ラブ鎧武!   作:グラニ

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UA突破記念作品

HBV感覚で書いたつもりがとんでもないことに。

時系列は相変わらずのむちゃくちゃ。

題して

『ハイパーバトルビデオ!

ラブ鎧武!

フレッシュアームズのステージ!』





UA100000突破記念回『フレッシュアームズのステージ』

 

 

 

 

 

 

ある昼下がり。それは起きた。

 

「ああああああああああああああっっ!!」

 

音ノ木坂学院アイドル研究部の部室隣にある男子更衣室にて、葛葉コウタの慟哭が上がる。

 

「俺のロッックシーーードがぁぁぁぁ………………!」

 

「ど、どうしたのコウタ君!?」

 

「一体何事ですか!?」

 

「ちゅん!」

 

部室でパンを食べていた高坂穂乃果。その穂乃果に太ると叱りつけていた園田海未。今年は酉年なので本格的な鳥キャラに進出を決めたこ南とりが扉を開けて飛び込んでくる。

 

慌てた3人が目にしたのは、コウタが握るオレンジロックシード。ただし、まるでエネルギーを吸い取られたかのように錆び付いてしまっていた。

 

「ロックシードが!?」

 

「どうしてこんな事に!?」

 

「わかんない……新しい変身ポーズを考えようとして取り出したら、こうなってた………」

 

膝をついて悲しむコウタの頭を、ちゅんちゅんと慰めることりを他所に、穂乃果と海未は錆び付いたロックシードをまじまじと見つめる。

 

「これ、変身出来るのですか……?」

 

コウタはただの学生ではない。高校生でありながら暴走したインベスと戦うアーマードライダー鎧武としての顔もあり、ロックシードは変身するのに必要不可欠なアイテムだ。

 

これが起動出来なければアーマードライダーに変身する事は出来ず、ただの運動神経抜群なイケメンになってしまう。すんごいむかつく。

 

「どうだろ……」

 

「試してみたらどうかな?」

 

物は試し、と穂乃果の言葉に頷いて、コウタは戦極ドライバーを取り出す。

 

「無駄よ」

 

しかし、それは腰に装着する前に響いた声に止まる事となる。

 

声の方を見やると、男子更衣室の入口に威風堂々と立つ矢澤にこ。その後ろから絢瀬絵里と東條希が「やっほー」と手を振り、入口横の壁に寄りかかっている九紋カイトの背中が見えた。

 

「にこちゃん!?」

 

「無駄ってどういう事だよ」

 

「そうです。やってみなければわからないでしょう?」

 

突然の物言いに4人は抗議の声を飛ばす。ことりはぴよぴよと両手を上下に振り回す。

 

「そんなの………」

 

「とっくに試したからですよ」

 

今度は背後からやって来た。

 

振り返ると、窓に持たれかけながら呉島ミツザネが愛用のブドウロックシードを指で引っ掛けて下げていた。ただし、その色はコウタのオレンジロックシード同様に、錆び付いてしまっている。

 

その隣に西木野真姫が不可解そうに腕を組んで、反対側ではどういう訳か猫耳を装着した星空凛に小泉花陽が襲われているのだが、それは些細な事だ。

 

「些細な事なのォ!?」

 

「新しい変身ポーズを考えようとした矢先に、いつの間にか錆び付いてました」

 

「オレもだ。おかげでせっかく完成した変身ポーズはお蔵入りになりそうだ」

 

「いや、変身ポーズは関係あるのでしょうか……」

 

互いに錆び付いたロックシードを見せ合う。しかし、状況はそれなりに深刻だ。μ'sの護衛を務めている3人が同時に戦闘不能状態なのだ。さらに言えば、この3人は誰かが困っていたら後先考えずに突っ走る極度のお人好しだ。このような状態で戦いに赴けばどうなるかなど火を見るより明らか。

 

「困ったわね………」

 

「原因は新しい変身ポーズをしようとしたからかしら」

 

「なんでそんな事を……?」

 

絵里、希、真姫の順で紡がれた言葉に、3人はあっけ絡んと答えた。

 

「「「変身ポーズが定まってないから」」」

 

「あぁ、そう………」

 

コウタはともかく、確かにカイトとミツザネは統一したというか簡易的な変身しか行わないが、と納得しかけた所で、隣の部室がザザザ、とザッピングする音が聞こえた。

 

全員が顔を見合わせて部室へと駆け込む。

 

そこにいたのは、全身を白いドレスに包まれ、金髪のウェッグをつけて女装をした啼臥アキトだった。

 

「………何やってるにゃ?」

 

流石の奇行に猫化していた凛も戻り、誰もが言葉を発せない中告げる。

 

ちらり、とアキトは見やってから、どこか憂鬱というか嫌そうな顔をして、どこからともなくメモを取り出し読み上げる。

 

「あー、ソノロックシードノウンメイヲキメルノハオマエダー」

 

「逆に棒読み過ぎて読みづらいんだけど」

 

「つまり、そのロックシードにフレッシュな力を与えろっちゅーことやね。作品恒例のハイパーバトルビデオってことだ」

 

「凄い………身もふたもない事なのにアキトだと許されてしまう…………」

 

相変わらずデタラメというか平然とメタ発言をやってのけるアキトに、にことミツザネの突っ込み。

 

それはさておき、と凛はさらなる事をぶっこんだ。

 

「どうしてアキトが女装?」

 

「仕方ないだろ。この作品においての始まりの女が諸事情でうんぬんカンヌン」

 

「で、どうやってフレッシュな力を与えるんだ?」

 

コウタが尋ねると、アキトはもう1枚のメモを取り出して心底いやそうな顔をする。

 

「え、ここからニコニ○本社スタジオへダッシュ…………? 1分以内に辿りつけられたらμ's全員分の生着替え写真…………?」

 

読み上げるのに5秒。悩む事10秒。手を振り上げてクラックを開くのに10秒。飛び込むのに5秒かかってアキトは姿を消した。

 

「何だったのかな…………?」

 

「あっ。み、見て!」

 

穂乃果が唖然として呟くと、花陽の言葉に一同の視線がパソコンのディスプレイに集まる。

 

そこには全身、汗だくになって白いドレスからいつものエスニック衣装に早着替えをしたアキトがDJサガラが番組で使っているスタジオにいた。しかも、その手にはちゃっかり9枚分の写真が握り締められている。

 

『あ、アンタらには…………はっはっ………これから、ふ、フレッシュな力を与える為、4つの試練に…………だっ………挑んでもらう!』

 

「待ちなさい。まずはその手に握っている写真を返してもらいましょうか?」

 

ゴゴゴ、という気迫を滲ませながら絵里がいつだかの真姫同様、アイドルというか美少女がしてはいけない顔をしている。なんというか、次回作の生徒会長さんがやってそうなシャイニーな感じだ。

 

『まずはフレッシュな部屋…………簡単な話しが大掃除だ!」』

 

「掃除か! なら、俺に任せとけ!」

 

コウタがそう叫ぶと、男子更衣室へ引っ込む。そして、数瞬のうちにジャージ姿となり、背中にはなぜかボンベと放棄とチリトリ。腰のベルトには霧吹きと雑巾が装着という完璧な清掃スタイルであった。

 

「コウタ君、いつの間に?」

 

「練習の合間とか、清掃員のおっちゃんの手伝いしてんだ。パンとか報酬に。沢芽時代、掃除のバイトとかもしてたし、余裕綽々だぜ!」

 

「私達もやるよ!」

 

完全装備なコウタに希が驚いていると、さらに穂乃果、ことり、花陽がジャージ姿で登場。それに愕然となったのは海未だ。

 

「そ、そんな………穂乃果が進んで掃除を…………!?」

 

「酷いよ、海未ちゃん! 私だってやる時はやるんだよ!」

 

「チュンチュン!」

 

「ことりちゃんはそのまんまなんだ…………」

 

「っしゃぁ行くぜぇ! ここからは俺とPrintempsのステージだ! ッホワチャァ!」

 

そこからのコウタは圧巻に尽きる。

 

何せ尋常ではないスピードで動き出したかと思えば、テーブルの上に置かれていたお菓子類を整理整頓し始めると同時に布巾でアルコールを掛けてから拭く。

 

続いてにこや花陽が持ち寄って来たスクールアイドル関連のBDや雑誌などが敷き詰め合っている棚の埃を器用に手首でスナップさせ高速で叩き、ナンバー通りに整頓をやってのけた。そこから舞うように壁などを拭き始め(もちろんポスターが痛まないよう配慮しながら)、積んであった衣裳なども綺麗にたたんでいく。

 

それはまさしく主夫の鏡。家事もこなせる運動神経抜群イケメンとはこれいかに。

 

しかし、それを眺めている一同の目はハートではなく唖然だ。何せ普通にやっていればっかっこいいのに、奇声を上げながらこれまた気持ちい悪い動きでこなしているのだから。

 

果たして、これでフレッシュが手に入るのか?

 

埃を床に落とした後、今度は背中の箒を握り締めると、ブンブンと振り回す。

 

「俺の掃除(さだめ)は嵐を呼ぶぜ!」

 

ニカッ、とコウタキチスマイルも忘れずに、怒涛の掃き掃除が始まる。その勢いに抑えれて穂乃果が倒れてことりの胸に顔を埋めて、ことりが鼻血をフルスロットルする。

 

最期の雑巾に持ち替えて、床をばばっと吹き始める。花陽は発掘されたアイドル雑誌に目を輝かせる。

 

そして。

 

「終わったァァァァァァァァァァァァッ!」

 

何ということでしょう。

 

普段から海未や絵里が掃除していたからこそ、ゴミ屋敷とまではいかなくとも普通の教室並に汚れていた部室は、もはや輝くほどに綺麗になっていた。

 

「おぉぉぉぉぉ!」

 

「すっごーい!」

 

「部屋が綺麗だと気持ちいいね!」

 

「毎日コツコツ、積み重ねが大事ってな!」

 

あまりの凄さの感動の声を漏らす穂乃果、花陽、ことり。えっへんと胸を張るコウタには、そのどや顔に相応しい活躍だ。

 

「読んでくれているみんなも、正月前に大掃除は終わらせてるよね?」

 

「またな人はぜひ、やった方がいいです!」

 

「掃除したらすがすがしい気分で、また明日も頑張れるね!」

 

最期に輝かしい笑顔で、ひとまず1つの試練は終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに、作者さんは掃除したのかにゃ?」

 

年末年始の仕事だった者に新年などという言葉はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『次の試練はフレッシュなスイーツだ』

 

「始めるぞ」

 

「早くないかにゃ!?」

 

場所を部室から家庭科調理室へと移った一同。この試練に挑戦するのはもちろん、カイト。そして、海未に希、凛のLily whiteだ。

 

「なんでスイーツ?」

 

『曲がりなりにもフルーツモチーフのライダーだろ? 原作ですら果実感がほとんどなかったのに、この世界だともはや果実要素なんで皆無じゃないか。ここは1つ、果実ライダーだぞってのをだな』

 

スマートフォンの画面に映ったアキトに悟られながらもエプロンを羽織る4人。

 

「まぁ、ここはカイトに任せておけば…………」

 

『あ、ちなみに全員でやらないとフレッシュは得られないから。サボりはぜってぇゆるさねぇ!』

 

「えぇ………穂乃果ちゃん達ほとんど何もしてなかったのに………」

 

希が楽勝といわんばかりに胸を揺らしたが、アキトのジャッジで凛が口を尖らせる。

 

「頑張りましょう」

 

「買ってきました」

 

そう言って家庭科室に入って来たのは、インベスと共に果物類の買い物に出ていた花陽だ。

 

「メス」

 

「なんでメス…………?」

 

カイトはまず丁寧なメス捌きならぬナイフ捌きで果物を切って行く。その隣では希がバターを崩して砂糖をまぶし、混ぜていく。

 

「よーし、凛も頑張るにゃ!」

 

「凛、卵はもっと丁寧に…………!」

 

海未の指摘もむなしく、片手で卵を持った凛はそのまま割ろうとボールに叩き付ける。当然、砕け散るように卵が割れ、無残な結果に終わった。

 

「にゃー、ベドベドォ…………」

 

「凛ちゃん、無理に片手でやろうとするから…………」

 

ペーパータオルで凛の手を拭きとる希。その光景に溜息をつきながらも、カイトが卵を持つ。

 

「いいか。こうだ」

 

コンコン、とカイトの鋭い眼光からは考えられないほどに優しく卵を叩き、亀裂を入れると見事に片手で卵を割った。

 

おぉ、と感動をしている3人にカイトはどこかしらどや顔だ。

 

「無理に片手でやる必要はない。次だ」

 

そう言って取り出したのは、昨日作っていた生地だ。生地は冷やすのに1時間はかかるので前もって作っておく。料理番組の鉄則である。

 

「え、ウチがこれやった意味………」

 

ぼやく希は放っておいて、生地を伸ばし棒を使って広げていく。その手際の良さは家庭科の教師や料理部達をぐぅの音も出ないほど見事であり、μ'sはもちろんの事、比較的にキッチンに立つ事の多いアキトですら息を呑む。

 

あっという間に伸ばした生地を容器に入れると、凛を見やった。

 

「これを温めておいたオーブンへ入れろ」

 

「合点だにゃ!」

 

このくらいなら出来る、と意気揚々にオーブンへ生地を入れてスイッチオン。

 

しばらくしてから生地が出来上がり、オーブンに出してテーブルに置く。生地に含まれたバニラエッセンスのおかげかほんのりと甘い香りが漂い、女子達は顔を綻ばせる。

 

「海未、型を外せ」

 

「えっ………しかし、崩れてしまったりしたら…………」

 

容器と生地の間にナイフを入れて切り込みを入れていきながら言うカイトに、海未は不安そうな顔をする。

 

「外す程度なら葛葉にでも出来る」

 

「なら、やってみます」

 

「おい………」

 

さりげなく馬鹿にされたコウタが文句を口にするも、海未は震える手で慎重に容器を外す。

 

「……………出来ました!」

 

「やったにゃ!」

 

ぴょんぴょん、と嬉しさのあまりか凛と抱き合う海未。ふっと微かにカイトは口を緩め、今度は片手間で作っていた牛乳とゼラチンを混ぜたものをタルト生地に流し込んでいく。

 

「これってババロア?」

 

「あぁ。これで冷えたら果物を乗せて完成だ」

 

「あ、時間がないんで冷えたもの冷蔵庫に入れといたから使ってください」

 

4人の目が怒りを孕んで映像のアキトに向けられる。

 

しかし、そんな事はお構いなしにことりが冷蔵庫を開けると、付箋があるババロアのタルトが確かにあった。

 

それをテーブルに置いて、先ほどカイトが切っていた果物を並べる。

 

「すごーい。綺麗に切れてるね」

 

「凛も切ってみたいにゃ!」

 

「気を付けて下さいね?」

 

カイトのナイフ捌きに感化されたのか、凛もナイフと皮を向いたみかんを手に取る。

 

まな板にみかんを置いてナイフを差し込む。しかし、凛の性格からかそのまま勢い余って真っ二つにしてしまった。

 

「あぁぁぁぁ、せっかくのみかんが…………」

 

「みかんじゃない。オレ………」

 

「……………ナイフの基本は力み過ぎない事。スッと入れてスッと抜けば、綺麗に切れる」

 

後ろでコウタが騒ぎかけるもにこに口を抑えられて黙る。

 

凛はカイトのアドバイス通り、左手にみかんを持つと、右手のナイフをスッと入れた。

 

「スッと入れて……………スッと抜く」

 

言われた通り力を入れず、自然の動きでみかんを切る。すると、カイトのようにとまでいかなくとも、綺麗にみかんが切れた。

 

「すっごぉぉぉい!!」

 

「やったやん!」

 

目を輝かせた凛は、それをそのまま口に放り込んだ。

 

「あっ…………」

 

「おいしぃぃぃぃぃぃ!(中の人風)」

 

きゃんきゃんと騒ぐ海未と凛を放っておくように、カイトは生クリームをババロアに乗せ、斬った色とりどりの果実を乗せていく。

 

「仕上げに粉砂糖をまぶして…………完成だ!」

 

「美味しそう!」

 

完成した品に外野だった穂乃果や絵里が瞳を輝かせる。いつだって女の子は甘い物に弱いのだ。

 

「読者の貴様らも、たまには料理しても悪くはないぞ?」

 

「料理が出来る男性って素敵です!」

 

「まぁ※がつくんやけどね」

 

「台無しにゃ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これをそっちに持っていけばいいの?」

 

『いや、それはμ'sのみんなで召し上がってくれ。女子が食べた方が栄えるだろ?』

 

「……………本音は?」

 

「凛のベトベトォが聞けたので十分満足です」

 

特別篇になると、とことん欲望に忠実になる男であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『次はフレッシュなファッションだ。俺みたいなエスニックなのはこってこてだから、フレッシュじゃないからな』

 

「自覚あったのね」

 

「これって、μ'sの衣裳担当がいるPrintempsがやるべきだったんじゃ…………」

 

「気にしても仕方ないわ。一流のアイドルたる者、というより女の子として衣類に気を配るのは当然よね!」

 

再びステージを部室へと戻して真姫、絵里、にこのBiBiの3人が満々に告げる横で、ミツザネは腕を組む。

 

「フレッシュなファッションって言うと………身だしなみ、って事かな?」

 

「それなら、パーティーとかに出席している私やミッチの出番ね。絵里もモデルスカウトされた事あったし」

 

真姫はつい、とにこを見やる。

 

「……………まぁにこちゃんはベンチで」

 

「ぬぅわんでよ!? これでもレッドカーペットをいつでも歩いていいように、ちゃんと勉強したんだから! 立ち振る舞いは任せなさい!」

 

そう言って、4人は一度部室から退出した。

 

見届けてから、凛が思わず海未を見やった。

 

「大丈夫なのかな?」

 

「まぁ………真姫がいますし」

 

「でも、真姫ちゃん。ミッチ相手だとチョロインになるやん」

 

希の言葉で全員が何も言えなくなる。

 

決して行為からの言いなりになっている訳ではなく、真姫は世間知らずな所があり、似たような境遇であるミツザネの言葉を聞き入れやすいのだ。さらに言えばミツザネは面白い事には目敏い。いつも真姫がギャグに巻き込まれるのが約束だった。

 

「にこちゃんがいるから大丈夫だと思うけど…………」

 

「というか、普通にミツザネがついて行ったがよかったのか?」

 

などと言っている間に、コウタの携帯が震える。取り出して画面を見るとミツザネからのメッセージが届いており、準備が出来た、という言葉が添えられていた。

 

コウタを筆頭に男子更衣室への扉を開ける。

 

そこに広がっていたのは、ボールランプが床に設置され、赤い絨毯が敷かれた光景だった。それはまさしくファッションショーを思わせる配置で、スピーカーからオフボーカルバージョンの『Cutie Panther』が流れ出す。

 

そして、廊下側の扉が開かれ、優雅な歩き方で入ってきたのは絵里だ。黒いライダースーツに身を包んで、特徴的なラインが浮き彫りになっていても、それはまさしく完成された美。

 

続いて出てきたのは黒いドレス調の真姫。モデル歩きの絵里とは異なり、まっすぐと前を見据えて突き進む姿は、決して崩れない魅力があった。

 

続いて出てきたのはにこだ。黒いワンピースを着こなした姿は一見すれば子供のように見えるが、それは見る側の瞳が濁っているからである。あれは紛れもない、この世を救済する為に訪れた妖精。救済………セイヴァー…………うっ、頭が………。

 

そして最後に現れたのはスーツを着こなし、コウタ直伝の華麗なムーンウォークで入ってきたミツザネ。呉島の名に恥じないその動きは上流貴族。まだ顔付きに幼さが残ってしまうからこそ、しかし、その歴然たる風格は世界を背負って立つに相応しい未来を預言させる。

 

そして、4人が並び立ち、絵里が握っていた薔薇をミツザネに渡すと、それを口に噤んで。

 

「やぁっ!」

 

掛け声と共に、破裂音がして色とりどりなテプが宙を彩る。せっかくコウタ達が掃除した部屋を再び汚しながらも、刹那の綺麗な世界を生み出していく。

 

「みんな凄い!」

 

「流石はBiBiやね!」

 

穂乃果と希が喜ぶ横で、コウタもミツザネの見事なムーンウォークに頷くしかない。もう教える事は何もない、と言わんばかりに。まるで師である。実際に師だけれども。

 

「たまには衣装を変えるっていいわね」

 

「気分転換になるし」

 

「まっ。悪くないわ」

 

「皆さん、素敵です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、この部屋の掃除は誰がするんだ?」

 

「………………」(海未が無言でコウタの肩に手を置く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これがラストの試練だ。と言っても、みんなからしてみれば朝飯前だろうけど』

 

「何かな?」

 

再び部室へと戻り、パソコンの画面に映るアキトに穂乃果が首を傾げる。

 

『4つ目の試練。それは、フレッシュな笑顔だ!』

 

「フレッシュな…………」

 

「笑顔……………」

 

思わずコウタとミツザネが反芻して顔を見合わせてから、カイトを見やった。

 

笑顔と言えばアイドルの命。ダンスをするというエンターテイナーである以上、コウタとミツザネ、μ'sの面々には笑顔には自信がある。

 

だが、問題はこのバナナである。普段から武骨で冷たく鋭い視線を宿しているこの少年は、浮かべる笑顔など冷笑かよくて微笑。とてもフレッシュとは言いにくかった。

 

しかし、カイトは鼻を鳴らして腕を組んで見下したように言う。

 

「貴様ら、どれだけオレが不遜な人間だと思っている」

 

「いや、不遜な人間だろ」

 

半目になったコウタが突っ込みを入れると、小馬鹿にしたようにコウタを笑い飛ばした。

 

「いいだろう。オレの本当の力を見せてやる」

 

そう言って一度、背中を見せるカイト。

 

そして。

 

「…………………にこっ」

 

ぶぅーーーーーーーっ!! と、3つの赤い噴水が上がった。

 

「3年生組が死んだわ!」

 

メディック(アキト)メディィィック(アキトォォォッ)!!」

 

「傷は浅いよ! しっかりして!」

 

倒れた3年生組をまきりんぱなの3人が介抱していく。クラックが開いてアキトが投げたラブカストーンを砕く事により、何とか保たれた。

 

『貴重なラブカストーンを使いやがって……………!』

 

「カイトさん、いつの間にそんな爽やかな笑顔を?」

 

鼻を抑えるも指の隙間から赤い液体を垂らしながら穂乃果が尋ねると、フンと脂汗を浮かばせながらカイトが答えた。

 

「虎太郎の幼稚園に立ち寄った時、笑顔が怖くてガキどもに泣かれたんだ」

 

流石にちびっ子達の涙は堪えたらしい。

 

「けど、これで最後の試練もクリア出来るわ」

 

「にこっち、お願い!」

 

「はーい、それでは皆さんご一緒にー? にっこにっこにー!」

 

復活した3年生が先導に、恒例の披露。

 

9人と3人の素晴らしい笑顔。それだけで世界は輝き、違って見えた。

 

瞬間。

 

錆び付いていた3人のロックシードが光り出し、焦げていた部分が弾けて輝くロックシードへと変質した。

 

「おぉっ! これが…………」

 

『それがフレッシュな力を秘めた、新たな力…………フレッシュロックシードだ』

 

アキトの言葉に、全員がその瑞々しい輝きを放つロックシードに注視する。通常とは異なる見た事のない光は、今までのロックシードよりも強烈な力をひしひしと感じていた。

 

「どんな力なんでしょう?」

 

「見てみたいね!」

 

「穂乃果ちゃん。そんな不謹慎な事を言っていると…………」

 

花陽と穂乃果の言葉にことりが苦笑いを浮かべた時、ガチャリと部室のドアが開けられる。

 

「みんな、大変よ!」

 

「お母さん?」

 

入って来たのはことりの母親であり、音ノ坂学院の責任者である理事長だった。

 

同時に、コウタと画面の向こう側でアキトの携帯電話が震える。

 

「あれ、ツバサ?」

 

『ん? 雷からなんて珍しいな』

 

それぞれが連絡に応じると、理事長が慌てたように告げた。

 

「さっき、呉島先生が街中でアーマードライダーに変身して暴れてるって連絡が入ったわ」

 

「えっ、城之内がライブチケ取れなかった腹いせに暴れてる!?」

 

『え、初瀬さんが暁と口論になった末にインベストゲームで学校が滅茶苦茶って………』

 

同時に起きた珍事件に全員が目を丸くした。

 

呉島先生とミツザネの兄である呉島タカトラ。大企業ユグドラシルコーポレーションの若き主任を務めながら、アーマードライダーとしても最強の座に位置している男だ。現在は音ノ木坂学院の教師として、アイドル研究部の顧問とμ'sのダンスコーチを担ってくれている。

 

城之内ヒデアキと初瀬リョウジも、コウタ逹と同じ沢芽シティでアーマードライダーのテストプレイヤーとして戦乱の時代を駆け抜けた猛者だ。知力と暴力は凄まじく、そのコンビは二度と敵に回したくない。現在はユグドラシルの計らいで各々、学校に通っているはずだが。

 

「なんでまた、そんな事に………」

 

当然、事態がよく飲み込めていない一同の気持ちを希が代弁すると、それぞれの情報源が続きを齎してくれた。

 

「呉島先生。ユグドラシルの営業でお酒を飲んだらしいのだけれど、どうやら芋焼酎飲んだらしくて…………」

 

「あぁ、転売屋がチケットの大半を買い占めたのか…………」

 

『きのこの山とたけのこの里のどちらが美味いのかって………』

 

ほとんど呆れの入った理由に、ほぼ全員が肩を竦めてしまう。

 

だが。

 

「まったく、兄さんったら…………」

 

「転売………アイドル達のステージを泥水で汚す不定な輩…………ゆるざんッッ!」

 

「きのこかたけのこか、ですって………そんなの、決まってるやん!」

 

ミツザネ、花陽、希が怒気の孕んだ言葉を漏らす。

 

「もう何度目かわからないもんね……」

 

「花陽、クズどもの掃除任せたわよ!」

 

「希、チョコは総じて美味しいのよ。いいわね?」

 

「あ、はい」

 

心当たりのあることりがミツザネへ同情の目を向け、にこがアイドル好きとしての矜持を花陽に託して、絵里に希が窘める。

 

それを見て、コウタは海未を見やった。

 

「え、止めに行くの?」

 

「コウタは見過ごせるんですか?」

 

「コウタ君、ファイトだよ!」

 

いや、そもそも穂乃果が変なフラグ立てなければ良かったんだけどな、というツッコミも出来ずに、やり場のない思いを溜息としてコウタは吐き出した。

 

もちろん、穂乃果がそんなフラグを立てようが立てまいが問題は降り込んでくる。

 

せっかく得た力を使わないなど、そんな優しい世界ではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユグドラシルの社員に車を出してもらい、コウタとPrintempsは秋葉原にあるUTX高校前の広場に来ていた。

 

広場には多くの人だかりが輪っかを作っており、その中心にいたのはアーマードライダーグリドン。城之内が変身するライダーだ。しかし、纏っているそのアームズは普段のドングリアームズではなく、特別なものだった。

 

 

『ドリアンアームズ! ミスターデンジャラス!!』

 

 

纏っているのはドリアンアームズ。刺々しい深緑の剣闘士を思わせる鎧だ。

 

「ふざけんな! 俺の、俺のチケットをぉぉぉぉぉ!」

 

「うわぁ……凄い荒れてるねぇ」

 

「当たり前だよ! チケットを転売なんて!」

 

暴れているぐりどんを見て穂乃果がぼやくも、気持ちがわかってしまう花陽が怒りを露わにする。

 

「コウタ君!」

 

そこで声を掛けられて振り返ってみると、綺羅ツバサに優木あんじゅ、統堂英玲奈。スクールアイドルの頂点に君臨するA-RISEである。

 

「よかった、来てくれて!」

 

「もう城之内君、激おこプンプン丸で手が付けられないの」

 

「ユグドラシルのアーマードライダー部隊も退けてしまったんだ。もう頼みの綱はお前しかいない」

 

「あぁ、わかってる。下がっててくれ」

 

6人の前に立つと、コウタは戦極ドライバーを腰に装着し、先ほど進化したフレッシュオレンジロックシードを取り出した。

 

「何それ!?」

 

「キラキラぁー」

 

「見た事ないロックシードだな」

 

「さっき手に入れた新しい力だぜ!」

 

ツバサとあんじゅ、英玲奈に答えて、コウタはいつもの構えを取る。

 

「フレッシュな力、見せてやる!」

 

 

『フレッシュ! オレンジ!』

 

 

解錠と共に召喚されたのはいつものオレンジアーマーパーツ。だが、その輝きは普段のものよりも増しており、ところどころ星マークが装飾されていた。

 

「わぁー、いつもよりキラキラだぁ……」

 

あまりの豪華な姿にことりが瞳を輝かせる。デコレーションはいつだって女の子の心を奪うものなのだ。

 

 

『ロックオン』

 

 

戦極ドライバーにフレッシュオレンジロックシードをセットし、スライドシャックルを押し込む。

 

法螺貝風の鼓舞が響き渡り、グリドンがようやくコウタを視認する。

 

「葛葉……!」

 

「気持ちはわかるけど、自分の理不尽さで周りまでも理不尽にさせるなんて、絶対に許さねぇ!」

 

転売厨と呼ばれる輩は、はっきり言って犯罪者だ。本来の値よりも高額でチケットを売り受ける為がだけにチケットを申請し、その分だけ本当に見たいという人の席が奪われた事になる。

 

それは列記とした犯罪で、プロのアーティストのイベントであるならば本人確認などの方法で、転売されたチケットは無効にする事は出来る。だが、スクールアイドルは歌っても踊っても、学生の範疇を超えられない。公式イベントならいざし、個人でのチケットの管理も自分達でしなければならないのだ。

 

だからと言って、当たるべきは転売をした輩であり、こうやって回りに怒りをぶつけるなど言語道断。

 

「邪魔をするな…………!」

 

「俺が止めてやる。変身!」

 

ドリノコを振り上げて迫ってくるグリドンに、コウタは戦極ドライバーのカッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『ソイヤッ!』

 

 

アーマーパーツが落下して全身をライドウェアが包み込み、エネルギーが弾けてグリドンを吹き飛ばす。

 

『フレッシュ! オレンジアームズ! 花道! オンステェージ!!』

 

 

普段よりもテンション高いロックシードの叫びと共にアーマーパーツが展開され、コウタの姿はアーマードライダー鎧武となった。

 

纏ったアームズは、一見すればただのオレンジアーマーも同じだが、その輝きが違った。橙色の装甲は光沢を放ち、よく見れば小さく星のデコレーションが施されていた。

 

通常の鎧武ではない。これこそがアキトが言っていたフレッシュオレンジアームズである。

 

「ふん、金ピカになったからなんだ!」

 

「うぉぉっ! 無双セイバーが2つある!」

 

召喚された2つの大橙丸に両腰に携えられた2本の刀に鎧武のテンションが上がる。

 

惜しくも二刀流同士の対決となった訳だが、グリドンはドリノコを掲げるような構えで鎧武へと肉薄する。

 

間合いに入った瞬間に振り下ろされる二刀だが、当たり前のように鎧武はそれを右手の無双セイバーで防ぐ。否、防ぐよりも流すようの弾き、切り返す。

 

「ぐっ……………この…………うおっ!?」

 

防がれ反撃された事に激昂するグリドンだが、鎧武は容赦なく連撃を打ち込む。そもそも、二刀流に関しての扱いならば、鎧武は他のアーマードライダーに負ける気など毛頭ない。毎日のように日頃から扱っている得物なのだから、負けるようならば本気でへこんでしまう。

 

「無双セイバーが2つあるって事は…………」

 

鎧武は無双セイバーを地面に突き刺すと、思った通り大橙丸も2振り出現する。それらを無双セイバーと連結する事により、無双セイバーナギナタスライサーが2振り完成した。

 

「おぉぉぉぉ! ナギナタが2つだ!」

 

「で、でもコウタ君。ナギナタスライサーは使いにくいって前に…………」

 

普段では作れないアームズに穂乃果が歓喜の声を上げるが、ことりが不安そうな表情を見せる。

 

正直に言えば、鎧武はナギナタスライサーの扱いが苦手だ。そもそも、両剣や双刃刀と呼ばれるこの手の武器は、歴史上でも使い手はごく僅かで、そもそも実在していたかどうかも危うい武器だ。この形態にするのも必殺技を放つ時くらいで、通常では使う事はない。

 

「だったら、あれを使えばいいんだよ! コウタ君! さっきの掃除でやってた、あれ!」

 

「あれ………? そうか!」

 

穂乃果の言葉に一瞬だけ困惑したが、すぐに思い当たった。普通なら出来ない。しかし、心が昂ぶっている今なら使える。大切なのは気合いと根性、あとノリ。

 

「っしゃぁぁぁっ!」

 

「何っ!?」

 

両手に握ったナギナタスライサーを指で回す。ハイテンションであるのと新しいアームズのおかげか、円刃のような軌跡となった2対を振るう。まるで高速回転をするカッターのように、グリドンの防御も簡単に弾いてダメージを与えた。

 

「あれって、掃除の時の!」

 

その動きは掃除の時、埃を落としていた高速叩き。その応用だった。

 

「ぐっ…………このぉ!」

 

火花と共に転がったグリドンは、戦極ドライバーに手を伸ばしカッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『カモンッ! ドリアン・オーレ!!』

 

 

ロックシードのエネルギーを開放すると、アーマーパーツに備わっていた後頭部のモヒカン部分が閃光と共に巨大化した。まるでエネルギーを波のように鎧武を薙ぎ払わんと襲い掛かる。

 

「そらよっ!」

 

 

『ソイヤッ! フレッシュ! オレンジ・オーレ!!』

 

 

しかし、鎧武も同様にエネルギーを開放する。円刃が橙色の閃光を纏い、それを投擲するとブーメランのようにモヒカン光線を砕きグリドンを切り裂いた。

 

さらに吹き飛ぶグリドンが立ち直った時、すでに鎧武は空中へと躍り出ていた。

 

「っ…………!」

 

「ここからは俺のステージだ!」

 

 

『ソイヤッ! フレッシュ! オレンジ・スカッシュ!!』

 

 

鎧武の全身が焔のように燃え上がる。まるで太陽のように輝き、そのままグリドンへと突撃する。

 

「オォォォッ!」

 

「くっ!」

 

 

『カモンッ! ドリアン・スパーキング!!』

 

 

グリドンも最大限の力をドリノコに纏わせると、迎え撃つように切り払う。

 

だが、太陽と人。ぶつかればどうなるかなど、必然。

 

「セイ、ハァァァァァァッ!!」

 

「うぉぉぉぉぉっ!?」

 

深緑の光は曙光の輝きに塗り潰され、剣闘士はついに敗れた。

 

火花を散らしながら転がり、戦極ドライバーのドリアンロックシードが砕けて変身が解ける。

 

「やった!」

 

「凄いよ、フレッシュオレンジアームズ!」

 

瞬く間に勝利を掴んだ力に穂乃果が飛んで喜び、ことりと花陽が抱き合って喜ぶ。

 

「城之内君!」

 

倒れた城之内のツバサ達が駆け寄ると、その瞼はすぐに動いた。

 

「っ…………あれ、ツバサ? 俺、一体…………?」

 

「覚えていないのか?」

 

英玲奈の問いかけに、あんじゅに支えられながら立ち上がった城之内は、記憶を探る様に目を細めた。

 

「えっと………サガラからアイドルチケットの転売を聞いて…………」

 

「ま た サ ガ ラ か」

 

変身を解いて怒りの形相を浮かべるコウタに、苦笑しながらも「まぁ、そんな気はしてた」と遠い目をする穂乃果達。

 

「カイトさんとミッチ、大丈夫かなぁ………」

 

もしかしたら、同じようにサガラに踊らされている可能性のある問題を鎮圧に向かった仲間を思い、穂乃果は小さく呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都に区分されながら、神奈川県にほぼ位置してしまっている町田市。その駅前の広場には大勢の人だかりが出来ており、電車を乗り継いで駆け付けたカイトとアキトに海未、凛、希のLily whiteの前に広がっていた光景は想像とは異なったものだった。

 

戦ってるのはアーマードライダー黒影。この世で最も多くの変身者がいる、ユグドラシルの言ってしまえば量産型ライダー。しかし、目の前にいるのは量産型ライダーのその雛形、初瀬リョウジが変身するオリジナル黒影である。

 

「ちょ、ちょっと………初瀬君が使ってるアームズって…………」

 

希が震える指で黒影を示す。

 

黒影は総じて、低ランクロックシードのマツボックリロックシードを使う。初瀬自身もこれ以外のロックシードは肌に合わないと豪語し、他のアームズは使用した事はない。

 

しかし、今黒影が纏っているアームズは普段とは異なるものだった。

 

 

『チェリーアームズ! ドドンとパフォーマンス!!』

 

 

チェリーロックシード。Aランクのロックシードにして、双紅臥という2対の打撃武器がアームズウェポンのアームズだ。

 

「た、大変だにゃ…………!」

 

一度、初瀬黒影とはオープンキャンパス時に戦っている。その時はマツボックリアームズだったのだが、その強さは鎧武を圧倒していた。

 

低ランクロックシードを使用しながら、他のアーマードライダーを圧倒する強さ。それは強者たるカイトですら舌を巻くほどのもので、ついた異名が『野獣』。

 

それほどの強さを持つ戦士が、いつもより強い武器を手にした。 実際に戦闘に参加した事ではない凛が震えるのも無理らしかぬもの。

 

しかし、アキトはその対峙している存在に判目になった。

 

「いや、俺的にはあっちの方に突っ込みたい気分なんだけど」

 

その言葉に目を向けると、おそらく暁が召喚したであろうインベスがいた。赤銅の体躯に黒いマントと、灼熱の剣。

 

炎をその身に宿したかのような存在はインベスではなく、オーバーロード。

 

というか。

 

「ディムシュ! お前、本編にちらっとしか出てない上に名前も出してないんだから何出張っちゃってるの!?」

 

「やっと出たらあんなちんけな役など俺は認めぬ! 暁ちゃんの為に、勝利をもぎ取るのだ! ぬおっ、海未ちゃんではないか! ウミチャー!!」

 

鎧武ファンならお馴染み、オーバーロードのディムシュ。本来ならば出番はなかったのだが、展開に煮詰まったので駆けつけてもらった。

 

「あれはオーバーロードのディムシュじゃない。ただの杉田やん」

 

「あのバカ………カイトさんですらこばゆた成分出さないよう我慢してるってのに……………!」

 

「え!? 出してよかったの!?」

 

「急にきゃぴるのやめるにゃ」

 

ハイパーバトルビデオ回だからといってやり過ぎである、というコメントがカイト達に漂うが行われている戦闘はガチ中のガチである。というか、戦極ドライバーでオーバーロードと互角に渡り合っている黒影は何なのだ。

 

「なぁ、あれほっといていいんじゃねぇの?」

 

「いけません! これ以上暴れたら、周囲に被害が及んでしまいます!」

 

アキトの言葉に海未が戒める。もっとも、周囲の被害などカイトにとっては無関係で興味もない。

 

一歩踏み出す。それだけで周囲で野次を飛ばしていた観衆が黙り、さっと足を引いて道を空ける。

 

「九紋…………」

 

戦意を滾らせていた黒影は、カイトの姿を目視すると変身を解いた。

 

「周囲など関係ない。オレは貴様と戦ってみたかった」

 

「………………奇遇だなァ。俺もテメェと戦ってみたかった」

 

にやり、と2人が笑う。獰猛で恐ろしいまでに歓喜に満ちた笑み。

 

「おいィ、俺を無視しないで…………」

 

「お邪魔ですから、お引き取り下さい」

 

間に割って入ろうとするディムシュを引き取りに来た王に引き渡すと、ようやくカイトと初瀬のみの対峙となる。

 

カイトと初瀬。タイマンでの勝負は今まで一度もなく、どちらも強さに拘るある意味で似た者同士。強者と強者がにらみ合い、緊張が場を支配した。

 

「アキト、フィールドを」

 

カイトの言葉でアキトはバナナロックシードを解錠し、インベスが召喚される。インベスゲームのように周囲に被害が及ばないようインベスフィールドが張り巡らされた。

 

初瀬がロックシードを取り出す。赤い灼熱を宿したチェリーロックシードを。

 

その熱に相対できるのは、このロックシードしかない。

 

カイトが握り締めたのは普段愛用していたバナナロックシードがさらなる輝きで進化した、フレッシュバナナロックシードだ。

 

「お前も新しいロックシードか」

 

「まぁな」

 

互いに戦極ドライバーを装着して、ロックシードを構える。

 

風が吹く。

 

それだけで、戦いの始まりの鐘には充分だった。

 

 

『フレッシュ! バナナァ!』

 

 

『チェリー!』

 

 

それぞれがロックシードを解錠し、頭上にアーマーパーツが召喚される。

 

片方は何度か目にした事のある、二房のチェリーアーマーパーツ。

 

もう片方は何度も、それこそ毎日のように見ているはずなのにありえないほどの白い輝きを放つフレッシュバナナアーマーパーツ。

 

「同じバナナ、じゃあなさそうだな」

 

「無論、初陣だ」

 

「俺相手にはそれで充分ってか……後悔すんなよ! 変身!」

 

「変身」

 

 

『ソイヤッ! チェリーアームズ! ドトンとパフォーマンス!!』

 

 

『カモンッ! フレッシュ! バナナアームズ! ナァイトオブスピアァー!!』

 

 

同時にカッティングブレードをスラッシュして、ロックシードに内包されているヘルヘイムの力を解放。その身をアーマードライダーへと変身させた。

 

初瀬は先ほどまでなっていた、世界のアーマードライダーの雛形である黒影に。

 

カイトがなったのは、アーマードライダーバロン。貴族のように気高く、しかして階級が最下位であるが為に、強くなれるという想いが込められた騎士。

 

しかし、普段よりもその鎧は輝きを増しており、まるで王のように強く煌めきを放っていた。

 

それが通常のバナナアームズよりも上位の、フレッシュバナナアームズである。

 

「面白ぇ……そうこなくっちやな!」

 

黒影が両手にサクランボを模したアームズ、双紅臥を器用に指先を回して構えると、一気に肉薄してきた。

 

それに対して、バロンは緩慢にバナスピアーを掲げるのみ。

 

双方の距離が0となり、ぶつかる。

 

直後。

 

凄まじい衝撃が連続して弾け、黒影が吹き飛ぶように距離を置いた。

 

「……………えっ?」

 

何が起こったのかわからない、と凛が声を漏らす。今のはアーマードライダーに変身するアキトでさえ、辛うじて見えた程度なのだ。観衆には何が起きたのか理解出来るはずもない。

 

「あ、アキト。わかりましたか?」

 

「まぁ、なんとか」

 

尋ねてくる海未に、アキトは返す。

 

「簡単に言えば、黒影の神速レベルの猛攻(ラッシュ)をバロンは槍の切っ先を僅かに動かすだけでいなして弾いた」

 

「…………まじ?」

 

それなりに長い付き合いをしていた中で、いくつも人間離れした動きを目にしてきたが、これは最上級だ。

 

驚愕のあまり言葉を失う観衆の視線を受けて、防がれた黒影はさもつまらなそうに構えを解く。

 

「ま、あんな小手調べが通用するなんて思ってねーよ」

 

「ふん 」

 

バロンも同意見なのか、腰を落としていつでも動けるような姿勢を取る。

 

そして、再び2人が激突した。今度は神速などの域ではなく人が認識出来る速度ではあるが、その戦いはまるで舞踏のようだ。

 

火花と金属がぶつかり合い、その度に衝撃がインベスフィールドを震わせる。その苛烈さはどんちゃん騒ぎというレベルを越えて、もはや決闘と言うべき段階だ。

 

2つの攻撃を突撃槍という扱い辛い武器であるのにも関わらず、全て捌き切るバロン。しかし、手数の多さによってかほぼ防衛の一手という事がアキトに違和感を齎していた。

 

「カイトさん、大人し過ぎないか?」

 

「うん……なんか、つまらなそう」

 

苛烈な戦いである事に違いはない。周囲からは歓声よりも間近で見るバトルに感嘆の息を漏らす野次馬で一杯なのだから。

 

しかし、凄まじい事には凄まじいが、このレベルならアキト達は何度も目にした事がある。舌を巻く戦いである事に違いはないのだが、どこかバロンは気だるげであり、凛の言う通り『つまらなそう』なのである。

 

「…………ふん」

 

バロンが大きくバナスピアーを振るう。

 

「ぬっ…………!?」

 

バナスピアーの一撃を大きく飛び退いて避ける黒影。

 

間合いが空いた事により一息つく時間が生まれ、落ち着きが生じて黒影が気付いたように構えを解いた。

 

「なんだよ、言いたい事あるなら言えよ」

 

黒影もバロンの気配に気付いていたらしく、言葉を投げる。それに対する返答は淡泊なものだった。

 

「つまらん」

 

「何……………?」

 

「今の貴様では戦っても何の意味もない。普段の槍の方がどれだけ恐ろしく、心躍ったか」

 

ぴくり、と黒影の気配が変わる。戦いを楽しんでいたはずの空気が一変し、黒影から苛烈なプレッシャーが放たれる。それに充てられた野次馬の何人から卒倒し、アキトの横で凛がよろめく。

 

それを抱き止め、しかし視線は黒影から外す事は出来なかった。外した瞬間、こちらへ襲い掛かってきそうと思うほどの威圧が全身にのしかかってきた。

 

その威圧を真正面から受け止め、まったく意に介していないバロンは流石と言うべきか。

 

「……………何だと?」

 

ゆらり、と。不気味なほどに黒影が揺らぐ。

 

「俺の力が、恐ろしくないだと…………?」

 

感情が噴き出すかのように、黒影の肩が震える。双紅臥を握り締める手が震え、エネルギーが荒れ狂うように弾けた。

 

インベストフィールドが余波を受けて震える。本来ならばインベスゲームを行う際に周囲に被害を出さない為の結界であるが、アーマードライダーのために作られた訳ではないいのだから、いつ壊れても可笑しくはない。ないのだが、威圧だけで壊すなどという規格外な芸当は、アキトも想定外だ。

 

しかし、バロンは態度を変えず、ただ語る。

 

「今の貴様には、いつもの意思がない。普段の槍の方が恐ろしいぞ」

 

「テンメェェェッ!!」

 

 

『ソイヤッ! チェリー・オーレ!!』

 

 

怒りの沸点が超えて、爆発したかのように黒影が吠える。カッティングブレードを2回スラッシュし、双紅臥にエネルギーを纏わせる。火花を散らして荒れ狂う力が与えられた2つのアームズは、まるで扱いきれていないかのように炎として燃え上がった。

 

「っ、まずい………!」

 

「カイト!」

 

あまりにも強大な力に、観戦気分で眺めていた野次馬達から悲鳴と焦りの声が上がる。フィールドと観客席を隔てているはずのインベスフィールドが罅割れておっているのだ。荒事に慣れていない一般人にとっては恐怖である。

 

あの力を放たせてはならないと、アキトがゲネシスドライバーを取り出そうと手を伸ばし、希が声を上げた。

 

しかし、それでもバロンは動く様子もなく、その一撃は放たれた。

 

「舐めるな」

 

一言と共に。

 

バロンは降ろしていたバナスピアーを振り上げる。

 

それだけで。

 

それだけで、叩きつけれた火炎が吹き飛んだ。

 

「なん………だと………!?」

 

熱に浮かされていた黒影が、冷や水を掛けられたかのように鎮まっていく。

 

慌てふためいていた野次馬も、アキト達も目の前で起こったことに唖然となるしかなかった。アーマードライダーというステージにおいて、強烈な一撃にはカッティングブレードを操作してのロックシードの力を解放するのが通例だ。

 

だと言うのに、バロンはただの切り払いだけで打ち砕いた。

 

その異常性は、今までの戦いを見てきたアキト達の中でもさらに最上級の力だ。

 

「な、にが………!」

 

「何をそんなに驚いている」

 

愕然となる周囲とへ真逆に、ただ当たり前を話すかのようにバロンが告げた。

 

「剣圧で吹き飛ばすなど、普段の貴様でも出来るだろう」

 

「…………いやいやいや」

 

何当たり前のように言っているのだ、とアキトは突っ込みたくなったがが、黒影が再び闘気を滾らせた事により言葉が詰まる。

 

「今の俺が、それほどに弱いか…………!」

 

「あぁ、弱い」

 

黒影に返し、バロンはカッティングブレードに手を伸ばす。

 

「ロックシードの力ではなく己の拳で切り開く。俺が知っていて、恐れる初瀬とはそういう男だ」

 

 

『カモンッ! フレッシュ! バナナァ・オーレ!!』

 

 

ロックシードの力を開放し、フレッシュなエネルギーが迸る。バナスピアーを地面に突き立てると、黒影の足元から黄色い隆起が立ち昇った。

 

「ぐっ!?」

 

「デカッ!?」

 

普段のと同じ技であるはずなのに、その大きさは歴然としている事に凛が驚きの声を上げる。空中へと打ち上げられた黒影は体勢を崩し、バロンはさらにカッティングブレードをスラッシュする。

 

「オレが戦いたいのは、強い奴だ。普段の貴様ならばともかく、今の貴様では話にならん!」

 

 

『カモンッ! フレッシュ! バナナァ・スカッシュ!!』

 

 

バナスピアーからエネルギーが吹き上がり、巨大な黄金色の刃と化す。それを頭上に掲げるとインベスフィールドを叩き割り、真っ直ぐに黒影に振り下ろした。

 

「セイィィィィィィィッ!!」

 

黄金の輝きに黒影が包まれ、内包していたエネルギーが爆発した。その余波を受けて周囲に人々は倒れ、アキトは凛を支えながら耐える。

 

余波が完全に収まり、視界が開けた時に見えたのは、変身が解除した姿で倒れる初瀬と、それを見下ろしているカイトだった。

 

「……………カイトさん」

 

アキトが呼びかけると、カイトはつまらなそうに鼻を鳴らす。

 

「気を失っているだけだ」

 

カイトはそれだけ言うと、踵を返す。ざわついている野次馬達にも目もくれず、アキト達と別れるようにして町田の街並みに消えていった。

 

「カイトさん、ショックだったのでしょうか…………」

 

海未の言葉に、アキトは明確な答えは打ち出せない。カイトの口ぶりからして、初瀬と戦うのはそれなりに楽しみにしていたらしい。が、初瀬は半ば暴走状態で、しかも普段とは違った様子だった。聊か落胆が禁じえないのかもしれない。

 

「…………あれ」

 

そこで凛が周囲を見渡し、首を傾げた。

 

「どうしたん?」

 

「そういえば、元々初瀬さんと戦っていたのは暁ちゃんだったよね」

 

その言葉にアキトも「あ」と気付いたように言葉を漏らす。そもそも、暴れているという情報を送って来たのは雷だ。その本人が姿がないというのは、妙である。

 

「………まさか…………」

 

アキトは心当たりが思いつき、携帯電話で雷にメッセージを飛ばす。

 

数瞬してから返信が届き、内容を見た瞬間に溜息を吐いてその場にしゃがみ込んだ。

 

「アキト!?」

 

「具合でも…………」

 

心配してくる凛と希に、携帯の画面を見せる。

 

内容は簡潔。

 

 

『何にこと?』

 

 

それを目にした途端、リリィホワイト3人が呆れの顔を浮かべる。

 

「それって…………」

 

「まさか…………」

 

「まさかというより、案の定と言うべきか…………」

 

凛、海未、希の想像した通り、その結論にアキトは震えながら怒りの声を上げた。

 

「あぁぁぁぁぁぁんのぉぉぉぉぉぉぉぉクソサガラァァァ…………!!」

 

雷は今回、この件には関わっていない。フレッシュな力を与える試練だけでなく、その力試しの場まで用意していたということだ。

 

どこまでってもお遊びを止めない蛇に怒りで頭が一杯になるアキトの頭を、あやす様に凛が撫でる。

 

結局、どこまでもサガラに弄ばれるμ's達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神保町とは、学生街である。

 

音ノ木坂学院を含めて多くの大学が点々としており、秋葉原や渋谷、原宿といった都心部にも近いので若者の姿も多くあり、それだけでなく勤勉な学生に向けた書店、スポーツ用品や専門的な店も多々と存在している街だ。

 

さらに日本武道館や靖国神社といった歴史ある建物もあることから外国人客の姿も見え、神保町はまさしく多種多様な街と言えよう。

 

さて、そんな神保町であるが、若者や外国人向けばかりの店舗が集まっているのか、となればそういう訳でもない。表を歩けばお洒落なカフェなどが立ち並んでいるが、横道に入って裏路地となるとこじんまりとした雰囲気の言い飲食店がちらほらと見え始めるのだ。

 

中には昼からやっている飲み屋もあり、学生ではなく教員といった中年層を目当てにした店も多くある。

 

その一角の前に、ミツザネとBiBiの4人は駆け付けた。南理事長からの情報を元に走り、そこで4人が見た光景とは。

 

 

『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

それはオレンジアームズ。我らが主人公、鎧武が多様するアームズである。

 

しかし、それを纏うのは。

 

「………タカトラ先生……………」

 

白いライドウェアに翡翠色の装甲ではなく、輝く橙色の装甲。

 

そこにいたのは、アーマードライダー斬月オレンジアームズだった。

 

斬月の周囲には黒影が多数おり、アームズである影松を向けているがどこか及び腰になっていた。

 

「主任! もうやめてください!」

 

「やめる? やめるだと?」

 

「もう、これ以上は……………!」

 

何かを訴える黒影に、斬月は肉薄すると大橙丸で斬り飛ばした。

 

「やめる必要がどこにある。私は当然のことをしているまでだ」

 

「当然って…………!」

 

わなわな、と肩を震わせた黒影が我慢の限界がきたように叫んだ。

 

「店員の女子大生に絡み酒とかもう主任の格をだだ下げるだけだから!!」

 

「だから嫌だったんだよ、取引先に昼のみ出来る場所を選ぶの!」

 

「誰だよ、この場所選んだの!」

 

「俺だ」

 

「やっぱテメェかくそ親父!」

 

「帰ります。お疲れ様でしたー」

 

「待って待って、待ちなさい」

 

黒影同士の遠慮のない言い合いを見て嫌気がさし、くるりと背を向けようとするミツザネの首根っこを真姫が掴み、絵里とにこが真正面へと回り込んだ。

 

「放っておく訳にはいかないでしょう!?」

 

「いいんですよ、ほっとけば。悪酔いして女の子に手を出すなんて。ついでに捕まっちゃえば」

 

「いやいやいや、アイドル研究部やμ'sの名前に傷がつくじゃない!」

 

むぅ、とミツザネは口を尖らせた。出来ればあの状態のタカトラには近付きたくないのが本音であった。強い弱いではなく、単純に悪酔いしているので絡みが面倒なのだ。

 

しかし、μ'sの活動に支障を与えるのは頂けない。あの人を顧問にと推薦した手前、そのような失態を認める訳にはいかなかった。

 

「…………わかりましたよ」

 

嫌々ではあるが、ミツザネは息をついて黒影達の輪に入って行く。

 

ミツザネの姿を認め、「どうしてここにいるのか」という疑問よりも「弟がきたらなら任せればいいや」という空気が流れ、若干いらっとしたが、ともかく兄を睨む。

 

「兄さん、何やってるの?」

 

「ミツザネか」

 

弟の姿を確認した斬月は、そのまま深く腰を落とし、大橙丸を右肩に担いだ。

 

「ここからは私のステージだ」

 

それは完全に鎧武のポーズと台詞であり、しかも使用している戦極ドライバーの固有音声も和風テイストなので、そこだけを見れば完全に鎧武である。仮面の下ではもうこれ以上にない爽やかスマイルなタカトラのご尊顔を拝めるのだろう。

 

が、それはミツザネにとって許し難い事である。普段からふざけておちょくったり小馬鹿にしたりと、色々と弄っているが、ミツザネにとってコウタは信頼できる兄貴分であり、尊敬している男だ。

 

それをおふざけでマネでもされているとなれば、見過ごせるはずがない。

 

「……………その台詞を口にする時、あの人がどれだけの覚悟があったのか」

 

ミツザネは戦極ドライバーを腰に巻き付け、右手にロックシードを握り締める。普段から愛用しているブドウロックシードが、さらなるフレッシュさを手に入れたフレッシュブドウロックシードだ。

 

「それも知らないで軽々しく口にするなんて、いくらタカトラ兄さんでも許さないよ。変身」

 

 

『フレッシュ! ブゥドウ!』

 

 

ロックシードを解錠し、頭上にアーマーパーツを召喚する。普段よりも強く煌めきを放つ鎧に、真姫達から感嘆の声が上がる。

 

右手をぐるりと回し、前に突き出してから強く戦極ドライバーのドライブベイに嵌めこむ。スライドシャックルを閉じて間髪入れずにカッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『ロックオン。ハイィーッ!』

 

 

アーマーパーツがミツザネへと落下し、全身がライドウェアに包み込まれる。

 

 

『フレッシュ! ブゥドウアームズ! 龍砲!ハァッ、ハァッ、ハァァァ!!』

 

 

アーマーパーツが展開され、そこに降り立ったのはアーマードライダー龍玄。しかし、纏う鎧は普段よりも輝かしく光っており、フレッシュさが増していた。

 

「これがフレッシュの力…………!」

 

「フレッシュブドウアームズ…………」

 

「ハラショー! いつもよりキラキラ倍増よ!」

 

真姫、にこ、絵里の喜びに答えうよう、龍玄はブドウ龍砲を構える。対して斬月は大橙丸と無双セイバーを構えた。

 

一瞬、時が止まる。が、すぐに動き出した。

 

「はっ!」

 

ブドウ龍砲から弾丸が放たれ、それを斬月は無双セイバーで切り払い肉薄する。一瞬で間合いを詰めてくる速度は流石というべきだが、龍玄はブドウ龍砲の銃身を盾にして斬月と切り結ぶ。

 

「っ……!」

 

刃と銃身が数度ぶつかり火花と衝撃が走る。その度に龍玄が苦悶の声を漏らした。酔っているからなのか斬月の攻撃は普段のような優雅さはなく、力任せに叩き付けている剛剣と化している。その分、直撃は防げるが伝わってくる衝撃は半端じゃないのだ。

 

流石は最強のアーマードライダーと謳われる兄である。酔っていてもなお、強さを維持するとは。

 

「呑気に分析か!」

 

「うわっ!?」

 

「ミッチ!」

 

斬月の刺突を受けて、胸部装甲から火花を散らしながら龍玄が転ぶ。それを見て不安を覚えたのか真姫が声を上げるが、すぐに体勢を立て直してブドウ龍砲を構えた。

 

思案している余裕はない。酔っていて巫山戯た態度をしていても、目の前にいるのは自慢の兄であり最強のアーマードライダーなのだ。

 

息を吸って、僅かに深呼吸。頭の酸素を入れ替えて、改めて斬月と対峙する。

 

斬月は強い。元々、一時期使っていたドリアンアームズによって双剣での戦い方に磨きがかかり、大橙丸と無双セイバーという鎧武と同じ戦闘スタイルは脅威だ。

 

しかし、決して無敵ではない。データで作られたチートキャラではない。ここは現実で、絶対に弱点が存在するはずなのだ。

 

いや。

 

「弱点じゃなくて、攻略法が!」

 

「余所見をするなと言っている!」

 

大橙丸を振り下ろしてくる斬月に、龍玄は身を捻って攻撃を避ける。が、追撃してきたもう片方の刃に切り裂かれ、状況は変わらずにいた。

 

「このままじゃ………!」

 

「っ、そうだわ!」

 

苦悶を漏らすにこに対して、何か打開策が見つかったらしい真姫が声を上げた。

 

「ミッチ! さっきの動きよ!」

 

「さっきの動き!? うわっ!」

 

言葉の意味がわからなかったので思わず真姫の方を見やってしまい、背中を斬られるも振り向きながらでたらめな弾幕を張る。

 

「さっきのって!?」

 

「部室でやったファッションショー! その身のこなしよ!」

 

「そんなんで攻撃が避けられる訳ないでしょ!?」

 

真姫のアドバイスににこが正論を叩きつける。常識的に考えてファッションショーでの動きと戦闘の動きは、そもそも速さが違う。ただでさえ斬月の攻撃スピードは他のアーマードライダーよりも圧倒していて、悠長な戦い方では一方的に蹂躙されてしまうだろう。

 

だが。

 

「やってみるか……!」

 

立ち上がって龍玄は深呼吸。

 

そして、身体の中にある緊張感を諸共吹き飛ばす様に脱力してから、優雅な足取りで斬月へと近付き始めた。

 

「……………何を考えている?」

 

斬月は怪訝そうに身構え、大橙丸を振るってくる。

 

それを龍玄は、ゆらりと緩慢な動きで避けた。そこからさらに無双セイバーにより高速の追撃。しかし、それすらも速攻で避けた。

 

「っ!?」

 

斬月から驚愕の声が漏れる。今まで防御するのにだって余裕なく、ギリギリの形で行っていたのに、突然の余裕な回避行動を取られたのだ。いかにタカトラといえど驚かない訳がない。

 

再度、今度は高速の連撃。しかし、それも余裕のある動きで避け切り、さらには生じた隙をついて龍玄の掌打が撃ち込まれる。よろめいた斬月に向かって、龍玄はブドウ龍砲の弾丸をあらんかぎり放つ。

 

「ぐぅっ!?」

 

苦悶と火花を上げて斬月が吹き飛ぶ。しかし、転がりながらも斬月が無双セイバーのバレットスライドを引いたのを龍玄は目視していた。

 

「っ!」

 

弾丸はファッションショーの動きでは回避しきれない。その場から飛び去る様にして避けると、丁度足元で火花が上がる。

 

「なるほどな…………脊髄反射か」

 

「……………さすが兄さん」

 

斬月の言葉に、龍玄は素直に称賛の言葉を送った。

 

脊髄反射。今日日、学校の科学の授業でもやる人間のメカニズムの1つ。例として挙げるならば、熱い物を触れた時に咄嗟に手を放す、あれである。

 

龍玄はそれを攻撃の回避する為に利用した。熱い物を刃がライドウェアに命中する際、ほんの僅かに伝わる衝撃に見立てて。

 

出鱈目な事をしている、という自覚はある。こんな芸当が出来るのは、コウタやカイトくらいだろうとミツザネ自身でも思っていた。が、やはり呉島ミツザネもどこかネジがぶっ飛んでいた、という事らしい。

 

「我が弟ながら、末恐ろしい事をするものだ。だが」

 

立ち上がった斬月は、大橙丸と無双セイバーの鏃を連結させ、ナギナタモードに変更して構える。

 

「ネタが割れてしまえば、どうという事はない」

 

「それはどうかな?」

 

言葉と共に今度は龍玄が肉薄した。ブドウ龍砲から紫色の弾丸を放ちながら、斬月との間合いを詰める。打撃と斬撃がせめぎ合い、火花が散る。

 

撃ち合いながら、埒が明かないのは龍玄も理解していた。単純に小細工のない真っ向勝負では、龍玄は斬月に勝てない。高速斬撃を封じたとはいえ、それでも斬月の優位性が揺らぐ事はない。

 

決定打に欠ける。このままでは根尽きるのは龍玄が先だった。

 

「タカトラ先生!」

 

その時、戦いを見守っていたにこが声を荒上げた。

 

「あぁーっと! 風に煽られてスカートが捲られてあられもない姿の女子大生があそこに!」

 

「何だってェッ!?」

 

絵里の力の入った発足に、まんまと乗っかってしまう呉島タカトラ。酔っているとはいえこれが自慢の兄と公言した事を撤回しようと思った龍玄。女子大生の痴態に血眼になってしまう事にあの世で嘆いているであろう義姉に懺悔の気持ちで一杯になった。

 

「ミッチ、今よ!」

 

「…………あまり気持ちのいいやり方じゃないけど」

 

真姫の言葉に、釈然としない気持ちでいながらもカッティングブレードを操作する。これがおそらく、最初で最後の明確な隙となるだろう。

 

 

『ハイィーッ! フレッシュ! ブゥドウ・スカッシュ!!』

 

 

全身から紫炎のようにエネルギーが吹き出て、それが右足へと集まって行く。

 

それに気付いた斬月は戦極ドライバーに手を伸ばそうとしたが、それよりも龍玄の攻撃の方が早かった。

 

飛び上がった龍玄は空中で宙がえりをし、キックの体勢に入る。

 

「ハァァァァッ!!」

 

「ぐ、おぉぉぉっ!!」

 

ミサイルのように、または落下した隕石のように龍玄の蹴りは斬月へと命中し、火花と共にその身体を吹き飛ばす。

 

エネルギー攻撃をまともに喰らった衝撃で、斬月の戦極ドライバーからオレンジロックシードが外れ砕け散った。

 

「ぐおぉぉぉぉぉ…………」

 

「今だ! 確保だ、確保ォ!!」

 

「大人しくしろ! この酔っぱらい!」

 

倒れて変身が解けたタカトラを遠巻きで見ていた黒影達が抑え込む為に殺到した。

 

それを見ながら、龍玄はロックシードのキャストパットを閉じて変身を解除する。

 

「これで少しは懲りてくれるといいんだけど」

 

「ミッチ!」

 

息をついてぼやくと、真姫絵里にこが駆け寄っきた。

 

「ありがとうございました。真姫さん達のおかげでなんとかなりましたよ」

 

「うぅ………出来ればもう、あんな事叫びたくないわ…………」

 

顔を赤くして俯いてしまう絵里に、にこはジト目を向けながらもにやにやと笑みを作る。

 

「えぇー? そう言うわりには、けっこう力入ってたじゃないー?」

 

「だ、だって仕方ないでしょ!」

 

「そもそも、あんなタカトラ先生見るのも嫌だったしね」 

 

真姫の言葉に同意するように頷くミツザネ。あのようなタカトラの醜態は周りだけでなくあの世の義姉にも本気で申し訳ない。

 

「や、助かったぜ坊主」

 

そこへ黒影部隊の1人が駆け寄ってくる。変身は解除していないが飄々とした振る舞いは、普段から世話になっているタカトラの部下だ。

 

「まったく、兄さんに芋焼酎は飲ませないで下さいって言いましたよね?」

 

「いやいや、今回の昼のみ出来る店に芋焼酎は置いてないはずだったんだよ。注文したものビールだったし、なんで芋焼酎があったのか…………」

 

黒影の声色から嘘をついている様子はない。だが、ないはずの物があるなどという現象について4人には心当たりがあった。

 

「……………ねぇ」

 

「はい、だいたいわかりました」

 

にこの指摘にミツザネは多くを語らず頷く。それだけで意味が浸透していき、ミツザネは思わずそらを見上げた。

 

「……………もしかして、アキト全部わかってて根回ししたんじゃないんだろうな…………」

 

親友を疑うミツザネだが、そのアキトも同じ理由で頭を抱えていることなど知る由もない。

 

ともかく、すでに陽は落ち始め、神保町の姿がオレンジ色に染まりつつある。

 

1日が終わる街並みを眺めながら、心労を吐き出す様に溜息をつく4人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フレッシュな力、凄かったねー!」

 

秋葉原の昌平橋付近で合流した一同の話題は、当たり前だが新たに得たフレッシュアームズだった。

 

「実際に使ってみてどうでした?」

 

「いやもうすっげぇよ! これならどんな奴が相手でも負ける気がしないぜ」

 

実際、使用してみたコウタ達の感覚では普段から使っているロックシードの数倍のパワーを発揮していた。単純なスペックアップは勝率にも繋がり、良い事づくめだ。

 

「調子に乗ってはダメですよ? 慢心は禁物です」

 

「わかってるって…………ん?」

 

海未に釘を刺されて苦笑をするコウタは、ふと一同から離れているアキトに目がいった。手鏡を持って何やら笑顔を浮かべているが、どうもぎこちないもので何度か表情を作り変えていた。

 

「アキト、何してるにゃ…………?」

 

「ん。爽やかな笑顔でロックシードがフレッシュに変化するなら、俺のレモンエナジーロックシードもフレッシュになるんじゃないかってさ」

 

アキトが変身するアーマードライダーはデューク。戦極ドライバーよりも上位に位置するゲネシスドライバーで変身した戦士であり、通常スペックだけならば鎧武達を凌駕している。

 

まだ強くなる気かよ、と心の奥で突っ込んでいると、凛が呆れたように肩を竦めた。

 

「もう、アキトに爽やかな笑顔なんて似合わないよ。泥くさくても元気一杯のアキトの笑顔の方が、凛は好きだよ」

 

「……………………………………そっか」

 

凛の指摘にアキトは一瞬だけ瞠目するが、嬉しかったのかこそばゆいような笑顔を浮かべた。

 

瞬間。

 

「あ、コウタ君。ポッケが光ってるよ?」

 

「えっ?」

 

ことりに指摘されたコウタはポケットからそれを取り出す。

 

それはコウタが所持するロックシードの1つ。パインロックシード。だが、普段の物よりも輝きを増したそれは、まさしくフレッシュパインロックシードだった。

 

「おぉぉぉっ! パインー!」

 

「えぇっ!? 今、いい笑顔したのはアキトだよ! なんでコウタ君のロックシードがフレッシュになるんだにゃー!」

 

「コウタ君! それ見せて見せてー!」

 

「わぁーっ、ちょっと待てってー!」

 

「こら! 他の人の迷惑に…………聞きなさい!」

 

鬼気となる凛から逃げるようにコウタは走り出す。それを穂乃果が追いかけて、海未が諌める為に追いかける。他のメンバーは疲労を落とす様に息をついてゆっくりと追いかけ、最期にアキトと凛が顔を赤くさせながら歩いていく。

 

ひと時の騒乱が終り日常に戻る彼らを、堕ちる夕陽が出迎えるように世界と一緒に照らし続ける。

 

それはまるで、夢から覚める曙光の輝きに似た温かさを孕みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小うるさい音に、コウタの思考が覚醒していく。

 

瞼を開けて視界に飛び込んできたのは、慣れ親しんだ自室の光景だった。

 

「……………なんだ、夢か」

 

そう嘯いて身体を起こして、不意に首を傾げる。今確かに夢と自分で呟いたのに、その内容が妙に思い出せない。起きた直後ならばはっきりとまでいかなくても、朧げに覚えているものなのに。

 

奇妙な違和感で一杯だったコウタだが、テーブルの上にある時計を見て一気に夢のことなど吹き飛んでしまう。

 

現時刻、8:20。

 

「完全に寝坊したァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

μ'sの朝練どころかHRにも遅刻確実な時間帯に目覚め、コウタは慌てて服を着替える。まだ共学化するという目途は経っていない為、男子である3人は特例で私服登校が許されているが、流石にTシャツとスウェットで登校する気にはなれなかった。

 

急いでジーンズにポロシャツ。チーム鎧武のメンバー達で作った愛用パーカーとジャケットを羽織る。夏はとうに過ぎ、9月の上旬ともなれば日差しがなければ肌寒さを感じずにはいられない季節になってきたのだから、多少の厚手は必要である。

 

飛び出るように家から出ると、ロックビークルを解錠する。ビークルモードとなったサクラハリケーンからヘルメットと手袋を取り出し装着すると、すぐにアクセルを回して出発する。

 

時間はすでに25分。もう完全に遅刻のため、いっそのこと適当にぶらついて行くのもありかな、と思ったが海未にどやされる事を考えると、即座に向かわねばと音ノ木坂学院へ急ぐ。

 

「野良インベスが暴れてるぞ!!」

 

秋葉の駅前を通った時、男の声でコウタはサクラハリケーンを止めた。

 

目を向ければ駅前の広場で野良インベスがトラックの積み荷を滅茶苦茶にしており、人々はそれほど多くはないものの従業員とみられる数人が逃げ惑っている。

 

コウタは躊躇いなくハンドルをそちらへと切ってアクセルを吹かす。急な加速によりタイヤが回転し、猛スピードで暴れている野良インベス達の間を突っ切った。

 

停車してからヘルメットを取ったコウタは、獰猛な笑みを浮かべて告げる。

 

「朝から精が出るな、野良インベスども!」

 

腰に戦極ドライバーを巻き付け、いつものようにオレンジロックシードを右手に構える。一瞬だけオレンジロックシードが輝きを増したような気がしたが、目に映るそれは普段と変わらない大事な相棒だった。

 

「変身!」

 

 

『オレンジ!』

 

 

解錠とともに頭上にオレンジアーマーパーツが召喚される。勢いよく右手を振り上げて戦極ドライバーのドライブベイにロックシードを叩き付けるようにセットし、スライドシャックルを押し込んでカッティングブレードをスラッシュした。

 

 

『ロックオン。ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!』

 

 

アーマーパーツがコウタへと落下し、全身を青いライドウェアが包み込む。アーマーパーツが展開され、姿はただの少年からアーマードライダー鎧武へと変身した。

 

右手に召喚されたアームズ、大橙丸を構えて鎧武は叫ぶ。

 

「ここからは俺のステージだ!」

 

威嚇の声を上げてくる野良インベスに向かって、鎧武は駆けた。

 

戻ってきた日常は、決して楽なものではない。しかし、それが世界のあるべき当たり前の姿なのだ。

 

様々な思惑を潜り抜けてきた少年少女達は、また世界に身を投じる。今いる世界が何の変わり映えのない当たり前の世界だと思い込んで。

 

差し込んでくる朝日が鎧に反射して、曙光の輝きを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お久しぶりです。本当にお久しぶりです。

グラニです。

正月に更新して、約4か月ぶり。本編更新ではないですが、それを考えると半年ぶりのまともな回となります。いや、これをまともな回に数えていいのかどうか。

全編ギャグのつもりでお送りしています。笑って頂ければ幸いです。

1月から書き始めたのに4月になってしまったのは、まぁモンハンやらとほかに熱中するものが出来たのもそうですが、ちょいとリアルで荒れてたのもあります。今後も下手をしたらこのくらいの更新速度になる可能性が高いです。

楽しみにされている方々には本当に申し訳ないですが、こればっかりはどうしても…………モチベーーションの問題もありまして……………

気分転換で他の作品も手掛けたりしてたのも要因の1つですかね。気ままに書いて行こうかと思います。

ともかく、失踪する気は毛頭ないので、これからも楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです!




感想、評価随時受け付けておりますのでよろしくお願いします!

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話しのネタバレなどやってるかもしれませんので、良ければどうぞ!

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