ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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遂に闇人の親玉登場します!


『初代キング』の甘言

「北欧の術式はそこそこ覚えた。ロキの攻撃にいくらか対抗出来る筈だ」

 

「短期間で凄いですね。白龍皇(はくりゅうこう)さん」

 

一誠宅最上階のVIPルーム

 

新、一誠、ヴァーリ、渉はロキ戦に向けてトレーニングしていた

 

因みに匙はヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)関連でアザゼルにグリゴリの研究施設に連れて行かれた――――と言うか、拉致られたらしい

 

ヴァーリは手に持っていた本を読んで北欧の魔術を覚え、渉はシャドーで格闘技を(おこな)っている

 

空を切る音が鳴り続ける中、新と一誠は精神統一の座禅を組んでいた

 

「しかし、悪神とはいえ『神』と戦う事になるとはな」

 

「よく覚えておくと良い。良い神もいれば、悪い神もいる。ま、良い神ってのも物の見方を変えれば、(よこしま)に見えてしまう事もあるが……」

 

「なんでこう平和を嫌う奴がいるんだろうな?普通に暮らしてセッ◯ス出来てれば良いってのによ」

 

渉もそうですよねと返事すると、ヴァーリが本を閉じて言った

 

「キミ達にとっての平和が、苦痛と感じてしまう者もいると言う事だ」

 

平和が苦痛……人と立場によってそう感じる者は少なからずいる

 

ヴァーリもその内の1人だろう

 

「ヴァーリさんも今の世界は嫌ですか?」

 

「退屈なだけだ。だから、今回の共同戦線は楽しくて仕方がない」

 

「嫌になるよな。強い奴がわんさかいるんだからさ」

 

「世界はいつだって平等に事を作らない。強い弱いがあるから世界なんだろうよ……」

 

闇皇(やみおう)の言う通り。だからこそ世界は面白いんだ。俺は誰よりも強くなる」

 

ヴァーリの夢は"最強"と言う(いただき)1点のみの様だ

 

「俺は――――最強の『兵士(ポーン)』になって、上級悪魔になれれば良いや。俺だけのハーレムを作るんだ」

 

「俺も上級悪魔ぐらいだな。最上級になっちまったら色々と面倒だし」

 

「ハハハ、キミ逹らしい答えだな」

 

「そうですね。純血の闇人(やみびと)もそんな夢を持てれば幸せになれると思うのですが……」

 

渉の沈んだ表情に新はある質問を投げつける

 

「渉。これはあくまで俺の推測だが、あの3人の種族は――――――」

 

「……はい。人狼族、人魚族、鉄人族は闇人(やみびと)の『初代キング』に絶滅させられてしまったんです。運良く生き残った彼女逹は路頭に迷い、僕と出会ったんです。僕の中に眠る血を持った魔族の(おさ)が彼女達から、この汚れた血を持つ闇人(やみびと)が祐希那から―――――主や仲間を奪ったんです。だから、僕は悲しみの連鎖を止めたい。これ以上祐希那達も、冥界も天界も人間界も……悲しみや絶望に沈ませたくないんです。父さんの意志を継いで、闇人(やみびと)を変えてあげたい……!父さんが間違ってなかった事を証明したいんです!闇人(やみびと)にも平和を望む者がいると!」

 

光帝(こうてい)の蝙蝠。それがキミの目標なのかい?」

 

「……いけませんか?」

 

怪訝そうに訊く渉に、ヴァーリは首を振った

 

「良いんじゃないかな?もっとも、それを実現するにはキミ自身が心身共に強くならないといけないが」

 

「分かっています。僕は闇人(やみびと)を変える為に戦っている。父さんの夢を守るために……あ、ごめんなさい。しんみりさせちゃいましたか?」

 

「いや、俺だってお前の親父さんの願いを叶えてやりたいよ。協力するぜ」

 

「俺もだ。それに、もう1個目標がある。ヴァーリや新を必ず超える」

 

「ハハッ!デカく出やがったな一誠!良いぜ?いつかガチで戦ってみようじゃねぇか」

 

新は鼻を指で擦り、ヴァーリは嬉しそうな笑顔で言う

 

「ああ、俺のところまで来たら良い。キミが強くなる度に俺は嬉しいよ。才能が無くて、弱い赤龍帝(せきりゅうてい)だと失望した時期もあったが、キミは今までの赤龍帝(せきりゅうてい)とは違う成長をしてきている。ドライグと対話しながら、赤龍帝(せきりゅうてい)の力を使いこなそうとする者はおそらく初めてだろう」

 

「本当かドライグ?」

 

『その通りだ。お前は歴代の中で1番俺と対話する宿主だ。俺の力に溺れず、過信せず、赤龍帝(せきりゅうてい)の力を使いこなそうとしている』

 

ドライグの言葉にヴァーリが続いた

 

「ただ思うがままに強力且つ凶悪な力を振るう宿主ばかりだった。最終的にドライグの力に溺れ、戦いで散っていった」

 

『お前は歴代で1番才能の無い赤龍帝(せきりゅうてい)だ。パワーも何もかも弱い。――――だが』

 

「歴代で1番力の使い方を覚えようとしている赤龍帝(せきりゅうてい)だ」

 

ドライグとヴァーリにそう言われた一誠は少し照れた

 

新も称賛の意味で一誠の肩を叩く

 

「うむうむ。いいのぅ。青春だのぉ」

 

「オーディンのジイサン。いつの間に」

 

突然現れたオーディンは感心している様子だった

 

「今回の赤白は個性的じゃい。昔はみーんなただの暴れん坊でな。各地で大暴れして、勝手に赤白対決なんぞして周囲の風景を全部吹っ飛ばしながら、死におった。『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』も好き勝手に発動しおってな。山やら島やらいくつ消えたかの。闇人(やみびと)の『初代キング』も同様じゃ。自分が最強だと誇示して数多くの魔族を滅ぼそうとしおった。滅ぼすだけではなーんにも変わらぬと言うのにのぉ。その反面、闇皇(やみおう)の小僧と光帝(こうてい)の小僧も赤白と同じく個性的じゃ」

 

光帝(こうてい)の小僧って、僕の事ですか?」

 

「お前しかいないだろ」

 

新がペチッと渉の頭を叩き、オーディンの後ろに付いてきていたロスヴァイセも言う

 

「確かに片方は卑猥なドラゴンで、片方はテロリストと言う危険極まりない組み合わせですけど、意外に冷静ですね。出会ったら即対決が赤龍帝(せきりゅうてい)白龍皇(はくりゅうこう)だと思っていました」

 

「卑猥だってよ〜、一誠」

 

「うっせー。新なんか俺よりエロいじゃねぇか」

 

「そうだったな」

 

ハハハと笑い合う2人

 

すると、オーディンがヴァーリと渉にいやらしい目付きをしながらある事を訊く

 

「ところで、白龍皇(はくりゅうこう)光帝(こうてい)。お主らは……どこが好きじゃ?」

 

「何の事だ?」

 

「何ですか?」

 

首を傾げながら聞き返すヴァーリと渉

 

オーディンはロスヴァイセの胸、尻、太ももを指差していく

 

「女の体の好きな部分じゃよ。こっちの赤龍帝(せきりゅうてい)は乳が好きで、闇皇(やみおう)は女の裸体その物を愛でておる。お主らもそういうのがあるんじゃないかと思うてな」

 

「心外だ。俺はおっぱいドラゴンなどではない」

 

「おっぱいドラゴン……って、何ですか?」

 

ヴァーリは心底心外そうな表情を浮かべ、渉はおっぱいドラゴンの名に再び首を傾げた

 

「まあまあ、お主らも男じゃ。女の体で好きな部分ぐらいあるじゃろう」

 

「……あまり、そういうものに感心が無いのでね。強いて言うならヒップか。腰からヒップにかけてのラインは女性を表す象徴的なところだと思うが」

 

「僕は……太ももでしょうか。いつも祐希那達にしてもらってる膝枕は、とても寝心地が良いので」

 

「……なるほどのぉ。ケツ龍皇(りゅうこう)と太もも光帝(こうてい)じゃな」

 

『…………ぬ、ぬおおおおん……』

 

オーディンがボソリと呟いた呼び名に、ヴァーリの神器(セイクリッド・ギア)に宿る白龍皇(はくりゅうこう)アルビオンが無念の涙を流している

 

「元気出してください。人生山有り谷有りですよ、ケツ龍皇(りゅうこう)さん」

 

『うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああんっ!』

 

悪気は無かったであろう渉の励ましはアルビオンを更に傷付けた

 

「爺さん、渉、やめてあげて。今二天龍はとても繊細な時期なんだよ」

 

「一誠。宿主じゃない俺でさえ、なんかドライグとアルビオンが不憫に思えてきた……」

 

一誠は「もっとドライグを大切にしようかな……」と呟き、ヴァーリは泣いているアルビオンを慰めた

 

只今二天龍はとてもデリケートな時期に突入しているようです

 

「かわいそうなドラゴンじゃな。うむ、『かわいそうなドラゴン』で1つ童話が出来るかもしれんな」

 

「爺さん!いい加減怒るよ!」

 

「オーディンさん。その『かわいそうなドラゴン』って、どんなお話にする予定ですか?出来上がったら祐希那達に聞かせたいので」

 

「もうやめてやれよ!二天龍のライフは0どころかマイナス超えてるって!」

 

いつまで経っても終わらないおっぱいドラゴンネタに対して一誠はオーディンに、新は渉にツッコミを入れた

 

 

―――――――――竜崎家

 

 

『……めろ……目覚めろ………の……よ』

 

「……ん?何処だここは……?ヤケにモヤモヤしてやがる……」

 

新は自宅に戻っていつも通りに寝ていた筈なのだが、何故か意識だけは宇宙空間の様な場所にいた……

 

何がどうなっているのかさっぱり分からないまま、新は"声"の正体を探る

 

「誰なんだ?勝手に人の意識を支配しやがって。姿を見せやがれ」

 

『クッハッハッハッハッハッハッ。その様に挑発的な口を開けるとは大した器量だ。お望み通り、不完全だが姿を見せてやろう』

 

新の眼前に黒いモヤが集合し、それが骸骨の様なドラゴンの頭部の様な形となって現れた

 

「……?何なんだてめぇは?ドライグやアルビオンみたいな魂か?」

 

()を汚ならしいドラゴン共と一緒にするな。余の名はバジュラ・バロム―――――全てを統べる闇人(やみびと)の「初代キング」なり』

 

『初代キング』の名に新は目を見開いた

 

何故闇人(やみびと)の『初代キング』が自分の意識の中で話し掛けてきたのか……

 

そもそも、封印されている『初代キング』が何故目の前にいるのか理解出来ずにいた

 

『初代キング』ことバジュラ・バロムは気味悪く口の端を吊り上げながら笑う

 

『そう睨み付ける必要は無い。今の余は忌々しい封印のせいで肉体と魂の大部分は無いが、僅かな欠片となった魂が「闇皇(やみおう)の鎧」に残っているお陰で話が出来ておる。本来なら貴様を噛み砕きたいところだが……安心しろ。今の余は話しか出来ぬ』

 

「……俺に何の用だ?」

 

『なぁに、余の鎧を使用するゲスな(やから)がどんな顔をしているか見に来ただけだ。後は……この鎧の本来の力を教えといてやろうと思うてな』

 

新は目を細め、バジュラは口から黒いモヤを吐いて宙に漂わせた

 

吐き出された黒いモヤが幾つもの水晶に形を変え、新の周りを浮遊する

 

『「闇皇(やみおう)の鎧」は所有者の欲望の強弱により、殺した闇人(やみびと)から術を奪い使用する事が出来るのだ』

 

「殺した闇人(やみびと)から術を奪う!?オーフィスが言っていたのはこいつの事だったのか!?」

 

『オーフィスか、その名を聞くのは久しいな……。静寂を手にするなどと、くだらない幻想を掲げる老いぼれめ。欲望が存在する限り、静寂は誰の前にも現れはしない。哀れな奴だ』

 

バジュラは吐き捨てるようにオーフィスを罵り、先程の話題に戻す

 

『闇は全てを喰らい飲み込む欲望の象徴。名の通りに殺した者の術なども己に取り込む』

 

「殺した闇人(やみびと)から奪った術ってのは?」

 

『なんだ?興味があるのか?いいだろう。よく聞くが良い。貴様も欲深い者よのう……余から力の正体を訊くとは』

 

「てめぇの鎧も奪われて、今は俺の所有物になってんだ。どう使おうが俺の勝手だろ」

 

バジュラは新の言葉を聞いて高らかに笑う

 

『クッハッハッハッハッハッハッ!余の鎧を無断で使っておきながら己の我が儘、欲望に従うか!訊こう。貴様の欲望は何だ?』

 

「欲望?欲望っつったら、セッ◯スだよ。良い女の乳房(おっぱい)や尻を揉みまくって、堕としてセッ◯スしまくる。それが俺の今望む欲望だ」

 

『性交か。では何故冥界、天界、人間界を支配せぬ?世を己の物にすれば女など飽きる程抱けると言うのに、何故実行しない?』

 

「バーカ。悲しい顔した女を抱いたってお互い満たされねぇだろうが。んなもん嬉しくねぇだろ」

 

『クッハッハッハッハッハッハッ!』

 

バジュラはさっきよりも大きく高笑いした

 

新はよく笑う『初代キング』だなと嘆息する

 

バジュラは新に顔を近付け、ニヤケを見せながら言う

 

『貴様のような輩は初めて見たぞ。破壊欲、殺戮欲、支配欲に捕らわれず性欲を振りかざすとは……まぁ良いだろう。話を戻してやる。現時点で貴様が使用出来る闇人(やみびと)の術は「霊魂復活(ソウル・リバイヴ)」のみだ』

 

「『霊魂復活(ソウル・リバイヴ)』って……村上が使っていた術か!?お前ら闇人(やみびと)は全員、個人特有のスキルを持ち合わせてんのか!?」

 

『クククッ。持つ者もいれば持たざる者もいる。運良く貴様は魂と肉体を甦らせる術を手に入れた―――――と言う訳だ。良かったじゃないか』

 

「な、何がだよ?」

 

『その「霊魂復活(ソウル・リバイヴ)」を使えば、貴様が抱いた女の母を復活させられるぞ?あの娘は母が恋しい様だなぁ?ならば、倫理に背いて貴様が復活させてやれ』

 

新はバジュラの提案に再び目を見開く

 

確かに『霊魂復活(ソウル・リバイヴ)』を使えば朱乃の母――――朱璃(しゅり)を復活させられるかもしれないが、そんな事をして本人は喜ぶのだろうか……

 

死者の魂を勝手に使うような真似をして良いのか……

 

そして何より、『初代キング』の提案に裏があるんじゃないかと様々な疑問が新の頭を巡回する

 

「……何が狙いだ?」

 

『クククッ。使う事に恐れているのか?何も怖がる事は無い。貴様は必ず「霊魂復活(ソウル・リバイヴ)」を使ってくれるだろう。予言してやる』

 

「それは俺達にとって良い意味か?それとも悪い意味なのかどっちだ?」

 

『クククッ、さあな……。余は楽しみにしているぞ?』

 

 

―――――――――

 

 

バサッ………

 

深夜、新は目を覚まして体を起こす

 

先程まで『初代キング』を名乗る怪物に『霊魂復活(ソウル・リバイヴ)』を使って朱乃の母を甦らせろと言う話を持ちかけられた

 

新も出来るならそうしてやりたいと思うが、『初代キング』の提案を簡単に受ける訳にはいかないと葛藤する

 

「……?朱乃……?」

 

新は朱乃が部屋にいない事に気付いた

 

リアス、堕天使3人組、ゼノヴィア、小猫はスヤスヤと寝ているが……朱乃だけ見当たらない

 

不審に思った新は部屋を出て朱乃を探しに1階へ降りる

 

リビングのソファーに座る朱乃を視界に捉え近づいていく

 

「……新さん」

 

「朱乃、どうかしたのか?ボーッとしちまってる様だけど――――ッ」

 

言い切る前に新は朱乃に押し倒され、朱乃は身に付けてる白装束を脱ぎ捨てた

 

そして耳元で呟く

 

「――――抱いて」

 

新は一瞬固まり、朱乃が目線を合わせる

 

だが、新には朱乃が自暴自棄に陥ってる様に見えた

 

虚ろな表情でキスしようとしてくる朱乃の肩に手を置き制止する

 

「……どうして?私の体は魅力ない……?」

 

「んな事ねぇよ。朱乃の体は乳房(おっぱい)も尻も、どこも気持ち良い。毎日触っても飽きないぐらいだ。でもよ……今のお前を、そんな悲しげな顔をしている朱乃を抱く事は出来ねぇ。今のお前はただヤケクソになって抱かれようとしてるだけだ」

 

「――――っ」

 

新の言葉に朱乃は一瞬正気を取り戻した

 

新は真剣な目付きで朱乃を見ながら言い聞かせる

 

「お前は俺に触れられる時、いつも笑顔だったよな。俺は朱乃の笑顔を見る度に温かな気持ちになれた。けどよ、今のお前を抱いたところで誰が幸せになる?お互いに傷付くだけだ。自分を安っぽく売りつけてんじゃねぇ。お前は―――――俺が初めて自分から好きになった女なんだよ」

 

一筋の涙が彼女の頬を伝い、新は朱乃を優しく抱き締めた

 

「いつもの朱乃に戻ってくれ。お前が安心するまで側にいてやる。だから……」

 

「……ぐすっ、新さぁん……ゴメンなさい……!ゴメンなさい……!ひぐぅ……うぅっ……」

 

抱くこと2時間、朱乃はようやく落ち着きを取り戻し、新の隣に座っている

 

「新さんも、眠れなかったのですか……?」

 

「……まあな。チョイと信じられない奴から信じられない提案を渡されちまってな」

 

「誰……ですか?」

 

「……闇人(やみびと)の『初代キング』だ」

 

朱乃は信じられない様な顔になった

 

今『初代キング』は封印されているのだから、聞いたら誰もが驚く事態であろう

 

新は事実だと前置きをしてから話を続けた

 

「ついさっき夢……と言うか、意識の中で話されたんだ。この鎧の中に奴の魂の欠片が残っていたらしく……今はこういう形でしか話せないだと」

 

「それで何を言われたんですか……?」

 

朱乃の問いに新は一瞬躊躇(ためら)ったが、伝えなければならないかもしれないと感じ、話す事を決意した

 

「朱乃、お前の母親――――姫島朱璃を、村上から奪った『霊魂復活(ソウル・リバイヴ)』で復活させろと……」

 

「――――ッ!母さまを……母さまを甦らせる事が出来るの……?」

 

朱乃の瞳から涙が流れ出る

 

新は更に話を続けた

 

「出来るかもしれねぇんだ。ただ……『初代キング』が何のためにそんな事を言ったのか分からねぇ……。それに、こんなおぞましい闇の力で死者を甦らせて……朱乃やバラキエルさんは本当に喜ぶのだろうかと、怖くなっちまったんだ……。そりゃ子供なら誰だって母親に会いたいと思うし、生き返らせる事が出来るんだったら速攻でそうしてやりたい。でもよ……本人の意思を無視してまで、邪道な手段で甦らせて、何のためになるんだって……そんな事を思い始めたら、どんどん分かんなくなってきちまったんだ……!俺のこの力は、皆を幸せにするものなのか……不幸にしちまうものなのかって……!頭ん中がグチャグチャに……!」

 

頭を押さえながら前のめりになる新

 

出来るなら朱乃の母を甦らせてやりたい……しかし、邪道に堕ちてまで誰かを甦らせる事は間違っていないのか……

 

交差する思いに苦しむ新を、朱乃はさっきの自分にしてくれた様に優しく抱き締める

 

「無理をなさらずに……新さん。私も出来るなら母さまに会いたい……でも、その力を使って……もし新さんまで失う事になってしまったら……私だけじゃなく、リアスやイッセーくん、皆が悲しみを背負ってしまいます……。自分を保って……」

 

「朱乃ぉ……。すまねぇ、お前を慰めたのに……今度は逆に慰められちまった……!」

 

新は感謝の意を込めて強く抱き締める

 

朱乃もそれに応え、ギュッと力を入れた

 

「ねぇ……新。今夜は手を繋いで寝て良い?」

 

「あぁ、実は俺もそうしたかったんだ」

 

2人は互いに手を繋いで寝室に戻り、翌朝起きるまで握った手を離さなかった………




次回は2度目のロキ戦です!

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