ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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新の『女王』形態が遂に出ます!


最強形態発現!?

「うわあぁっ!眩しい!」

 

「これがヴァーリ、白龍皇(はくりゅうこう)の『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』か!体が麻痺しちまいそうだ!」

 

親フェンリルの口に捕らえられたヴァーリから大出力の光が溢れ、フェンリルの体躯ごと呑み込んでいく

 

黒歌(くろか)!俺とフェンリルを予定のポイントに転送しろッ!」

 

光を放つヴァーリは黒歌(くろか)にそう叫ぶと、黒歌(くろか)は手をヴァーリに向けて指を動かす

 

すると、魔法の鎖グレイプニルがヴァーリの方に転移され、やがて巨大な光と化したヴァーリとフェンリルを魔力の帯らしきものが包み込み、夜の風景に溶け込むように消えていった

 

おそらく、何処か別の場所でフェンリルを倒すつもりなのだろう

 

「とりあえず、フェンリルはヴァーリが何とかしてくれるか。後はロキを―――――」

 

「朱乃!」

 

突然聞こえたリアスの叫び声

 

振り向いてみると、子フェンリルの1匹が朱乃に噛み付こうとしていた

 

「一誠!ロキを頼む!あんのクソ犬がァッ!」

 

新は背中のジェットを最大級に噴かして子フェンリルに向かっていく

 

「隙ありだな!」

 

「やらせるかよっ!」

 

背後からロキが新を狙い撃とうとしたが、一誠はドラゴンショットで阻止する

 

回避したロキは一誠に魔術を撃ち放つ

 

「そうはさせん!」

 

「その通りです!」

 

ゴオオオンッ!

 

タンニーンの火炎とロスヴァイセの魔術がロキの魔術を打ち消す

 

その間に新は神速移動で距離を詰めるが、子フェンリルの牙は朱乃に襲い掛かる寸前だった

 

「朱乃ォォォォォォォォォォォォォォォッ!」

 

必死の叫び虚しく、無情にも子フェンリルの牙が朱乃に迫る……

 

ザシュッ!

 

肉に牙が突き刺さる音

 

子フェンリルの牙の餌食となったのは―――――朱乃を庇う形で背中から貫かれたバラキエルだった

 

「ごふっ!」

 

口と傷口から大量の血がこぼれる

 

「……どうして?」

 

「……お前まで()くす訳にはいかない」

 

バラキエルの声に朱乃は何とも言えない表情となっていた

 

新は槍で子フェンリルの右目を刺し、腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす

 

新はアーシアに回復のオーラを飛ばすよう指示を出し、アーシアから放たれた淡い光がバラキエルを包む

 

朱乃は酷く狼狽した

 

「……私は……私はっ!」

 

「……しっかりしろ、朱乃。まだ戦いは終わっていないのだぞ」

 

涙を流す朱乃を見て、新は悔しそうに歯を食い縛った

 

朱乃を守る、不幸にさせないと言っておきながら、また涙を流させてしまった自分が情けないと怒っているのだろう……

 

そんな時、あの"声"が頭の中に流れてくる

 

『クックックッ。力が足りない自分に腹を立てているのか?』

 

『……ッ!『初代キング』!てめぇ、こんな時に何の用だ!』

 

新は皆の集中を途切れさせないように頭の中で『初代キング』に会話する

 

『なぁに、そろそろ「霊魂復活(ソウル・リバイヴ)」を使わせてやろうと思うて出てきただけだ』

 

『ふざけんじゃねぇ!てめぇの言う事なんざ聞いてる暇はねぇんだよ!さっさと失せやがれ!』

 

『あの娘の本心を知りたくないのか?毛嫌いしている(やから)が瀕死になったのに狼狽しておる。本当に(うと)んでいるなら、捨て置く筈だ。クックックッ』

 

『それと「霊魂復活(ソウル・リバイヴ)」に何の関係があるってんだ……!』

 

『簡単だ。あの娘の母親をここに甦らせ、母親本人から父親の事を話させれば良い。実の母の言葉なら、娘も信じるであろう?』

 

『初代キング』の誘惑に新は首を振ろうにも振れなかった……が、『初代キング』は甘言を止めない

 

『貴様はあの娘を守りたいのだろう?それも立派な欲望の1つだ。ならば、欲望を満たせ』

 

『……おい。1つ聞かせろ。「霊魂復活(ソウル・リバイヴ)」を使ってお前や俺に何のメリットがある?』

 

『メリットか……。余の場合は封印されている残りの魂と同化、貴様は残った力を手に入れられる、と言ったところか?』

 

『残った力が手に入る……?本当なんだろうな……?』

 

『疑うなら使わなければ良い。ただ……その場合は確実にあの娘も仲間も殺られるぞ。それでも良いのか?』

 

嫌味ったらしく言う『初代キング』、しかし……今迷っていれば待っているのは死あるのみ

 

迫り来る最悪の事態を避けられるならと、新は決意を固めた

 

『……………やってやろうじゃねぇか。この結果が何を生み出すか分からねぇが、俺は―――――朱乃の本心を知りたい。それを知った上で守り通す!』

 

『クッハッハッハッハッハッハッハッ!それで良い!形は違うが、良い欲望を持った!存分に使え!』

 

『初代キング』の声が止み、新は全身から魔力を漂わせる

 

「……新、さん……?」

 

「朱乃、先に謝っておく。俺は今から―――――倫理を踏み外す」

 

新が意識を集中させて目を閉じると、何かの風景が映し出される

 

『――――あんたがたどこさ。ひごさ、ひごどこさ』

 

小さな家の庭で、まりつきをしている女の子が見える

 

『朱乃、どこ?』

 

朱乃そっくりの女性が小さな子――――朱乃を呼ぶ

 

(あれが……朱乃の母親……)

 

『母さま!』

 

朱乃が母――――朱璃(しゅり)に勢い良く抱きついた

 

『母さま。父さまは今日のいつごろ帰ってくるの?』

 

『あら、朱乃。父さまと何処に行くの?』

 

『早く帰ってきたら、一緒にバスに乗って町へ買い物に行くの!』

 

〈寂しかった〉

 

朱乃の声が聞こえ、場面が変わる

 

バラキエルと小さな朱乃が風呂に入っていた

 

『父さまの羽、嫌いじゃないよ。黒いけど、つやつやで朱乃の髪の毛と一緒だもの!』

 

『そうか、ありがとう。朱乃』

 

〈いつも父さまがいてくれたら、良かったのに〉

 

再び聞こえてくる朱乃の声

 

再度場面が変わる

 

『ねえ、母さま。父さまは朱乃のこと好きかな?』

 

『ええ、もちろん』

 

微笑みながら朱乃の髪を優しくとかす母

 

〈たまにしか父さまに会えなかったから〉

 

そして、場面が急変する………

 

畳が大きく(えぐ)れた室内で、術者らしき者逹が複数で小さな朱乃と母の朱璃を囲んでいた

 

(こいつらが朱乃の母親を……)

 

『その子を渡してもらおう。忌々しき邪悪な黒き天使の子なのだ』

 

『この子は渡しません!この子は大切な私の娘です!そして、あの人の大切で大事な娘!絶対に!絶対に渡しません!』

 

『……貴様も黒き天使に心を(けが)されてしまったようだ。致し方あるまい』

 

『母さまぁぁぁぁぁっ!』

 

次に映されたのは血まみれのバラキエル

 

術者を全て殺し、その身は鮮血に濡れていた

 

朱乃は息絶えた母親の体を揺らし、嗚咽(おえつ)を漏らしていた

 

『……朱璃……』

 

『触らないでっ!』

 

バラキエルが震える手で妻に触れようとするが、小さな朱乃が怒りをぶつける

 

『どうして!どうして母さまのところにいてくれなかったの!?ずっとずっと父さまを待っていたのに!今日だって、早く帰ってくるって言ったのに!ううん!今日はお休みだって言っていたのに!父さまがいたら、母さまは死ななかったのに!』

 

幼き娘にとって、母の死は何よりも痛い……

 

その痛みを無理矢理緩和させようと、幼い朱乃はバラキエルに怒りを(あらわ)にする……

 

『あの人達が言ってた!父さまが黒い天使だから、悪いんだって!黒い天使は悪い人なんだって!私にも黒い翼があるから悪い子なんだって!父さまと私に黒い翼が無かったら、母さまは死ななかったのに!嫌い!嫌い!こんな黒い翼大嫌い!あなたも嫌い!皆嫌い!大嫌いっ!』

 

〈父さまが悪くない事ぐらい分かってた。けど――――。そう思わなければ、私の精神は保たなかった……。私は……弱いから……。寂しくて……ただ、3人で暮らしたくて……〉

 

新が手をゆっくり伸ばし光の球体を掴む

 

そこから"声"が流れてくる……

 

『朱乃に……朱乃に言葉を届けたい。あの人の事を伝えたい……』

 

新は決意を固め、意識を現実に戻した

 

手には意識の中で掴んだ光の球体が

 

「聞かせてやってくれ……あんたの声を朱乃に!バラキエルに!聞かせてやってくれェェェェェェッ!」

 

新は光の球体に魔力を流し込んでいく

 

この術は倫理を踏み外すかもしれない非道なもの

 

だが、新に迷いは無かった

 

どんなに蔑まれても、どんなに反対されても構わない……

 

ただ、本人の口から朱乃とバラキエルに聞かせてやりたい

 

その一心で新は叫んだ

 

彷徨(さまよ)いし魂よ!今こそ姿を取り戻せ!現世(げんせ)に甦り、声を聞かせてくれ!『霊魂復活(ソウル・リバイヴ)』ゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」

 

天に向かって光の球体を(かざ)す新

 

やがて光は人の形を成していく………

 

そこにいる誰もが信じられない様な目を向けた

 

朱乃の母――――姫島朱璃(ひめじましゅり)がこの世に生を受けたのだから………

 

「う……うぅん。……ここは……何処?どうして、私は生きてるの?それに……どうして裸?」

 

「……ッ!母……さま?母さま……!?」

 

「朱璃……朱璃なのか……!?ほ、本当に……」

 

朱乃とバラキエルが驚きながら涙を溢れさせる

 

「もしかして、あなたが甦らせてくれたのですか……?」

 

「あぁ、どうしてもあんたの口から直接……朱乃とバラキエルさんに言葉を届けさせてやりたかったんだ……」

 

新は許されない事をしてしまったかもしれない……

 

だが、彼は後悔などしていなかった

 

自分が決めた事だから悔いを残さずに………

 

朱璃は朱乃に優しく声をかけた

 

「朱乃。何があっても、父さまを信じてあげて。父さまはこれまで他者をたくさん傷つけてきたかもしれない。―――――でもね。私と朱乃を愛してくれているのは本当なのだから。だから、朱乃も愛してあげて」

 

朱璃が優しく抱き締めながら朱乃に言う

 

母の腕の中で朱乃は止めどなく涙を流した

 

「母さま……ッ!私は……ッ!父さまともっと会いたかった!父さまにもっと頭を撫でてもらいたかった!父さまともっと遊びたかった!父さまと……父さまと母さまと……3人で……ッ!」

 

バラキエルが傷だらけの体を起こす

 

「朱璃……!朱璃……!」

 

「あらあら。あなたったら、そんなに泣いてはしたないですよ?」

 

「無理を言わないでくれ……ッ!お前が……お前が目の前にいるんだぞ……ッ!堪えられる訳が無いだろ……ッ!」

 

「いやだわ。私を忘れてしまった訳では無いのでしょう?」

 

「当たり前だ……ッ!うぐっ……お前の事を……朱乃の事を……1日たりとも、忘れた事など無い……ッ!」

 

涙にまみれ、震える手を朱乃と朱璃に伸ばす

 

朱乃と朱璃はその手を取った

 

「朱乃、父さまを許してあげてね。父さまは、まだ泣き虫ですから」

 

「……母さまぁ……!……父さまぁ……!」

 

―――――その時だった

 

ドクンッ………!

 

パァァァァアアアアッ

 

新の体に何かの力がはね上がり、腰に付けていたミョルニルが極大の光を発していた

 

『クックックッ。どうやらこの娘を守りたいと言う想いが通じたのだろう。欲望は欲望でも、他者を救う欲望とは恐れ入った』

 

「じゃあ……今の俺には、ミョルニルが……」

 

『使えるぞ。ただし、1度しかチャンスは無いがな。そして貴様に眠る新たな力が覚醒した。余は気分が良いぞ。これでようやく魂の欠片が同化出来そうだ。では、いずれ会おう』

 

それだけ言い残した『初代キング』バジュラ・バロムは新の頭の中から完全に消え去った……

 

「覚えの無い波動を感じるな。闇皇(やみおう)の蝙蝠。やはり君は1番の危険人物だ!」

 

ロキが再び自分の影を拡大させて、量産型ミドガルズオルムの一団を出現させる

 

新はそれらを睨み付けた

 

「これ以上、良い場面の邪魔はさせねぇ。ロキも、てめぇらも―――――全部ぶっ倒す。『進化する昇格(エボルシオン・プロモーション)』ッ!『女王(クイーン)』ッ!」

 

ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 

新から凄まじい魔力のオーラが噴き出し、変化が始まる

 

胸部に禍々(まがまが)しい蝙蝠型のプレートが装備され、左腕は『戦車(ルーク)』形態、右腕は『騎士(ナイト)』形態に変貌し、『僧侶(ビショップ)』形態のキャノンが両肩に備わる

 

手と脚には鋭利な刃と爪が生え、マントも刃を持った4枚の翼に変わる

 

新の中に潜む最後の形態が明らかとなった……

 

「遂に、遂に覚醒したぜ。『騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』『戦車(ルーク)』の特性を全て備えた『女王(クイーン)』形態――――『闇皇(アーク・カイザー)()極限破滅女帝(オーバーカタストロフ・エンプレス)』。今の俺は、神をも葬れそうだ」

 

「マジか!何なんだよ!?そのメチャクチャヤバそうな姿!」

 

「お兄さまやサイラオーグと互角の力……!?あまりにも魔力が巨大過ぎる……ッ!」

 

ただその場にいてるだけなのに、一誠やリアス逹は肌が火傷しそうだった

 

ロキは嬉々として高笑いを続ける

 

「ふははははっ!面白い!面白いぞ!それが闇皇(やみおう)の新しい力か!しかぁし!いくら力を得た君でも、神をも殺す牙が相手ではどうかな?スコル!ハティ!あの者を牙で噛み砕き、爪で葬ってやれ!」

 

ロキの指示を受けた2匹の子フェンリルが新に襲い掛かる

 

2匹の牙が新に突き刺さる瞬間――――――

 

グシャアァッ!

 

バキィンッ!

 

ギャオォォォォォォォォォォォォォンッ!

 

2匹の子フェンリルが口から血を吐きながら地面を転がる

 

新の手には―――――子フェンリルの牙が握られていた……

 

ロキは激しく狼狽する

 

「な、何が起きたのだ……?スコルとハティに何をした!?」

 

「何をした?ただ殴って歯を引っこ抜いただけだ」

 

「歯を引っこ抜いただと!?バカな!親より劣るとはいえ、神をも殺す牙だぞ!?それに触れて無傷だと!?」

 

「おかしいと思うわな。けど、これが現実だぜ?何せ俺は――――バグだからな」

 

女王(クイーン)』形態となった新の力に全員が戦慄する

 

圧倒的な力……そう表現するしかなかった

 

2匹の子フェンリルは再び新に噛み付こうとするが、尋常ならざる気迫と破壊力で心が折れ、全身が震え出す

 

「どうした!スコルとハティ!早く奴を噛み殺せ!」

 

「無駄だ。犬ってのは、自分より強い者に服従するもんなんだよ。つまり、そいつらはもう俺とは戦いたくないと言ってるんだ。けどよ、犬の命乞いなんざ――――いらねぇんだわ」

 

コオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ………ッ!

 

両肩のキャノンの口が開き、赤と黒の魔力をチャージしていく

 

量産型ミドガルズオルムの一団が向かってきたところで、チャージが完了する

 

「消し飛びやがれ!」

 

ゴバアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 

放出された極大な赤と黒の魔力が子フェンリル2匹と全ての量産型ミドガルズオルムを呑み込む

 

数秒後、新の視線の先にはロキ以外何も残っていなかった……

 

「バカな……!スコルとハティ、ミドガルズオルム達が一瞬で……!?あ、あり得ぬ!悪神の我が震えているだと!?あってはならぬ事だ!」

 

「往生際が悪いぜ?悪神さまよぉ」

 

新はミョルニルを手に取り、サイズを変化させる

 

ロキは危険を察知し、逃げようとした瞬間――――地面から黒いドラゴンと黒い炎が巻き起こり、ロキを捕獲した

 

「――――ッ!この漆黒のオーラは!?黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラか!?」

 

「ヴリトラ?匙か!?」

 

一誠の耳の通信機から誰かの声が流れてくる

 

『兵藤一誠くん。聞こえますか?私はグリゴリの副総督シェムハザです』

 

「あ、どうも。あのでっかい黒いドラゴンを送ってくれたのはシェムハザさんですか?」

 

『ええ。アザゼルに匙くんのトレーニングが終わったら、こちらに転送するよう言われましたから』

 

「あれ、やっぱり匙ですか!?いったい何をしたらあんな姿に!?」

 

『彼にヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)を全部くっつけました』

 

"また、そんな無茶を……"と一誠は口元を引きつらせた

 

『ヴリトラは退治されて神器(セイクリッド・ギア)に封じ込まれる時、何重にもその魂を分けられてしまった。そのため、ヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)所有者は多いのです。だが、種別で分けると「黒い龍脈(アブソーブション・ライン)」、「邪龍の黒炎(ブレイズ・ブラック・フレア)」、「漆黒の領域(デリート・フィールド)」、「龍の牢獄(シャドウ・プリズン)」、この4つです。これらの神器(セイクリッド・ギア)が多少の仕様違いで各所有者に秘められていたのですよ。そして、我が組織グリゴリが回収し、保管していたヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)を匙くんに埋め込みました。あなたとの接触でヴリトラの意識が出現していたので全ての神器(セイクリッド・ギア)が統合されるかもしれないとアザゼルは踏んだのです。結果、ヴリトラの意識は蘇りましたが、蘇ったばかりで暴走してしまったようですね。しかし、匙くんの意識は残っているようなので、あなたがドライグを通じて語りかければ反応する筈です。後はあなたにお任せします。出来ますか?』

 

「……ええ、何とかやってみます。いざとなったら、力ずくで匙を止めます」

 

ヴリトラの黒い炎がロキの動きを封じてる間に、新が1歩1歩近付いていく

 

シェムハザの話によれば、ヴリトラは直接的な攻撃よりも特異な能力を多く持っており、五大龍王(ごだいりゅうおう)の中でパワーは弱いが、技の多彩さと異質さは1番らしい

 

一誠は自分の神器(セイクリッド・ギア)を通して、匙の意識へ接触を試みる

 

『匙、匙聞こえるか?』

 

『……………うぅ。ひょ、兵藤か……?俺、今どうなっている……?なんだか、とてつもなく熱くて体が燃え尽きてしまいそうなんだ……』

 

『意識をしっかり保てよ!せっかく格好良く登場したんだから、最後まで仕事をしてからぶっ倒れてくれ!』

 

『……どうすればいい?』

 

『何か見えるか?』

 

『……黒い炎の中に、得体の知れない魔術か何かを感じる。それで黒い炎を消し去ろうとしている……』

 

『そいつは敵の親玉だ!消し去られるな!強く念じて、そいつを繋ぎ止めてくれ!後は新が決着をつけてくれっから!』

 

一誠が新に(げき)を送る

 

「新!今がチャンスだ!ミョルニルをぶち込んでやれェェェェェェッ!」

 

「当たり前だ!今の俺は―――――止まらねぇよ!」

 

バサッ!

 

新が刃の様な翼を広げ、ロキのところへ向かう

 

ロキは魔術の一撃を放つが、新の左腕に備わる盾によって消し去られた

 

「く、来るな!来るなァァァァァァァァッ!」

 

ボオウンッ!

 

焦りを見せたロキが炎を打ち破り、空中高く浮かび上がる

 

「くっ……!我にここまで恥をかかせるとは!覚えておくが良い!三度(みたび)ここに訪れて混沌を――――」

 

ビガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

特大の雷光がロキを包み込んだ

 

新が後ろを向くと、朱乃とバラキエルがお互いに手を握り、黒い翼を出していた

 

「朱乃……ッ!やっと和解してくれたか……」

 

煙をあげて落下してくるロキに、新は神速で近づいていき雷が宿ったミョルニルを振り上げた

 

「や、やめろ!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「死にさらせ悪神がァァァァァァァァッ!」

 

ドンッ!

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

ミョルニルがロキへ打ち込まれた刹那、大質量の雷がロキを呑み込み焼き焦がす

 

ボロボロになったロキは地面に墜落、新も地上に降り立って『女王(クイーン)』形態を解除した

 

「だは〜……疲れた……」

 

新は仰向けに寝転がり、母親に抱きつく朱乃の姿を見て「良かったな……朱乃」と呟き、笑みをこぼした


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