ハッキリ言って今回の話書いてて、あれ?本当に革命軍勝てるの?とついつい思ってしまいました。
12月7日一部編集
20150105 誤字修正
エスデス一夜を明かした次の日、いや日付的に見たら当日の朝――
ムソウは情事の後特有の生臭い臭いをを落とす為シャワーを浴び、未だ気持ちよさそうに寝息を立てているエスデスを起さない様静かに部屋を後にした。
向かった先は最もムソウの権威が反映されている保安本部。
その保安本部の一角にある執務室だ。
一日休みを取ることが出来たからと言って、その間に仕事が増えないと同義ではない。
その為ムソウの執務室には、書類が無駄に聳え立っていた。
適当な枚数書類を取って見ると、そのどれもがある一つのモノに対する報告にたどり着いていた。
即ち、帝都周辺に出現した新型危険種。
現在目撃されているのは、密林や鉱山ばかりなため、人的被害は今のところ軽微だ。
だが、最初の目撃情報から一日と経たずにあり得ない量の報告がありまるで、いきなり出現したかのようであった。
ムソウとしてもいつ人口密集地に現れても可笑しくわないため油断できない状況であるため、直ちに多くの情報を集めさせるために保安本部を動かした。
特に気になるのは姿形だ。
姿形は人間に近く、その性格はいたって獰猛。
耐久力もあるので、物理的に潰すか頭を潰さない限り殺すことはできない。
イェーガーズや帝国軍も本格的に動き出しているので早い段階で駆除できるだろうが、新型危険種がスタイリッシュの元から消失した人造危険種の可能性が高い。
出現しだした時期と、今まで一度たりとも目撃されずにいたわりに急に増えだした目撃情報の多さ、確認のためにも一体ほどサンプルが欲しい所だとムソウは考えた。
生け捕りが好ましいが、それを可能とする手駒をムソウは現在手元に持っていない。
エスデスに頼めば快く引き受けてくれるだろうが、公私混同をしないムソウがプライベートで関係を持っているエスデスの好意を公務で利用することは限りなくない。
だが、それが利となるのならば個人的な好意を利用する判断もしなければならないのが一つの組織の長だ。
スタイリッシュに確認を取る必要もあるため、どの道イェーガーズに一任すれば直ぐに解決するだろう。
スタイリッシュとて、自身の作品が他人に使われているのは嫌だろうからスタイリッシュも直ぐに解決策を提供するだろうとムソウは踏んでいた。
後は、公文書を作成しイェーガーズに討伐を依頼する形で命じれば新型危険種の討伐に関する問題は解決するだろうが、別の意味で問題があるとすればやはり大臣だろう。
あれは、新型危険種について興味を持ち始めている。
エスデスに捕獲を命じるよりも早くこちらが駆逐すればいい。
必要があるとなれば、最悪帝国全域に亘って展開している我が武装親衛隊を呼び戻すか、とムソウは悩んだ。
武装親衛隊、国家元首やそれに類する人の身辺警護をする武装組織であり、形態は軍隊の一部である場合あり、元首府直轄で軍隊からは独立しているも場合り、ムソウの親衛隊はまさに軍隊から独立している。
元々親衛隊は前皇帝の時代にムソウの職務と立場、権力のために暗殺される危険性を考慮し特別に許された護衛組織であった。
だが、前皇帝が病床に臥せられてから権威が落ちた時を見計らい、一気に政敵を粛清その規模を増した。
前皇帝からの信頼が厚かったため、この粛清は帝国の危険分子であると言う偽造証拠を見せ事後承諾の形で前皇帝からの許可が下りたためムソウは一切の処罰なく、むしろ皇帝からは「良くやってくれたこれで憂いはないな」と弱弱しく言いながら、褒賞として武装親衛隊の拡大の許可などいろいろと便宜を図ってくれることを皇帝は確約した。
それから現在に至るまでに志願制とはいえ勢力を拡大し続けた武装親衛隊は、総人数90万以上を有するまでになり、もはや一国の軍といっても差し支えないだろう。
その武装親衛隊員90万人全てが、ムソウの言葉一つで自由に扱うことが可能であり帝都に集結可能な武装親衛隊と言う名の私兵というのは、大臣にとって恐怖でしかないのは言わずと知れたことだ。
エスデス率いるイェーガーズに頼むか、早々にことを収束させるために武装親衛隊を呼び戻すべきかムソウが悩んでいる時だった。
礼儀正しく三回ノックがあり扉の外から「失礼します」と言う声と共に一人の女性帝国軍人が入って来た。
いつもならば、必ずアポイントメントがとってあるはずだ。
しかし、今日は誰かと会う約束や会食の予定は入っていなかったはずだと、ムソウはもしや自分が忘れていたのかと言う可能性も考えたがその可能性は女性軍人の口から発せられたことで否定された。
「至急大臣がお会いしたいとのことです。いつもの場所で待っている、とのことです」
大臣が今至急会いたいと言うことは、新型危険種についての案件しか思い当たらないが、ムソウとしては一つ大臣に問い質しておかなければならないがあったので丁度いいタイミングと思っていた。
「分かった。直ぐに向かおう」
ムソウは掛けてあった黒いコートを肩から羽織るように掛けると、執務室を後にした。
いつもの部屋とは、大臣と皇帝が良くお茶をする時に使う部屋のことだ。
そんな部屋を使うのは恐れ多いと思うのが普通だろうが、生憎とムソウにはそれが通用しない。
ムソウが部屋の中に入ると、中から鼻に付いて胸やけをを起こしそうになるほどの甘ったるい臭いが部屋に充満していた。
「おお、待っておりましたぞムソウ殿」
そんな部屋の中に入ると大臣はケーキをホールのまま齧り付きながら愛想のいい笑顔で出迎えた。
「それで、至急と言うことだったが?」
ムソウは対面の席に座りながら大臣に聞いた。
「ええ、最近現れたと言う新型危険種、その捕獲をお願いしたいのです」
「そのことか、だが新型危険種は殲滅すると言うことで私とブドーは合意したが?」
「そのことは存じていますとも、軍とイェーガーズが総力を挙げて狩りたてていることも」
腐りきっても大臣なだけはあり、きちんと最新の情報に耳を傾けるだけの理性は残っていたかとムソウは感心した。
「そこで、無理を承知で一つムソウ殿に新型の危険種を捕獲してほしいのです。私はあれをぜひとも調べてみたいのです、スタイリッシュ殿には既に協力を仰ぎ、了承を得ています。彼に調べてもらい特効の毒を作ってもらえれば早く処理が出来被害も少なく済みます。あとは件の新型危険種あれのサンプルを手に入れるだけです」
大臣はあくまでも被害を少なくするために必要と言った表情で言っているが、内心では面白そうな玩具を欲していると言うことを察するのはムソウにとってそう難しいことではなかった。
「確かにスタイリッシュの持つ技術力ならば特効の毒を作ることもたやすいだろう。だが、今の私には捕獲を可能とする手駒がないのでな。南と西の異民族警戒のために配置している私の武装親衛隊を帝都に呼び戻すが構わないか?」
武装親衛隊を帝都に呼び戻す、その単語を聞いた瞬間大臣は渋い顔をした。
それもそのはず、武装親衛隊はムソウの私兵であり前皇帝より全権をムソウは与えられている。
唯でさえ、軍部は大臣派と大将軍であり近衛を率いているブドー派、帝国最強の攻撃力を持つエスデス派の三つに分かれている。
幸いなことに、ブドーとエスデスは政治に対して干渉してこないため大臣にとって問題ではなかった。
だが、ムソウは違う。
隙を見せたのならばその爪牙で食い殺そうとする、獅子身中の虫ならぬ獅子身中の獣だ。
現状でさえ、移動虐殺部隊と悪名高いアインザッツグルッペンという戦力を保有している、これ以上の戦力増強はそのまま死に直結することが分からない程大臣は頭の回転が悪い訳ではない。
「なるほど、ですが西と南に対する警戒を怠るのはまずいですな。特に革命軍などと自称する反乱軍と西の異民族が繋がっていると聞きます。西と南双方とも常に警戒をしないといけない場所だからこそムソウ殿にお願いをしてムソウ殿が保有する最大戦力であり信頼できる武装親衛隊を派遣してもらったのですがね」
「そのことについては私なりに考えがある」
「問題がなければお聞きしても構いませぬかな?」
「ああ、別にかまわん」
そう言って、ムソウは大臣に説明した。
戦力を見せるだけ抑止力としては働くだろうし、現状でも鉄壁に近い布陣で異民族の動きをけん制している。
だが、このままではその抑止力を上回る力で攻めてくる可能性がありわざと穴を見せることで適度に異民族の戦力を削っておくべきだとムソウは大臣に伝えた。
大臣もその可能性には思い至っていたらしく、珍しく食べる手を止め顎鬚を手で撫でるようにしながら考えさせられていた。
「ですがリスクの方が大きいと思いますな」
「なに呼び戻すのは第一師団のみだ」
現在武装親衛隊は、38の師団単位に分けられ西と南の異民族牽制、更に南に陣取っている革命軍の動きをけん制するために配置してあり、第一師団はその中で西の異民族牽制に配置されている部隊だ。
一年単位で人員は交代しており、待機中の武装親衛隊員は部隊が展開している場所から程近い地方都市に待機と言う形で過ごさせているため、緊急の場合はそこから新たに部隊を編成し送り込めば、万が一異民族が決死の覚悟で都市まで攻め込んだとしても問題なく対処できるとムソウは結論付けている。
大臣がもしムソウの考えている異民族の強襲について不安に思っているのならばまだ救いがあるのだが、大臣はムソウ自身に力が戻ることを警戒しているのだろうとムソウ自身理解しており、事実その通りで、大臣はこの様な些細な事態でムソウの手元に戦力が戻ることを警戒している。
あの手この手を使い裏で軍部の方へ手を回し、皇帝令を皇帝に出させることでやっとはぎ取ったムソウの力の象徴の一つをこうも易々と取り戻されては大臣の面目丸つぶれも良い所だ。
例えそれが第一師団だけだとしても十分大臣にとって危険だ。
「私としてもムソウ殿を信用していますから願いを叶えてあげたいのですがね、いきなり一つの部隊を帝都に戻すとなるとそれなりに準備をしないといけないですからな」
「なるほど、それもそうだなだが、大臣とて急を要するのであろう。ならばその程度のこと些細なことではないか」
「確かにならそうですね……でしたら武装親衛隊を戻すことに一つだけ条件を付けさせては頂けないでしょうか?」
「条件、か。武装親衛隊を寄こせなどと言う無理を言わない限り構わん。今の情勢が情勢だからな」
「私とてそのようなことは言いませんとも。何、条件と言ってもそれほど難しくはありませんよ。安寧道、その最新情報が欲しいのです」
安寧道の最新情報、現在の情勢と併せて考えると大臣にとって黄金に匹敵する価値を持っている。
腑に落ちないのは、安寧道には大臣の息のかかったボリックと言う男が教主補佐をしていたはずだ、ならば私の手元に来る情報よりもより確かなものが大臣の手元にあるはずだがと、ムソウは訝しげな気持ちになりながらも、それを表情に出しはしなかった。
「その程度のことなら構わん、後でまとめた物を早馬で届けさせよう」
「ええ、それで充分ですとも」
大臣は満足げな表情をしながら食べかけていたホールケーキを食べ尽くした。
「私から一つばかり聞きたい事があるが構わぬか?」
「貴方が質問するとは珍しいですね」
「何確認したい事が一つあるだけだ」
「私で応えれる範囲なら応えましょう」
「奴と、シュラと会ったか?」
「いいえ、帝国の外へ行かせていら会っていませんね。しかし、分からないですね。貴方が質問するだけでも珍しいのにそれがシュラとは」
「何、ただの確認だ。最近帝都周辺でシュラと酷似した容姿の者が何度か目撃されていたからな。大臣はスタイリッシュの研究施設の襲撃があった際、スタイリッシュが作り上げたの人工危険種が一体残らず消えたのは知っているな」
「ええ、それは知っておりますが、それがどうかしましたか?」
「スタイリッシュの元から消え去った人工危険種と、最近帝都周辺で目撃されている新型危険種が似ているらしいのだ。更に人工危険種を作っていた場所は研究所の中に在って隠された場所に在り、その場所を知っているのはスタイリッシュとその親友であるシュラだけらしいのだよ」
「つまり、ムソウ殿は今回の事件はシュラがやったと言いたいのですか?」
大臣は食べる手を止めることこそなかったものの、険しい顔つきで此方を見て来た。
「現状では何とも言えんな、これと言った核心に迫る証拠がある訳では無いが、その件も含めて後でまとめた物を送ろう」
ムソウは、話はこれまでと言わんばかりに立ち上がり、大臣に背を向け扉を開けようとした時だった。
「では、後のことはお願いしますね」
大臣は含みのある笑みを浮かべながら言った。
ムソウは、自身の執務室へ戻ると直ちに第一師団に帝都へ戻るよう早馬を出すと、大臣の要望通りの物を幾つか脚色し送った。
ただの脚色、されど脚色。
ムソウの元へ武装親衛隊最精鋭の部隊が戻ることにいつもよりも幾許か冷静を失っていた大臣は、ムソウから早馬で送られてきた書類を読みボリックに幾許かの疑念を持つのであった。
愚痴になりますが、
ハッキリ言って今回の話でかなりの人がお気に入り解除したり、低評価付けるんじゃないかと思ってついつい更新できませんでした。
メンタル弱くて済みません。
次の話を楽しみに待っていてくれる方がいるのなら楽しみに待っていて下さい。
以上