なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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せいぜい楽しませてから死ねよ?

※胸糞注意


お楽しみの始まりだ

「数は少なくても!!」

「ウチタオセ!!」

「行くのです皆の者!!」

「みんなやっちゃえ!!」

 

 瑞鳳、尊氏、鳳翔、北方棲姫がそれぞれ艦載機を放ち制空権を取りに向かわせる。

 

「ハッ、躍起になってだっせえなぁ?」

 

 四人が放った艦載機郡をそう嘲笑してレ級もまた尾の口から四人合わせた数と同じだけの艦載機を放つ。

 レ級から放たれた艦載機は飛び立つなり瑞鳳達の艦載機に群がるが、震電改とベアキャットの性能に付いていけず鴨撃ちにされ次々と撃墜される。

 

「へへん、ざまあみろ!!」

「アレ? イガイトタイシタコトナイ?」

 

 すんなり制空権が取れたことに調子に乗る北方棲姫と逆に訝む尊氏。

 この結果が鳳翔と瑞鳳の艦載機が強力なればこそということか?

 しかし、尊氏の艦載機達も一つも落とされていないとなればこれはおかしい。

 確かに尊氏はいつかイ級の艦隊に参加して足手まといにならないためと鳳翔に薫陶を受け鍛えてきた。

 だが、あれだけの数の艦載機を無傷でやり過ごせるかと言われたら無理と言い切れる。

 

「…鳳翔」

「分かってますよ」

 

 艦載機を手繰る二人も尊氏の懸念と同じ疑問を抱いていた。

 そして答えを導き出す。

 

「あいつ、全然本気出してない」

 

 レ級はこちらに合わせて適当に付き合っただけだ。

 それを証明するようにレ級は馬鹿にしたように舐めた口を叩く。

 

「あーらら。

 頑張ったのにあっさり制空権とられちゃったなぁ」

 

 必死で戦った自身の艦載機を慰撫する様子はおろか、まるでこうしたかったんだろ?と挑発するようにそうわざとらしくそう嘯く。

 

「こいつむかつく!!」

 

 あらかさまな悪意を汲み取った北方棲姫がじだんだ踏む勢いで怒るがレ級はその姿を馬鹿にしたように笑い飛ばすと空を制し迫り来る爆撃機を無視して今度は木曾と北上に視線を向ける。

 

「ほらほら、先制雷撃の時間だぜ?

 今なら簡単に当たるかもなぁ?」

 

 立てた人差し指をちょいちょいと動かし挑発する。

 

「そんなに喰らいってならぶち込んであげるよ!!」

「四十門の酸素漁雷を甘く見るな!!」

 

 北上と木曾が棒立ちで嘲るレ級目掛け魚雷を投擲。

 

「ほうらよ。こっちも先制雷撃だ」

 

 やる気の無い調子で尻尾を振り漁雷を投げるレ級。

 レ級の漁雷は、てんで出鱈目な方向に突き進み北上と木曾が放つ漁雷は正確にレ級に牙を向いて食らいついた。

 航空雷撃と爆撃、更に先制雷撃の全てが纏めてレ級に当たり凄まじい爆発を起こす。

 

「これで少しは…」

 

 倒したなんて微塵も思わないが、手応えからして無傷で済んだ筈は無い。

 念のためアサノガワを温存していた鳳翔でさえそれは有り得ないと、そう思っていたのだが……

 

「ハッ、やっぱりザコじゃあこんなもんだな」

 

 黒煙が風に吹き流され現れたレ級は、光を反射してプリズムに輝く膜のような物に包まれ手傷一つありはしなかった。

 

「奴もクラインフィールドを持ってたのか!?」

 

 イ級の持つ『霧』の力かと警戒する木曾だが、レ級はその姿を馬鹿にしながら笑う。

 

「クラインフィールド?

 そんなチンケなもん誰が使うかよ」

 

 ばぁかと嘲笑するレ級に向けパウ・アーマーが飛び込み波動砲を撃ち込む。

 しかしパウ・アーマーが放ったスタンダード波動砲さえレ級の纏う膜は弾いた。

 

「波動砲を防ぐだって!?」

 

 波動砲はイ級のクラインフィールドでさえそう何度も防げない。

 だが、レ級の纏う膜は揺らぎすら見せはしない。

 

「パウ・アーマー!!」

 

 一撃で駄目なら手数でとあつみの声にパウ・アーマーはシャドウフォースからレーザーを放つ。

 

「うぜえんだよ!!」

 

 度重なるレーザーの雨に苛ついた怒鳴り声を上げて尻尾を振り下ろすレ級だが、パウ・アーマーはシャドウフォースを盾と残し離脱。

 シャドウフォースに叩き付けられた尻尾は光の膜を貫くことは出来ないものの尻尾もまたシャドウフォースを砕く事は出来ず弾かれる。

 

「チッ、R-TYPEはクソゲーだがこいつはめんどくせえなぁおい?」

 

 呼び戻されたシャドウフォースを装着するパウ・アーマーを一瞥してそう吐き捨てるレ級。

 

「あの膜、かなりタチが悪いね」

 

 さっきもシャドウフォースを防いだ様子からして常時展開していると考えたほうがいいだろう。

 

「波動砲の一点集中を試してみますか?」

「それしかないね」

 

 アサノガワのフルチャージ波動砲なら数値上大和級とて一撃でオーバーキルが可能だ。

 それに加えパウ・アーマー、ストライダー、フロッグマン、ノー・チェイサー、ドミニオン、スコープダック、の波動砲を一点に集中させれば姫だってただで済むはず無い。

 最悪、それらさえ効かなければ後は貫通性能を持つ古鷹のメガ波動砲を使うしかない。

 方針を固めたところで苛々した声が突き刺さる。

 

「チンタラやってんじゃねえよ。

 あんまり調子こいてんならこっちからやっちまうぞ」

 

 そう言いながらレ級は尻尾の砲を春雨に向けた。

 

「まずはそいつから死ねよ」

 

 重い音を立てて放たれる砲弾。

 

「ヤラセナイ!!」

 

 恐怖で棒立ちになっていた春雨目掛け飛来する砲弾に、バルジを構えたあつみが割り込み身を盾とするが砲弾はバルジを貫きあつみが爆風に飲まれる。

 

「あつみ!!」

「チッ、デコイがでしゃばってくんなよ」

 

 うぜえと吐き捨てるレ級にキレた木曾がカトラスを突き立てた。

 

「この野郎ぉ!!??」

 

 刃が膜に阻まれながらも渾身の力でカトラスを押し込もうとする木曾をレ級は馬鹿にする。

 

「アハハハハ!!

 たかだかデコイが沈んだぐらいでなにマジになっちゃってるわけ?

 チョーウケるんだけど?」

 

 心底腹の立つ笑い声を上げて馬鹿にするレ級に古鷹が義手を突き付ける。

 

「いくら防御力があっても貫通すれば関係ない!!」

 

 バイドとなって得た力を怒りと共に解き放つ。

 

「貫いて!! メガ波動砲!!」

 

 フォースの絶対的防護さえ貫くメガ波動砲はレ級の膜を摺り抜けその身体を貫いた。

 

「ガッ!?」

 

 しかしレ級は生身の耐久性も高かったらしく、メガ波動砲はレ級を撃滅することなく通過。

 ダメージにレ級が呻く隙に木曾と古鷹は一時離脱するとレ級は忌ま忌ましいと睨み付ける。

 

「テメェ……」

 

 貫かれた衝撃で稼がれた距離を詰める様子もなくレ級は苛ついた様子で吐き捨てる。

 

「チッ、ATフィールドがぶち抜ける装備があるなんて聞いてねえぞ。

 つうか、波動砲を撃つ艦娘って一体どんなからくりだ?」

 

 あのクソアマがと言うなり突然肩の力を抜いた。

 

「あーもう止めだ止め。

 付き合ってらんねえぜ」

 

 まるで飽きたゲームのコントローラを投げ捨てるようにやる気を無くすレ級。

 だが、それで収まる道理なんてこの世には無い。

 

「このままただで帰れると思ってんのかよ?」

「あつみの借りもきっちり返さなきゃこっちの腹の虫が収まんないよ」

 

 怒り心頭でそう言うと、あつみが中破しながらもまだ沈んでないと抗議する。

 

「あん?」

 

 しかしレ級はそんな態度に呆れたように言う。

 

「誰がてめえらに尻尾巻いて逃げるっつうた?」

 

 そう言うと尻尾が大きく口を開け何かを吐き出そうとする。

 

「俺が言ってんのはテメエラに付き合うのは止める(・・・・・・・・・・・・・・)って言ったんだよ」

「そんな猶予があるとでも思っているのですか?」

「あん?」

 

 鳳翔の台詞が気に入らないと舌を打つレ級だが、直後に死角から忍び寄ったアサノガワに気付き青褪める。

 

「おいマジかよ?」

「穿て」

 

 鳳翔の言に従い限界まで高められたエネルギーを杭に封入しアサノガワはレ級に叩き込んだ。

 突き込まれた杭の莫大な威力に膜は紙切れの如く意味を成さず、レ級の身にパイルバンカーが突き刺さる。

 

「ギャア!!??」

 

 内側から暴れ狂う波動エネルギーにレ級が絶叫するも、レ級は尻尾を振り回しアサノガワを引き剥がした。

 

「クソッ!? 痛ってえじゃねえか最弱空母が!!??」

 

 まるで子供のように癇癪を起こすレ級に構わず鳳翔達は今の結果を冷静に考察する。

 

「どうやらあの膜は貫通に弱いみたいだね」

「じゃなくても想定外の火力は防ぎきれないか」

 

 今まで通用したのはアサノガワのパイルバンカー波動砲と古鷹のメガ波動砲だけ。

 殆どの装備が意味を成さないということだが、逆に通用する武器はあると分かっただけ活路はある。

 勝つ手段が見付かったのだから後はやるだけだと意気込む木曾だが、突然古鷹が苦しみだした。

 

「くぅっ…」

「古鷹!?」

 

 義手を掴み蹲る古鷹にまさかと焦る瑞鳳。

 

「もしかして汚染が進行したの!?」

 

 バイド汚染された古鷹はいつ精神までバイドに成り果てるかも分からない非常に危うい。

 そをな古鷹に波動砲に使わせた負荷は古鷹に軽くない苦痛を与えていた。

 

「大丈ブ、マだ、私ハ、タたかえます」

 

 脂汗を流し蝕む破壊衝動を押さえ付け義手を構える古鷹。

 そのやり取りの最中、レ級はただ怒りのままに喚き散らし怒りを当てもなくぶつける。

 

「クソッ!!

 どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがって!!

 もう我慢ならねえ!!

 全員纏めてぶち殺してやる!!??」

 

 そう怒鳴り散らし尻尾を立てるレ級。

 

「今度は何を仕掛けてくるやら」

 

 クラインフィールドより硬い防護壁の次に何を持ち出す気だと口調とは裏腹に本気で警戒する北上だが…

 

「纏めて潰れろ!!」

 

 次の瞬間、レ級を除く海上の全てが海に叩き付けられた。

 

「がっ!?」

 

 まるで巨大な手の平に押し潰されているような強烈な重圧が全身を満遍なく押さえ込み身動き出来なくなる。

 

「なにこれ…動けない…?」

 

 重圧に対抗しようにも這うような体勢から立て直すことが出来ず必死で抗う木曾達にレ級は舌を打つ。

 

「チッ、劣化するってのはこういうことかよ。

 グランゾンの名が聞いて呆れるぜ」

 

 考えていたのと結果が違ったらしくそう吐き捨てながらも、レ級は海上に這いつくばる様に機嫌を良くする。

 

「いい様だなぁおい。

 コモンの屑艦が調子こくとこういう結果になるんだよ」

 

 そう馬鹿にすると1番近くに居た木曾の頭を踏み付ける。

 

「ぐっ!?」

「さっきまでの威勢はどうしたよ? おら!」

 

 海中に無理矢理頭を埋めさせ模掻く様に優越感を得るレ級。

 

「この野郎…」

 

 溺れ死ぬ心配がないからといって怒りが沸かないわけがない。

 この身が自由ならば酸素魚雷をあのムカつく顔にぶち込みたいとそう願う北上だが、今やれたとしても木曾まで巻き込んでしまう。

 

(アサノガワはダメになったけどフロッグマンはまだ健在か。

 だけど、バブル波動砲じゃ多分あの膜は貫けないし…ああもうイ級はまだなの!?)

 

 困った時のイ級頼りも情けないとは分かっているが、今この状況を作り出したのもイ級なのだ。

 いつまでも戻ってこないことに文句の一つぐらい言っても罰は当たるまい。

 と、木曾を踏み付ける事に執心していたレ級が新たな玩具を見付ける。

 

「ま…まぁ…」

 

「待ってて!

 今…そっちに行ってあげるから!!」

 

 押し潰す重圧に悲鳴を上げる北方棲姫の傍に向かおうと必死に這い擦る瑞鳳の姿にレ級はいやらしい笑みを向ける。

 

「クハッ!

 こいつは面白れえ」

 

 木曾を蹴り転がし酸素を求め喘ぐ様子を一瞥してから恐怖を煽るように瑞鳳へと向かう。

 それに気付いた北方棲姫が必死に叫ぶ。

 

「にげてまま!!」

「っ!?」

 

 悲鳴に次の標的を自分に定めたのだと気付いた瑞鳳の鳩尾にレ級の靴が突き刺さる。

 

「ぐぅっ!?」

 

 押し潰された胃が瑞鳳の意志とは関係なく酸性の液体を口から吐き出させる。

 

「ままぁ!!??」

「瑞鳳!!??」

 

 胃液を穿きのたうちまわる瑞鳳を愉快な玩具を眺めるようにレ級は見下し、それが収まりかけたところで襟を掴んで無理矢理起こす。

 

「随分愉快な事してるみてえだな?」

 

 苦痛に喘ぐ瑞鳳を嘲笑しながらレ級は涙目で睨む北方棲姫を一瞥する。

 

「姫を相手におままごととは随分豪勢な遊びだな」

「ままをいじめるなぁ!!??」

 

 叫ぶ苦しむ瑞鳳の姿に叫ぶ北方棲姫をレ級は嘲笑い馬鹿にする。

 

「虐めるだぁ?

 虐めるってのはなぁ」

 

 そう言いながらレ級は拳を握り瑞鳳の腹に狙いを定め。

 

「こうするんだよ」

 

 ズンッと音を鳴る程の勢いで瑞鳳の腹部に拳を減り込ませる。

 腹に打ち込まれた衝撃は内蔵を貫き瑞鳳が口から赤黒い液体を吐き出す。

 

「ゴフッ…」

「ままぁ!!??」

 

 腹部を貫く衝撃に口から血を吐き出す瑞鳳と泣きわめく北方棲姫を眺めレ級はげらげら笑う。

 

「ギャハハハ!!

 いい感じに色っぽくなったじゃねえか」

「テメェエエエ!!??」

 

 泣き叫ぶ声が楽しいと笑うレ級に怒り狂う一同。

 

「ままぁ!? ままぁ!!??」

「びぃびぃ煩せえなぁ。

 なんだったらその首へし折ってやろうか?」

 

 甲高い悲鳴に苛立ちを見せたレ級に掠れた声で制止が飛ぶ。

 

「姫ちゃんに…手を出すな…」

「あん?」

 

 喀血で朱に染まりながらも瑞鳳はレ級を睨み付ける。

 

「姫ちゃんに、手を出すな!」

「…ハッ」

 

 怒りに満ちた目で睨み付ける瑞鳳に、レ級は愉快窮まるといいたげに馬鹿笑いをする。

 

「こいつはいい!!

 艦娘が姫を庇うなんて面白過ぎるじゃねえか!!

 そんなにおままごとが気に入ったのか?」

「おままごとじゃない!!」

 

 レ級の馬鹿笑いを掻き消す程の怒声を放つ瑞鳳。

 

「私は、姫ちゃんのママよ!!」

 

 鳳翔が島を訪れ少しした頃に、鳳翔から二人の関係に着いて窘められた事があった。

 だけど、その時も瑞鳳は一歩も引き下がらなかった。

 

「種族なんて関係ない!!

 姫ちゃんは、私の大事な娘なの!!

 だから、姫ちゃんは私が守る!!」

 

 そう言って矢筒から取り出した矢を突き立てようとする瑞鳳だが、その手をレ級はなんの躊躇いもなく握り潰す。

 

「アガッ!?」

「なに語っちゃってるわけ?

 ダッセェ」

 

 ガムの包み紙を丸めるような感覚で瑞鳳の指の骨を折り砕きながらレ級はつまらない物を見るように吐き捨てる。

 

「つうかさあ、んなザマで守るとかいって恥ずかしくないの?

 それとも痛みで頭がトンじまってるのか?

 だったら、たたき起こしてやんねえとな!」

 

 握り潰していた瑞鳳の手を放し、そのまま肋に拳を打ち込む。

 

「ゲフッ!?」

 

 ばきばきと肋が砕ける嫌な音が響き瑞鳳が血の塊を吐き出す。

 

「ままぁ!!??」

 

 北方棲姫の悲鳴に気をよくするレ級だが、瑞鳳は浅い呼吸を繰り返しながらも北方棲姫に語りかける。

 

「大丈夫だよ姫ちゃん。

 ママは強いから、こんなの全然、平気なんだから」

 

 心配させまいと必死にそう笑いかける瑞鳳に更にレ級の拳が突き刺さる。

 

「ぐぅっ!?」

「粋がってんじゃねえよ!!

 今にもくたばりそうな面してなにが大丈夫だぁ!?」

 

 泣き叫んで命請いをするの期待していたレ級は気丈に振る舞う瑞鳳が気に食わないと怒鳴り付けるが、瑞鳳は浅い呼吸を繰り返しながらも強い意思を秘めた目で睨み付ける。

 

「こんな…痛み……エンガノ沖岬の…時に……比べたら…ぜんっぜん…たいしたこと……ないんだから……」

「ああそうかよ」

 

 苛立ちをそのまま拳に乗せ瑞鳳にたたき付ける。

 

「ぐぅっ!?」

 

 苦痛に出そうになる声を食いしばり堪える瑞鳳に苛立ちながらレ級は拳を奮う。

 

「だったらせいぜい耐えてみろよ!!」

 

 サンドバックのように殴られるままの瑞鳳にひたすら拳を叩き込むレ級。

 見ているしか出来ない自分への悔しさで掌を爪で傷付ける木曾達の前でそのまま何度も殴り続けたレ級だが、すぐに息が上がりその殴打が止まる。

 

「おら、どうしたよ?

 たいしたこと、なかったんじゃねえのか?」

「……」

 

 殴られ続け顔も髪も服も血で斑に染まった瑞鳳は、ひゅうひゅうと掠れた呼吸を繰り返すだけになってしまっていた。

 

「ちっ、まだ生きてやがるのかよ」

 

 飽きたと言って瑞鳳を放り投げるレ級。

 

「まま!!??」

「瑞鳳!?」

 

 瑞鳳は呼び掛けに応えることも出来ずゆっくりと沈んでいく中、レ級はつまらない遊びを終わりにするべく尻尾からとっておきを呼び出す。

 

「おら出ろ『緋蜂』」

 

 そう言った直撃、尻尾の口からR戦闘機と同等のサイズの物体が吐き出された。

 

「機械仕掛けの蜂?」

 

 緋蜂と呼ばれたそれが蜂がただの玩具であるはずもないだろうと警戒する目の前で吐き出された蜂は翼を羽ばたかせホバリングを開始する。

 

「テメエラはもう終りだ。

 緋蜂はR-TYPEなんつうクソゲーなんかメじゃねえ、最強鬼畜ゲームの極殺兵器なんだからよ」

 

 そう嘲笑するとやっぱりこの台詞は必要だよなと言って、レ級は木曾達を指差して告げた。

 

「死ぬがよい」

 

 その瞬間、緋蜂の複眼が赤く光り世界をエネルギーの波が埋め尽くした。

 

「嘘だろ!!??」

 

 高波かと勘違いするほどの高密度弾幕の奔流に絶句し、何も出来ず全員飲み込まれそうになるが、音速を遥かに越える速さで到着したアルファがフォースに溜めこんでいたエネルギーを解放して逆に押し返す。

 

『薙ギ払エ『Δウェポン』!!』

 

 膨大なエネルギーがぶつかり合い、緋蜂の攻撃が不発終わった事にレ級は苛々した様子で吐き捨てる。

 

「アルファ!?」

 

 Δウェポンのエネルギーが拘束していた力も取り払ったらしく自由になったことに気付いた鳳翔が即座に瑞鳳の救助に向かう。

 

「あつみ、ダメコンを早く!!??」

「ハイ!!??」

 

 半分以上轟沈が進んだ瑞鳳を北上が牽引して全員で救出作業に専念する様子にレ級が舌を打つ。

 

「チッ、なに俺の邪魔してんだよバケモノが」

 

 その罵倒を意に解さずアルファは全員無事かを確認する。

 

『誰モ沈ンデイナイヨウデスネ』

「ああ。

 だが、あつみが春雨を庇って中破させられた。

 それに瑞鳳が…」

『ソノヨウデスネ…』

 

 あつみと瑞鳳の状態を確認し、アルファは緋蜂に向き合う。

 

『皆ハ瑞鳳トアツミヲオ願イシマス』

「一人でやる気か?」

 

 聞き捨てならないぞと噛み付く木曾にアルファはイイエと否定する。

 

『マズハアノ蜂型ノ機械ヲ破壊シナケレバ屑野郎ヲブチ殺スノハ難シイト判断シタダケデス。

 少々派手ナ事ニナリソウナノデ余波ニ巻キ込ミタクナイノデス』

「……分かった」

 

 さっきの攻撃の時点でイ級のクラインフィールド並の防護壁が無ければどうしようもないことは嫌でも理解した木曾は瑞鳳の治療のためにも素直に引き下がる事にした。

 

「必ず勝てよ」

『イワレルマデモアリマセン』

 

 そんなやり取りを交わしているとレ級が苛々した様子で口を開く。

 

「たかがバケモノが何俺を無視してくっちゃべってんだ?」

 

 詰りの言葉に木曾達が不快感を露にするも、当のアルファは全く感情が揺れはしなかった。

 

『貴様ト話ス口ハ持チ合ワセテイナイ』

 

 相手にすらしないと言い切るアルファをレ級は更に馬鹿にする。

 

「ハッ、口どころか人間ですらねえバケモノがよくほざきやがるじゃねえか」

 

 気に入らないと唾を吐くとレ級は緋蜂に怒鳴り付ける。

 

「みせしめにそいつからぶち殺せ緋蜂!!」

 

 レ級の命令を受け待機していた緋蜂がゆっくりとアルファに狙いを定める。

 ギチギチと威嚇するように鋼の牙を擦り合わせる緋蜂だが、それに相対するアルファは鼻で笑う。

 

『……フン』

「あぁん?」

 

 ますますボルテージを上げるレ級に対し、アルファは言い切る。

 

コノ程度(・・・・)ナラ、総掛カリニスル必要モナイ』

「……デカイ口を叩くじゃねえかバケモノが」

 

 だったらよ、とレ級はいやらしく嘲笑う。

 

「テメエ一人になっちまいな」

 

 次の瞬間緋蜂がアルファを無視して木曾達に弾膜を叩き込む。

 

「バケモノがカッコつけてるからだよバーカ!」

 

 そう嘲笑うレ級だが、

 

『馬鹿ハ貴様ダ』

 

 緋蜂の弾幕が再び放たれた『Δウェポン』により掻き消された。

 

「はぁ!?」

 

 完全に決まったと信じきっていたレ級が初めて驚きの声を上げる。

 

「どんな手品だ糞が!!??」

 

 今の不意打ちが防げた事が気に入らないと怒鳴り散らすレ級に、フォースを携えた(・・・・・・・・)古鷹が強い口調で言い放つ。

 

「お前が汚い手を使うことは分かっていました。

 だから、アルファはさっき私にこの子を預けていたんです」

 

 二度も古鷹にしてやられレ級がキレた様子で喚く。

 

「調子こいてんじゃねえぞ!?」

「ソレハ私達ノ台詞ダヨ!!

 今ダヨ皆!!」

 

 あつみの言葉の直後、レ級の重圧から辛うじて逃れていたノー・チェイサー、ドミニオン、スコープダックの三機が緋蜂に向かい凄まじい速度で肉薄し波動砲を叩き込む。

 ドミニオンの灼熱波動砲が焼き、ノー・チェイサーの圧縮炸裂波動砲が爆ぜ、スコープダックのカーニバル波動砲が爆発に鮮やかな彩りを加える。

 

『私カラモダ!!

 『デビルウェーブ砲Ⅲ』!!』

 

 アルファの後部から放たれた二つのバイドを象るエネルギーが集まり一つのバイドとなって緋蜂を撃つ。

 しかし緋蜂は多少の手傷を受けただけで反撃を開始する。

 

「ちぃっ!?」

 

 緋蜂に手傷を負わせた事に驚き再び劣化グラビトロンカノンで纏めて動けなくしてやろうとするレ級だが…

 

「おい」

「あん?」

 

 場にそぐわない静かな呼び掛けに思わず振り向いてしまう。

 そして目の前にあったのは、自分に突き付けられたイ級のファランクスと連装砲ちゃん達の砲身であった。

 

「まずは喰らっとけ」

 

 怒りが凍り付いたような声と同時に弾幕がレ級に叩き込まれた。




書いててこいつを本気で殺したくなった。
何度イ級を今すぐ出そうとしたけど堪え続けた。
瑞鳳本当にごめん。
次はBGMにエヴァ暴走を使う。
もう我慢しなくていい。
奴をぶち殺す。

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