なんでこんなことになったんだ!?   作:サイキライカ

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しかもこんなに強くなってまあ。


生きていたのか!?

 

 この世界は病院船まで実装済みなのかと驚いている俺を尻目に、リ級と氷川丸は話を続ける。

 

「コノアタリニハ、アブナイカラ チカヅカナイデ」

「そうはいかないわ。

 私までここを離れたら多くの人が病に苦しんでしまう。

 人を救うための病院船として、それは耐えられないわ」

 

 自らの生き方は変えないとそう言う氷川丸。

 その心意気は立派だけど、せめて護衛っていうかもしかして独力でやってんのか?

 

「鎮守府に所属しないのか?」

「彼等は駄目。

 艦娘はまだいいけど、鎮守府は私を輸送要員に組み込もうとするから力は借りたくないの」

 

 そういや氷川丸って国際法逆手に取って輸送艦に使われたんだよな。

 あれがあるから嫌がってるのか?

 

「妹達も頑張ってるし、姉としてここは引けないわ」

「……シカタナイ」

 

 そうごちるとリ級は言った。

 

「カイブツガイナクナルマデ ワタシタチガゴエイスル。

 コトワルナラ ムリヤリオイカエスワヨ」

 

 ……おい。

 その私達には、俺も含まれてるのか?

 護衛だけならやぶさかじゃないが、俺にだってやることがあるんだぞ?

 

「まあ、さっきみたいなのもあるから妥協しなきゃだめよね」

「ソウイウコトヨ」

 

 このままなし崩しに巻き込まれるのは流石に回避しないと。

 そう思い口を開こうとした俺だが、それよりももっとヤバイ問題が起きた。

 

「……なんだ?」

 

 さっき逃げ出した奴らが凄い勢いで引き返して来たのだ。

 

「どうしたの?」

「…来る」

 

 その理由は、対空レーダーが教えてくれた。

 

「怪物の、装甲空母ヲ級の爆撃機がこっちに向かって来ているぞ!!」

 

 そう叫ぶとリ級達も警戒する。

 

「装甲空母ヲ級って何?」

「レイテを掻き回した元凶だ!」

 

 さっき逃げたヌ級達が原因らしいが今更気にする暇はない。

 

「爆撃出来る水偵ないかりっちゃん?」

「スイテイジタイモッテナイ。

 トイウカ、リッチャンイウナ!?」

 

 恥ずかしそうに喚くリ級リ級を聞き流しレーダーを睨む。

 ヌ級の艦戦を使わせるという手もあるが、はっきり言って装甲空母ヲ級の艦戦は同数の紫電改でも圧し負けかねない程に強く、怪物相手には壁にもなりはしないだろう。

 

「陣形を輪形陣に!

 氷川丸を中心に俺が直衛に入るから生き残ることだけに集中しろ!」

 

 激を飛ばすとリ級達はすかさず周囲を固める。

 距離二百の位置でハッチを開き、相変わらず馬鹿げた高度から爆撃を開始するB-29。

 

「ってぇええええ!!」

 

 ありったけの砲が上に向け放たれ落下してくる爆弾の迎撃が始まる。

 

「キャアアアッ!?」

「ダレカタスケテェェ!?」

「アイエェェェ!? バクゲギ バクゲキナンデ!?」

 

 …意外と余裕だな?

 馬鹿みたいに騒いでいる向こうは無視して、直上から落ちてくる爆弾の狙撃に集中する。

 対空機銃とファランクスが撃ち抜いた爆弾が破裂した爆炎の花火が空を覆い尽くしリ級の三式弾と相俟ってまるで花火大会のようだった。

 前回と違い弾薬に余裕と手数もあり、B-29が投下した爆弾は俺達に落ちることはさせていないが、物理法則を無視した量の爆弾が延々降り続く状況に終わりが見えない。

 

「くそ、後どんだけ落とす気だ!?」

 

 空は炎の赤と黒煙の黒に覆われながらもレーダーは落下する反応に終わりを告げようとしない。

 

『……主人。 御主人』

 

 …幻聴か?

 今、俺の聴覚にもう聞くはずのない声が響いた。

 

『私ヲ、喚ンデ下サイ御主人』

 

 お前、生きてたのか?

 

『次元ノ壁ガ、座軸ヲ合ワセル鍵ガタリマセン。

 御主人。

 私ヲ、アナタノ声デ座標ヲ、アナタノ居場所ヲ教エテクダサイ』

 

 座軸とか座標って何の話だ!?

 いや、考えている暇はない。

 訳が分からないけど、俺はその要求に全力で声を張り上げた。

 

「来い!!

 『アルファ』!!」

 

 直後、何も無い空間が波紋を広げ、放たれた『鏃』のように波紋な中心から肉の塊と戦闘機が融合した異形の存在『バイドシステムα』が飛び出した。

 最期に見たそのままの姿のアルファに俺は感動と同時に、以前には無かった触手の生えた凄まじいグロさの謎の球体を引き連れている事に突っ込みたい気持ちでいっぱいになっていた。

 

「ナンダアレ!?」

「グロイ!? キモイ!?」

「アラテナノ!?」

 

 アルファの異様にリ級達が混乱して弾幕が薄くなり、何発かの爆弾が隙間を縫って振ってくる。

 

「しまっ…」

 

 あの悪夢が繰り返されるのかと思考が黒く染まろうとするが、

 

『ヤラセナイ。

 フォースシステム起動。コントロールロッド信号確認。

 喰ラエ、『バイドフォース』』

 

 アルファの後部に追随していた球体が離れ、アルファ同様信じられない速さで爆弾に迫ると爆弾を文字通り『喰らい尽くした』。

 更にバイドフォースと呼ばれた球体は下から飛んでくる三式弾や機銃の弾もものともせず次々と飲み込み、全ての爆弾を喰らい尽くすとB-29を護衛する艦戦を翻弄するアルファの元に向かい、その正面に陣取る。

 

「アレは、味方なの?」

 

 困惑する氷川丸に俺はああと頷き、バイドフォースによって次々と塵も残さず艦戦を破壊していくアルファを眺める。

 バイドフォースを得たアルファはもとよりの異常な速さと合間りキルレシオ50:1でも足りなさそうな、まさに獅子奮迅の活躍を以って空を蹂躙。

 慣性とか重力とか何それおいしいのって勢いで直角に飛び、フォースを切り離したり射出しながら敵艦戦を撃滅し尽くした。

 その間も降り続ける爆弾の雨を一発も残らず喰らい尽くしているんだから、もう凄いを通り越して怖いんだけど。

 爆弾を落としきったB-29は口惜しそうにハッチを閉じそのまま逃走しようとするが、アルファはそれを許さない。

 

『敵、残リ1。

 波動砲チャージ100パーセント完了。

 デビルウェーブ砲、発射』

 

 波動砲って、宇宙戦艦ヤマトのあれ?

 なんだそれはと思う間もなくアルファの後部から紫色の光の塊が放たれた。

 放たれた光は見たことも無い怪物の姿を模りそのままB-29へと体当たりすると大爆発と共に爆発四散した。

 ……もう、あいつだけでいいんじゃねえの?

 

「オワッタ…ノカ?」

 

 濛々とする煙を眺めながらリ級がごちる。

 

「ヒガイハ?」

「ムキズヨ」

「こっちもだ。氷川丸にかすり傷もねえ」

 

 前回のニの舞は避けられた。

 頭数と三式弾持ちのリ級が居たってのが大きかったが、なによりアルファの存在が1番でかい。

 空間を波立たせバイドフォースを中に押し込んで消してからゆっくりと降下してくるアルファ。

 外見のグロさに周りがドン引きするが、俺は構わず先ずは再開の喜びに打ち震える。

 

「アルファ!」

『遅ソクナリマシタ。

 バイドシステムα、帰還シマシタ』

「お前、死んだって…」

 

 木曾にそう言われていた俺にアルファは言う。

 

『物理的ナ破壊デハバイドハ死ニマセン。

 バイドヲ葬ルニハ、同ジバイドノ力カ波動ヲ用イル意外方法ハアリマセン』

 

 え〜と、つまり、殺すには特別な手段がいるって事か?

 

「それはそれとして、さっきのは?」

『以前遭遇シタ島風ヨリ頂戴シタ『バイドノ切レ端』ヲ中核トシテ製造シタ『フォース』ト呼バレルバイドデス。

 常時運用ハ危険ナノデ、次元ノ狭間ニ置キマシタ』

 

 あ、やっぱりあれもバイドだったんだ。

 つうか、島風が持って来たってどういうことなんだ?

 

「じゃあさっきの波動砲って?

 つうか、武装無かったんじゃないのか?」

 

 スロットには非武装と書いてあったはずだよな?

 

『次元ノ彼方デ隔タレタ歴史ヲ歩ム同郷デ改修シマシタ。

 デスガ、汚染ヲ広ゲナイタメニ波動エネルギーノ充填ニハ非常ニ時間ガ掛カルヨウニナッテイマス』

「どれぐらい?」

『フルチャージニ一ヶ月ヲ要シマス。

 マタ、撃ツ毎ニチャージングガ必要デス』

 

 駄目じゃん。

 いや、でもあんなもの乱射されたらそれこそ艦娘も深海棲艦も勝ち目無いし、ちょうどいいのかもしんねえな。

 

「ま、まあとにかくだ。

 積もる話も山ほどあるが、取り敢えず着艦してくれ」

『了解』

 

 カタパルトを稼動させアルファを格納する。

 懐かしい感触に欠けていた隙間が埋まったような安心感と一緒に、俺はアルファが生きていたんだから木曾だって生きているかもしれないと希望を持ち直した。

 

「アネゴ!」

 

 と、突然さっきの爆撃でぼろくそにされたヌ級達が俺に平伏した。

 って、姐御?

 

「クチクナノニ キョウリョクナカンサイキヲモッテイテ シカモソノツヨサ。

 ワタシタチヲ、ゼヒトモシャテイニシテクダサイ!」

 

 ……舎弟?

 それってつまり、

 

「艦隊に加えてほしいって事?」

「「「「オネガイシマスアネゴ!!」」」」

 

 え〜。

 

「慕うのは勝手だけどさ、俺、人間や艦娘襲う気全くないんだけど…」

「ジャアワタシタチモソウシマス!」

「いや、だから…」

「ネンリョウハコビデモナンデモシマスカラ!」

 

 ん? 今なんでもするって言ったよね?

 じゃあ解散って言おうと思ったんだけど、ポンとリ級が頭に手を置いた。

 

「ナカマガフエテヨカッタナ」

 

 ……どうしてそうなる。

 

「あ、じゃあ今からレイテに医療品運ぶの手伝ってくれる?」

 

 ちゃっかり護衛の頭数と数える氷川丸まじちゃっかりさんですね。

 

「……しゃあねえ」

 

 こうなったら流れに身を任せるしかないか。

 

「お前等、今から氷川丸を護衛するぞ。

 付いてこい」

「リョウカイアネゴ!」

 

 喜々として氷川丸の周囲を固め始める二級達。

 舎弟とかいろいろ面倒な事になってきたけど、アルファが帰って来た事が俺にはなにより嬉しかった。

 

 木曾、お前も必ず見つけだしてやるからな。

 




 漸くアルファ合流してくれたよ!

 と言っても原作完全再現したら本当にアルファだけで事足りるので、原作比率では大分弱体化しています。
 因みにバイド粒子弾は撃てません。
 理由は弱体化修正もありますが、アルファは特殊なのが理由です。
 その辺りは次に解説したいと思います。
 そして、次回から姫様も動く予定です。

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