なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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 準備運動ガテラ蹂躙シテヤルカ


 本番前ニ

 

 存在してはいけない兵器を処分し一先ず平静を取り戻した俺達だけど、凄まじい疲労に心身ともに疲れ果てて屍のように転がる醜態を曝していた。

 因みにバルムンクは海に棄てようと思ったがまかり間違って誰かに見付かったら事だからコンクリ詰めのドラム缶ごとフォースですり潰す事で抹消してある。

 

「核兵器なんか歴史から滅びてしまえ」

 

 そうすりゃ広島と長崎もチェルノブイリも冷戦も北朝鮮が調子づくこともなかったんだよちくせう。

 ついでのついでにストライダーは木曾が持つことになった。

 鳳翔はバルムンクの件でストライダーに拒絶反応を起こした事に加え試製電光とベアキャットまでは下ろしたくないという理由から辞退し、瑞鳳はバリア波動砲を武器として使うなら鳳翔の妖精さん並の技量がいるとアルファに言われ諦めてしまった。

 ということで妖精さんの錬度的に俺か木曾のどちらかという話になったが、俺はアルファが居る状態でもクラインフィールドの展開が可能になっていたためあまり使い出は薄く、カトラスの近接格闘を多用する木曾とならバリア波動砲とも相性もいいということで木曾が装備することになった。

 

「ふーん。

 どうせ私はレシプロがお似合いなのよー」

 

 膝を抱えて部屋の隅で転がりながらそうふて腐れる瑞鳳。

 あんまりふて腐れているとチビ姫が瑞鳳を虐めてると勘違いして癇癪起こして暴れるから止めてほしいんだが、島の艦娘の中で唯一R戦闘機が無いっていう事実があるから止めさせようが無いんだよ。

 古鷹は預かってるだけだし本人がR戦闘機みたいなもんだからノーカンな。

 

「まあまあ。

 その内強力で使い勝手の良いR戦闘機を作るから辛抱してよ」

「いいもんいいもん。

 R戦闘機は足が可愛くないからいらないもん」

 

 完全に拗ねてるよ。

 

「どうするよあれ?」

「暫くほっとくしかないね」

 

 何とか機嫌を治させようと相談するも北上がばっさり切り捨ててしまった。

 

「それにだよ。

 今は島風を倒すことを考えなきゃどうしようもないんだしさ」

 

 それはまあ、そうなのかもしんないけどさ。

 ちょっと冷たくないか?

 とはいえ北上の言うことも正論なんだよな。

 

「アルファ。

 島風がマザーバイドになるまでの猶予は?」

『後一週間程デホボ完了スルカト』

 

 一週間か。

 航海距離にもよるけどタイムリミットぎりぎりだな。

 

「そういえばさ、島風はアルファを取り込まなきゃ完全なマザーバイドにならないんだよね?

 だったらマザーバイド化が完了しても大丈夫じゃないの」

 

 言われてみれば確かにそうだよな?

 北上の疑問で改めてそう気になってみるが、アルファは否定する。

 

『マザーバイドハバイド係数ガ桁違イニ跳ネ上ガルノデ、周囲ヘノ汚染能力ガ非常ニ高ノデス。

 下手ヲスレバ空間ノミナラズ近付クダケデバイド汚染ノリスクヲ背負ウコトニナリマス』

「そうなったら最悪アルファ一人で島風と雪風と夕立の三人を倒さなきゃならなくなるのか」

『ハイ。

 ソレニ、私自身モバイドニ飲マレナイトハ言イ切レマセン。

 ソウナレバ…』

 

 地球はバイドに屈するか。

 

「どちらにしろ島風がマザーバイド化を完了すれば汚染海域が生まれてしまいます。

 R戦闘機なら波動で滅する事は出来るようですが、マザー化は防ぐほうがいいみたいですね」

 

 そう鳳翔が方向性を纏めてくれた。

 一様に状況の確認を済ませた所で今回の編制を考える。

 

「今回は俺、木曾、北上、千代田、鳳翔、ワ級の六人で行くしかないな」

 

 ワ級は出したくないが、パウアーマーは何故か艦種が輸送艦、病院船、工作艦の三艦にしか対応しておらず、氷川丸と明石とワ級の三択なら錬度が高く耐久力も高いワ級を選ぶべきだろう。

 南西海域唯一の回遊医療船の氷川丸を汚染させましたなんて事態になったら周辺諸島からどんな報復が来るか分かったもんじゃないしな。

 

「ワ級。

 仕方ないとはいえ絶対無理はするな」

「ウン。

 ダケドイ級モ皆モ無理シチャ駄目ダヨ」

 

 狙われた時に備えダメコンとバルジでガチガチに防御を固めさせたワ級にそう言うと逆に俺達が心配されてしまった。

 

『ワ級。

 パウアーマーニコレヲ装備サセテクダサイ』

 

 そうアルファは空間から黒い球を取り出す。

 

「ソレハ?」

『シャドウフォース。

 人類ガ漸ク完成サセタ非バイド製ノ対バイド兵器デス。

 使イ方ハ解リマスカ?』

 

 触ったらすり潰されると忠告しながら慎重にパウに譲渡するアルファ。

 パウを駆る妖精さんが指を立てて運用は大丈夫と応じるとアルファは特徴を説明する。

 

『シャドウフォースノ特徴ハシュート後高速デ合流スルラピッドリターント切リ離シ状態デ任意ノ全方位ニエネルギー弾ヲ放ツコトガ出来ルモノデス』

 

 人類の英知すげえ。

 ……ん?

 

「アルファ、フォースって体当たり以外にも攻撃出来るのか?」

『ハイ。

 エネルギー弾ヲ掃射可能デス』

「バイドフォースも?」

『出来マスガバイド製フォースハバイドニ汚染サレタエネルギーヲ放出スルノデ封印シテイマス』

 

 成程。

 

「でもさ、島風には撃ってもよかったんじゃないのか?」

『……ア』

 

 そうだったと言わんばかりに漏らすアルファ。

 

「お前まさか…」

『イ、イエ。

 封印ヲ解除スルトバイド係数ガ上ガル危険性がアルノデ選択肢カラ外シテイタンデス』

 

 理由は尤もらしいんだけどさ、おもいっきり言い訳臭いぞアルファ。

 まあ汚染の回避を第一に考えていたんだから責める理由がないな。

 汚染に比べたら大破してダメコン使ったぐらいは安いもんだ。

 そういえば…

 

「前に連装砲ちゃんの体当たり喰らったんだが俺は汚染されてないよな?」

 

 そう言って周りがぎょっとされてたがアルファは言う。

 

『当時ノ島風ハ交戦シタ夕立ヨリバイド係数ガ低カッタノデ生命活動ヲ完全ニ停止サセル必要ガアッタト考エラレマス』

 

 相変わらずよく解らんが、取り敢えず殺されてたらアウトだったってのはよくわかった。

 

「さてと、そろそろ行くとしようか」

 

 木曾の言葉に俺達は雑談を終わらせ、それぞれ補給と装備の確認を行う。

 木曾はストライダーにダメコンと強化型の缶を。

 鳳翔はハクサンと試製電光とダメコン。

 千代田はミッドナイト・アイとダメコンとバルジ。

 北上はフロッグマンとダメコンと九三式五連装酸素魚雷。

 ワ級はパウアーマーとダメコンとバルジと強化型の缶。

 そして俺はアルファとダメコンにファランクスと強化型の缶とタービンを載せた。

 本当は全員女神論者積みにしたいところだけど、生憎女神は在庫切れでそれは出来ない。

 そういうわけで全員には即死を防ぐためのダメコンを、後は好みで防盾代わりになるバルジか機動力を補佐する缶を乗せることで妥協した。

 俺は少しでも島風の速さに追い付くため缶とタービンを乗せることにした。

 理由はゲームではあったか忘れたけど、缶とタービンは組合せてみたらシナジー効果が発生し、最高速度が60ノットから80ノットまで引き上げられたからだ。

 速過ぎてまた転覆しないよう気をつけないと…。

 

「つか北上、鳳翔。お前らもバルジか缶のどっちかを積んでくれ」

 

 ダメコンはあくまで即死を防ぐだけなんだ。

 前みたいにチビ姫要塞で補給や修復なんて荒業は出来ないんだからやばいんだぞ。

 

「いやさ、北上様は魚雷外すと死んじゃう病気だから」

「夜戦に持ち込まれた歳に試製電光が無いと私は戦えないので」

 

 鳳翔の言い分は仕方ないとしても、北上の理由は駄目過ぎる。

 

「せめてだな…」

「それにほら、イ級のクラインフィールドで守ってくれるんでしょ?

 なるべく近くにいるからそれでいいじゃん」

 

 そう身を擦り寄せる北上。

 

「おいおい」

 

 馬鹿な事を言ってないでだな…って、押し付けんな!?

 

「解ったから少し離れてくれ!?」

 

 見ても何も思わないのと押し付けられて気持ちいいは別もんなんだよ!?

 

「ふっふーん。

 このハイパー北上様に任せときなよ」

 

 そう言うとすっと離れる北上。

 

「全く」

 

 いくら俺のガワが女(?)だからってあんまり大胆なおふざけは勘弁してくれ。

 念力じゃ触っても感触無いんだよ畜生。

 

「手が欲しい」

 

 動機が酷く邪だなと自分に突っ込みつつ俺は待ってる木曾達の下に向かった。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 出来る限りの装備を整え俺達は古鷹を(かなり不安だが)明石に任せ島風達が待つ海へと向かった。

 

「アルファ、遭遇予測時間は?」

『最短デ二日デス』

 

 二日か…。

 燃料に換算して目盛り一つか二つ分、事さえ無ければほぼ万全の状態で挑める状態だな。 

 問題は、島風達にたどり着くまで事なく行けるかどうかか。

 

「アルファ、索敵してくれ」

 

 姫が道中の妨害をしないよう手勢に通達しているらしいが装甲空母ヲ級のいざこざで溢れ更に生き残ったニュービー共までは手が回らないとの事。

 千代田もミッドナイト・アイを飛ばし索敵を手伝ってくれたが、取り敢えず近海にこちらを狙う艦は無いとのことだ。

 

「バイド反応も無し。

 島風達は深海棲艦に襲われなかったのかしら?」

 

 確かにそうなんだよな。

 深海棲艦は艦娘というか海を行くもの全般を余程の例外でなければ容赦なんてしやしない。

 氷川丸だってりっちゃん達が安全な航路を教えるまでは危ない綱渡りだったそうだし、それでも何時どこに現れるかも解らないニュービー達に見付かって襲われたこともあったそうだ。

 そんな奴らが島風達をずっと見逃し続けるか?

 

「なんか、嫌な予感が…」

『ッ!? 御主人!!』

 

 やっぱりか畜生!?

 

「敵か?」

「ミッドナイト・アイから通達!!

 大量のバイド反応検知!?

 数は…200!!??」

 

 なんだそりゃ!!??

 

「なんでそんな数が!!??」

『島風ノマザー化デ近海ノ深海棲艦ガ汚染サレタノカ?』

 

 憶測を口にするアルファだが、だとしたら冗談じゃ済まねえぞおい!?

 

「迂回してやり過ごせるか?」

 

 燃料弾薬の温存を優先してそう提する木曾。

 バイドは中枢を撃滅すればドミノ倒しに死滅していくそうだが…いや、駄目だ。

 

「あの中に第二第三のマザー候補が居たらマズイ。

 厳しいが殲滅しておこう」

 

 今まで大人しかったのが急激に活動を開始したって事からその可能性は高いしな。

 そう言ったところでアルファが駄目押しとばかりに報告した。

 

『コノ波動ハ…。

 御主人、アノ群レニA級バイドクラスノ反応ガアリマス!!』

 

 A級って、それだけで嫌な予感がするんだが…

 

「どれぐらいヤバイの?」

『A級バイドハ一匹デ星ヲ殲滅シバイド汚染サセル事ガ可能デス』

 

 え? なにそのバケモノ?

 

「倒すことは可能なんですか?」

 

 信じられないと思いながらも倒さねばならないと問う鳳翔にアルファは答える。

 

『可能デス。

 私ハ、私達ハ何度モ倒シテキマシタ』

 

 もっとバケモノがここにいたよ。

 だけどこれだけ頼もしい味方もそうはいないな。

 

「俺達も行こう」

 

 手数は多いほうがいいだろうと名乗りを上げる木曾をアルファは丁重に断る。

 

『消耗シタ状態デ島風達ニ挑ム事態ハ避ケルベキデス。

 私一人デ大丈夫デス』

 

 そこまで言うなら任せるべきか?

 

「本当に大丈夫かアルファ?」

『当然デス。

 コノ程度、肩慣ラシニモナリマセン』

 

 アルファは軽くそう言った。

 でもさ、200体のバイドプラスA級が肩慣らしにならないって普通に怖いぞ。

 まあ、あの島風達を倒そうってならこれぐらい強くないと不安だけどな。

 

「分かった。

 だけど少しでも厳しいと判断したら援軍を要請しろ」

『了解デス』

 

 そう応じたのを確認し、俺はアルファに命じる。

 

「行けアルファ。

 バイドを駆逐しろ」

『了解!!』

 

 俺の指示を受けアルファが次元の壁を貫き現れる。

 その刹那、俺は渡りの途中らしき海鳥を見掛け、アルファがそれに挨拶をしたように見えた。

 それを問う間もなく、アルファは閃光の尾をたなびかせ俺達を阻もうとするかのように群れを成すバイドへと突撃した。

 




 次回はアルファの本領というかR-TYPE全開の予定。
 正直艦これ要素が薄くなって来た気がするけど気のせいだよね?

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