「次の組み合わせだ」
ルーレットが本日3回目の回転を始める
「ポチッとポチッとポチッとな♪」
今度はリズム良くスイッチを押してルーレットを止めた
グレモリー側――――赤い星
『チェス』側――――ストレイグ・ギガロプス
バトルフィールド――――雪原フィールド
グレモリー側はボーナスの赤い星マークが出た
「こちらはストレイグ。そっちは赤い星が出た事で自由にメンバーを3人まで出せるぞ」
大牙の言葉で新達は誰を出すか話し合いを始めた
「さて、誰が出る?」
「う~ん……ん?祐希那、どうしたの?」
「……………………」
渉はまた祐希那の様子がおかしい事に気付き、肩を揺するが反応が無かったので強く呼び掛ける
「祐希那、祐希那?祐希那!」
「――――っ!?ど、どうしたのよ?渉」
「それは僕の台詞。さっきから変だよ?」
「だ、大丈夫よ……大丈夫」
祐希那は平常心を装うが、渉は異常な状態にあると見抜いた
そんなやり取りを他所にストレイグは――――何故か手で顔を押さえて笑っていた
「ちょっとあんた。何がおかしいってのよ?」
「いやいや、俺はツイてるぜ。まさかよぉ―――――あん時邪魔してくれた奴と殺し損ねた女に、こんな偏狭な町で出くわすたぁな」
『――――――っ?』
「何処かで聞いた声だと頭ん中で引っ掛かってたんだよ。だが間違いねぇ。そこの茶髪、覚えてるか?」
渉はストレイグの目をジッと見てみる
ハッと何かに気付き、疑問を真っ先にぶつける
「君はまさか……3年前の……?」
「あぁそうだ。3年前、獲物を殺してる途中でてめぇにやられたんだよ。その女を殺す直前でな!」
祐希那もこの時点で理解出来た
彼女の腹の中で耐え難い何かが煮え
震えながら、歯を食い縛りながらストレイグを睨んだ
「まだ思い出せねぇなら、話してやるよ。3年前の――――あの日を」
――――――――3年前、とある屋敷
ザシュッ!
ズチャッ!
グジャッ!
ドスッ!
バキグチャッ……!
生々しくエゲつない音が屋敷中に鳴り響く
「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!これが
下品な笑い声を止めない
怯え、震え、その全てが少女の思考すら奪う
「あ……あぁぁ……皆が、皆が血まみれに……っ」
「あぁ?ま~だ1匹残ってやがったのか。お前もすぐに殺してやるよ。俺に血と肉の感触を覚えさせてくれよ!ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
「何だてめぇは!」
「君も
「なぁに格好つけてやがんだクソがぁっ!」
もう一方の爪で『
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!て、てめぇ!俺の目をぉぉぉぉぉ!ふざけやがって!この代償は高く付くぞ!」
しかし、少女の顔はまるで魂が抜けたかの様な状態に陥っており、いくら呼び掛けても返事をしてくれなかった
「う……うぅ……」
「……っ?まだ息が……ッ!しっかりしてください!」
血まみれで倒れている男に近付く少年
男は弱々しい声で少年に話す
「わ、私はもうダメだ……その子を――――
「祐希那?あの女の子ですか?」
「祐希那を……助けてやってくれ……。私では守り切れなかった……主の私が、手も足も出なか――――ゴフッ!」
「もう喋らないでください!誰か!誰かいませんか!?」
「無理だ……この屋敷にいる者は、祐希那以外……全員殺された……たった1人の闇人に……!残っているのは……血にまみれた
男が少年の肩を掴み、最後の力を振り絞って願いを託す
「祐希那を……祐希那を頼む……!遠くへ、逃げ……」
カクッ………………
少年の肩を掴んでいた手が離れて地に落ちる
少年は未だに放心状態にいる少女―――――祐希那に再び声を掛ける
「君の主から頼まれたよ……君を守ってくれって……僕は八代渉」
「……………や・し・ろ・わ・た・る………?」
―――――――――現代に戻る
「あんたが……あんたがあの時の……ッ!」
「君があの時の
「そりゃそうだ。目を潰された怒りと憎悪で姿が変わっちまったんだ。分かる訳ねぇわな。だがよ、安心したぜ……てめぇはともかく、そこの女は自殺したと思っていたが……生きているたぁ好都合だ」
「……1つ、聞かせてくれない?何で祐希那の仲間を殺したの?」
渉の問いにストレイグは低レベルな答えを出した
「何で殺したか?誰でも良かったんだよ。新しい力を手に入れたら試すのが当然だろ。そんな事も知らねぇのか?」
"
その為だけにストレイグは祐希那の主と仲間を殺した
答えを聞いた祐希那は煮えくり返った感情を抑えられなかった
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
祐希那は
ストレイグは氷を纏わせた爪で斧を止める
「あんただけは……ッ!あんただけは絶対に許さないッ!斬り殺してやるッ!」
「殺すだぁ?ハッ!たかが屋敷にいた奴らを殺したぐらいで何怒ってやがる!
「ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
祐希那は斧を滅茶苦茶に振り回すが、『2代目キング』――――大牙の細剣に阻まれた
「待て。選手が決まってない内に攻撃を仕掛けるのはルール違反だ」
「だったら、私をすぐに転送させなさい!こいつだけは!こいつだけは私の手で殺してやるッ!」
「――――――決まったよ。こちらは僕と祐希那の2人で行く」
渉も参戦の意思を提示し、大牙はそれを承認して3人をバトルフィールドへ転送させた
「あの野郎が高峰の探していた
「俺もだよ。あんなつまらない理由で殺すとか、イカれてやがる……!」
祐希那が斬りかかる直前、新と一誠はそれぞれの武器を展開していた
リアスも朱乃も、その場にいた殆どがルールを無視してストレイグを攻撃しようとしていた……
ストレイグを許せないのは皆同じであるが、渉と祐希那が転送された以上、戦うのはその2人……
新と一誠は「絶対勝て!」と画面に映る2人に
そしてバトルフィールドとなる雪原に3人の戦士が現れる
「祐希那、少し落ち着くんだ」
「渉!この状況でどう落ち着けって言うの!?今目の前に、目の前に私の主と仲間を殺した奴が――――っ」
祐希那は激昂して渉の胸ぐらを掴むが、渉の温厚色が皆無の顔に思わずビビる
いつもは小動物のようにホンワカ且つ天然ボケキャラの渉だが、今の彼にそんな様子は微塵も無かった
「わ、渉……?」
「祐希那、君の気持ちは痛い程分かるよ。でも、怒りに囚われたままじゃ絶対に勝てない。ここは――――僕がやる」
渉は静かな怒りと共に『
開始の合図が鳴り、ストレイグは氷の爪を両手に作り出した
「ハッ!てめぇが出てくるか。丁度良いぜ目を潰してくれた礼をしなきゃなぁ?てめぇは目だけじゃねぇ。合体ロボットみたくバラバラにしてや――――」
ビュンッ!
ドゴォッ!
ストレイグが言い終わる前に渉は高速のダッシュで詰め寄り、鳩尾に拳を捻り込んだ
完全に油断していたストレイグは激痛に顔を歪め、後退りして吐瀉物をぶちまけた
「ガボゲボォッ……!い、1発入れたからって調子こいてんじゃねぇぞ!」
「君、ただ自分の力を試したくて祐希那の主と仲間を殺したんだね……」
「あぁ!?それの何が悪いってんだ!」
渉は歩みを止めずストレイグに訊く
「君は――――大切な人を失った事はある?」
「あ?いねぇよバカが!」
「誰かを1年間、看病した事は……?」
「いつまで気色悪い事抜かしてやがんだ!んなもんある訳ねぇだろうが!」
ストレイグが
渉は拳にオーラを纏わせ、氷の爪を砕いた
「誰かに心を壊された事はあるかい?」
「クソがァァァァ!説教ならあの世でしやがれェェェェェェェッ!」
ストレイグは先程のよりも巨大な爪を作り、渉を潰そうとするが―――――再び拳で打ち砕かれる
「君のあまりにも幼稚過ぎる考えで――――祐希那は1度精神が壊れたんだぞ!」
ドゴッ!
バゴッ!
渉は祐希那が辿った苦しみの道をストレイグに叫びながら拳を入れていく
「祐希那の精神が崩壊して受け答えすら出来なかった!人形みたいに虚ろな目になっていたんだ!食事も喉を通らず、一睡も出来ない日が何ヵ月も続いた!何ヵ月も泣き止まない時だってあった!」
渉の拳が顔面と鳩尾に集中砲火する
「祐希那の――――1人の女の子の人生を狂わせておいて、ただで済むと思うなアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
渉のアッパーがストレイグの顎を打ち抜く
自分の心情を代わりに、しかも必死に語り続ける渉に祐希那は自然と涙を溢れさせていた
「渉……まさか、私の代わりにそいつを……?」
「祐希那だって女の子なんだぞ!オシャレしたり買い物したりするのが当たり前なんだ!主や仲間と一緒に楽しい日々を送れたんだ!なのに君は――――祐希那からソレを奪った!女の子としての人生を奪ったんだ!」
「ほざけクソがぁっ!」
ストレイグが
渉はその全ての
「娯楽の為だけに祐希那の主と仲間、数多くの人達を殺してきた罪は―――――あまりにも大きい!」
渉の蹴りがストレイグの鳩尾に命中
ストレイグは血が混じった内容物を吐き出す
「君は消えなければならない
「ペッ!
ストレイグが地面を突き刺して何本もの
隆起しながら突き進む
渉はその
消し飛ばした直後に距離を詰めてストレイグの鳩尾にまた拳を入れる
「が……ガボアァッ!」
「ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ドオォォォォォォォォォォォォォォンッ!
渉は拳に纏ったオーラを爆発させてストレイグを吹き飛ばした
鮮血が雪原に赤い斑点を作り、ストレイグは3度目の嘔吐をする
「少しは祐希那や他の人達の苦しみを理解しなよ」
「ぐっ……!コンチキショウガアァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ストレイグが右手に
それは生物及び無機物を
ストレイグは
「調子に乗りやがってぇ……!」
ストレイグは血迷った様子で弾丸を
今まで他の対象物に向けて使用してきた
「ヘヘッ……!今まで実験を重ねてきたが、こんな使い方は前代未聞だろうな。何しろ――――
右手に剣を
外界でこの様子を見ている新達は驚愕の表情となっていた
「あの銃が
「つーか、あんなの有りなのか!?」
ストレイグは実験の成功に哄笑をあげた
「ヒャハハッ……!ハッハッハッハッハッハッ!こいつぁ良いぜ!
ストレイグは
しかし、変異した
「チッチッチッ……ザコごときが、このバリー・デスペラードに命令を下すとはお笑いだ」
「んだと……?ザコとは俺の事かぁ!?」
「俺の前にいるお前に言ったんだ。『チェス』の座に着いている者として恥を知れ。力は貸してやるがな」
ストレイグはイライラを募らせながらも、バリーに渉達を殺すように言う
「とにかく、今はあのガキ共をぶっ殺せ!お前を
「あぁ、その点については感謝しておく。力も貸してやろう。その代わり――――お前がいる『チェス』の座を貰う」
ズドドドドドドドッ!
「……っ!?味方を撃った!?」
「何なのあいつは……?いきなり『チェス』を殺すなんて……」
渉も祐希那も、外にいる新達も突然の事に頭が混乱する
だが、バリーと名乗った
「殺してはいない。ただ――――こいつに力を与えただけだ。そろそろ変化が起きるぞ」
グググ……ッ!
撃たれた筈のストレイグが体を震わせながら起き上がる
ストレイグの様子は誰が見ても分かるぐらい異常になっていた
「ハ、ハハ……!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……!力が!力が湧いてきやがる!湧いてきやがるよォォォォォォォォォォォォォォッ!」
ブチブチッ!
グニュリッ!
ストレイグの両肩の爪が分離し、全身から幾重もの
ストレイグは
「ヒャハハハハハハハハハハハハハ!どうだ!?俺は更にパワーアップしたぞ!これが
ストレイグは渉を見下して大笑いするが、渉はジッとストレイグを睨んで一言だけ冷静に言い放つ
「君、目が曇ってるよ」
「遺言はそれだけかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
激昂したストレイグが口と両手、浮遊する爪から巨大な
「あの2つの爪からも!?逃げて渉!」
祐希那が逃げるように叫ぶが、渉は魔力の盾を形成する
しかし、盾は巨大な
「ヒャハハハハハハハハハハハハハ!そんな盾で防げると思ってんのか!どんどんいくぜェェェェェェッ!」
今度は雪の結晶を手裏剣みたいに投げ、渉を串刺しにしようとする
渉はそれらを最小限の動作だけで回避した
「祐希那。君の代わりに奴を殴ったけど、少しは落ち着いてきた?」
「それどころじゃ無いでしょ!?渉!あのゲスがパワーアップしちゃったのよ!?なんでそんな余裕でいられるの!」
「祐希那、前に教えた筈だよ?力を得るだけなら誰にでも出来るけど、それを使いこなすには冷静になって本質を知る必要があるって」
渉は更に言い聞かせる様に続ける
「焦りが生じるのは相手の力に呑まれているから。奴の目を見ればすぐに分かる。焦っている事がね」
「……?」
祐希那は渉に言われた通り、凶暴化したストレイグの目を見る
渉と戦っているストレイグの目を………
「……あれ?分かる。あいつの目に焦りが……」
「激情のまま攻撃し続けても当たらない。それがどんどん募って焦りとなっていくんだ。さっきまでの祐希那みたいにね……」
祐希那はさっきまでの自分の様子を思い出した
自分も怒りのままにストレイグを殺そうとして、周りを全く見ていなかった……
渉はそれをやめさせ、教える為に自分が先に出たと言えよう
「渉は……この事を気付かせるために……?」
「祐希那。今の君は1人じゃない……僕やフェリス、アリス、ロコ、新さん達もいる。もう―――――1人じゃないんだ」
渉が手を差し伸べ、祐希那はその手を取る
祐希那の瞳から涙が溢れてくる
その涙は悲しみや憎しみが一切無い……嬉しさを表した涙だった
「渉、ありがとう。もう大丈夫。私も一緒に戦って良い?」
「もちろん。僕と祐希那の手で――――祐希那の悪夢を終わらせよう」
渉は祐希那の手を握って彼女を立ち上がらせる
もう祐希那の心に恐怖心は無かった……
側にいてくれる
彼女は向き合う事が出来た――――彼女自身の悪夢の根源に
「さあ、祐希那の為に出血大サービスだ。フェリス、アリス、ロコ、準備は良い?」
『勿論よ!』
『いつでも来いなのじゃ!』
『出撃準備、完了であります!』
渉の体内に宿る
3つの光球が渉の周りを飛び交い、やがて融合を始める
鎧の胸部は
3体の魔族との融合により、最強の
今まで見た事の無い姿に祐希那は勿論、グレモリー眷属も唖然とする
「わ、渉?何その姿!?」
「僕の隠し技さ。フェリス、アリス、ロコの力を直接憑依させた強化形態――――『
渉が両手を前に
水平に浮かぶ得物を握り締め、石突きの部分から紫電の球体を幾つも生み出す
渉は
打たれた紫電の球体は猛スピードでストレイグに直撃し、その後もピンボールの如く縦横無尽に跳弾を繰り返しながらストレイグを痛めつける
「ガッ!?グブゥッ!ゴホアッ!」
足から水流を噴射させて滑らかに移動し、円の動きでストレイグを翻弄する
未だに紫電の球体が飛び交う中、渉は滑りながら
魔力を帯びた水の弾丸が寸分の狂い無くストレイグに命中する
「調子に乗るんじゃねぇぇぇぇええええええええええええええええッ!」
激昂したストレイグは地面から氷のトゲを無数に出現させ、紫電の球体を全て貫く
だが、渉は事前に攻撃圏外へ後退しており無傷だった
左腕から
三日月型の斬撃が氷のトゲを破壊してストレイグの腹を切り裂く
切り口から噴水の様に血が噴き出し、ストレイグは腹を押さえてうずくまる
「つ、強い……っ」
「祐希那、ボーッとしてちゃダメだよ?さあ、行こう。悪夢を終わらせに」
「……っ!……ええ、渉」
祐希那が大きく頷き、2人は互いの手を握ったままストレイグの攻撃を避ける
ストレイグは更に技を乱発するものの、2人には一切通用しない
「チクショウ!何故だ!?何故攻撃が当たらない!?
ストレイグが渉と祐希那の目を見た
2人の目は勝利を確信したかのような自信に満ち溢れている
「何故そんな勝ち誇った目で俺を見ていられるんだ!?俺に恐怖した女までもが何故なんだ!?やめろ!怯えろ!泣きわめけ!俺の攻撃でくたばりやがれェェェェェェッ!」
ストレイグが
「力の焦点がズレたまま技を撃っても、その力はフルに発揮されない。僅かな隙さえあれば簡単に崩せる。祐希那、君の
「ええ、渉」
祐希那は渉に
「
渉のマントが翼のように広がり、吹雪と光を交えた波動がストレイグを技ごと包み込む
「俺は……俺はもっと血と肉を味わうんだ……ッ!血と肉をぉ……ッ!」
祐希那の精神を崩壊させた