なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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上手く行くとも限らないわよねぇ。


とはいえ

「それで、姫はなんと?」

 

 心底付き合ってられないと言いたげに一応そう尋ねる戦艦棲姫に、見事なまでに半殺しという言葉が似合う姿で飛行場姫はむくれながら言う。

 

「どうもこうもないわ。

 問答無用で総攻撃叩き込まれて、気が付いたらもう逃げられたもの」

 

 そう憤慨する飛行場姫だが、当たり前だと戦艦棲姫は呆れる。

 

それ(・・)は姫の逆鱗だと分かっていたはずよね?

 前みたいに殺さなかっただけまだ理性的だったと褒めてあげたいぐらいよ」

 

 港湾棲姫が北方棲姫を身篭ったのは今から30年ほど前の事。

 その数年前に港湾棲姫はイベントの中核として海域戦を展開し、そして敗北後そのまま姿を消した。

 姫の失踪を見過ごせるはずもなく、どこに消えたのか人類との戦争の合間に捜索を続けていると数年後、港湾棲姫は突然その腕に生まれたばかりの北方棲姫を抱いた姿で舞い戻って来た。

 当然何があったのか問い質しはしたが、港湾棲姫は過ちを犯したとそれ以上は語らなかった。

 港湾棲姫に対し『総意』は任にも戻るなら一切の責を問わないとしたため、港湾棲姫は赤子であった北方棲姫を戦艦棲姫に預け海域支配者としての任に戻った。

 そして飛行場姫は好奇心から港湾棲姫がひた隠しにしようとした過去を暴いた。

 そして姿を消していた間、港湾棲姫がある人間と情を結んでいたと知り得たのだ。

 

「別にいいじゃない。

 恥じるような過去でもないんだし」

 

 身を辱められた末の望まぬ結果だったというなら流石に自重したと述べ唇を尖らせる飛行場姫だが、戦艦棲姫はそうではないと溜息を吐く。

 事実を知った飛行場姫が、人と深海棲艦が交わることが出来ると知れ渡れば必ず楽しくなると面白がって触れ回ろうとしたため港湾棲姫は激昂では済まないレベルで怒り狂い、広められる前に飛行場姫を消し去ろうと本気で殺しに掛かったのだ。

 その勢いは多くの艦を巻き込むほど凄まじく、やられたままで腹が収まるかとキレた飛行場姫とその旗下の艦同士までがぶつかり合うまでに発展。

 最終的にその規模は深海棲艦同士での全面戦争勃発の危機さえ考えねばならないほどに激しいものに拡大した。

 それを当時まだ現役だった装甲空母姫を合わせた他の姫が四人掛かりで押さえ込んだ事を思い出し、またあれの相手をするぐらいなら駆逐棲鬼とやり合うほうがまだマシだと戦艦棲姫は本気で思う。

 

「とにかく、恥であるかどうかより隠しておきたいとした事を暴いたことが問題よ」

「素敵な事だと思うんだけどなぁ」

「だったらまずは自分で相手を作ってきなさい」

 

 それが出来たら苦労しないわと文句を垂れる飛行場姫。

 確かに人類の天敵である深海棲艦の、それも首魁とさえ言える姫を本気で愛そうと考える人間などそうはいない。

 仮に居たとして、それが眼鏡に適う相手である保証もない。

 

「まあ、見付けたとしても貴女と付き合うのは無理ね」

「なんでよ?」

「貴女の行動に付いていける人間がいるとは思わないもの」

 

 恋は人を変えるとはよく言うが、飛行場姫が恋をしようとその振る舞いを自重するとは考えられない。

 それに、万が一飛行場姫がおしとやかになられても、彼女を知る者からしたら何を企んでいるかと戦々恐々するだろう。

 

「信用ないわね」

「あると思ってるの?」

「それもそうね」

 

 そう苦笑しつつアイスを食べる飛行場姫。

 その様子に愚痴も終わっただろうと戦艦棲姫は言う。

 

「そもそも、何故私のところに来るのかしら?」

 

 姫同士が顔を合わせる時は定期会合以外だと他の姫までがわざわざ戦艦棲姫の武蔵にやってくる。

 その度に一々茶を出す自分も自分なんだろうが、他所でやれとそう思うのだ。

 戦艦棲姫の問いに飛行場姫はアイスを嚥下し嘯く。

 

「だって、ここのお茶とアイスが1番美味しいんだもん」

 

 どうやら他の姫も含めたかりが目的だったようだ。

 

「帰れ」

「冗談よ。

 出される物が美味しいのは本当だけどね」

 

 まったくと毒吐きたくなる戦艦棲姫に、ふと今更ながら気になった飛行場姫が尋ねる。

 

「そういえばさ、このアイスなんでこんなに味を良くしたの?」

 

 燃料由来のアイスの味の向上なんて時間が掛かるばかりでそれほど追求する必要もないだろうにと今更ながらそう尋ねると、戦艦棲姫は少し懐かしそうに言う。

 

「姫がね、それしか食べなかったのよ」

 

 預けられた当初、赤子であった北方棲姫は深海棲艦や艦娘同様に燃料や弾薬で身を保てることは分かっていたが、そのままでは食べられないので仕方なく戦艦棲姫は資材をアイスに加工して与えようと試みた。

 しかし味が気に入らないと食べてくれず、北方棲姫が気に入る味を模索せざるを選なかったのだ。

 そのおかげで無駄に向上しまくったアイスは北方棲姫が普通に燃料を食べるようになった後も、『深海の間宮アイス』または『姫アイス』と他の姫を含む多くの艦達の憧れの的となり、いつしかやめるにやめれなくなったのだ。

 

「今更味を落とすのもなんだから続けてるけど、正直言うと作るだけ赤字になるのよね」

 

 採算なんて考える必要もないのだけどと言うので興味を惹かれた飛行場姫は価格を尋ねてみる。

 

「だいたいアイス一キロ作るのに数ガロンの燃料を消費するわ」

「うわぁ」

 

 半端ではないパフォーマンスの悪さに珍しく絶句する飛行場姫。

 

「それで、本当の理由は?」

 

 はぐらかしはさせないとそう切り込む戦艦棲姫。

 ごまかせはしなかったかと飛行場姫は肩を竦め言う。

 

「理由は三つ。

 一つは貴女が次のイベントに出るのかどうか動向を伺ってたって事」

 

 『総意』はイベントの多くで戦艦棲姫を重用している。

 理由は強敵とあれば猪の如く突っ込んでしまう南方棲戦姫や出るとなれば徹底的に一切の加減も無く暴れ回る飛行場姫と違い、戦艦棲姫は常に彼我戦力を把握して可能な限り戦線を維持し人類を消耗させながらも撤退に踏み切らせない程度に不利な状況を維持するさじ加減が絶妙な程上手いからだ。

 そのため重要な場所には大体彼女が赴くのが通例となっており、戦艦棲姫が出るということはそのイベントが長引くということでもある。

 そのため武蔵に戦艦棲姫がいるか機会があればわざわざ確かめに来ていたのだ。

 

「二つ目はなんだかんだて皆姫を気にしてたからよ」

 

 そう言われれば戦艦棲姫にも思い当たる節はあった。

 南方棲戦姫は土産と称し大量の燃料を持参していたし、装甲空母姫は姫にと艦娘の艦載機を置いて行った。

 離島棲鬼はもう着ないからと服をあげていたし泊地棲姫もあまり表情は変わらないが本を読んでやっていたことがある。

 そうでなかったのは会わないと意地を張っていた港湾棲姫と自由な飛行場姫ぐらいである。

 港湾棲姫は顔を合わせるたびに様子を聞いて来たのは娘だからと納得していたが、まさか他の姫も北方棲姫を気にかけていたとは思わなかった。

 何で今まで気付かなかったのかといえば、ただ雑談して帰るなんて真似までする飛行場姫が圧倒的に来る回数が多いからだ。

 

「貴女のインパクトが強すぎて気付かなかったわ」

 

 土産を持参するでも構うでもなくただ来てはアイスを食べて帰るを繰り返す飛行場姫が悪いとそう言う戦艦棲姫。

 

「ひっどいわねぇ」

 

 否定はせず苦笑する飛行場姫。

 そんな様子に構わず戦艦棲姫は最後の理由を尋ねる。

 

「それで、最後の一つは?」

 

 やっぱりアイスが目的だと言うだろうなとそう考えていた戦艦棲姫だが、

 

「ここって、落ち着くのよね」

「は?」

「ほらさ、なんだかんだ言っても姫はちゃんと愚痴とか付き合ってくれるし、相談すればなんか言ってくれるしって頼りにしちゃうのよね。

 敢えて例えるならお艦みたいな?」

 

 戦艦棲姫からすれば長々居座られたくないから聞き役に徹し、手短に済ますためアドバイスしていただけなのだが、どうやらそれがいけなかったようだ。

 

「誕生順に言えば貴女や姫のほうが年上なんだけど…?」

 

 戦艦棲姫が誕生して50年、飛行場姫はその一年前に誕生している。

 最古の姫である装甲空母姫と泊地棲姫は更に20年程前に誕生した。

 現在は装甲空母姫は消え新たな姫も生まれたが、イレギュラーな北方棲姫を除けば下から二番目の年少組の姫なのにと軽く黄昏れる戦艦棲姫。

 

「そこはそれよ。

 艦娘でいうところの雷みたいな?」

「あれと同ベクトル…」

 

 深海棲艦からも駄目提督製造機と名高い雷と同じと言われますます落ち込んでしまう。

 

「ふふ、さしずめ私はダメ姫製造機といったところかしら?」

「褒めたつもりなんだけどなぁ」

 

 包容力があるとそう例に挙げたつもりが違うように受け取られたらしい。

 

「まあいいじゃない。

 どこぞの軽空母みたいに母を通り越しておばあちゃんみたいに思われるよりはさ」

 

 ねえと、無自覚に地雷を踏み込む飛行場姫。

 

「おばちゃん」

「……」

 

 直後、がしりと戦艦棲姫の艤装が飛行場姫の頭を掴む。

 

「え゛?」

 

 ぐるぐると喉を鳴らしいかにも臨戦体勢といった様子の艤装に嫌な予感を走らせる飛行場姫の前にゆらりと立ち塞がる戦艦棲姫。

 

「え〜と…」

「それを何処で聞いていたのかはっきりさせておく必要があるわね」

 

 夜戦BGMをバックに本気モードで立つ戦艦棲姫。

 

「いやそれはね…と、そうだ!?

 あの戦いで航空戦艦の防御劈が最初は効果を発揮してたのに急に無力化したのは気になったのよね!!」

 

 必死に話題を逸らそうと苦肉の策として持ち出した疑問に戦艦棲姫は律義に答える。

 

「何も疑問に思う必要なんてないわ。

 駆逐はいかなる力も地力無くして手繰る由は無いと身を鍛える事を怠りはしなかった。

 どれほど強力な力も、それを奮う者の質が悪ければすぐに覆されるは自明の利よ」

 

 そう述べるともう話はおしまいよと艤装に宙ぶらりんにされ抵抗を奪われた飛行場姫に最後通告を出す。

 

「いやだから「ああでもその前に」」

 

 なおも足掻いて弁明しようとした飛行場姫を遮り、戦艦棲姫はにっこり笑う。

 

「口は災いの元という言葉を骨身に刻んでもらいましょう」

 

 これは私のキャラじゃないわああああと叫ぶ飛行場姫の悲鳴が海底によく響き渡った。

 

 

〜〜〜〜

 

 

「それじゃあ行ってくる」

 

 瑞鳳を治療するためリンガへと向かう者と帰る者に別れ、帰る艦を率いてもらう千代田にそう言う。

 

「あ、そうだ」

 

 と、そこで古鷹が何かを取り出す。

 

「捨て置くのもどうかと思って回収したんですが、どうしましょうこれ?」

 

 そう言いながら取り出したのは、古鷹がサイクロンフォースでぶった切ったレ級の尻尾だった。

 

「なんで拾ってんだよ!?」

 

 開いた口からだらりと舌が伸びてる様なんか軽くホラーで使えそうなぐらいグロいんだけど!?

 

「いえ、捨て置いても海に迷惑掛かりそうなんでつい」

「それはすごく納得出来るけどね!」

 

 あんな奴の残骸なんてこの世界に置いておくだけ害としか思わないよ。

 だけどさ、だからってどうしろと?

 

「アネゴノシュウフクニタベチャエバ?」

「えー…」

 

 これ(・・)を食べるの?

 

「なんか腹壊しそうなんだけど…」

「かといって資材の足しに解体しても使いたくないし、誤って食用の分に混ざったら困るしねえ…」

『フォースノ餌ニモシタクハアリマセンシ…』

 

 そう明後日の方向を見る明石とアルファ。

 散々な言われようだけどさ、それってつまり俺に処分しろって事だよね?

 

「……しゃあない。

 こっちに寄越せ」

 

 だけどまあ、あつみや尊氏なんかに食わせるのも嫌だしそれしかないか。

 

「ごめんね」

 

 そう言いながら尻尾を渡す古鷹。

 まじまじ見るとグロさがよく目立つなこれ。

 

「……よし」

 

 向こうを待たすのも良くないし、意を決してがぶりとかみ砕く。

 一口食ってみたその感想は意外と柔らかかった事と、

 

「すんげえマズイ」

 

 腐った桃より酷いとかどうなんだよ。

 俺の感想に興味を持ったらしく血だかオイルだか分からない体液を舐めてまずそうな顔をするりっちゃん。

 

「ホントニマズイ。

 フツウノコウクウセンカンハオイシインダケドナァ…」

 

 つうか食った事あるのか?

 流石りっちゃん。

 普段は目立たないけどフラリ改は伊達じゃないな。

 

「因みにりっちゃん的ランキングは?」

 

 まずさを紛らわすついでにそう聞いてみる。

 

「コジンテキニイチバンハエリートノユソウカシラ」

「おい」

 

 今のであつみがガクブルし始めてるじゃないか。

 

「ワ、私ハ美味シクナイヨ?」

「アナタハタベナイワヨ」

 

 必死にアピールするあつみに苦笑するりっちゃん。

 

「アトハソウネ、クセガアルケドエリートノケイボモイイワネ」

「わざとか?

 わざといってるのかりっちゃん!?」

 

 なんでそうピンポイントで仲間に居るのが好みに入ってんだよ!?

 

「ちなみにイ級は?」

 

 何聞いてんだよ明石!?

 

「……アエテイウナラメザシ?」

 

 すごく頑張って感想を出した様子で述べるりっちゃん。

 腹の足しにならないってそう言いたいのか?

 

「強く生きてねイ級」

「別にショックでもなんでもねえよ!?」

 

 つうかこんな事を慰めんなよ千代田!?

 

「ったく、聞かなきゃよかった」

 

 あつみはまだガクブルしているせいでノー・チェイサー達が守ろうと波動砲のチャージ始めてるし。

 とはいえいつの間にか尻尾も大分処理できた。

 これ以上まずいのを食いたくないので鼻を摘んだつもりで最後の一口を丸呑みにする。

 

「あー、まずかった」

「はい。口直しの燃料」

 

 いつの間にか好物と認定されたイチゴミルク味の燃料を差し出してくる千代田。

 

「サンキュー」

 

 受け取り蓋を開けようとすると、なんか歯の奥に違和感があることに気付いた。

 

「どうしたの?」

「歯の奥になん…」

 

 そう言いかけた俺の口が突然内側から開く。

 

「ぷはー!?

 やっとお外に出られました!!」

 

 俺の口を開きながら何者かがそう言う。

 いろいろと言いたいけど、取り敢えず喋れないから手を離せや!?

 

「貴女は誰!?」

 

 そう言いながら俺に義手を突き付ける古鷹。

 状況的にしょうがないのかもしれないけど危ねえからやめて!?

 とはいえ思い当たるとすればさっきの尻尾ぐらいしかなく、だとすればレ級の下僕の可能性が高い。

 俺の口を押さえている何者かは口の中から飛び出すと俺の前にその姿を現す。

 

「初めまして!!

 私、陽菜(ヒナ)って言います!!

 人類を救済するために生み出されたエレメンタル・ドーターなんですよ!」

 

 そう無邪気に自己紹介をする陽菜と名乗る全長1メートルぐらいの少女。

 背中から羽が生えてたり緑色の花をモチーフにしたようなフレアドレスとかなんとなくピクシーとかフェアリー的な妖精を彷彿とさせるんだけど…

 

「人類を救済って嫌な予感がするんだよね…」

『明ラカニバイドノ救済ト同ベクトルノ気配ガシマス』

「このタイミングでまた?

 つくづくイ級は間が悪いよね」

「ホントヨネ」

 

 声を潜めてそういうけどバッチリ聞こえてんぞおい。

 島に行く前にまた大ピンチかよ!?

 いや、まだそうと決まったわけじゃない!!

 微かな希望に縋り俺は尋ねてみる。

 

「救済って、どうやるんだ?」

「それなんですが…」

 

 質問に陽菜は困った様子で肩を落とす。

 

「どうしたら皆が幸せになるかまだ分からないのです。

 だけど諦めません!!

 私は必ず人類全てが幸せになる方法を見つけて見せます!!」

 

 肩を落としたと思ったらいきなり立ち直る陽菜。

 

「…そっか」

 

 取り敢えず即座の難は避けれた様子。

 下手に事態をややこしくしてたまるかと俺は一気に畳み掛ける事にする。

 

「だったら俺達と来ないか?

 俺達も一緒に考えてやるからさ」

「本当ですか!?」

 

 そう誘うと陽菜はお日様のような笑顔を花開かせる。

 

「ありがとうございます!!

 私、頑張りますね!!」

「うんうん。一緒に頑張ろうね」

 

 これで最悪は避けた!

 後で大惨事になったとしても今は瑞鳳が大事だからその時はその時だ。

 

「イ級って、何気でタラシだよね」

「普段は鈍感な癖にね」

「アアイウノガイチバンタチガワルイノヨ」

 

 後ろがなんか言ってるけど気にしないからな。

 

「取り敢えず俺達はこれから用事があって行かなきゃいけないところがあるから、あっちに付いていってくれ」

 

 そう千代田に押し付ける。

 

「え゛!?

 それよりもここは私達を取り巻く環境を解りやすく理解してもらうためにもリーダーに着いていくのがいいと思うなぁ」

 

 千代田に押し付けようとしたら逆に突き返してきやがった。

 

「いやいや。

 まずはゆっくり落ち着いてもらってだな」

「いいえ。

 それよりも状況把握が先よ」

 

 これ以上の問題は受け持ちたくないと俺と千代田は互いに押し付け合い続けるも、すぐに結論が出る。

 

「……やっぱりさ」

「……そうよね」

 

 装填された弾薬を演習弾に入れ替え俺達は互いに距離を取る。

 

「「勝った方の意見を採用する!!」」

 

 力こそ正義。

 戦わなければ生き残れないのだ。

 

「行くぞアルファ!!」

『ヤレヤレ…』

「千代田艦載機、発艦!!

 今日こそアルファを倒すのよミッドナイト・アイ!!」

 

 俺達の命を受けてアルファとミッドナイト・アイがドッグファイトを始め千代田は更に北上から下がった甲標的をぶん投げる。

 

「よく狙って…発射!!」

「甘い!!」

 

 爆雷を落とし放たれた魚雷を防ぐと俺はファランクスを千代田に向ける。

 それに合わせて千代田も単装砲を俺に構える。

 

「機銃で抜けるほど千代田の装甲は薄くないんだから!!」

「そっちこそ夕張型より分厚い俺の装甲を単装砲で抜けると」

 

 互いに必中を狙い仰角を合わせていると怒鳴り声が無理矢理中断させた。

 

「二人とも何をやっているんだ!?」

 

 痺れを切らしたらしく戻って来た木曾に怒られてしまった。

 

「仲間割れしている暇なんて無いだろうが!?」

「う…」

「それは…」

 

 至極真っ当な木曾の言葉に俺達は言い訳も出来なくなってしまう。

 そこに北上がフォローに入ってくれた。

 

「まあまあ落ち着きなよ。

 二人がやり合うなんて余程なんだからさ」

 

 そうなんでしょ? と促す北上に簡潔に事情を述べる。

 

「レ級の尻尾からなんか出てきたんでどっちが預かるかでつい熱くなってな」

「なんかってあれか?」

 

 そうあつみの艤装に座り膝をぶらぶらさせる陽菜を指す。

 どうやら陽菜はあつみが気に入った様子。

 

「うん。

 なんか放置するのはやばそうなんで取り敢えず引き込んだ」

「取り敢えずがスカウトってイ級も大概だよね」

 

 うっさい。

 説明に納得してくれたのか木曾はやれやれと溜息を吐く。

 

「だったら戦力が集中しているこっちに着いていかせるべきだな」

「えー…」

 

 これから泊地に行くってのに爆弾抱えるの?

 後、後ろ手に千代田がガッツポーズ取ってるのが地味にムカつく。

 

「責任取りなよリーダー?」

 

 にやにや笑う北上に俺ははぁと溜息を吐くしか出来なかった。




 ちうことでサブキャラとして陽菜が仲間になりました。

 先に言っとくと陽蜂モードにならないと戦闘では役に立ちませんので現状ただのマスコットです。

 あと誰も気にしてないけどイ級は中破まで回復してます。

 次回は泊地から始まります。

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