強制転生とかふざけんな!!
『突然だがお前には転生してもらう』
いきなりの通告に頭が真っ白になった。
普通に考えてみてほしい。
なんの脈絡もなくいきなり世界が真っ白になってしかもそんな通告を受けて正気を保てる奴がいるか?
いたらそいつは狂人だろう。
『当然拒否権はない。
だがしかし、俺はとても寛容だ。
多少の恩恵は恵んでやっても構わない』
なにこいつ?何様?
『で、だ。
早速望みを言ってみろ』
「じゃあ死ね」
そう言った瞬間地面に叩き付けられた。
痛みはないが内蔵が潰れそうな圧迫感に襲われギャップに気持ち悪さがマッハになる。
『ふん。
いつもなら反省するまでこのままにしておくが、生憎時間がないからさっさと進めよう』
「勝手な事を!?」
殴りてえ。
マウントポジションで幕ノ内張りに泣くまで殴りてえ。
しかしそんな俺の願望も虚しく野郎は勝手に話し始める。
『お前には今から『艦隊これくしょん』の世界に転生してもらう。
一応聞くが知ってるよな?』
「……ああ」
答えたくはないが、さっさと解放されたい願望が勝り俺は肯定する。
『艦隊これくしょん』と言えば言わずと知れたブラウザゲームだ。
最近念願叶いようやく始められたというのに…
「……おい」
『質問なら三つまでだ』
無視して俺は尋ねる。
「なんで艦これに転生させるんだ?」
『面白そうだから』
「殺してえ」
テメエ勝手に何人の人生弄ぼうとしてんだこら?
『今のは見逃してやろう俺は寛容だからな』
「……」
むかつく。
『で、転生させるだけでは面白くない。
だから貴様には恩恵をくれてやることにする』
「どんなだよ?」
むかつくがサービスはしっかり貰っておく主義なので一応聞いてみる。
『好きな装備をくれてやろう。
どうだ?』
そう言われ俺は考えてみる。
恩恵の内容自体悪い話しではない。
ゲームでは資材と根気さえあればいくらでも武器は開発出来たが、それが現実となればどうか?
下手をすれば開発はおろか建造だってろくにできるとは限らない。
と、いつの間にやらやる気になっている自分に気付き、その前に確認せねば。
「質問だ。
俺がいなくなった後はどうなる?」
『今までの事を覚えているか?』
「……」
駄目だ。
親兄弟がいたかどころか名前すら思い出せない。
『気にするのは無駄とだけ言っておこう』
「……そうかい」
都合のいい事以外の記憶を失ったのかそれとも野郎が奪ったのか定かではないが、今解らない事を知ろうとしても徒労という奴だろう。
「取り敢えず46cm砲と震電改くれ」
『駄目だ』
いきなり断りやがったぞこいつ。
「なんでだよ?」
『駆逐艦に積めないからだ』
つまり駆逐艦に積めれるもの限定かよ。
『ああそうだ。
別にゲームの中の以外でも構わないぞ。
例えば、日本の護衛艦とか名前を変えた駆逐艦の装備でも構わん』
なにそれ素敵。
あまり詳しくはないがCIWなんちゃらとかいうの機銃一本だってゲームの対空機銃からしたらチート装備だろうに。
とはいえ詳しく知らないから適当に言う。
「じゃあイージス艦の対空機銃と高性能レーダー二つと応急修理女神」
『機銃はファランクスでいいか?』
ファランクスってなんだ? 槍か?
「詳しくないから任せる」
『そうか。
…普通過ぎてつまらんな』
あくまでテメエの趣味かコラ。
『まあいい。
折角だ。大サービスして偵察機を一機くれてやる。
せいぜい生き延びろよ』
「は?」
どういうことだと問うより早く世界が滲んでいく。
そして、気がついた時俺は海のど真ん中に居た。
「……いきなりこれかよ」
360度見渡せど青い海と水平線ばかりの広い世界に放り出され呆然とする俺。
しかし、すぐに異常な事に気付く。
「……手は何処だ?」
艦娘に転生させられたのかと思ったが、四肢の感覚が無い。
「……まさか」
冗談だろと思いながら水面に視線を移し、そして映し出された自分の姿に俺は本気で奴を呪った。
「深海棲艦かよ…」
水面に映し出された『駆逐イ級』の姿に、俺は呆然とするしかなかった。
興味を抱いていただけたらそれで十分です。