なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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思いっきり冤罪だった件について。



呼ばれた気がしたんだが・・・

 立て続けに放たれる砲弾と機銃の雨にレ級の身体が吹っ飛ばされた。

 

「どうなってんだ糞が!?」

 

 直撃はATフィールドが阻みながらも何故自分が後退させられているのかレ級は理解出来ないまま吠えるも、イ級はそれを一瞥だけしてから上空に視線を上げる。

 上空ではまるでふぐ刺しのような芸術的弾幕を展開し物量で押し潰そうとする緋蜂に対しR戦闘機達が戦っていた。

 フォースを使い安定した回避を行うアルファ。

 弾幕より速く飛ぶことで楽々と隙間を擦り抜けるノー・チェイサー。

 死中の活を見逃さず危なげながらも耐えるドミニオン。

 何故かたまに当たっているようにしか見えないのに無傷でやり過ごしているスコープ・ダック。

 そんな四機の状態を確認してからイ級は冷え切った声でしまかぜ達に告げる。

 

「そのまま押さえてろ」

『おうっ!!』

 

 応じながらも砲弾の雨を叩き込み、前に出ようとするレ級を封じ込めているのを確認してからイ級は木曾達の下に向かう。

 

「イ級…」

 

 黒いオーラを全身から揺らめ立ち上らせるイ級の姿にぞくりと恐怖が走ってしまう。

 そんな様子にイ級は少し離れた所で止まるとゆっくり全員の姿を確認し、そして言葉を発した。

 

「ごめんなさい」

「イ級?」

 

 唐突な謝罪に戸惑うもイ級は静かに告げる。

 

「俺が浅はかだったからお前達をそんな姿にさせてしまった。

 償いは後で必ず果たす。

 だから少し待っていてくれ」

 

 そう言ってイ級はレ級の方に向き直る。

 

「待てよ」

 

 おかしい。

 イ級が本当に悔やんでいるのはよく分かった。 だが、今のイ級はなにかがおかしいと木曾は感じた。

 今此処で引き止めなければ絶対後悔するとそう必死で呼び掛ける木曾にイ級は振り向かず、砲撃の雨にどんどん放れていくレ級に向かって行ってしまう。

 

「この、待てって言ってるだろ!?」

 

 追い掛けようとした木曾だが、あつみの手が木曾を阻む。

 

「放してくれあつみ!!??」

「今ハ瑞鳳ガ先ダヨ!!」

「っ…!?」

 

 一命を取り留めた瑞鳳だが危険な状態は続いている。

 瑞鳳の治療のため氷川丸を呼びに超長距離航行可能なストライダーを向かわせた木曾も動くわけにはいかないのだ。

 

「クソッ!!

 結局俺は…」

 

 肝心な時に見送るしか出来ず、悔しさに唸る事しか出来ない己を恥じる木曾。

 反撃もままならず後退させられ続けるレ級を眺めながら、イ級は落ち着ききった己を冷静に観察していた。

 それが怒りという感情が限界を超え、逆に静かになってしまったからだと気付く。

 例えるなら、津波の前の凪いだ海か。

 決して近寄ってはならない災厄の前触れ。

 自身が纏う黒い陽炎はその警告なのかもしれないなと思ったイ級はそれは言い過ぎかと内心で笑い飛ばししまかぜ達に命じる。

 

「ご苦労様。もういいぞ」

 

 そうレ級を牽制するしまかぜ達を労うと砲撃が終わり早速使った分の弾を要求する。

 受け渡しを妖精さんに任せレ級を見ると、レ級はキレた様子でイ級を睨みつけていた。

 

「……」

「……」

 

 どう甚振ってやろうかと睨み付けるレ級にイ級は感情が凪いだまま。

 しばしの無言の後、イ級はぽつりと言葉を放つ。

 

「何が楽しいんだ?」

「……あん?」

 

 何も浮かばないというより、何を考えてあんな真似(・・・・・)が出来たのかイ級には理解出来ず質問していた。

 装甲空母ヲ級の暴虐は信長を助けたかった装甲空母姫の暴走が原因だった。

 バイドから始まった島風達の争乱は救いを求めた歎きの発露だった。

 認めたくはないがあの大和だって歪み狂っていたがそれも提督に必要とされたいという想いから始まっている。

 艦娘は人類が海を取り戻すため、深海棲艦は人類に海を明け渡さないため、それぞれが己の意志で戦っている。

 この海で戦う誰もが強い想いを胸に抱いて戦っていると、イ級はこれまでずっとそう感じていた。

 だけど、こいつにはそういった強い意志を感じられない。

 だから、それだけがイ級は気になった。

 

「なんのためだぁ?

 ハッ、ねえよ目的なんてもんはな」

 

 イ級の問いをレ級は馬鹿にした態度で吐き捨てる。

 

「俺はただテメエラを潰したらどんな顔をするか見てみたいだけだよ。

 あえて言うならそうだな、暇潰しだよ」

「……」

 

 レ級の嘲笑にイ級は何も感じない。

 それを怒りで絶句していると勘違いしたレ級は更に調子に乗って饒舌に詰る。

 

「大体さ、艦これってひっでえクソゲーじゃねえか。

 金使っても全然強くならねえとかソシャゲー舐めてんの?

 しかもスマホでやってたら垢BANするとか今時ありえねえ。

 あんななら二、三百万ぶち込めば簡単にトップ取れるモバマスのほうがよっぽど神ゲーだな」

「……」

 

 艦これのシステムそのものを批難するレ級にイ級はやはり感情が揺らぐことはなく、ふとどうでもいい疑問を投げ掛ける。

 

「その金は自分で稼いだものか?」

「馬鹿じゃねえのテメエ?」

 

 本当にどうでもいいと思う問いに本気で馬鹿にしたようにレ級は言う。

 

「たかだかゲームに自分の金使うとか頭おかしくね?

 んなもん親の金に決まってんじゃねえか。

 親は子供を扶養する義務があんだから金を出すのは当然だろうが」

「……」

 

 最初から見下げていたが、今の台詞でイ級はこいつに一切の関心を失った。

 そうしてレ級に対し残ったものは…邪魔な小石を蹴飛ばそうという程度の軽い感覚だった。

 

「…そうか」

 

 イ級の反応に飽きたレ級は調子に乗ったまま尻尾の砲をイ級に向ける。

 

「つう訳でさっさとくたばれよ。

 テメエの死体をあの雑魚共に見せたらどんな反応するか見てみたいんだからよ…」

 

 完全に調子に乗っていたレ級が次に見たのは自分の顔面に振り回されたイ級の尻尾だった。

 ゴッ、と凄まじい殴打音と同時にレ級の身体が吹っ飛ぶ。

 

「…は?」

 

 ATフィールドに守られた自分がなんで張り倒されたのか理解できず間の抜けた声を出したレ級の口にファランクスの砲身が捩込まれる。

 

「ゴッ!?」

「今のは霧島の分だ」

 

 直後ファランクスが分速2000発の弾幕をレ級の口の中に叩き込む。

 猛然と吐き出される弾幕は不思議な事にレ級の頭を吹き飛ばすことが出来ないものの、イ級はこの程度で終わってもらっては全員分の借りを返せなくてこちらが困ると都合がいいと思うことにする。

 

「こいつは不知火と時雨の分な」

 

 そう言いながらクラインフィールドを推進機代わりに縦に回転して顎を叩き上げ、口の中に一杯になった弾丸を無理矢理かみ砕かせる。

 

「&#■!?」

 

 ファランクスの回転で削られ更に無理矢理噛み合わされ砕けた歯がボロボロと毀れ落ち形容ならない悲鳴を上げるレ級。

 僅かに跳ね上がったレ級にイ級は更なる追撃を加える。

 念力で掴んだ爆雷を鳩尾に叩き付け零距離で爆破。

 

「ガァ!?」

「これは鳳翔の分」

 

 しまかぜ達の弾薬を詰めていたドラム缶を頭に被せ真上からファランクスでブッ叩く。

 

「グアッ!?」

「こいつは尊氏の分」

 

 反響する音に悶絶するレ級の脇腹にファランクスの砲身をこん棒代わりに叩き込む。

 

「お…」

「北上の分」

 

 そこでレ級がようやく反撃に移る。

 

「調子こいてんじゃねえ!!??」

 

 ドラム缶を引き剥がし尻尾で殴り掛かるレ級だが、イ級はクラインフィールドを錐状に尖らせ貫き受け止める。

 

「ギッ!?」

「古鷹の分」

 

 枝葉を伸ばす感覚でクラインフィールドを突き刺した内側から伸ばす。

 

「ギャアッ!!??」

 

 内側から刻まれる未知の激痛に奇妙な悲鳴を上げるレ級。

 そんな姿に何も感じないままイ級はクラインフィールドを一時解き再び球体状に構築すると射出してレ級の顔面に叩き付ける。

 

「ゴァッ!?」

「木曾の分」

 

 鼻血を噴いてのけ反るレ級にイ級は更に射出したクラインフィールドをパチンコ弾程の大きさに細分化して何度も叩き込む。

 

「チビ姫の分」

 

 一方的に滅多打ちにされたレ級が目茶苦茶に喚く。

 

「クソ!!?? クソクソクソ!!??

 なんでATフィールドが効いてねえんだ!!??」

 

 餓鬼のように喚き、雲蚊のように群がるクラインフィールドの弾幕を必死に振り払おうと目茶苦茶に暴れるレ級。

 しかしイ級は一切構わず叩き付けながら呟く。

 

「…まだ終わらないのか」

「テメエ!!??」

 

 滅多打ちにされながら喚くレ級をしぶといとしか思わないイ級は淡々と次の借りを誰にするかと考える。

 

「そろそろあつみと瑞鳳の分はどうするか考えとかないと。

 超重力砲なら合うだろうけどコレ(・・)にダメコン使うのもなぁ…」

 

 もはや一方的というのも生温い、玩弄とさえ言える私刑をまるで見向きもせず続けるイ級に北上が呟く。

 

あれ(・・)…誰?」

 

 自分達がいつも見て来たイ級とは思えない冷酷な姿にレ級への怒りよりも不安が大きくなっていた。

 しかも、その不安を確かなものとするかのようにイ級の纏う黒いオーラは更に濃くなり、徐々にだがイ級の姿を覆い隠そうとしていた。

 あのままやらせ続けてはいけないと誰もが今のイ級を止めなければいけないと思っていた。

 だけど、黒く濁っていくイ級を見るだけで足が竦み、前に出る勇気を根こそぎ削られてしまう。

 こんなにも自分達は臆病だったのかと鳳翔さえ戸惑うなか、古鷹が春雨の様子がおかしい事に気付く。

 

「春雨…?」

 

 春雨はまるで食い入るようにイ級を見ていたかと思うと唐突に口を開いた。

 

「……ダメ」

 

 その目から虚ろさが消え、何かに縋るような悲しさが宿っていた。

 

「そっちにいっちゃ、ダメなの。

 行ってしまったら…もう…帰って来れなくなる…」

 

 突然喋りだした春雨に戸惑いながらも古鷹が問いを投げる。

 

「彼女に何が起きてるか解るの?」

 

 まるで自分がそうだったかのように紡ぐ春雨に問うと、春雨は首を横に振る。

 

「私とあの娘は違う。

 だけど、あのままじゃきっと私と同じ(・・・・)になってしまう」

「同じに?」

 

 そもそも深海棲艦であるイ級が深海棲艦に成り果ててしまった春雨と同じになると言われてもどうなるか想像も付かないが、少なくともそれが良いことではないことは確かだ。

 

「だが、どうやって止めればいいんだ!?」

 

 既に木曾の言葉すら届かない状態のイ級を誰が止められるというのか?

 悔しさに歯を軋ませる木曾に春雨は言った。

 

「私が行きます」

「デモ、春雨ハ…」

 

 艤装に組み込まれた深海棲艦の補助無しでは海を航海することさえままならない身。

 もし、あのレ級の反撃を受けたらどうなるか。

 心配するあつみの言葉に春雨は言う。

 

「今の彼女に普通の艦娘や深海棲艦が近付くだけでも危ないんです。

 でも、どちらでもない私なら少しの間なら耐えられます。

 だから、私にやらせてください」

 

 お願いしますとそう頼み込む春雨。

 

「わかりました」

 

 最初にそう許諾したのは鳳翔だった。

 

「正気なの?」

 

 分の悪いどころか大博打に等しい賭を春雨に託そうという鳳翔に懸念を向ける北上。

 

「あのまま放置しては最悪、私達の手で介錯しなければならなくなるやもしれません。

 ならば、少しでも可能性があるならそれに賭けるべきではないですか?」

「そりゃまあ…そうだねぇ」

 

 最悪の最悪はあのまま放置した結果、イ級があの装甲空母ヲ級のように見境を無くし自分達すら分からなくなることだ。

 そうなれば勝ち目云々以前の話になってしまう。

 それに、助けに行こうにも瑞鳳の救助で動けない自分達にどうこうする手段は無い。

 

「春雨、頼む。

 あいつを連れ戻してくれ」

 

 なんで自分じゃないのかと悔しく思いながら木曾は一縷の望を春雨に託す。

 

「フルタカ、アネゴトハルサメヲオネガイ」

 

 そしてバイドに汚染された古鷹なら抵抗も強いはずとイ級を連れ戻すため向かうことになる。

 

「ええ。行きましょう春雨!」

「はい!!」

 

 二人は反転し急ぎイ級の下に急行する。

 次の借りを返すためクラインフィールドを解除したイ級はレ級の姿に軽くごちる。

 

「なんだ、まだ中破にもならないのか」

 

 どうでもいいとばかりに言われレ級はぶちギレながら吠える。

 

「テメエェ…調子こくのもいい加減にしろよ!!??」

 

 幾度となく殴打され痣だらけになりながらレ級はキレたままグラビトロンカノンを叩き込む。

 

「ブッ潰れろ!!??」

 

 本来なら超重力により圧壊させる兵器なのだが、劣化したそれは広域に重力の檻を展開する程度にしかならない。

 しかしそれでも十分脅威たる兵器なのだが…重力の檻はイ級を搦め捕る事は出来なかった。

 

「なにやってんだ?」

「はぁ!!??」

 

 意に解したどころか何が起きたかさえ気付いていないイ級にレ級は怒鳴り散らす。

 

「テメエどんなチート使ってやがる!!??

 ATフィールドを貫通させた上にグランゾンのグラビトンカノンが効かねえなんてありえねえだろうが!!??」

 

 艦娘達に無双し続けて来た己のチートが効かない事に、反則野郎と詰るレ級。

 一方イ級はレ級の言葉から何故自分が無効化出来ているのかその意味を考え、そして気付く。

 

「……ああ、成程」

 

 どうして効かないのか理解したイ級はどうでもいいことだなと本気でそう思った。

 そんな態度にレ級は更にキレる。

 

「何勝手に納得してんだテメエ!!??」

「……まあいいか」

 

 別に説明する義理もないと思うイ級だが、五月蝿いので教えてやることにした。

 

「お前さあ、勘違いしてるぞ」

「はぁ?」

「確かにATフィールドもグランゾンも強力だろうけどさ、どっちも使い手依存の力(・・・・・・・・・)じゃないか」

 

 グランゾンは確かに世界を七日で焦土とするだけのスペックがあるという設定だが、それは凄まじい潜在能力を持つ主人公が搭乗した際の話であり、実際作中も使い手にそれだけの能力を求める機体として描かれている。

 そしてATフィールドに関しては言わずもがな。

 そもATフィールドは人間なら誰でも持っている精神防壁だ。

 原作設定通りならどれだけ相手を拒絶しているかでその硬度は上がる性質を持ち、こちらこそ使い手の精神状態がその性能を左右する。

 しかも今のレ級は錯乱状態も同じ。

 そんな状態の者のATフィールドの硬度等考えるまでも無い。

 

「つまるところだ。

 お前のチートが効かないのは単にお前が弱いからだ」

「……んだとぉ?」

 

 今殴り掛かっても返り討ちにされるだけだと、ぶちぶちと血管が切れる音を聞きながらレ級は理性を総動員し問いを発する。

 

「つまりあれか?

 テメエは俺より格上だってそう言いたいのか?」

「別に。

 ただの事実だ」

 

 その台詞を歯牙にもかけていないと、そう受け取ったレ級はぶちんと完全にキレる。

 

「ざっけんじゃねぇぇぇええええ!!??」

 

 尻尾を振り回し目茶苦茶に砲撃を始めるレ級。

 めたらやたらに降り注ぐ砲弾を最小限の機動で躱しながらしまかぜ達に命じる。

 

「九三式酸素魚雷発射用意」

『おうっ!!』

『ぽぃっ!!』

『しれぇ!!』

 

 指示にそれぞれのお腹が開きゆきかぜの四連装酸素魚雷、ゆうだちの三連装酸素魚雷、しまかぜの五連装酸素魚雷の管が展開し管の蓋が開く。

 

(今更だけどこいつらってどうやって魚雷管しまってんだろうか?)

 

 あらかさまに身体より大きな魚雷管を展開する姿に考えたら負けかと思考を放棄する。

 まぐれ当たりだけに注意しながら杜撰な砲撃を躱しつつイ級は発射のタイミングを計り、そして、レ級の砲弾の着弾により生じた水飛沫影に自分達の姿が隠れた瞬間発射を命じた。

 

「撃て」

 

 放たれた雷撃にレ級は全く気付く事が出来ず放たれた12本の魚雷が全てレ級の足元で炸裂した。

 

「ガァアアア!?」

 

 自慢していたATフィールドは発動の兆しすら起こさずレ級は爆炎に飲まれ絶叫を上げる。

 

「ちっ、漸く中破が見えてきたか」

 

 いい加減しぶと過ぎるとつい舌打ちしてしまうイ級。

 魚雷を喰らい小破と中破の間程度まで追い込まれたレ級は援軍を求め叫んだ。

 

「糞!!??

 何やってやがる緋蜂!!??

 さっさとバケモノを片付けてこっちに来やがれ!!??」

 

 いつまでもアルファ達にてこずっている緋蜂をそうどやしつけるレ級。

 そして同じくイ級もアルファに言う。

 

「何やってるんだアルファ。

 いつまでも遊ばせてないで(・・・・・・・)さっさと終わりにしてくれ」

 

 二つの命令にアルファと緋蜂が同時に反応する。

 レ級の命令に緋蜂は放つ弾幕を更に過密に、もはや滝のようなエネルギーの幕をアルファ達に解き放つ。

 

『了解。御主人。

 一気ニ始末スル。全機指示ガアルマデ波動砲ノチャージヲ維持セヨ』

 

 そしてイ級の指示を受けたアルファは弾幕回避を楽しんでいるノー・チェイサー達に指示を飛ばすと、迫り来る弾幕をそれまでたっぷり食い散らかしてバイドフォースが溜め込んだエネルギーをΔウェポンとして解放。

 その全てを正面から押し返す。

 

「ハッ!!??

 アンチボム持ちの緋蜂にボムなんざ…」

 

 アルファの放ったΔウェポンが苦肉の策とそう思ったレ級がやっと一矢報いたと信じ吐き捨てるが、イ級はそれになんでもなしに言い切る。

 

「お前はバイド(俺の相棒)を甘く見すぎだ」

 

 バリアを展開してΔウェポンを防ぐ緋蜂にバイドフォースが取付き触手を突き立てる。

 痛みを感じているのか金切り声を迸しらせる緋蜂。

 しかしアルファもまた冷酷に告げる。

 

『侵セ』

 

 直後、緋蜂の内側から大量の肉が溢れ出し、見る間もなく緋蜂は醜悪な肉塊に作り替えられてしまった。

 

「う、嘘だろ…?」

 

 散々馬鹿にしたバイドにあっさり屈した緋蜂に青褪めて絶句するレ級。

 

『所詮機械仕掛ケノプログラム。

 多少脅威的デハアッタガ、無限ニ進化ヲ繰リ返スバイドニハ及ブベクモ無イ』

 

 オージザブトムのほうが余程強敵だったとそう評価を降し、アルファは一緒に飛んでいた三機と共に波動砲を解き放ち緋蜂だった肉塊を抹消する。

 

『オ待タセシマシタ御主人。

 最近動キ足リナカッタラシクツイ好キニサセテシマイマシタ』

 

 実際緋蜂の弾幕はかなり脅威的だった。

 しかし、バイドとなったアルファからしてみればそこ止まり。

 遊び相手が限定されてストレスが溜まっていたノー・チェイサー達のストレス解消を考えなければとうに片付けられる程度の相手でしかなかった。

 

「あいつら手加減しないからなぁ」

 

 加減と自重さえするならいくらでも遊び相手はいるのにと苦笑するイ級に、レ級は漸く自分が敵に回してはいけない相手に喧嘩を売ったのだと理解した。

 

「さってと」

「ひぃ…」

 

 アルファ達と連装砲ちゃんを引き連れ振り向くイ級にレ級はもはや立ち向かう意志は無かった。

 

「お、俺が悪かった!!??」

 

 生き延びるために恥や外聞に構うだけの余裕もなく惨めに土下座するレ級。

 

「……」

 

 そんな態度にイ級は溜飲を下げるどころかますます冷え切っていく。

 

「この通り、どうか命ばかりは…」

「あのさ、」

 

 まるで氷を差し込まれたかのような冷気に包まれ顔を上げるレ級。

 

「お前、なにやってんの?(・・・・・・・・)

「っ!!??」

 

 どこまでも冷たい、まるでドライアイスで出来ているような目で自分を見るイ級に背筋を凍らせるレ級。

 直後、蹲るレ級の腹部にクラインフィールドで構成された拳が貫いた。

 

「ゲヘゥッ!?」

 

 不様な悲鳴を上げたレ級の喉をイ級の念力が捕え、そのまま声帯を握り潰しながら吊り下げる。

 

「もしかして、命乞いしたつもりか?」

「あ、がぁ、」

 

 苦痛にがくがくと震えるレ級にそれが肯定だと受け取ったイ級はクラインフィールドの鉄拳を再び叩き込む。

 

「ゲゥッ!?」

 

 悲鳴さえ握り潰され聞くに堪えない声を漏らすレ級を眺めイ級は淡々とアルファに問う。

 

「アルファ、こいつがさっき何か言ってたか分かるか?」

『イエ。私ハナニモ聞イテマセン』

「そうか。やっぱり空耳だな」

 

 そう言うと更に腹に鉄拳を突き立てる。

 

「…、……!?」

 

 悲鳴を上げる権利さえ奪いながらイ級は淡々と鉄拳を打ち込むイ級。

 

「アルファ、瑞鳳はどれぐらいやられてた?」

『目視ノミデスガ少ナクトモ右手ノ粉砕骨折ト肋ノ骨折。

 喀血モ確認シタノデ内臓破裂ノ可能性モアルカト』

「酷い話だな」

 

 腹に大量の痣を作られ血の泡を吹き出すレ級に視線を向けると、イ級はクラインフィールドをドリル状に構築するとそれを回転させ右手にブッ刺した。

 

「ぎぃがががががぁ!!??」

 

 神経の塊である手をドリルが目茶苦茶に刔り潰す激痛に潰された喉から絶叫が迸しる。

 

「無駄にタフなのも困り者だな」

 

 絶叫が耳障りと思いながらイ級は刺したドリルを引きどてっ腹に突き刺す。

 

「ギィィィイアアアア!!??」

 

 腸を蹂躙され叫ぶレ級の姿にイ級は自分は何をやってんだろうと情けなくなる。

 どれだけ痛め付けようが瑞鳳の怪我が治るわけでもない。

 どころか、甚振る都度に暗く澱んだ何かが腹の奥に沈澱していくような感覚さえ覚えていた。

 

「もういいか」

 

 こんな事をしている暇があるなら燃料掘っていたほうが余程有意義だとレ級を放り捨てる。

 

「かっ……あがっ…!?」

 

 いっそ楽になれない苦しみにびくびくと痙攣するレ級にそれを見るもの嫌になりイ級は命じる。

 

「全門開け」

 

 イ級の指示にしまかぜ達が頭の砲を向け魚雷を開き、アルファ達が波動砲のチャージングを開始。

 そしてイ級もファランクスと爆雷に加え超重力砲を展開する。

 

「や゛…や゛め゛…し゛に゛た゛く゛…」

 

 確殺の意思を向けられたレ級が必死に命乞いをするもイ級は一切構わずフルチャージが完了したことを確認し発射を告げようとする。

 

「照準合わせ。

 撃「イ級!!??」っ!?」

 

 砲撃を行う刹那、射線上に割り込んで来た春雨と古鷹の姿に慌てて発射命令を中断。

 

「何やってんだ!?

 もうちょっとで巻き込むところだったじゃないか!?

 …って、春雨?」

 

 ついさっきまで廃人だった春雨が自分に語り掛けて来たことにイ級はレ級の存在も忘れ安堵する。

 

「よく分からないが、立ち直ってくれたみたいでよかった」

 

 本当にそれが良いのは解らないが、少なくともイ級はそれが嬉しいと思った。

 春雨はイ級を真っすぐ見据えながら尋ねる。

 

「貴女は今、自分がどんな状態か気付いていますか?」

「え?」

 

 そう言われイ級は水面に目を向ける。

 

「……え?」

 

 そこに写っていたのは左目らしき赤い光を放つ黒く塗り潰されたナニカ(・・・)

 

「ど、どうなってんだ!?

 つうかアルファ、なんで黙ってたんだ!?」

 

 あらかさまに異常事態だというのに何も言わなかったアルファに問い質すが、アルファは困惑した様子で言う。

 

『申シ訳アリマセンガ、私ニハ何カ変化ガ起キテイルヨウニハ見エマセン』

「そう…なのか…?」

『…ハイ』

「しまかぜ、ゆうだち、ゆきかぜ。

 お前達もか?」

 

 しまかぜ達に問うも、三体とも解らないといいたげに首を傾ける。

 困惑するイ級達に春雨は言う。

 

「貴女がそうなってしまった原因は自身を強く否定してしまっているからなんです。

 早くしないと取り返しの付かないことになってしまいます!」

「自身を…否定……」

 

 春雨の言葉にイ級は思い当たる節があった。

 そして同時に、それは…

 

「それは出来ない」

「どうして!?

 そのままじゃ貴女は…」

 

 もう皆のところに帰れなくなると、そう言おうとする春雨にイ級はいいんだと言う。

 

「今回の件でよく分かったんだ。

 この世界がおかしくなったのは自分のせいだったんだって」

 

 自分が居たから北上達は救われた。

 だけど、同時に自分が居たから装甲空母姫は狂ったのではないかと、そうも考えていた。

 装甲空母姫だけじゃない。

 転生した自分と共にこの世界に来たアルファに引き寄せられ、バイドはこの世界に現れたのではないか。

 もっとそれ以前にも辿れば、『霧』が来なければ北上達は回天や桜花なんて物を持たされずに済んだのではないか?

 そんな自分勝手な妄想だと今まで軽く流せていたことが、レ級という存在が現れたことでイ級の内で核心めいた考えになってしまったのだ。

 

「本当に消えなきゃなんないのは、この世界からいなくならなきゃならないのは俺自身なんだ。

 だから俺はそいつと一緒に消えなきゃならない」

 

 この世界を狂わせる異邦者(イレギュラー)は全て消えなければならない。

 だから退いてくれとそう言うイ級に古鷹が怒鳴り付ける。

 

「ふざけないでください!!??」

「古鷹…?」

「自分が消えれば万事解決するなんてそんなの驕りです!!??

 例えそうだったとしても、貴女が救った皆を放り出すなんて逃げじゃないですか!!」

 

 自分勝手な結論でなにもかもから逃げるなんて許さないと叫ぶ古鷹にイ級は叫ぶ。

 

「じゃあどうしたらいいんだよ!!??」

 

 濁り澱んだ自らの存在への怨みをイ級は吐き出していた。

 

「俺は怖いんだよ!!

 千歳を、球磨を救えなかったみたいに、いつか、また目の前で救えないかもしれないとそう考えるだけで怖くて堪らないんだ!!??

 今回はまだ間に合った。

 だけど次は?

 いつか、あの悪夢が繰り返すかもってそうなる前に…」

「思い上がるのもいい加減にしてください!!」

 

 古鷹の咆哮にも似た怒号にイ級の言葉が止まる。

 それほどに古鷹はイ級に対し怒っていた。

 

「いつまで貴女は上から私達を見ていれば気が済むんですか!?」

「上からなんて俺は…」

「私達は貴女が考えているほど弱い存在なんかじゃありません!!」

 

 イ級は勘違いしている。

 確かに性能はイ級が上かもしれない。

 だけど、

 

「私達は貴女に守られなきゃいけないほど弱い存在ではありません!!」

 

 今までずっと格上の相手ばかりと戦い続けていた。

 そして、イ級やアルファ達R戦闘機の規格外の力が無ければ生き残れなかったのも事実だ。

 そのせいでイ級は自分ですら気付かないうちに他の皆を下に考え自分が守らなきゃならない者(・・・・・・・・・・・・・)だと考えるようになっていた。

 

「迷惑なんて掛けて当たり前なんです!!

 私達は貴女に救われた『仲間』なんですから」

「……」

 

 自分達はイ級が指揮を取らなければ動けない部下ではない。

 そして、守られなければ何も出来ない稚児でもない。

 共に並び立ち、時に迷惑を掛け合って、喜びも悲しみも分かち合う『仲間』なのだ。

 その言葉はイ級にすっと染み入り、自然と心の奥から想いが沸き上がって来た。

 

「そうか…そうなんだな」

 

 古鷹の心からの叫びがイ級にこびりついた澱みを掻き消し、それを顕すように纏わり付いた黒いナニカ(・・・)がボロボロと剥がれ落ちていく。

 

「私も春雨も、他の皆だってもうどこにも居場所なんてないんです。

 貴女が作ってくれたあの島(居場所)しか無いんですから、勝手にいなくならないでください」

「ああ。ごめん」

 

 黒いナニカが痂のように完全に剥がれ落ち、元の姿に戻ったイ級に春雨は安堵する。

 

「よかった…」

 

 これでもう心配ないとそう安心した直後、ゆうだちが春雨の後ろを指して鳴き声を上げた。

 

『ぽぃっ!!??』

「え…?」

 

 振り向いた先に見えたのは、自身に牙を剥くレ級の尻尾だった。

 艤装に組み込まれた深海棲艦が咄嗟に身を盾にするも、顎は艤装ごと春雨に食らい付いた。

 

「キャアアア!!??」

「春雨!!??」

 

 噛み砕こうとする顎に軋みながらも耐える艤装と苦痛に呻く春雨を嘲笑する気が狂った笑い声が響く。

 

「キヒ、きヒひ…。

 そうだよ…テメエが消えれば全部解決するんだよぉ」

 

 歪んだ嘲笑を張り付けたレ級が嘲笑う。

 そこには正気は見えず、完全に頭がおかしくなっているように見えた。

 

「てめぇ…」

 

 燃え盛る怒りに流されそうになる己を御すイ級にレ級は狂った嘲笑を向けて嘯く。

 

「テメエさえ消えれば俺が最強になれるんだぁ。

 そうさ、なにもかめテメエが悪いんだよ」

「春雨を放して!!」

 

 義手を向けメガ波動砲をちらつかせる古鷹にレ級は歪んだ笑みのまま尻尾を手繰り自分の方に近付ける。

 

「やれるもんならやってみろよぉ。

 いいぜぇ、このもどき(・・・)と俺、どっちが硬いか我慢比べといこうじゃねえかぁ」

「くっ!?」

 

 出来もしねえんだろと嘲笑するレ級に古鷹は歯を軋ませることしか出来ない。

 

「へ、ヒヒヒヒ…

 なんだぁ? 口先ばっかでやんねえのかよぅ?

 いい気味だなぁおい!?」

 

 怒鳴り顎に力を篭めさせるレ級。

 

「くぅぅっ!!??」

 

 痛みに勝手に漏れる悲鳴を必死に食いしばる春雨から漏れる悲鳴にイ級が制止の声を上げる。

 

「止めろ!!??」

「俺に命令すんじゃねえ!!??」

 

 制止の声に怒鳴ったレ級はふと思い付いたように笑い出す。

 

「くっ、くく、いいこと思い付いたぜぇ」

 

 歪んだ笑みを浮かべレ級は古鷹を指差す。

 

「そうだなぁ…テメエがそいつを嬲り殺すってなら考えてやってもいいぜ?」

「なん…」

 

 どこまでも卑劣なんだと怒りに震える古鷹にレ級は愉快そうに狂笑を上げる。

 

「テメエには散々やられたからなぁ。

 そいつをテメエがばらばらにするっていうならさぞすかっとするだろうよ」

「…イカれ野郎」

 

 古鷹さえ口汚い言葉を使うほどに下種なレ級の言葉にイ級は静かに言う。

 

「古鷹、やってくれ」

「でも!?」

 

 その言葉に驚く古鷹。

 そしてそれを聞いたレ級は狂った様子で笑う。

 

「あっひゃひゃひゃっ!!??

 いいぜいいぜぇ。

 ほら、仲間なんだから介錯してやれよ」

 

 早くしねえとこいつを殺すぞと恫喝するレ級を古鷹は睨み、そしてイ級に向き合う。

 

「イ級…」

「大丈夫だ」

 

 信頼しているとそう目で語るイ級に、古鷹は何を考えているのか悟り頷いた。

 そんなやり取りに気付かないレ級は愉快そうに狂笑しながら愉悦混じり言う。

 

「いいかぁ、簡単に殺すんじゃねえぞぉ。

 俺にやったようにじっくりじっくり甚振って徹底的にやるんだからな」

 

 そう言うレ級を憎々しいと思いながら古鷹は携えたフォースに呼び掛ける。

 

「お願い、私に力を貸して『サイクロンフォース』」

 

 すると、フォースがどろりと形を崩し青く輝くゲル状に変化する。

 ゲル状に変化したフォースはゆっくりと回転を始め、徐々にその速度を高めながら慣性に従い薄く平たく伸びて倍近く広がりながらフォースの周囲にイオン体のリングを形成していく。

 

「キヒッ、そうだぁ。そいつでじっくりと切り刻むんだぁ」

 

 これから始まる惨劇に期待に胸を膨らませるレ級と自分が招いた結果に忘我のまま涙を流す春雨。

 ゆっくりと狙いを定めながら古鷹はアルファに教わった事を思い出す。

 

『サイクロンフォースハコレマデノ『バイドノ切端』カラタダエネルギーヲ抽出ノミナラズ、バイドソノモノヲゲル状ニ加工スルコトデ生ミ出サレタフォースデス。

 最大ノ特徴ハ広イ攻撃範囲ト防御圏。

 ソシテ…』

 

 アルファの話を信じるならこの状況を打開する鍵はサイクロンフォースが握っている。

 そして古鷹はアルファの話を疑っていない。

 後は、

 

(私次第!!)

 

 失敗すればイ級だけでなく春雨も、そして自分も危険に晒される。

 だけどイ級はその危険も分かった上で自身に託してくれた。

 だから、恐れる必要はない。

 

「行けぇっ!!??」

 

 高速回転するサイクロンフォースをイ級目掛け放つ古鷹。

 イオン体が海を縦に切り裂きながらイ級のすぐ傍を擦過しながら通過する。

 

「ぐぅっ!!??」

 

 痛覚は無いが衝撃と身を削られるダメージにイ級が呻きレ級が喝采を上げる。

 

「ヒャアッハァア!!

 そうだぁ、もっと、もっと苦しんで死んじまいなぁ!!」

 

 喜悦に満ちたレ級が身を乗り出してそう叫んだ瞬間、レ級の足元から大量の泡が浮き上がり弾けた。

 

「ギャアアア!!??」

 

 弾けた泡が内包していた強酸を吸い込んだレ級が内側から焼かれる痛みに絶叫を上げる。

 それが雌伏に雌伏を重ねたフロッグマンの乾坤一擲のバブル波動砲による援護射撃だと気付いた瞬間、イ級は叫んでいた。

 

「古鷹今だ!!」

「はい!!」

 

 投擲したサイクロンフォースのもう一つの機能、投擲後の追加操作を可能とするアクティブコントローラを作動させ体勢が崩れたレ級の尻尾を根本から刈り落とした。

 

「GYYYYYAAAAAAA!!!!!?????」

 

 本来人間が持たない器官を切り落とされる想像を絶する激痛にケダモノのような悲鳴を上げるレ級。

 元からの指令が途切れ顎から解放された春雨をイ級が呼ぶ。

 

「春雨!!」

「っ、はい!!」

 

 一瞬戸惑うも春雨は即座に艤装の前門を開放しレ級に照準を合わせる。

 

「ふっざぁけんなぁぁぁぁあああ!!??」

 

 砲と甲板を兼ねた尻尾を失い唯一残った両手を振り上げるレ級だが、拳が届くより春雨の砲が遥かに速い。

 

「やらせは、しないよ!!」

 

 5インチ砲が立て続けに火を噴き魚雷が次々とレ級の足元で爆発を起こす。

 

「雑魚の分際でぇぇえええ!!??」

 

 正面から喰らい続けるレ級だが、執念で春雨に一発叩き込もうと突き進む。

 

「落ちろ、落ちろ!!」

 

 深海棲艦と共に放たれた波状攻撃がレ級を幾度となく打ち据え更に古鷹もそれに追撃を掛ける。

 

「ハイパードライブ開放。

 討ち滅ぼせ、ハイパー波動砲!!」

 

 古鷹の咆声に従い義肢の弁がいくつも開き数多の波動の塊が続けざまにレ級を穿つ。

 

「くそくそくそっ!!??

 なんで、なんでこんなことに…」

「そいつは俺の持ちセリフだ。

 勝手に使うんじゃねえ」

 

 世界を呪い怨みを言葉にしようとしたレ級だが、それはイ級に阻まれ叶わなかった。

 

「あの糞野郎に遭ったら伝言頼む」

 

 零距離で突き付けられたイ級の超重力砲の黒い光にレ級は自分の死を確信した。

 

「や、やめ…」

「必ずぶん殴ってやるから顔を洗って待ってろってな」

 

 そう言うと同時に超重力砲が放たれ、黒い光はレ級を飲み込み跡形もなく消し去った。




 漸くケリがついた…。

 イ級の某とか古鷹と春雨の活躍とか頑張ったらいつの間にかこんな量に膨れ上がってたし。

 しかも明日とか言いつつ今日更新してるしね!!

 あ、次回は意外なとこにスポット当たる予定。

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