ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。 作:ソン
センの前の世界が「ACVD」だったと言う話し。要するにクロスです。
……何で書いたんだろうか。
ちなみに本編はまだ時間かかりそうです。……何と言うか、展開に乏しいんですよね。
うむ……。
破壊、爆発。ただそれらを繰り返す中で私は彼を見ていた。ACのコックピットから体を飛び出して、私の名前を強く叫んでいる。泣きそうな彼の顔、それが彼らしくて少し笑ってしまった。
凄腕の傭兵――私とファットマンの二人が、偶然戦場で出会いそのままパートナーとなった彼。
いつも自分の事を『僕』と呼んで、少しネガティブで、だけど全てを黒く焼き尽くす力を持った一人の戦士。
彼は強くて頭も回る。そして決して諦めない。おかげで私とファットマンの仕事など、彼に戦場の変化を伝えるくらいしか無かった。
『Day after day I stay around on far way』
―来る日も来る日も、私の中で燻り続けている―
いつか彼が呟いていた唄。それは彼が好きな歌。だから、私もそれが好きだった。
まるで彼の覚悟のようだったから。まるで彼が、あの『黒い鳥』のようだったから。
『Day after day things are rolling on』
―来る日も来る日も、私は只管戦い続ける―
体を乗り出していた彼が、何かに気づいた後、振り絞るように手を握りしめていた。見れば、自律兵器が次々と私達の周りに集まっている。財団の差し金に違いないけど、これしきで彼を倒せるわけが無い。
やがて彼は、その機体で壁を蹴り上がって空から自律兵器を破壊していく。
――黒い鳥、全てを黒く焼き尽くす。あぁ、本当にお婆ちゃんの話通りだ。
戦いたい、彼の隣で。
でも、もうそれは叶わない願い。私自身がそれを拒んだのだから。彼は戦い続けるのだろう。歓びを、答えを、その戦いの先で見つけるために。
大丈夫、貴方ならきっと私がいなくても戦える。だから私も貴方がいなくても頑張るから。私も、もう一人で立てるから。
だから、私は寂しくなんかない。
あぁ、駄目だ。彼の傍にいたい。彼と共に戦いたい。
生きたい。
僕、セン・ディアンスはレポートに目を通していた。それがオペレーター兼研究者でもある僕の仕事だから。――元傭兵なんて、誰にも信じて貰えないから言わないけど。
戦場で生きた者として、僕にはゴッドイーター達を生還させる義務がある。いや、義務じゃない。正直に言うなら、僕が好きだからやっているだけだ。コレをファットマンが見たら、どう思うのだろうか。
僕、セン・ディアンスは転生をした。前の世界では傭兵として、常に戦場を戦い続けていた自称ベテランである。我ながら、その戦いぶりを見るとイレギュラー染みているなと思う事もある。
けど、イレギュラーはイレギュラーによって倒される――。僕も、その例にもれなかったらしい。突如、砂漠に襲来した無人自律型兵器との交戦から僕の記憶は無い。多分、相打ちになったとは思うけど、勝利の確信は無い。
「うん、お疲れ様でした」
ゴッドイーター達を一頻り労う。
新米から、その様子から絶望や悲観は見えない。だけどいつか彼らは味わうのだろう。
目の前で大事な人を見捨てる覚悟を。大事な人を裏切る覚悟を。
「っと」
気が付けば、オペレーター要請の通信が来ている。
いつも通りだ、いつも通り。
ファットマンだってそうだった。
『セン、オペレートを頼めるか』
「ジュリウス、どうかした?」
ジュリウスの声が切羽詰っている。
そういえばブラッドは全員が任務に出ていると聞いた。
『例のアラガミに遭遇した。お前にオペレートを頼みたい』
「例のアラガミ……」
近頃、極東に出ると言う謎の神機兵の事だろうか。
終末捕喰も一段落した今、確かに何があってもおかしくはない。
だが神機兵に、ジュリウス達が後れを取るとは思えない。
そうして僕はモニターを映す。
「――ッ!!」
瞬間、僕の心臓は鼓動を打った。
そこに映っていたのは――。
「J……」
『やぁ、久しぶりだね。会えて嬉しいよ、セン』
黒い機体。砂漠で僕と一騎打ちをし、敗れたあの黒い機体。両手のレーザーブレードも未だに健在。
そして通信で聞こえる声。忘れるはずも無い。
「……財団」
『世界とは実に残酷だ。人間とは実に愚かだ。そうだろう? 例外』
「……」
『久しいな、53番目』
「……死神か、本当にその通りだ。どこまでも付きまとう」
『おや、戦いに死神は付き物だよ?』
落ち着け。
何故、彼らがここにいるのかは分からない。
けど、彼らに飲まれるな。
『セン?』
「ジュリウス、手出しはしないでくれ。少し通信を切る」
どうやら僕にだけ送られているらしい。
こういった余計な心配りが、彼らの特徴なのだ。
前の世界でEGF部隊のUNACと交戦中に、こちらを救援してきた時のように。
その時は全部殲滅させた後だったけど。
『さて、傭兵。僕が君に要求するのはたったの一つ』
「戦えと言うつもりか」
『ご名答。既に機体はそちらに送っている。今頃、破って来る頃じゃないかな』
瞬間、部屋が大きく揺れた。
攻撃じゃない――これはどちらかというと何かが突撃してきた感じだ。
「ブーストチャージ……」
『53番目、貴様も同じはずだ。その魂は戦いを求めている』
「……違う」
『否定したね、それは君にとって肯定だ。出なければ、どうして悩む?』
「……違う」
『私達はそうでしか生きられない。戦いの中でしか、私達の存在する価値は無い』
――僕の脳裏に、一人の女性が過ぎる。
オペレーターでもあり、そして大事な人。僕が自ら殺す事になった一人の女性。
僕が今こうして、ゴッドイーター達のオペレーターをする切欠を作った人。
『なるほど、つまりはこういう事か』
「……」
『ブルー・マグノリアの生き様を、君は否定するという事だね』
本能的にヘッドセットを叩きつけた。
あぁ、いいさ。ならやってやる。
「分かった。戦ってやる。一度だけだ、それ以降は戦わない」
今度は部屋全体に放送が響いた。
『ならば、今からACに乗り、我々の元へ来い』
『黎明の亡都にね』
通信が切れる。
――これでいい、やってやる。もう何の迷いも無い。
白衣を脱ぎ捨てて部屋の外へ出る。
「――」
もう僕を止める人はいない。
あの人は樹に飲まれ、救えたのはジュリウスだけだったから。
言うなれば僕は上手いように言いくるめられた。
「……知ったこっちゃない」
音の聞こえてきた場所、丁度ゴッドイーター達の乗るジープなどが並んでいる場所。
そこに在った。
かつて僕が操っていたAC。戦場を共にした、無二の相棒。
そして破られた穴の外から一機のACが狙撃している。恐らく僕以外をそのACに乗せないつもりだ。
そうとわかっているから、僕はただ淡々と上ってACに乗り込む。
周りの声など既に聞こえない。聞こえるのは、響く心臓の音だけだ。
『来たか、傭兵。ついて来い』
そのACの後を追う。
アラガミですら次々と屠るその様はまさしく死神だ。第三の勢力。
まさしくその言葉が相応しい。
黎明の亡都――そこに死神部隊はいた。
全機揃っている。うん、親切丁寧に。
四機――それに加え、こちらは一機。
四対一――だが、どうでもいい。数など既に意味を為さないから。
『来たか、53番目』
「……変わらないな、お前達は。本当に揃いも揃ってどうしようもない連中だ」
『君は変わり過ぎたんだよ、セン・ディアンス』
「……」
言われてみればその通りだ。
恐らく僕はトラウマになっていたんだろう。大事な人を失うのが。
マギーを失って、ファットマンと離れて。だから今度はブラッドを失わないために。僕は戦わず支える道を選んだ。
だけど、ラケル博士は助けられなかった。それはどうしてなのか、嫌でも分かる。
僕自身が、戦わなかったからだ。それ故に、何も気づかなかったからだ。
「……始めよう。殺すよ、お前達を」
『言葉は不要だ。見せてみろ、黒い鳥の力を』
マギー、君は一人じゃない。
君は戦場こそが魂の場所だと言った。
僕も同じなんだ。戦いこそが僕の居場所。――僕の魂の場所。
だから、僕も君も共にいる。
僕は帰って来たんだ。あの世界に。
「行こう、二人とも」
“それが、俺らのやり方だったな”
“貴方がこの程度でやられる訳が無い”
ここが僕の魂の場所だ。
ノルン、データベースより
『セン・ディアンス』
突如、フライアに現れた神機兵に乗り込み、黎明の亡都にて例の神機兵と交戦。その後、行方知れずとなる。
彼の通信ログから、何者かとの繋がりが噂されているが真偽は不明。依然として居場所の特定が急がれる。
尚、財団と名乗
戦い続ける歓びを