ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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遂に『チェス』との対決です


バトルゲーム開幕!

「グギャアァァァッ!」

 

「ゴギュガアァァァッ!」

 

町で闇人(やみびと)の襲撃が続き、オカルト研究部は度々その討伐に当たっていた

 

炎や氷柱(つらら)、鋼鉄、土塊(つちくれ)など――――無機物系闇人(やみびと)の残骸が辺り一面に存在する

 

数も多かったため、流石に疲労も蓄積していた

 

「ふぅ、闇人(やみびと)の襲撃が後を絶たないわね」

 

「あの魔銃(マガン)ってヤツが厄介だな。何でも闇人(やみびと)に変えちまうんだ。闇人(やみびと)にとって、大きな戦力増大アイテムだろうよ」

 

神風(かみかぜ)が改良を加えた魔銃(マガン)は生物及び無機物を闇人(やみびと)に強制変異させる銃で、現在は『チェス』のストレイグ・ギガロプスが所持している

 

奴は魔銃(マガン)のデータをかき集める為だけに、闇人(やみびと)を製造して町を襲撃させていた

 

「はぁ、こんなに数が多くちゃキリが無いな。流石に俺達だけだと……」

 

「確かにな。よし、渉にも連絡しておくか」

 

新はスマホで渉に連絡を取り、闇人(やみびと)の襲撃が多発している事を報告する

 

『そうだったんですか……分かりました。僕達もそちらに向かいます』

 

「すまねぇな。世界中を転々としてるところに」

 

『別に良いですよ。僕達だって仲間なんですから、遠慮なく言ってきてください』

 

「助かるぜ。じゃあな」

 

新はスマホを切って、皆に渉も闇人(やみびと)の討伐に協力してくれる事を報告

 

討伐戦力と範囲が大幅にアップする事は間違いないだろう

 

全員が魔方陣で根城であるオカルト研究部の部室に戻っていった

 

 

―――――――――

 

 

『ハッハッハッハッハッハッハッハッ!死ね死ね死ねエェェェェェェッ!』

 

『これが闇人(やみびと)の力か!最高過ぎるぜ!』

 

『この力があれば、どんな奴でも殺せる!』

 

『まだ獲物が残ってたのか?お前も今すぐ送ってやるよ。こいつらのいる地獄になぁッ!ハッハッハッハッハッハッハッハッ!』

 

 

―――――――――――

 

 

ガバッ!

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……またあの悪夢が……いつになったら……」

 

「祐希那?凄い汗だよ」

 

「渉……またあの悪夢を見ちゃったのよ……」

 

飛竜ワイバーンを根城としている八代渉(やしろわたる)高峰祐希那(たかみねゆきな)

 

祐希那は3年前に起きた闇人(やみびと)襲撃の悪夢を見てしまい、汗だくになっていた

 

自分の目の前で主や仲間が殺されていき、血の海に沈む惨状が寝てる時にフラッシュバックされる

 

祐希那は精神崩壊から立ち直れても、何日も続く悪夢のフラッシュバックからは解放されずにいた……

 

「渉……私、早くこの悪夢を忘れたい……!寝る度に主や仲間の断末魔を聞くのはもう嫌……!」

 

「祐希那、落ち着いて。大丈夫だよ、必ず見つけよう。祐希那の主と仲間を奪った闇人(やみびと)を――――祐希那と僕達の手で狩る。祐希那の悪夢を終わらせよう。他の人達に、そんな思いをさせないためにも……」

 

渉は祐希那の頭を優しく撫でて励ます

 

祐希那の体の震えが次第に止んでいく

 

「……ありがとう、渉。少しシャワー浴びてくるわ」

 

祐希那は終わらせるべき事を胸に秘め、心から渉に感謝した

 

脱衣場で汗まみれのパジャマを脱ぎ捨て、浴室へ入る

 

シャワーから出たお湯を浴びながら長い白髪を丁寧に洗い、汚れを落としていく

 

「あっ、シャンプー切れてる……。仕方無いなぁ、もう」

 

祐希那は空のシャンプーボトルを持って、一旦浴室から出ようとしたその時――――脱衣場の扉が開く

 

「ファッ!?渉ッ!?」

 

「ごめん祐希那、シャンプー取り換えるの忘れてた。これ使って。あと新しい入浴剤も買ってみたんだけ――――」

 

「このタイミングで言わないでよバカァッ!別に今じゃなくても良いでしょ!?」

 

「うん、そうだったね」

 

「確信犯!?さては、あのエロバカコンビ(兵藤と竜崎)に何か吹き込まれた!?」

 

「えっと、女の子がお風呂に入った時が狙い目だとか言ってたけど……どういう意味か分かる?」

 

「私に聞くなーッ!そしてドアを閉めて出てけーッ!」

 

「あ痛っ。分かったから氷の塊は投げないで」

 

バタン……ッ

 

「ったく、あのエロバカどもは余計な事を……。てか、思いっきり私の裸見てたのに無反応って――――あの朴念仁(ぼくねんじん)……私だって一応女なんだからね……」

 

 

―――――――――

 

 

翌日の放課後

 

オカルト研究部に郵便物が届いたので、リアスはすぐにメンバー全員を招集させた

 

「部長、いったい何があったんですか?」

 

「この部室に来てみたら、こんな物が置かれていたのよ」

 

リアスが皆に見せた物は―――――「果たし合い」と書かれた1本のビデオテープで、裏には『チェス』の『2代目キング』と差出人の名前があった

 

「随分と古風な事をしやがるな。『2代目キング』は」

 

「そうね、あまりにも正々堂々としてるわ。再生するわよ?」

 

リアスがメンバーの頷きを確認した後、ビデオデッキにテープを入れて内容を公開する

 

画像の乱れが終わった直後、『チェス』の『2代目キング』こと蛟大牙(みずちたいが)の姿が映った

 

『………………ん?もう始まっているのか?えっと……何々、テレビを見る時は部屋を明るくして、なるべくテレビから離れて見るようにしてくれ……で良いのか?』

 

「注意書から始めてる……」

 

何やら出鼻を挫かれた感覚で全員が拍子抜けとなるが、映像に映る『2代目キング』蛟大牙(みずちたいが)は台本らしき物を持ちながら話を続ける

 

『リアス・グレモリーと眷属の者達へ。お前達の力の成長にオレは「2代目キング」として注目せざるを得なくなってきた。オレは一目置かれているお前達を超えた上で、闇人(やみびと)を頂点に導くつもりだ。その余興代わりと言っては何だが、本日深夜0時にお前達の学舎(まなびや)のグラウンドにてバトルゲームを(おこな)いたい。悪魔達の間で流行っているレーティングゲームの様な催しだ』

 

「バトルゲーム?何かの罠かしら?」

 

「いや、こいつはそんな姑息な手段を使う奴には見えねぇ。本心から言ってるんだろう」

 

『試合形式とルールについては後程、我々「チェス」が到着してから説明に入る。メンバーは好きなだけ連れてきて構わない。ゲームとはいえ戦いだ、覚悟の無い者は即刻辞退する事を勧める。では、深夜0時にまた会おう。えっと……尚、このビデオテープは最後まで再生すると自動的に爆発する仕掛けとなっているらしいから気を付けてくれ。それでは―――――』

 

果たし合いの説明が終わったかと思いきや、大牙は台本を見ながら何かを言い出した

 

『それではお楽しみください……?「鱒代(ますよ)、ビームソードを手に入れる」、「波彦(なみひこ)、カツラを買いに行く」、「鱈利(たらとし)、パラシュートが開かない」の3本……何なんだこれは?』

 

「「サ◯エさん風!?しかも、スッゲェ気になるタイトルだ!」」

 

新と一誠が同時にハモり、リアスは苦笑しながらビデオを止めた

 

「ぶ、部長!1タイトル、1タイトルだけ見ましょうよ!」

 

「そうだ!あんだけ気になるタイトルを発表されて見なかったら後味が悪い!ギリギリまで見るんだ!」

 

「あなた逹ねぇ……真面目に考えなさい。闇人(やみびと)のトップが(じき)に来るのよ?」

 

「それにバトルゲームと言う名目も怪しい気がしてなりませんね……」

 

祐斗が顎に指を当てながら考え込む

 

だが、『2代目キング』の蛟大牙は少し変わり者である事は殆どの者が承知している

 

三大勢力会談の時も、真正面から悪魔、天使、堕天使のトップを打ち破ると豪語していた

 

新の言う通り、姑息な手段を使う奴には見えない

 

「何にしろ、今はこのバトルゲームとやらを受けるしか無さそうね」

 

「そうですわね。三大勢力の重要拠点に自ら乗り込んで来るのですから、警戒態勢を整えておく必要はありそうですが」

 

リアスはとりあえず、深夜11時30分に再び駒王学園に集合する事を皆に伝えた

 

新と一誠はその話を聞きながら、ビデオを再生しようとしてアーシアと小猫、ギャスパーに止められているが……

 

「イッセーさん!ダメですってば!」

 

「……先輩。気をしっかり保ってください」

 

「爆発しちゃいますからダメですぅぅぅぅ!」

 

「1タイトルだけ!1タイトルだけだから!」

 

「小猫!分かってくれ!俺はどうしてもこの話が気になるんだ!ギリギリまで見させてくれ!」

 

『はぁ………』

 

リアス逹全員が額を押さえて嘆息する中、下校時刻のチャイムが鳴った

 

 

―――――――――

 

 

もうすぐで深夜0時になる時刻、オカルト研究部のメンバー全員がグラウンドに待機していた

 

教師としての仕事を終えたロスヴァイセも鎧姿となっている

 

「そろそろ来る時間ね」

 

リアスが腕時計を確認し、その時刻が0時となった

 

パアァァァァァァァッ……

 

眼前に青い魔方陣が展開され、その中から闇人(やみびと)のトップ――――『チェス』のメンバーが姿を現す

 

『2代目キング』の大牙、『2代目クイーン』のアスカ・シャーベット、『ルーク』風魔ヤタロウ、『ナイト』神代剣護(かみしろけんご)、『ポーン』ストレイグ・ギガロプスとダイアンの6人

 

新は1人足りない事に気付いた

 

「おい。『ビショップ』の神風がいないじゃねぇか」

 

「神風は他に用事があるから出られないそうだ。詳しくは知らんが」

 

「ふ〜ん……」

 

怪訝そうに見る中――――竜の紋様が入った扉が出現し、そこから渉逹が出てきた

 

「お待たせしました」

 

「おぉ、渉。来てくれたか」

 

「――――っ?闇皇(やみおう)。そいつは?」

 

「そういや知らなかったか。こいつは八代渉(やしろわたる)。俺やお前のと同じ鎧を宿す―――――人間と闇人(やみびと)のハーフだ」

 

「人間と闇人(やみびと)のハーフ……そうか。村上が言っていた"三嶋の子孫"とはそいつの事か。『光帝(こうてい)の鎧』を宿す者……そいつらも参加するのか?」

 

「そうだが、問題でもあんのか?」

 

「いや、構わないぞ。『光帝(こうてい)の鎧』を宿す者とやらの実力も見てみたい」

 

大牙は渉逹の参加も認めるが、渉は祐希那の様子が少しおかしい事に気付く

 

「……?どうしたの祐希那?」

 

「い、いや……何か、嫌な気配が……」

 

渉だけが祐希那の手が若干震えてる事を気に掛け、大牙はバトルゲームの説明を始める

 

「ルールは至ってシンプルだ。試合回数は全部で7戦。7戦の内4勝した方が勝利となる。ここにあるルーレットを回して互いに出場する者とバトルフィールドを決める。バトルフィールドはレーティングゲーム同様、異空間だから好きなだけ暴れても構わない。尚、死亡に関しては自己責任だから気を付けてくれ。あと、お前逹の選手を決めるルーレットには赤い星の出目がある。それは好きなメンバーを3人まで投与出来るボーナスだ。出た時は上手くメンバー編成を行うと良い」

 

大牙が指差す先には、禍々(まがまが)しい顔が3つ並んだルーレットが存在する

 

「選ばれるのはランダムか」

 

「新、俺はあの水色の髪をした女の子と戦いたい」

 

一誠がニヤケながら指差す

 

新はその方角に顔を向けると、『2代目クイーン』のアスカ・シャーベットが優しげな微笑みを見せた

 

しかし、新は何故か背筋に微量の寒気を感じる

 

「一誠、選ばれるのはあくまでランダムだ。必ず来るとは限らない」

 

「そっか……そうだよな」

 

「では、第1試合の組み合わせとフィールドを決めるぞ」

 

大牙が指を鳴らすと3つのルーレットが回転を開始し、新逹の前にスイッチが現れる

 

「何だこりゃ?」

 

「スイッチを止める権利はそっちに譲ろう。好きなタイミングで押すんだ」

 

「ほう。んじゃ、ポチッとな」

 

新は3連続でスイッチを押し、ルーレットが止まる

 

第1試合、グレモリー側――――木場祐斗、『チェス』側――――ダイアン、バトルフィールドは砂漠フィールドとなった

 

「木場とダイアンか……負けんなよ、木場」

 

「奴の剣はとにかく速い。どう攻略するかがポイントだな」

 

「うん、そうだね」

 

ルーレットの目が光り、祐斗とダイアンが異空間にある砂漠フィールドに転送される

 

2人が転送された先は辺り一面が砂一色の砂漠

 

ダイアンは早速魔人態(まじんたい)になり、祐斗は聖魔剣(せいまけん)を一振り創り出す

 

『このフィールドでのルールは単純明快。相手を戦闘不能状態にする、もしくは相手が降参の意思を提示した時点で勝敗が決まるぞ。第1試合――――始め!』

 

グレモリー眷属VS『チェス』のバトルゲームが幕を開けた

 

「HEY!この砂漠フィールドだTO()Knight(ナイト)自慢のSpeed(スピード)は発揮されないみたいDA()。どうすRU()?」

 

「そんな心配はいらないよ。大地の聖魔剣(せいまけん)!」

 

祐斗は手にした聖魔剣(せいまけん)を言葉にした聖魔剣(せいまけん)に創り変え、眼前の砂に突き刺す

 

すると、砂漠一面が(うごめ)いて平地を作り上げていく

 

砂漠フィールドが平地に変わった事で、『騎士(ナイト)』のスピードを存分に発揮出来る様になった

 

Wow(ワオ)!フィールドを無理矢理変えちまったのKA()!イカしてるZE()!」

 

ダイアンは右手に仕込み刀、左手に三ツ又の槍を携えて構える

 

「一誠のダチのKnight(ナイト)。冥界の時は一部しか見せていなかったGA()、今日は俺の(ソウル)を燃やすZE()!」

 

シュババババババッ!

 

ギギィンッ!

 

ガキンッ!

 

ダイアンの手が見えなくなる程速く動き、祐斗の聖魔剣(せいまけん)と火花を散らし合う

 

ダイアンと祐斗の剣速は殆ど互角のようだった

 

「流石に速いね。僕が速度で押されるなんて思わなかったよ」

 

「まだまDA()!俺の(ソウル)はこっからだZE!」

 

ダイアンは距離を取り、三ツ又の槍に螺旋状の魔力を練る

 

3つの矛先から螺旋状の魔力がうねりながら突き進み、祐斗を飲み込もうとする

 

「――――ッ!風の聖魔剣(せいまけん)!」

 

祐斗はすぐに別の属性を持つ聖魔剣(せいまけん)を創り、自身を覆うような竜巻のバリアを発生させる

 

ダイアンが放った3つの螺旋状の魔力は竜巻のバリアに弾かれ霧散していった

 

だが――――――――

 

「真上がガラ空きだZE()

 

ダイアンは祐斗が作った竜巻の真上で居合い斬りの構えを取っていた

 

祐斗は上空を見上げる

 

「『牙流転生(がりゅうてんせい)』ッ!」

 

ズドドドドドドドドッ!

 

ダイアンの仕込み剣の刃先から無数の鋭利な形をした魔力が放たれ、祐斗の全身に隈無く突き刺さる

 

「ぐうぅぅぅっ!」

 

「竜巻の張ったのは失敗だったNA()!逃げ場を自ら閉ざしちまっTA()!」

 

「そう思うかい……?ふっ!」

 

ザァッ!

 

なんと祐斗が竜巻の流れに乗ってダイアンのいる上空に駆け上がっていく

 

まるでスケートでもするかの様に……

 

よく見ると、祐斗の両足から剣が張り付いていた

 

What(ホワット)!?まさか剣をスケート靴代わりNI()!?Unbelievable(アンビリーバボー)!!」

 

「竜巻を張った時、君が上空に回り込む事は予測していたよ」

 

祐斗の|聖魔剣《せいまけん|が神々しい光と禍々しいオーラの両方を纏っていく

 

しかし、ダイアンも剣をエレキギターにしまい、大音量と魔力を同時に流す

 

Deadly(デッドリー) Dragon(ドラゴン)!!」

 

エレキギターから巨大なドラゴンを(かたど)った魔力が祐斗に襲い掛かり、聖魔剣(せいまけん)と正面からぶつかり合った

 

ドオォォォォォォォンッ!

 

引き起こされた大爆発はダイアンと祐斗を巻き込み、2人を地上に突き落とした

 

Shit(シット)……まさKA()、あんな方法で俺に攻撃を仕掛けてくるなんTE()。最初から牙流転生(がりゅうてんせい)をくらう覚悟でいたのKA()?」

 

「まあね……君のあの技は並大抵の速度じゃ(かわ)せないと思ったんだ。それに上空では身動きが取れないから、竜巻の流れを利用すれば何とかなると踏んでいたんだけど……至近距離で攻撃を切り替えるとは恐れ入ったよ」

 

Great(グレイト)!流石は一誠のダチDA()。それに……俺の『エレク』にヒビが入っちまってるYO()

 

ダイアンの武器、魂とも言えるエレキギターに一筋の亀裂があった

 

祐斗の聖魔剣(せいまけん)のオーラがダイアンのギターにまで届いていたのだろう

 

Oh(オー) My(マイ) God(ガッド)……ヒビが入っちまったら良い音色が出せなくなっちまうYO()……。Sorry(ソーリー)Give(ギブ) Up(アップ)するZE()!勝負に勝ちたいけDO()、ギターが壊れたら元も子もねぇYA()

 

「え?良いの?」

 

Yes(イエス)

 

ヤケにあっさりした態度で降参を宣言したダイアン

 

グレモリー側は1勝し、祐斗とダイアンが砂漠フィールドから帰還する

 

「やったな木場!」

 

「足から剣を出すって発想には驚いたぜ」

 

「イッセーくんとの訓練で使った手段が役に立ったよ」

 

一誠と新が祐斗を賞賛し、次の組み合わせを決めるルーレットが作動する

 

新はさっきと同じ様に3連続でスイッチを押した

 

グレモリー側――――ゼノヴィア

 

『チェス』側――――神代剣護(かみしろけんご)

 

バトルフィールド――――浮き島フィールドの組み合わせとなり、ゼノヴィアにとって最悪の相手が来てしまった……

 

「……剣護さん」

 

ゼノヴィアと剣護が転送され、海に浮かぶ巨大な島の上に立つ

 

『この浮き島フィールドでは、先に相手を海に落とした方が勝ちとなる』

 

簡単なルール説明の後に笛が鳴り、第2試合が始まったが――――ゼノヴィアは何故かデュランダルを出そうとしなかった

 

「ゼノヴィア、どういつもりだ?」

 

「剣護さん……今のあなたは、本当に優しかった剣護さんではないのですか……?誰よりも神を信じ、誰よりも人を救う心が強かった剣護さんは……」

 

ゼノヴィアは悲しみを含んだ表情で剣護に問い掛けるが、剣護は当然の如く吐き捨てる

 

「ゼノヴィア。まだ神を信じているとでも言うのか?神なんざ俺達をチッポケなゴミとしか認識せず、手を差し伸べたりすらしなかったクズだ。信じていれば必ず救われるなんて言葉はまやかし、存在しないクズにすがり付くゴミ共が生み出した幻想なんだよ」

 

「剣護さん!どうしてそんな考えしか持てないんですか!?」

 

「それが現実だからだ。ゼノヴィア、神を信仰すると言うバカな考えを捨てた方がよっぽど利口だ。悪魔になった今でも信仰心を持っているなど、あまりにもバカげている。大体、悪魔は神の敵だろうが。敵が敵を信仰するとは……笑えるな」

 

剣護の言葉がゼノヴィアに痛々しく突き刺さる

 

悪魔になるまでは悪魔を滅してきた身、その自分が破れかぶれで悪魔に転生した今もなお、神に祈りを捧げている

 

ゼノヴィアは何も言い返す事が出来なかった

 

そんな彼女に剣護は無慈悲な膝蹴りを腹に叩き込む

 

「がはっ……!ゲホッ……!」

 

「さっさと落ちて塩水でも飲んでろ。今のてめぇなんざ、眼中にもねぇ」

 

ドボンッ………

 

もしかしたら、この組み合わせが決まった時から勝負は着いていたのかもしれない……

 

ゼノヴィアにとって剣護は上司であり憧れの存在

 

そんな男が自分の敵となり、神に対しての信仰心を一切合切捨てた

 

ゼノヴィアはツラ過ぎる現実を前に、戦意喪失してしまっていたのかもしれなかった………

 

勝者と敗者がフィールドから帰還し、イリナがゼノヴィアに駆け寄る

 

「しっかりしてゼノヴィア!ゼノヴィア!」

 

「……すまない。私は、まだ弱いままだ……。剣護さんは敵だと、分かっている筈なのに……」

 

「ふんっ。力の無い奴が俺の前に存在してる事自体目障りなんだよ。さっさと隠居でもしてこい、クソガキが」

 

「……ッ!剣護さん!」

 

ショックを受けるゼノヴィア、激昂寸前のイリナを新と一誠が押さえた

 

「ゼノヴィア、奴の言う事なんか気にするな。お前はお前のやりたい事を貫け」

 

「イリナも落ち着け。次にあいつが選ばれたらぶっ倒せば良いんだ」

 

「…………」

 

その様子を見た剣護は更に吐き捨てた

 

「俺をぶっ倒す?自惚れんな小物。特に赤龍帝(せきりゅうてい)、てめぇなんざ俺の足下にも及ばねぇよ。ゼノヴィアと同レベルだ」

 

「……てめぇの方が小物だろッ!」

 

一誠の怒りに剣護は平然とした様子で下がる

 

勝敗は1対1のイーブン

 

まだバトルゲームは始まったばかりだ……


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