声だ。

 

「金剛か?」

 

 そちらを見ると、人垣を割って現れたのは確かに金剛型1番艦の金剛だった。

 というか、久しぶり…?

 

「もしかして、あの泊地で俺がやられた金剛なのか?」

「Yes!

 But、それだけじゃないネ」

「…あー」

 

 あまり思い出したくはないが、木曾に庇われて横須賀を目指した時にも金剛に会ったな。

 あの頃に徹底的に潰されてたからちゃんと鍛えようって考えるようになったんだよな。

 一年も経ってないのにずっと昔の事のように思う。

 

「まさかまた会うとはな」

「私も同じヨ。

 それはそれとして…」

 

 突然ゆらりと怒りのオーラを立ち上らせる金剛。

 

「あのBicchiはどこネ?」

「……え?」

 

 ビッチって誰だ?

 つうかキャラ変わりすぎだぞおい。

 とはいえあつみとチビ姫どころか泊地の艦娘までドン引きしてるしなんとか鎮めないと…って、よく考えれば金剛が知ってる俺の仲間って二人しかいねえじゃん。

 

「アルバコアなら帰ったぞ」

 

 アルバコアの名にざわりと動揺が走るが金剛の怒気はまだ収まらない。

 

「それは本当なのデスカ?」

「いや、他の奴らから又聞きなんで俺も詳しくは知らないんだが、緊急で帰らなきゃならなくなったらしくてな。

 最後に会ったのは装甲空母姫の件の前なんだよ」

 

 流石にポケモン観に帰ったなんて信じないだろうし、間違いなくガソリンぶっかけたみたいに手が付けられなくなるだろうからそこだけ省いて本当の事を告げると、金剛は舌打ちをして怒りを鎮めた。

 

「Shit、あのBicchiのためにラバウルから取り寄せた戦艦専用の対潜クラスター弾が無駄になったネ」

 

 なんつうもん作ってんだよラバウル!?

 

「というか高速戦艦が対潜するなよ。

 そっちは航空戦艦に任せとけ」

「時代は常にevolutionしてるヨ!!

 今時速いだけの戦艦に出番は無いのデース!!」

 

 アドバンテージ一つじゃ生き残れないとそう語気を強く言い切る金剛。

 今の台詞に人垣から「空はこんなに青いのに…」とか諦めの境地に入った声が聞こえた気がしたんだが、カ号ガン積みの対潜専門の航空戦艦でもいるのか?

 

「と、ともかくだ。

 こんな状況じゃ落ち着かないからコンクリ固めの営倉で構わないから場所を変えよう」

 

 金剛のお陰で警戒は多少薄れているといっても、いつまでもこの状態は気持ち良くない。

 そう頼むと金剛はまいったと言いたげに肩を竦める。

 

「oh、提督が招待したguestをそんな場所になんて連れていかないヨ。

 ちゃんと部屋を用意してるからネ」

 

 そう案内する金剛に、逆らう理由もないので三人で付いていく。

 人垣を抜けて宿舎らしき建物に向かう途中、俺はどうしても聞いておきたいことがあったのを思い出した。

 

「そういえば、ずっと気になってた事があるんだよ」

「どうしたのネ?」

「あの泊地でどうして木曾を撃とうとしたんだ?」

 

 今更だがあれが全ての始まりだった。

 あの時金剛が木曾が狙われなければ、きっと俺は誰とも会うことはなく今もただ一匹の深海棲艦のままだったと思う。

 

「あー、あの時ネー」

 

 ちょっとだけ言いにくそうに金剛は歩きながら語る。

 

「私達はあの時、提督からあの泊地を調査するよう命令を受けていたのヨ」

「泊地の調査?」

 

 一体なんでだ?

 

「Yes。

 あの泊地は上から深海棲艦に占領されたため、施設ごと焼き払うよう言われたのデス。

 But、提督はその命令を訝しいと感じ何か隠し事があると後で内密に調査するよう言って攻撃は最小限に留めるよう言ったのネ」

 

 あの泊地を焼いたのは金剛だったのか。

 

「って、それって口外していいのか?」

「Youは深海棲艦ネ。

 だから言い触らして信じる艦娘はそうはいないヨ」

「まあな」

 

 うっかりじゃなくて計算ずくか。

 となると…

 

「目撃者を消すために木曾を」

「NO」

 

 俺の結論を金剛は否定する。

 

「あの時木曾は遠征中に逸れてあの泊地に着いたと言ったのヨ。

 だけど、私達の攻撃に併せて遠征を禁ずる命令が周辺泊地に出ていたネ。

 でも、木曾はそれを知らなかったネ。

 だから、嘘を吐いているって分かったヨ。

 もしかしたらあの泊地の艦娘なのかもしれないから、何を隠しているのか吐かせるために威嚇しようとして」

「俺が割り込んだ」

 

 そこまで言われれば答えは明白。

 下手を打った木曾を助けたのは間違っていなかったみたいだけど、こちらも大分はやとちりしてたみたいだ。

 

「Yes。

 そしてYouにとどめを刺そうとしてあのBicchiがYouを掻っ攫っていったのヨ」

「そうだったのか」

 

 ずっと気になっていたことがこれでスッキリした。

 

「じゃあ今度は私から聞かせてもらうネ」

「なんだ?」

「霧島がYouが私達の仲間だった島風を連れていると言っていたのですが、どういう事なノ?」

「ああ。

 その事か」

 

 さっきから飛び出すのを堪えていたしまかぜに待機場所から出ていいぞと言う。

 

『おぅっ!』

 

 飛び出したしまかぜは嬉しそうに金剛の足元でちょろちょろと走り回る。

 

「この連装砲ちゃんが島風なのですカ?」

「詳しく話すとえらく長くなるから省くが、肉体を無くした島風の魂がそこに入ってる」

 

 俺の説明に肯定するようにしまかぜはおぅっと鳴いた。

 

「むぅ、端的過ぎてわけが分からないヨ」

「しかしなぁ…」

 

 バイドに着いて話すわけにも行かないというか、そもそも信じてもらえるような話でも…ん?

 

「そうだ。

 島風が『バイドの切れ端』を持っていたんだがそれをどこで見付けたか知ってるか?」

「『バイドの切れ端』?

 どんなものネ?」

 

 そう言われ説明しようとしてはたと気付く。

 よく考えたら俺はフォースの状態になった物しか実物を見たことないんだよな。

 

「え〜と、アルファ」

 

 致し方なく亜空間に身を潜めさせたアルファを呼び出す。

 

「WOW!?」

 

 何も無い空間から現れたアルファの姿に金剛が飛び上がって驚く。

 

「どんなMagicネ!?

 これも深海棲艦のSkillなノ!?」

「いや。亜空間潜航はR戦闘機の基本機能で深海棲艦は関係ないぞ」

 

 そう教えると目を丸くして唖然とする金剛。

 何か変な事言ったかな?

 

「R戦闘機ってなんデスカ?」

「『霧』と同じ異世界の戦闘機。

 実物って言い方もおかしいけど、本来は宇宙での戦闘を念頭に開発された有人機らしい」

「これが有人機…?」

 

 禍々しい姿に引き気味にアルファを眺める金剛。

 

『一応ソウデス』

「喋ったヨ!?」

 

 見てて面白くなるぐらいいい反応するな。

 どっちかいったらこれが普通かもしんないけど。

 

「と、だ。

 アルファ、『バイドの切れ端』ってのはどんな形なんだ?」

『『バイドノ切レ端』ハ琥珀色ノ結晶状態ノバイドデス』

「だそうだ」

 

 『バイドの切れ端』の形を確認し、それを手に入れた経緯を尋ねる。

 

「その結晶はあの泊地で島風が見つけたネ。

 だけど、その後から島風はおかしくなったヨ」

「……そうか」

 

 おそらくその時に島風はバイドに汚染されたのだろう。

 そして、装甲空母ヲ級に敗れ完全にバイドと化してしまった。

 

「その泊地で何があったかは…」

「流石にこれ以上は提督の居ないところでは教えられないネ」

「そうか。

 なら仕方ない」

 

 ここは金剛の顔を立て追求はやめておく。

 しかしだ。期を見てだけどなるべく早めにあの泊地を調べておいたほうが良さそうだな。

 ともあれそれは後だ。

 

「ここがYou達の滞在場所ネ」

 

 そう案内されたのは宿舎の最奥の木の扉の前だった。

 

「扉ぐらいは鉄製だと思ってたんだが」

「深海棲艦が本気で暴れたら鉄なんて飴細工と同じネ」

 

 そうかもしれないけど、なんというかまるで体験談みたいな言い方だな。

 でも横須賀で初の鹵獲艦扱いされてたし、まあ気のせいだな。

 金剛が持っていた鍵を使って扉を開場すると、扉の向こうにあったのは特に変哲も無い普通の洋室だった。

 ただ、部屋の一角に急増で設置されたと思しき大型モニターが違和感を放ってるぐらいか。

 と、部屋を確認していると波動を介して直接意思を交換する念話をアルファが放って来た。

 

(御主人。

 盗聴器ト監視カメラガイクツカ設置サレテマスガドウシマスカ?)

 

 頭で考えれば伝わるらしいから秘匿回線としては便利なんだけど、筒抜けになりすぎるからあんまり使いたくないんだよな。

 っと、余計な事考えてないで本題本題。

 

(そのままにしておけ。

 聞かれて困るような事もそうは無いし、それぐらいされてなきゃ逆に落ち着かない)

 

 根の分からない信用を向けられるより監視されているとはっきりわかるほうがよっぽど安心出来るよ。

 そういう意味じゃ俺も大分染まってきてるなぁ。

 

(了解)

 

 そう言うとアルファは念話を切り沈黙する。

 その横であつみは不安そうに部屋を見渡しチビ姫は気に入ったのかソファーにダイブしてごろごろしている。

 

「気に入ってもらえましたデスカ?」

「中々にな」

 

 そう答えてから俺は違和感を放つモニターを尋ねる。

 

「それとして急拵えっぽいあれは?」

「あのMonitorはYouが提督と話しをするため用意したネ」

 

 そう言うと金剛はどこかに連絡をしてモニターの電源を入れた。

 画面が明るくなるとその向こうにゲームでもお馴染み青いクロスが敷かれたテーブルを前に執務室らしき場所が映し出された。

 

「向こうからも見えてるのか?」

「Yes。

 Monitorの上のCameraで相互に顔が見えるようにしているデス」

 

 金剛の答えにおれはモニターの正面に立つ。

 テーブルの備え付けの椅子に座っているのは50代ぐらいの初老の男。

 白い軍服に提督の帽子を被ってるし多分こいつがリンガの提督なのだろう。

 そう考えていると提督らしき男が口を開く。

 

「招待に応じて頂きまずは礼を言うべきだろうか?」

「いや、こちらこそ助かったと礼を言わせてもらうよ」

 

 どう接するべきか迷った風な提督に瑞鳳の件の感謝を告げておく。

 

「そうか。

 では改めてリンガ泊地の提督を任じている磐酒(いわさか)だ。

 階級は…言う意味がないな」

 

 そう自己紹介する磐酒に俺は返す。

 

「駆逐イ級。

 周りからは駆逐棲鬼とか言われているが、一応駆逐イ級だ」

 

 お前のような駆逐艦がいるかと何処からかツッコミが飛んで来た気もするが、それでも俺は駆逐イ級だと言い通す。

 

「本来なら直接顔を会わせるのが礼儀とは解っているが周りが許さなくてな」

「こちらは気にしていない。

 寧ろその判断が正しいと言わせてもらうよ」

 

 横須賀でも護衛付きとはいえ直接会いに来てたし、提督ってのは皆こんな感じなのか?

 

「ともあれだ。

 他の仲間に害を為さない限り、こちらから手を出す真似はしようとは思っていない」

 

 腹芸の心得なんて全くないから単刀直入にこちらの方針を告げておく。

 すると、何故か提督は微妙な顔をした。

 

「……念のために確認するが、それは同伴していた艦娘も含めてということで合っているか?」

「当たり前だ」

 

 普通に考えたら異常かもしれないが、俺の掲げる方針はホワイト鎮守府。

 明石と自分の巻き込まれ体質がブラック化を起こしてる気もしなくはないが、とにかく方針だけはホワイトでやっているのだ。

 だから扱いがどうこうはさておき、区別はあっても艦娘だ深海棲艦だバイドだだのと差別は仲間の間では認めない。

 

「……分かった」

 

 なにやらすごく困った様子で磐酒は言う。

 

「そちらが敵対行動を取らない限り、こちらからの攻撃は私の名誉に誓って行わせないと約束する」

 

 これでお互いに自分からは仕掛けないって言い切った訳だし、取り敢えずは安全の確保になったか?

 口頭だけだから反故にするのは簡単だけど、言い始めたらキリがないからな。

 で、これからどうなるんだ?

 

「ふむ。

 堅苦しいのはこのぐらいにしておこう」

 

 そう言うと磐酒は帽子を取り襟のボタンを外し緩める。

 

「提督、だらしないのはNOだヨ?」

「そう言うな金剛。

 時雨と不知火も無事に戻ってあの舐めた真似してくれたレ級も倒れたんだ。

 少しぐらい緩んだって罰は当たらないさ」

「会談中だって事が抜けてるネー」

 

 様子からしてこちらが素なんだろうか。

 

「どっちか言うとそっちのほうが気が楽で助かる」

「ほらな?

 相手もこう言ってるんだから普段通りにしてればいいんだよ」

 

 俺が正しいとそう言い張る磐酒に金剛が溜息を吐く。

 なんというか、最初のイメージと違って軍人らしくないというか随分軽いオッサンだな。

 

「横須賀の提督とは大違いだな」

「あいつは若い癖に堅物過ぎるんだよ」

 

 そう唇を尖らせるけど、オッサンがやっても不快にはならないが可愛くもなんともねえぞ。

 

「それはそうとだ。

 お前は横須賀に何をしに向かったんだ。

 青葉でさえ口外できない情報規制なんて初めてだぞ?」

 

 好奇心に押されるようにそう尋ねる磐酒。

 ……別に話しても構わないな。

 

「あきつ丸に頼まれたんだ。

 レイテに現れたあの装甲空母姫の成れの果ての危険性を伝えてくれってな」

「……」

 

 そう言うと磐酒と金剛の顔が苦渋に歪む。

 

「あの悪夢か」

「ああ。

 何の因果か誕生に立ち会ってな。

 あきつ丸を見殺しにするしか出来なかったよ」

 

 過ぎたことを悔やんでも仕方ないって解っているけど、どうしてあの時俺は、自分に『霧』の力が隠されていることに気付けなかったのか。

 そう今でも悔しく思っている。

 

「……そうか」

 

 さっきまでの軽さが消え磐酒は何かを堪えるようにそう声を搾り出す。

 そういえばリンガも島風の言いようから比叡以外にも何人も装甲空母ヲ級にやられていたんだよな。

 自分の迂闊さを内心舌打ちしつつ俺はどうせだから全部話すことにした。

 

「それと、ついでに横須賀が作った特攻兵器を全部壊してやったよ」

 

 俺の話に二人が絶句する。

 横須賀の提督の様子から多分再生産はしていないはずだし、それだけは胸を張ってやり遂げたと言い切れる。

 

「特攻…」

「兵器を…?」

 

 信じられないと呻く二人。

 

「ああ。

 今氷川丸が診ている瑞鳳は…いや、瑞鳳だけじゃない。

 北上も、此処には来ていないが千代田も特攻兵器を持たされて戦いを強要されたんだ」

 

 出会えた事には感謝している。

 だけど、それとこれとは話が別だ。

 

「鎮守府全てが悪いとは言わない。

 それに深海棲艦が現れたからそうなった事を棚上げもしない。

 だけど、北上達は特攻兵器を持たされて鎮守府を見限るぐらい苦しんだ。

 それだけは理解しておいてくれ」

 

 泊地に着いた時、深海棲艦に与する木曾達に殆どの艦娘が不快感を感じていたのが嫌でも分かった。

 顔にこそ出していないが金剛も理解できないとそう感じていたのだろう得心したという表情をしている。

 

「分かった。

 その件に関しては特秘事項として一切の吹聴を禁止させる。

 特に青葉、広めようとしたらそれだけで向こうへの宣戦布告と同意義であると胸に刻んでおけ」

 

 視線をずらしそう言う磐酒に解りましたと硬い声が返される。

 それはそれとして青葉は二時創作のまんまかよ。

 やりたくはないが今後は青葉だけは沈めることも考えなきゃいけないかもな。

 と、そんなことを考えていると磐酒が尋ねて来た。

 

「話は変わるが、沈んだはずの島風が姿を変えてそちらに居ると聞いているんだが本当なのか?」

「ああ。そ『おぅっ!』」

 

 自分の話と聞いた途端しまかぜが勝手に飛び出す。

 

「こらしまかぜ。

 勝手に出たらダメだろ」

『おぅ〜』

 

 そう叱るとしまかぜはしょんぼり肩を落とす。

 

『ぽいっ!』

『しれぇ!』

 

 しょんぼりしたしまかぜを慰めるためゆうだちとゆきかぜも出て来る。

 勿論勝手にである。

 

「それが島風なのか……?」

「ああ。

 冗談みたいな話だが島風の魂がそこに納められている。

 ちなみにこっちには夕立と雪風の魂が入ってる」

 

 二匹に慰められ立ち直ったのかパタパタ手を振って喜びを示すしまかぜ。

 

「……説明を求める」

 

 その様子に考えるのを諦めたのか磐酒は俺にそう頼んだ。

 

「ああ。

 こちらからも聞きたいことがあるしな。アルファ」

『ハイ』

 

 亜空間から再び姿を顕すアルファ。

 

「この機体はR戦闘機の一つ『バイドシステムγ』。

 バイドに汚染された島風を救い上げた俺の相棒だ」

 

 そう紹介をしてから、俺とアルファはバイドととの戦いの顛末を語り始めようとしたんだが…

 

「大変だよイ級!!」

 

 部屋の飛び込んできた北上に蹴り飛ばされ窓ガラスを突き破る羽目になった。

 




 シリアスになると思った?

 残念コメディー路線だよ。

 と言うことでリンガについてもトラブルはいっぱいです。

 次回は久しぶりに勘違い要素満載で

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