ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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強運こそ勝利のカギ!?

「タ、タマが……タマが……」

 

「イッセーさん、すぐに治しますから頑張ってください」

 

アーシアが一誠の負傷箇所、股間に淡い光を当てている

 

体の傷は殆ど癒えたが、まだ股間だけはまとわりつく様な痛みを駆け巡らせていた

 

「しかしまぁ、なんてエグい事を……あれ程躊躇(ためら)わず股間を狙い打つ女は初めて見た」

 

新は畏怖の目で『2代目クイーン』アスカ・シャーベットを見る

 

因みにアスカは既に魔力で作った服に着替えていた

 

「向こうは2勝しちゃったけど、まだ勝機を失った訳じゃないよ」

 

「そうは言うがよ、祐斗、一誠にくらわせたアレが何度もフラッシュバックしちまう現状で余裕を構えていられねぇんだが……」

 

「……そ、そうだね」

 

第6試合の組み合わせを決めるルーレットが回り出す

 

「今世紀最大の賭けだ。あの女とは流石に当たりたくない」

 

新がそう願ってスイッチを押す

 

グレモリー側――――竜崎新

 

『チェス』側――――アスカ・シャーベット

 

「何故だアァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

新の慟哭がグラウンドに響き渡り、バトルフィールドはゴールフィールドに決定した

 

「チクショウ……俺の願いが泡みたいに弾けた……」

 

「あらあら。元気を出してください、新さん。私が慰めて差し上げますわ」

 

朱乃が新を自身の胸に抱き寄せて頭を撫でる

 

新は微量の安らぎを得たが、すぐにバトルフィールドに転送される

 

場所はサッカーグラウンドの様なフィールドで、それぞれの側にはゴールが設置されていた

 

更に、少し離れたサークル内に10個の箱が存在する

 

『ここでは相手をゴールに叩き込む事で箱を選ぶ権利が与えられる。10個の内、1つだけ"勝利"と書かれた人形が入ってる箱を先に引き当てた方の勝ちだ』

 

「確率は1/10(じゅうぶんのいち)か。その人形を引き当てるまで試合は終わらないとなれば、長期戦になるのは必須か……」

 

新は即座に闇皇(やみおう)と化し、アスカは式神の宝玉を出現させる

 

開始の合図と同時に新が(てのひら)から魔力の弾を撃ち放った

 

「蟹座の式神、キャンサー!」

 

宝玉から甲羅と鋏を持った少女が出現し、背中の甲羅で魔力の弾を弾き返す

 

「はうぅぅぅ……わたしはただの蟹なんですぅぅぅ……。暴力はやめてくださいぃぃぃぃぃ……」

 

「何かギャスパーみたいな娘だな……悪いが、今回だけ手加減は一切しねぇ!」

 

「ひいぃぃぃぃぃ!やめてくださいぃぃぃぃぃっ!」

 

ブゥンッ!

 

キャンサーが巨大な鋏を振るうと斬撃が発生し、空間が斬れる

 

新は危険を察知して横っ飛びで回避した

 

「あっぶね〜」

 

「ひいぃぃぃぃぃん!もうダメですぅぅぅぅ!お家に帰りますぅぅぅぅぅぅ!」

 

キャンサーは泣きながらアスカの体内に戻り、次なる宝玉が出現する

 

「牡羊座の式神、ウール!」

 

ポヨンッ♪

 

コミカルな効果音の直後に、フワフワで二頭身サイズの羊が現れた

 

しかも、(つぶ)らな瞳で新を見つめている……

 

「ムキュ〜ッ♪」

 

「な、何だこのゆるキャラみたいな式神は……」

 

「モキュ〜ッ♪」

 

牡羊座の式神ウールがピョンピョン跳ねながら新に向かっていく

 

新はこんなゆるゆるの式神を攻撃したら反感を買いそうだと攻撃姿勢を解く

 

しかし、それは大きな間違いだった……

 

「ムキュキュ〜ッ♪」

 

ギュインッ!

 

式神が球体になった上、ドリルみたいなトゲが一斉に隆起

 

回転を加えながら新の腹に突っ込んだ

 

「ゴバアァッ!やり方キタネェ……ッ!」

 

ボスッ!

 

完全に油断していた新はゴールネットまで吹っ飛ばされ、アスカに箱を選ぶ権利を与えてしまった

 

『ヒデェ!あの羊ヒデェよ!』

 

「よしよし、頑張りましたねウール。ゆっくり休んでね」

 

アスカは式神を戻してからサークル内にある10個の箱の内1つを選ぶ

 

箱の中身にはハズレと書かれた紙があった

 

「あ、ハズレですね。じゃあもう一戦始めましょうか」

 

「ゴホ……ッ!そうだった、当たりを引かない限り終わらねぇんだった。まだ勝機はある!」

 

「まだまだいきますよ。(うお)座の式神、パイシーズ!」

 

「魚座か……。さっきみたいなゆるキャラだったら、今度は手加減抜きで殺ってやる――――――っ!?」

 

出てきたのは、ゆるキャラとは無縁の姿を持つ双頭のウツボ

 

新の予想は見事に裏切られた……

 

「ピギャアァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

「ゴギャアァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

「怖ッ!顔怖ッ!何処の怪獣だよこいつは!?」

 

「怪獣じゃありません。この子達はまだ2歳を迎えたばかりです」

 

「こんな図体デカくて幼児!?ってか来んじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

新は襲い掛かってくる双頭のウツボの噛みつきを(かわ)し、目を剣で斬りつける

 

ウツボは苦しがって顔を地面に擦り付けた

 

「大怪獣バトルをしてる気分だぜ。オォラァッ!」

 

新は追い討ちに巨大な魔力の弾をもう一方の頭に放つ

 

両目を潰された頭は何度も首を振って苦しむ

 

「戻りなさい、パイシーズ。天秤座の式神、リブラ!」

 

双頭のウツボが体内へ還り、今度は右手に赤、左手に青色の天秤皿を吊るした女性が姿を現す

 

「リブラ。あの人の周辺の重力を変えなさい」

 

「分かりました。重力プラス」

 

赤い皿が光り、新は上から発生する重力に体の自由を奪われる

 

「ぐぎぎぎぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……ッ!か、体が押し潰される……ッ!重力変化の式神か……!?」

 

「はい。リブラは対象物の重力を自在に操る式神です。そして―――――」

 

アスカの髪の毛が徐々に伸びながら新に向かっていく

 

鬼髪師(きはつし)の能力で新を縛り上げた

 

「このままゴールに入れさせていただきます」

 

アスカはハンマー投げの要領で捕縛した新を振り回し、ゴール一直線に投げる

 

だが、新は重力の範囲から解放されたのを見逃さず地面に魔力の弾を撃って、その爆風で自身を跳ね上げさせた

 

「危ねぇ危ねぇ。んじゃ、お返しさせてもらうぜ!」

 

新はマントを翼に変えて低空飛行しながら、高速でアスカに体当たりをかます

 

「きゃあ!」

 

『2代目クイーン』と言えど女性……体重までは一般女性と変わらず、アスカはゴールネットまで吹っ飛ばされた

 

「よしっ、次は俺が箱を選ぶ番だな。確率は1/9(きゅうぶんのいち)……こいつにするか」

 

新は選んだ箱の蓋を開けるが、中身は空っぽのハズレだった

 

互いに1つずつ開け、残る箱は8つとなった

 

アスカが土埃を払いながら言う

 

「純粋に強いですね。流石は『闇皇(やみおう)の鎧』の宿主です。では、私の持つ式神の中で1番強い2人を出しましょう」

 

今までとは違う雰囲気を滲み出す宝玉を2つ、アスカは前方に出現させた

 

「出でよ!射手座の式神、サジタリオン!獅子座の式神、レオーグル!」

 

アスカの呼び声に応え現れたのは――――全身を鎧で覆われたケンタウロスと、黒き体躯に白色の(たてがみ)を持った獅子の獣人

 

サジタリオンは弓矢、レオーグルは大剣を携えていた

 

「我が輩を呼び出すとは、相当の手練れであろうな?アスカ」

 

「まさか二強と呼ばれし我々が、同時に呼び出されるとは思わなかった」

 

「サジタリオン、レオーグル、彼は『闇皇(やみおう)の鎧』の宿主です。あなた達なら彼を退(しりぞ)けられるかと」

 

レオーグルが大剣を片手で振り回し地面に突き刺すと、フィールド全体に大きな亀裂が入る

 

「貴様がそれ程言うのなら、文句は言わぬ」

 

「私もだ。現闇皇(やみおう)の力、とても興味深い」

 

「すげぇ重圧だ……今までの奴らとは別格か……!必死でやらねぇと負けちまうよな!」

 

新は剣と全身に魔力を駆け巡らせ、一気に突っ込んでいく

 

獅子座の式神レオーグルに闇皇剣(やみおうけん)を振り下ろすが、片手で持った大剣に阻まれる

 

「ぬう……なかなかの力量だな。だが、我が輩を斬るには少し(ぬる)いな」

 

「だったら、これならどうだ!」

 

ドゴッ!

 

新の魔力を帯びた渾身の蹴りがレオーグルの顔にヒットする

 

レオーグルの口から少量の血が一筋流れた

 

「……我が輩に蹴りを入れる者なぞ、いつ以来だろうな。今まで戦った奴らは我が輩の気迫に臆して戦意喪失する者ばかりだった。久々に血が煮え(たぎ)る!」

 

ドゴオォッ!

 

レオーグルの左拳が新の腹にめり込み、新は血と共に内容物を吐き出す

 

「ゴバアァッ!な、なんつーパンチだよ……!」

 

「レオーグル!頭を下げろ!」

 

後方からサジタリオンの弓が無数の矢を放ち、新の全身に突き刺さる

 

新は数メートル飛ばされ、痛みに苛まれながらも矢を引き抜く

 

「我が獅子の咆哮で吹き飛ぶが良い」

 

レオーグルが大口を開けて魔力を口内にチャージしていく

 

新は足を負傷したせいで回避行動が取れず、迎撃するしかなかった

 

「オォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」

 

「迎え撃つか!その勇気は称賛してやろう!」

 

新が放った帯状の魔力とレオーグルの咆哮が同時に発射され、2つの巨大な力がぶつかり合う

 

序盤はほぼ互角だったが、後からレオーグルの咆哮が新の魔力を押していく

 

「ぐっ……!やべぇ……!押し戻される……!?」

 

ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 

2つの巨大な力が大爆発を起こし、新は爆風で吹き飛ばされてゴールに入ってしまった

 

「ふう、久々に血が煮え(たぎ)る者だったぞ」

 

「そうですか。あなたにそこまで言わせるなんて、やはり彼は凄い人ですね。では――――箱を選びましょうか」

 

サークル内の箱を1つ選ぶアスカ

 

箱の蓋を開けてみると――――――

 

「あ、当たりました」

 

「なぬっ!?」

 

なんと当たりの人形を引き当てられ、新の敗北が決まってしまった

 

「運も実力の内、と言いますね。この場合」

 

「チッ。もう終わりか。まぁ良い、我が輩は寝るぞ」

 

「次の機会に持ち越すとしよう」

 

レオーグルとサジタリオンが宝玉となってアスカの体内に戻る

 

2人はバトルフィールドからグラウンドに帰還した

 

「スマン。負けちまった……」

 

「新、そんなに気を落とす事は無いわ。まだ負けた訳じゃないわよ」

 

「そうだぜ、新。次に勝てば良いだけだ!」

 

リアスと一誠が励ましを送り、新は苦笑する

 

いよいよ最後の組み合わせを決めるルーレットが回転する

 

リアス、新、一誠がそれぞれ一回ずつスイッチを押した

 

グレモリー側――――赤い星

 

『チェス』側――――蛟大牙(みずちたいが)

 

バトルフィールド――――タイムフィールド

 

迎えたラストゲーム――――遂に闇人(やみびと)の『2代目キング』が選ばれた……




次回はいよいよクライマックス、大牙戦です

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