なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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 価値観ノ違イガコンナトコロデ問題ニナルトハ


イヤハヤ

 

「重巡古鷹と言います。

 今日からよろしくお願いします」

 

 意識が回復するなりそう挨拶されたんだが何事?

 よく見れば右腕の代わりにごっつい義手を付けてるんだけど、もしかしてあの時木曾を庇った古鷹なのか?

 

「え、え〜と、よろしく」

 

 訳が分からないものの黙ってるのもどうかと思いそう挨拶しておく。

 つうかさ、目が琥珀色なんだけどもしかしてバイド汚染されてる?

 アルファに指示を飛ばしてからの記憶がぶっ飛んでて本気で訳が解らん。

 

『勝手ナ真似ヲシテ申シ訳アリマセン御主人』

 

 いやさ、だから何の話なんだ?

 因み今居るのは島の俺の部屋の寝床の水槽。

 久しぶりの急展開で全く状況が見えません。

 

「もしかして、また記憶が無くなってるのか?」

 

 木曾も居たの?

 ともあれ状況の説明を求めるためにも頷いておく。

 

「アルファに魚雷を任せたところからぶっつり切れてる」

 

 なので頼むから説明してくれ。

 そう言うと木曾が悲痛そうに顔を歪める。

 

「イ級。

 頼むからもう少し自分を大事にしてくれ」

 

 あ、もしかしてまた勘違いが加速してる…?

 

「俺はいつか、お前が俺達の事も忘れてしまうんじゃないかって不安なんだ」

「木曾…」

 

 ごめん。それ、おもいっきり勘違いなんだ。

 しかし正面切ってそう言う根性も無い俺は代わりに言う。

 

「忘れねえよ。

 昔の事をもう思い出せなくても、木曾達の事は絶対忘れない。

 約束する」

 

 我ながらなんつうか…

 

「……分かった。

 信じるからな」

 

 そう険しさを緩める木曾。

 こうやって見るとイケメンより可愛いって感じだよな。

 面向かって言う勇気は無いけどさ。

 

「それで、もしかしなくても古鷹はバイドに汚染されているのか?」

『ハイ』

 

 アルファの説明によるとこの古鷹はやっぱり木曾を庇った娘だった。

 木曾を庇ったせいで右腕を失いしかもバイドに汚染され、本人はバイドに成り切る前に死ぬことを望んだが仲間の天龍達の説得によりバイド汚染と戦う道を選ぶことにしたそうだ。

 

『本来ナラ御主人ニ判断ヲ伺ウベキ事案デシタガ』

「いや、俺も天龍達の意見を推してるから構わない。

 それよりもバイドを押さえ込むってどうやったんだ?」

「これです」

 

 俺の質問にアルファが古鷹の義手を注す。

 

『義手ニフォースコンダクターヲ組ミ込ムコトデフォースト同ジ要領デ制御シテイマス』

「つまり、古鷹はバイドと言うよりフォースなのか?」

『コントロールサレタバイドトイウコトデアレバソノ認識デ間違イハアマリアリマセン』

 

 間違ってるけど近いってなら素直にそう言えよ。

 まあ、専門知識を乱立されてもちんぷんかんぷんだからいいや。

 

『トハイエイクラコントロール出来テモ古鷹自身ガバイドニ飲ミ込マレレバ終リデス』

「そうなりません」

 

 アルファの説明に語調を強める古鷹。

 

「皆とまた会うためにも、私は絶対にバイドに屈したりはしません」

 

 強い意志を持ってそう宣う古鷹に俺は特に言うこともないなと一言そうかと告げる。

 

「一応確認するが、古鷹もやっぱりR戦闘機化しているのか?」

 

 バイドになった艦娘は悉くR戦闘機の性能を獲得したわけだし、古鷹もその例に倣ったのか聞いてみる。

 

『ハイ。

 R-9/0『ラグナロック』。

 ソレガ古鷹のR戦闘機ノ性能デス』

 

 神々の黄昏だっけ?

 随分厳つい機体名だな。

 つうかケルベロスにハクサンにカロンにラグナロックと節操ねえな。

 

「私、凄いんですよ。

 義手から波動砲を連射するハイパー波動砲とエネルギーを一点に集中させて一撃必殺を実現したメガ波動砲の二種類を使いこなしちゃうんですから」

 

 嬉しそうにそう自慢する古鷹。

 波動砲の連射と一点集中か…

 

「ペガサス流せ…」

「それ以上はいけない!?」

 

 木曾が遮ったせいで皆まで言わせてくれなかった。ちぇっ。

 それより古鷹がやけに嬉しそうなのは軽巡より性能が低いって言われてたのがバイド汚染で強化されたからか?

 前向きに考えようって無理して空元気を振り撒いてるだけかもしんないけど。

 どっちか分からないし水を差すのもどうかと思い俺は本来の問題に立ち返ることにした。

 

「ともあれそれはさておきだ。

 アルファ、夕立は撃破出来たのか?」

 

 超重力砲を叩き込んだような気もするけど、あれは波動砲じゃないからな。

 

『健在デス。

 波動カラ島風達ト合流シテイル模様』

「あれで撃破出来なかったのか…」

 

 木曾がそう漏らしたからやっぱり俺は夕立にぶっ放してたらしい。

 悔しいけど超重力砲でもダメとなったならトドメはアルファとR戦闘機に任せるしかないな。

 古鷹?

 彼女はバイド汚染の進行を防ぐために仕方なく島に来たんだから頭数に数えるわけないだろ。

 

「島風撃破のためにも先ずは戦力拡充だな。

 明石はもう始めてるのか?」

「ああ。

 ワ級達が持って来てくれた資材で早速始めてる」

 

 資材が来るなり早速とか廃人まっしぐらだな。

 一度なんとかしとかんとそのうち食糧分まで使い込みそうだな。

 

「んじゃ、俺達も行きますかね」

 

 まあそれは後にして、水槽から上がって工廠に向かうとちょうど一機完成した所らしい。

 

「今度はどんな変態機体が完成したんだ?」

 

 そう声を掛けるとこちらに明石達が気付く。

 

「変態なんて失礼だよ。

 確かに見た目はあれだけどさ」

 

 そう言いながら明石が見せたものに俺は目を丸くする。

 差し出された緑色のパウアーマーだった。

 ただし、脚に鰭が着いてたりどっちかいうと蛙みたいなんだが。

 

「パウ?」

「TP-2M『フロッグマン』だよ。

 これは雷巡と水母専用の機体で簡単に言えばR戦闘機形をした甲標的だよ」

 

 ざっくりした説明だなおい。

 

「ってことは北上か木曾が使うのか?」

 

 千代田はミッドナイト・アイがあるから後回しにとそう振ると木曾が辞退した。

 

「俺はいいよ。

 甲標的なら俺より北上姉のほうが上手く使いこなせるだろしさ」

「そう?

 じゃあ貰っちゃおうかな」

 

 そう言いながらフロッグマンを手に取る北上。

 その横でアサガオと一緒に大量の資材を運ぶ明石の姿。

 

「まだやる気か?」

 

 アルファ、ミッドナイト・アイ、パウアーマー、ハクサン、フロッグマンと戦力としては十分と言わずとも戦える程度に揃ったと思うんだが。

 そう尋ねるが明石は言う。

 

「後一機。

 最低一人一機は持たせたいんだ」

 

 そう言う明石の顔は真剣だった。

 明石は明石なりにちゃんと俺達の力になろうとしてくれてたんだな。

 

「それにここまで来たら全機完成させるまで資材が枯れようとブッ込み続けるしかないじゃないか」

 

 この野郎そっちが本音か!?

 

「今すぐ止めろ!?

 じゃないと飯抜きになっちまう!!??」

 

 工廠に居た全員掛かり慌てて止めに掛かるが、間一髪明石が開発を開始させてしまった。

 

「ちぃっ!?

 明石を縛り付けて資材を確保しろ!!??」

 

 注ぎ込んだ分はもうどうしようもないがこれ以上浪費させないために資材庫に鍵を掛ける。

 

「私の楽しみがー!?」

 

 笑えない事を嘯く明石を無視し完成されたR戦闘機を確認する。

 見た目はミッドナイト・アイからレーダードームを取り外したようなシンプルな機体なんだけど、下部に増槽らしき器管と機体とほぼ同サイズのミサイルを抱えていた。

 

「なんて機体だアルファ?」

『コレハR-9B『ストライダー』デス。

 主兵装のバリア波動砲ハ盾トシテハ優秀デスガ単体デハ使イ勝手ノアマリ良クナイ機体デス』

「この下のは何?」

 

 また鳳翔に回す機体かなと考えていると北上がミサイルを指して尋ねる。

 

『ソレハ戦略ミサイル『バルムンク』。

 核融合ノ力デ多クノバイドニ打撃を与エタ最終兵器デス』

 

 ……………今、なんつった?

 

「えっと、聞き間違いだよねアルファ?

 今さ、これが核兵器って言ったのは私の聞き間違いだよね?」

 

 カタカタ震えながらそう尋ねる北上。

 そう言えば北上は呉で広島のアレを見ちゃった一人だったっけ?

 俺も聞き間違いだと信じたいんだけどさ…

 

『ソウデスガナニカ?』

 

 あっさり認めやがったこの野郎!!??

 

「今すぐ解体するよ!!??」

「分かってる!!??

 クラインフィールドで封印処理するから急いで放れろ!!??」

 

 大慌てで俺と北上で抹消処理に走る。

 

「一体何の騒ぎですか?」

 

 そこに鳳翔が現れた。

 

「ああ。

 なんでも新しいR戦闘機が核兵器を携えてたって」

「なんですって!!??」

 

 木曾の話を皆まで聞かず俺達の所に飛び込んでくる鳳翔。

 

「件の兵器はそれですか!?」

「ああ。

 クラインフィールドで囲ってるけど放射能まで防げるかわからんから気をつけてくれ!!」

 

 必死で処理しようと躍起になる俺達だが、何故か木曾が不思議そうに尋ねる。

 

「なあイ級。

 核兵器ってなんなんだ?」

 

 あ、木曾は原爆投下前に沈んでるから解らないのか。

 

「ピカだよピカ!!??

 これのせいで広島と長崎が悲惨な地獄絵図にされちゃったんだよ!!」

 

 空のドラム缶によく混ぜたコンクリートを流し込みながらそう答える北上。

 

「……マジか」

 

 漸く理解したのか顔を青くする木曾とその他。

 

「つうかアルファ!?

 なんでお前の世界では核なんか持ち出してんだ!!??」

『放射能汚染程度、バイド汚染ニ比ベレバ除線出来マスカラ』

 

 規準がおかしい!!??

 

「…はっ!?

 まさかお前世界じゃバルムンクは普通なのか!?」

『ストライダーハ大量ニ量産サレテマス。

 更ニ強化サレタ『スレイプニル』トイウ機体モ有ルグライデスヨ』

 

 バイドよりも先に人類のせいで宇宙が大ピンチじゃねえか!!??

 ドラム缶にバルムンクを封印して更にクラインフィールドを何十にも防護を重ねてから工廠から運び出しつつ俺は叫んでしまった。

 

「なんでこんなことになったんだ!!??」




 前回が今年最後と言ったな? あれは嘘だ!

 いやすんません。

 キリのいいところで切ったせいです短めですが意外とすんなり書けてしまったので投下させて頂きました。

 古鷹がラグナロックな理由は適当なR戦闘機がなんも思い付かなかったからです。

 そして是非ともやりたかったネタの一つがついにやれた!

 核兵器のバルムンクにガクブルする史実生存組はいつかやりたかったネタだったんですよね。

 ということでストライダーというかR-9B系は今後バルムンク封印状態の残念仕様となります。

 次は流石に来年になります。

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