樹海横断というあの地獄の試験をクリアしてから九年。
「もうやだ。離反する」
「兄さん。まだ気が早いんじゃないかな」
「もうこの腐った国に対して働くのが嫌になった」
「あはははは、お兄ちゃんドストレート!」
森の中で三人で話す。
周りにはもちろんだが誰もいない。
「せめて私たちの帝具が来るまでは」
「つっても明日だしな」
そう明日には俺以外の奴らの為に帝具が一部帝国から運ばれてくる。俺は村正を持っているから帝具はなし。明日運よく二人の帝具が見つかれば問題ないのだが。そんな簡単に自分に合う帝具が見つかるはずもない。
「それに俺は明日仕事だ」
本来はアカメが受ける仕事だったが、俺が受けることになった。
ターゲットはナジェンダと呼ばれる元帝国軍の将軍出だそうだ。現在革命軍と共に闘っているらしい。彼女はかなり強く頭がきれる人物だと聞いている。
「とりあず仕事のいってくる。それから話し合おう、何もするなよ」
「うん」「行ってらっしゃい」
場所は変わって家の中にあるキッチン。
「よぉリュウ。今回の依頼どうだ?」
「楽勝、ではないな。正直厳しい」
俺はおっさんとお酒を飲みながら言う。
いきなりおっさんがお酒を飲もうとか言いだしたのだ。変に飲みすぎず、口を滑らせてしまわないようにせねばならないな。
「今回はあのナジェンダ将軍だ。無理をするなよ、少しぐらい日を過ぎてしまってもかまわない」
「……親父いいのか。あれほどまで期日を守れって言ってきたのに」
「あのナジェンダをヤれるんだったら期日なんてどうでもいい。あいつは今殺しておかないと今後帝国の強大な敵になるだろう」
おっさんはそう言っていた。
ここまで評価するとは、あのナジェンダっていう人物そうとうな奴なんだろう。
「それじゃこれぐらいにしておくよ」
ワインが入ったグラスを置く。
これ以上飲んだら仕事に支障が出るだろう、俺の考えを読んだのか何も言わずおやすみと一言言ってくれた。
あまりにもここになじみすぎた。切り捨てるときは斬り捨てなければ。
馬車や馬ならかなりの移動時間がかかるが、俺が村正の能力を使って走ればすぐである。本当にこれを使っているときは速い。
俺の目標はナジェンダ将軍の暗殺、ではない。
いつか革命軍には入ろうと思っていた。ここのナジェンダと手を組み、俺とアカメとクロメの三人で帝国から離反する。この機会を逃すわけにはいかない。
ナジェンダはこの小さな町の隠れ家にいるらしい。
しかし隠れ家はどこなのか、そんなの見つけるのには時間がかかるだろう。
ならば彼女が出てくる必要のある状況を作ればいい。
「暴れるか」
ナイフを抜こうとするが、それでいいのか迷う。
もっと堅実にいき居場所を特定して訪問した方がいいのか。今暴れて間違ってでも無関係の人を殺したりでもしてみれば革命軍の入隊にもかかわってくるかもしれない。
「ちょっと時間がかかるが、そっちの路線で行くか」
これは長い任務になるぞ、
そう思っていた自分がいました。
夜。
暗闇の中、全身真っ黒の服を着た脇差を持った人が屋根の上を走っていた、リュウである。その後ろには彼を追いかける革命軍。彼は夜襲を受けたのである。実は彼の情報はナジェンダに流れていたのである。
「まさかこんなことになるだなんてな」
いきなりネコが歩いてきてすり寄ってきたから抱きかかえようとしたら人に変身した。自分でも何を言っているかわからないが、現実に起こった事なのだ。
恐らく帝具。追ってくる奴に俺を殺そうとした変身女子はいない。
襲われたしいいよな。
「その首、俺がもらいうける」
反転して村正を完全に抜く。
敵も剣を抜いたり銃を構えるが、遅い。
気付いた時にはもう遅い、そいつらの首は宙を舞っていた。
「まったく無駄な殺生だ。話がしたいだけなのに」
「へぇー話ね」
「そうあんたにだよ」
首や死体が転がっている中で唯一立っている人物。
右目に眼帯をして、右腕はなくしたのか機会を付けていた。綺麗な銀髪に整った顔立ち、写真通りの美女、というかイケメン美女である。
「あんたがナジェンダだな」
「そうだいかにも私がナジェンダだ。何か用かな帝国の暗殺者君」
なんだ知っていたのか、という事は情報がもれていたという事か。
これはまいった、しかしこれは好都合でもある。
「頼みがある」
「こんな状態で頼みだと?」
「俺を革命軍に入れてくれ」
ド直球に言う。何ごとも正直に先に言う。
ナジェンダはタバコをふかし、俺を見る。武器には手をつけず納刀した状態で両手はぶらりと垂らしておく。
しかしそう簡単に信用してくれるはずもなく、
「ダメだ」
「理由を聞いても?」
「まずお前が帝国のスパイである可能性を考えるべきだろう。いくらなんでも唐突すぎる。すでの仲間も殺された。信頼するには危なすぎる」
「仲間の件についてはすまん。襲われたから斬るしかなかった。どうしたら信頼してくれる?」
「そうだなぁ。例えば将軍級の敵を殺してくるとかな。無理っぽいけどな」
ナジェンダは手をあごに当ててなんだかいらっとくるような笑みを浮かべていた。なるほど将軍級か。一人知っている奴でいるな。
「よっしゃわかった首はねて持ってくる。それでいいんだな」
「え?本気か、いや待て、半分冗談で言ったんだ、入隊なら別に問題ない」
なんだか焦って態度を変えて来たのでイライラする。
俺は踵を返しナジェンダの言葉を無視して走った、もちろん村正を使ってだ。急いで家に帰ろう
殺すのはゴズキ、我が暗殺部隊の教育係である。
早く帰っておっさんの首を頂こうかと思ったら、
「おかえりお兄ちゃん」
「兄さん遅いです」
愛しの妹が全員先に殺していました。
「お、お前ら無事か、怪我はないか!!」
「大丈夫だよ心配しすぎだって」
「兄さんはちょっとシスコンすぎます」
とりあえず抱きしめる。
まさか家に帰ったら妹たちが皆殺しとは考えもしなかった。候補生とおっさんを相手したのか、この二人は。
「お前らいったいどうやって――――」
そこで気付いた。アカメトクロメが持っている新しい武器に。
確か帝具の配給日だったな。なるほどそこで自分に合う帝具を見つけたので反旗をかえしたという訳か。
とりあえず妹二人の頭にチョップする。
俺が到着するまで待てと言ったのに相手を全滅させるだなんて。
「とりあえず親父の遺体はどこだ」
「部屋に放置だよ」
二階に上がり扉をあけると、椅子に座ったまま首から血を流している遺体があった。まだ殺したのは最近なのか。瞳孔は開いていろい、なぜだ、といった表情をしている。最初はあんたの事を殺したいほど嫌いだったけど、最近の優しいあんたは好きだったぜ。本当に親父がいたらこんな感じなんだろうなっておもってたよ。
「お世話になりました」
俺はおっさんの首を斬り袋の中に入れる。一枚だけだと血がすぐに滴り落ちてくるので何重にも袋を重ね、布で首を包み入れる。
下の階に行くと準備を終えた二人が待っていた。
「そういえばアカメお前が持っている帝具ってあの親父の奴だよな」
「うん『一撃必殺・村雨だよ』殺して奪った」
「そうか。あと他のポニィとかも殺したんだよな。遺体が見当たらないんだが」
「それは私がもらったよ」
クロメはそういうと自分が持っている帝具を見せて来た。
「これは『死者行軍・八房』殺した相手を最大八人まで操れるんだよ。だから試しに皆殺して骸人形にしたの」
「なるほど。これはチートだな」
話を聞くと呼び出せる死者は生前扱っていた武器をそのまま持っているので、生徒は全員臣具を持っていたのだ。ということは呼びだした奴らは全員臣具持ち。
「まったくお前らには驚かされるよ」
「お兄ちゃんほどじゃないよ!」
クロメはそう言ってくるが、実際かなり驚いている。
俺は用意されたかばんを持ち家の扉をあけて出る。
この家は破壊せずに放置しておく。山中で家を燃やしたら大惨事である。
「それじゃあ行くか」
新しい家へ。
これで過去は終わりかな?
もうそろそろ原作入ってもいいよね?