なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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 すまん、理解が追い付かない。


なん…だって……?

 火傷を手で覆いながら大和が怨嗟の顔で砲を構える。

 

「殺ス」

 

 46cm砲だけでなく防衛に使用していた副砲までが水平にこちらを狙い定める様子に一気に寒気が走った。

 

「水平斉射って…冗談だろ?」

 

 直上からのカス当たりでも洒落にならないものが真っ直ぐ飛んでくるなんて冗談でも程がある。

 飛距離は俄然落ちようとその命中率は半端なく上がり、なによりこちらが避ける時間もがっつり消えるからだ。

 降り注ぐ爆弾を意に反さない大和に本気で撃つ気だと反射的に叫んだ。

 

「全員潜れ!!」

 

 咄嗟にそう叫び瑞鳳はアルファに任せ全力で海面に没する。

 数秒の間もなく立て続けに砲撃音が重なった爆音が水中にまで響き、殆ど時差なく真上を通過した九一式鉄鋼弾が海面を刔り取りながら通過した。

 って、さっきより威力上がってねえか!?

 海中に潜ったお陰で衝撃は緩衝されたが代わりに音の爆撃に曝された。

 ち、聴覚が死ぬ…。

 潜水艦ってのはこんなもんに毎回曝されてるのか。

 こんな状況でも新しい発見に感心が行く己に半ば感動しながら急いで浮上。

 

「アルファ、瑞鳳!!??」

 

 アルファなら防ぎきってくれたと信じているが、直接見るまでは安心できない。

 

「ごめん、やられた…」

 

 艤装を破損させた瑞鳳が悔しそうに言う。

 アルファも無傷ではなく、ビットは消え生体部分が焼かれていた。

 おそらくフォースシュートが間に合わず正面から直撃弾を受け止めるしかなかったようだ。

 つうか、余波だけでそれだけ喰らうとか益々洒落になんねえ。

 

「アルファ、被害は?」

『損傷18パーセント、ビット喪失、継戦ハ可能デス』

 

 フル装備でもやや優性か拮抗まで押し戻すのが精一杯だっただけにアルファの防御手段が減ったのがかなり痛い。

 しかもここに来て大和がこちらを集中的に狙うようになったのは最悪というしか無い。

 

「すまないアルファ、もう少し堪えてくれ」

『了解』

「タ級、お前も修復に戻れ!」

「シカタナイワネ」

 

 装甲空母ヲ級だけでなく大和まで警戒しながらの撤退に単身は危険過ぎるとタ級は瑞鳳と共に下がる。

 

「りっちゃんは装甲空母ヲ級を頼む」

「クチクハドウスルノ?」

 

 決まってんだろ。

 

「大和を押さえ込む」

 

 正直、我慢の限界は大分近かったんだよ。

 そのタイミングでこれだ。

 もうよ、ぶちギレてもいいよな?

 

「行くぞ大和ぉぉおおお!!」

 

 最大戦速で一気に駆け出す。

 

「目障りなのよ!!」

 

 吶喊する俺に向け大和が全砲門をこちらに向ける。

 目障りだぁ?

 

「それは、こっちの台詞だぁ!!」

 

 俺は妖精さんにノータムで爆発かするよう伸管をセットした爆雷を真横に放らせる。

 直後爆雷が炸裂し衝撃で身体が跳ねる。

 結果、船体は本来の航路から大きく逸れ大和の放った砲弾にカス当たりも許さず回避。

 

「小細工を!!」

 

 大和の声と同時に対空機銃がやたらめったらな弾幕を貼るが、そんなもんが足止めになるわけねえだろうが!!

 

「喰らえや!!」

 

 弾幕に正面から突っ込み反撃にファランクスを叩き込む。

 一応生身の部分を狙った弾丸だが、しかし大和は毛ほどもききやしない。

 

「潰す!!」

 

 大和が弾幕を無視して副砲で反撃するが、距離200を切った状況に50ノットを叩きだし駆ける俺を捕らえ切れない。

 この距離なら主砲は自爆するため使えない。

 維持できれば俺に多少の分があ…

 

「砕け散れ」

 

 一瞬の油断から接近を許した大和の拳が俺の横っ腹をブッ叩いた。

 

「こふっ!?」

 

 女の柔肌がやったなんて信じられない威力にメキメキと身体が軋み、派手な水飛沫を撒き散らしながら俺の身体が吹っ飛んでいた。

 更に追撃で放たれた三式弾の炎が俺を激しく炙り、妖精さん達が悲鳴を上げながら消火に走るのを聞いた俺は、右目に付けていた木曾の眼帯が焼け落ちたのを目にして|たが《・・》が外れた音を聞いた。

 

「…ぶス」

 

 もウ 思うが ヨく 回ラ ナイ

 

「ツ…ブ……す」

 

 ク磨の 仇を、 アの やま和が 殺し タイ としか ソレ イ外 考え ラレ なイ

 

「つ…ぶす…ツブ…ス」

 

 クマノ ツブス チトセノ ツブス キソノ ツブス ヨウセイサンノ ツブス ズイホウノ ツブス キタカミノ ツブス アルファノ ツブス アキツマルノ ツブス

 

「ツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブスツブス…」

 

 ヤマトヲツブス

 

「BUTTSUBUREROYAMATO!!」

 

 ギアガサイコウチニタタキコマレ60ノットノチョウコウソクキドウニハイル

 

「貴様が現れなければ!!」

 

 ヤマトガカオヲユガメテワメク

ウルサイ

 オマエコソイナクナレ

 オマエガイタカラチトセガシンダ

 シネ

 ファランクスガヤマトヲウツ

 ファランクスヲ クラッタヤマトガクルシム

 

「威力が上がったところで!!??」

 

 ヤマトガウデヲノバス

 ヨケキレナイ

 ツカマレタ

 カマワナイ

 ファランクスヲウツ

 ツカマレタカラダガキシム

 ソンショウガカクダイ

 チュウハシタ

 カマワナイ

 バクライヲナゲル

 バクハツ

 ジブンモクラウ

 カマワナイ

 ヤマトノホウガ ダメージガオオキイ

 

「駆逐艦風情ガ戦艦に我慢競べヲ」

 

 ウルサイ

 バクライヲゼンブトウカ

 ヤマトノフクホウガツブレタ

 ショウゲキ

 ヤマトガナグッタ

 ファランクスガ イチモンツブレタ

 マタナグラルタ

 カマワナイ

 ノコッタファランクスヲウツ

 ヤマトノデンタンガフキトンダ

 カラダガキシム

 ナグラレタ

 カラダガコワレタ

 コウコウカノウ

 ムシ

 ファランクスヲウツ

 ヤマトノソウコウニアナガアク

 ナグラレテソウコウガワレタ

 マダキカンブハブジ

 ファランクスガコワレタ

 トツゼンカイホウ

 

「キャアアア!?」

 

 チャクスイノショウゲキデファランクスゼンメツ

 

『御主人!!』

 

 トツゼンヒキヨセラレタ

 ゲンインアルファ

 ヤマトガツカンデイタテガ ナクナッテイル

 ハドウホウデヤマトノウデヲケシトバシタ

 

「化物メ!?

 ヨクも私の腕ヲ!!??」

 

 ヤマトノシュホウガアルファヲウツ

 

『ヤラセナイ!!』

 

 アルファガフォースデフセグ

 タリナイ

 アルファガミヲタテニシタ

 

『スミマセン御主人』

 

 ヤマトノホウゲキデアルファガシンダ

 マタ、ヤマトガコロシタ

 ……コロス

 コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス コロス!!

 

「ブチコロスヤマトォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 キエロ

 イナクナレ

 オマエナンテイナクナレバイイ

 

「GAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 シュホウヲツカウ

 ヨウセイサンガヤメロトイウ

 キクヒツヨウナイ

 ヤマトヲコロス

 

「ソれは、マサか…!?」

 

 ヤマトガウツ

 トドカセナイ

 

「ちょっ!?

 なんでイ級があんなもの持ってんのさ!?」

「ワタシタチガキキタイワ!?」

 

 キタカミトリキュウガウルサイ

 ウテバマキコム

 カマワナイ

 カイブツトヤマトガシヌナラカマワナイ

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!??」

 

 カイブツガバクダンヲフラセル

 トドカセナイ

 アトスコシデゼンブシヌ

 シネ

 ミンナシネ

 ダイジナモノガ ウバワレルセカイナンテ コロシテヤル

 

「これが、イレギュラーの力だということなのか『総意』よ!!??」

 

 ヒメガナニカイッテイル

 ドウデモイイ

 ゼンブシネ

 

「もしかして、私達もやばくない?」

「全員備えなさい!!??」

 

 コレデゼンブシネ

 シュホウ…

 

「イ級!!」

 

 コのコえは…まさか…

 そノコエに、今まデウマく回らなかった頭が動き出す。

 

「俺の仲間をやらせるか!!」

 

 懐かしい声と同時に北上と同等の数の魚雷が通過して大和と装甲空母ヲ級に迫る。

 

「ぐぅっ!?」

「■■■■■■■■■■■■■■!!??」

 

 被雷に双方が苦痛の声を漏らした直後、俺の身体が誰かに拾われ水面から離れた。

 

「クソッ、轟沈寸前じゃないか!?」

 

 そう舌を打つその顔には新しい眼帯がされていた。

 

「そんな…」

 

 忘れるはずがない。

 俺が初めて出会った艦娘を、見間違えるなんて絶対しない。

 

「……木曾?」

「ああ。

 そうだ」

 

 今更だが木曾は腰にサーベルを提げマントを羽織っている。

 この姿は改二の重雷装艦仕様じゃないか。

 

「お前今までどこにいたんだよ!?」

 

 改装するなら泊地か相応の設備がある基地でなければ出来ないはず。

 

「俺より先にお前だ!!」

「あ、はい」

 

 なにこのイケメン?

 なんか、普通にカッコイイんですけど?

 

「北上、すまないが一旦下がる!!」

「あいよ〜。

 私もすぐ下がるから話聞かせてよね」

 

 そう言いながら魚雷を乱射する北上。

 どうやら大和も一旦下がるようだが、一体誰があそこまで損傷与えたんだ?

 なんかさ、殴られてから記憶が曖昧なせいで状況がよくわからないんだよ。

 

「木曾、あっちに拠点にしている姫がいる。

 修復剤もあるからそっちに向かってくれ」

「分かった」

 

 手が無いから妖精さんに進路を指してもらい木曾に抱かれたまま俺は退避した。

 




 暴走大和無双だと思った?

 残念暴走イ級君でした。

 ということで遂にメインヒーローが復活しました。

 ヒロインじゃないのかって?

 何言ってるんですか。

 ヒロインはイ級に決まってるでしょう?

 とまあ100%本気の冗談はさておき次回は小休止回の予定。

 …ほのぼの番外編が書きたい。

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