ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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新、悪魔になる!?

「良いパンチだったな一誠!スカッとしたぜ!」

 

 

 

「あぁ。……アーシア、五月蝿くてごめんな?でも、もう終わったぞ」

 

 

 

一誠がアーシアの頭を撫でるが、その表情は曇っていた

 

 

 

怨敵(おんてき)の村上を倒したところで、アーシアが生き返る訳ではない

 

 

 

そう思うと、やはり気が晴れなかったが――――――新がある事に気付く

 

 

 

「おい一誠。お前は一度死んだよな?どうやって生き返ったんだったっけ?」

 

 

 

「え?それは部長から悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を貰って―――――――あっ!」

 

 

 

「そうだ。それを使えばアーシアを生き返らせる事が出来る!」

 

 

 

新が思い付いたのは、アーシアを悪魔に転生させると言う方法だった

 

 

 

「あ、でも……そういうのってやっぱり契約の一環になると思うから、代価が必要に――――――」

 

 

 

「俺が契約すれば良いだけだ」

 

 

 

なんと自分から悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を持っているリアスと契約を交わすと言い出した

 

 

 

命を生き返らせる契約なので、代価として何を取られてもおかしくない

 

 

 

だが、新の顔には何の迷いも無かった

 

 

 

「良いのかい?人の命を生き返らせる代価に、何を要求されるか分からないよ?」

 

 

 

「構わねぇよ。腕だろうが足だろうがくれてやる。何だったら、俺の寿命の半分も付けてやるぜ」

 

 

 

祐斗の言葉にも怯まず、新は胸を叩いて答える

 

 

 

鎧を装着したままだから鈍い金属音が鳴り、新の身体は振動を受ける

 

 

 

「一誠は嫌か?アーシアが悪魔になるのは」

 

 

 

「嫌なもんか!」

 

 

 

「じゃあ決まりだな」

 

 

 

新は笑顔で一誠に握手を求める

 

 

 

一誠も新の手を取り握手を交わす

 

 

 

「何か嬉しい事でもあったのか?私も混ぜてくれよ」

 

 

 

耳を疑わざるを得ない声

 

 

 

声がした方角を向くと、瓦礫の山から村上が起き上がってきた

 

 

 

「やれやれ、大した攻撃力だ。お陰で私の顔が2センチほど(へこ)んでしまったよ」

 

 

 

力一杯の拳を振るったのに、顔を凹ます程度しか効いてなかった

 

 

 

村上は体に付着した土埃を払い、一歩一歩近づく

 

 

 

「そ、そんな……!効いてなかったのか!?」

 

 

 

「くそっ!そのまま大人しく死んどけよ!」

 

 

 

「少々君達を侮り過ぎていたよ。それに、私にここまで恥をかかせたんだ。その礼をたっぷりしてやろう」

 

 

 

村上の魔力が爆発的に膨れ上がり、天井や壁が揺れる

 

 

 

一誠はもう戦える状態ではない

 

 

 

新、祐斗、小猫は構えを取る

 

 

 

「そこまでよ」

 

 

 

ドンッ!村上に向けての魔力の塊が飛んでくる

 

 

 

村上はそれに気付き、体をずらして回避する

 

 

 

「この消滅の力、グレモリーか!」

 

 

 

村上が新達の後ろを激しく睨む

 

 

 

そこにいたのは、グレモリー家の次期当主リアス・グレモリーと姫島朱乃

 

 

 

「リアス・グレモリーに朱乃さん。ようやく来たのか―――――――ってか、何でそんなにエロい格好なんだ?」

 

 

 

新の言う通り、リアスと朱乃は下着オンリーと言う過激な格好をしていた

 

 

 

「それを言うなら、そこにいる堕天使達の方がより過激じゃないかしら?」

 

 

 

「まぁ、そうだな」

 

 

 

全裸の堕天使達は、さっきの村上の異様な魔力のせいで腰を抜かしていた

 

 

 

「ごきげんよう、村上京司。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。どうぞお見知り置きを」

 

 

 

「挨拶はいいから、何で下着姿なんだ?ここに来るまでに何があった?」

 

 

 

素朴な疑問をぶつける新と、鼻の下を伸ばしながら鼻血を垂らす一誠

 

 

 

「あらあら。知りたいですか?」

 

 

 

「以前、イッセーを襲った堕天使ドーナシークと出会った時から、この町で複数の堕天使が何かの計画を立てているのは察していたわ。けれど、それは堕天使全体の計画だと思って、私は無視していた。いくら私でも堕天使全体を敵に回すなんて愚は冒さないわ。でも、何やら突然こそこそと動き出したと耳にしたから、私は朱乃を連れてお話をしに行こうとした。そしたら、教会の前で妙な化け物達がお出迎えをしてくれたわ」

 

 

 

「数が多くて大変でしたわ」

 

 

 

リアスの言っていた別行動とは、教会周りを見張っていた敵の始末だった

 

 

 

一誠は感動して泣きそうになり、新はヒュウッと口笛を吹く

 

 

 

「ほう、見張りをさせていた闇人を全て蹴散らしたのか。やはり数が多くても力が足りなければ、捨て駒にもならないか」

 

 

 

「その一撃を食らえばどんな者でも消し飛ばされる。滅亡の力を有した公爵家のご令嬢。部長は若い悪魔の中でも天才と呼ばれる程の実力の持ち主ですからね」

 

 

 

「別名『紅髪(べにがみ)滅殺姫(ルイン・プリンセス)』と呼ばれる程の方なのですよ?」

 

 

 

なんて物騒な二つ名だ………

 

 

 

新と一誠は同じ事を考えた

 

 

 

そんな中、リアスが一誠の籠手と鎧姿の新を交互に見る

 

 

 

「……赤い龍。この間までこんな紋章はなかったはず……。そう、そういう事なのね」

 

 

 

「リアス・グレモリー。1つだけ質問させてもらうぞ。その少年が持っている神器(セイクリッド・ギア)――――――それは、赤龍帝(せきりゅうてい)の力を宿した籠手だな?」

 

 

 

「ご明察。イッセーの神器(セイクリッド・ギア)は単なる『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』ではない。持ち主の力を10秒毎に倍増させていく、『神滅具(ロンギヌス)』の1つ。『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』よ」

 

 

 

「10秒毎に力を倍加!?それ強すぎじゃねぇか!」

 

 

 

つまり、一誠の力を1に例えると―――――10秒で2、更に10秒で4、8、16、32、64と延々と増幅していく事になる

 

 

 

「まあ、どんなに強力でも時間を要する神器(セイクリッド・ギア)はリスクも大きいわね。そうそう増大するのを待ってくれる相手なんていないわ」

 

 

 

確かにその通りである

 

 

 

「私も質問して宜しいかしら?今の新の姿について―――――何か知ってるの?」

 

 

 

リアスがそう聞くと、村上は裂けた口をニヤケさせながら答える

 

 

 

「知ってるも何も、その力は『闇皇(やみおう)の鎧。』我々闇人が開発した最強の鎧であり、『初代キング』が使用していた、闇人の王の証だった」

 

 

 

「っ!この鎧、元々はお前らのか!?」

 

 

 

「そうだ。忌まわしき男―――――――竜崎総司(りゅうざきそうじ)に奪われてしまい、今は貴様の身に宿っているがな」

 

 

 

「竜崎総司?」

 

 

 

「それ…………親父の名前だ………!」

 

 

 

新が今まで使ってきた便利な力の正体は、目の前にいる闇人が作った最強の鎧だと言う事を聞いて誰もが驚いた

 

 

 

鎧を装着している本人も

 

 

 

「竜崎総司――――――その名前だけは決して忘れん!闇人の重鎮である『クイーン』をたぶらかし、挙げ句の果てに闇皇の鎧を奪い取り、闇人の勢力の歯車を狂わせた!そのせいで『初代キング』は貴様ら悪魔や堕天使、神どもに封印されてしまったのだ!」

 

 

 

「親父、スゲェ事しやがったな………ただの女たらしじゃなかったんだ」

 

 

 

村上は憎々しげに力の正体を吐いた後、不敵に笑う

 

 

 

「つまり、リアス・グレモリー。貴様の前にいるそいつは全ての魔族の敵とも言える一族の鎧を着けている。悪魔や堕天使を滅亡させようとした我らと同等の力を持っていると言う事だ」

 

 

 

村上は鎧姿の新を指差す

 

 

 

「この期に及んで、新は私達の敵だと言うつもり?随分と程度の低い言い訳ね」

 

 

 

「言い訳か。そう思いたいなら勝手にするが良い。忌まわしき男の息子、1つだけ言っておく。貴様はいずれ我らと同類になる」

 

 

 

村上は意味深な台詞を残して姿を消した

 

 

 

流石に数で不利だと判断したのだろう

 

 

 

「逃げたか。俺がいずれあいつと同類になる?ふざけんな、俺は俺だ。自分の道は自分で決めるモンだろ」

 

 

 

新はリアス・グレモリーに近づき、あの話を持ち掛ける

 

 

 

「リアス・グレモリー、頼みがある。こいつを――――――アーシアを悪魔に転生させて生き返らせてくれ。一誠も転生させたんだから出来るよな?」

 

 

 

「出来るわ。ただ、それは契約として受けとるから、それなりの代価を払ってもらうわよ?」

 

 

 

「元よりそのつもりだ」

 

 

 

代価は手か?足か?命の半分か?

 

 

 

新は覚悟を決めたものの、やはり要求する代価が分からないので唾を飲む

 

 

 

「じゃあ新、この子を転生させる代わりに―――――――私の眷属となりなさい」

 

 

 

新の思考が一瞬止まった

 

 

 

それは一誠も同じで、祐斗は"やっぱりね"と言う顔をしていた

 

 

 

「どうしたの?間抜けな顔になってるわよ」

 

 

 

「い、いや……てっきり腕か足の一本寄越せだの、内臓の一部を寄越せだの言ってくるかと思ったから」

 

 

 

「場合によってはそうかもしれなかったですわ」

 

 

 

笑顔で返す朱乃

 

 

 

笑い事じゃねぇよと突っ込む新

 

 

 

それはさておき、リアスは悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を取り出して話を続ける

 

 

 

「あなた達に説明するのが遅れたけど、爵位持ちの悪魔が手に出来る駒の数は『兵士(ポーン)』が8つ、『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』がそれぞれ2つずつ。そして『女王(クイーン)』が1つの計15体なの。実際のチェスと同じね。『僧侶(ビショップ)』の駒を1つ使ってしまっているけれど、私にはもう1つだけ『僧侶(ビショップ)』の駒があるわ」

 

 

 

リアスは死んでいるアーシアの胸に『僧侶(ビショップ)』の駒を置く

 

 

 

「『僧侶(ビショップ)』の力は眷属の悪魔をフォローする事。この子の回復能力は『僧侶(ビショップ)』として使えるわ。前代未聞だけれど、このシスターを悪魔に転生させてみる」

 

 

そう言って、リアスの体を紅い魔力が覆う

 

 

 

悪魔への転生の儀が始まった

 

 

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。(なんじ)、アーシア・アルジェントよ。今再び我の下僕となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『僧侶(ビショップ)』として、新たな生に歓喜せよ!」

 

 

 

駒が紅い光を発しながらアーシアの胸に沈んでいく

 

 

 

完全に入ったのを確認してから、リアスは魔力の波動を止めた

 

 

 

アーシアの目がゆっくりと開き始める

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

二度と聞けないと思っていた少女の声

 

 

 

一誠は涙を止められなかった

 

 

 

「悪魔をも回復させるその子の力が欲しかったからこそ、私は転生させたわ。新の契約と共にね。さて、次は新よ」

 

 

 

リアスが笑みを浮かべながら新に近づく

 

 

 

新は1つ気になる事があるので聞いてみた

 

 

 

「俺を眷属にするって事は、俺も悪魔になるって事だよな。その場合、俺は何の駒なんだ?」

 

 

 

新に合いそう駒は『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『兵士(ポーン)』の3種類

 

 

 

新はドキドキしながらリアスの返答を待つ

 

 

 

「新も一誠と同じ『兵士(ポーン)』よ」

 

 

 

「イエスッ!」

 

 

 

ガッツポーズをする新にリアス達はキョトンとする

 

 

 

「新さん、『兵士(ポーン)』は一番下の駒なのに嬉しそうですわね?」

 

 

 

「能力が使えるんだよ。『プロモーション』だっけ?他の駒に自在に昇格出来るなら、戦法のバリエーションも増える!『騎士(ナイト)』のスピードや『戦車(ルーク)』の攻撃力、防御力も魅力的だが――――――『兵士(ポーン)』ならどちらにもなれるからな」

 

 

 

「ふふっ、変わった子ね。でも、確かに『兵士(ポーン)』の価値は未知数。あなたの力も含めてね。受け取りなさい。あなたは今日から―――――――私の『兵士(ポーン)』よ」

 

 

 

リアスが新に(くれない)に輝く『兵士(ポーン)』の駒を差し出す

 

 

 

鎧を解除した新は『兵士(ポーン)』の駒をガシッと握り締める

 

 

 

体の中に悪魔の魔力が入り込み、新の背中から翼が生える

 

 

 

「これからよろしくね?新」

 

 

 

「仰せのままに、リアス・グレモリー」

 

 

 

こうして新はリアスの『兵士(ポーン)』として、新しい人生の道を歩む事になった

 

 

 

「あ、そういえば忘れてた。あいつらどうする?」

 

 

 

新がレイナーレ、カラワーナ、ミッテルトを指差すと、3人はビクッと裸体を震わせる

 

 

 

「本来なら消し飛ばすつもりだったけど、あなたに任せるわ」

 

 

 

「それはどうも。殺したら苛め甲斐がなくなっちまう」

 

 

 

翼を閉じた新は堕天使に近づいていく

 

 

 

「な、何をする気……?」

 

 

 

「うちらを……殺すの……?」

 

 

 

「んな事はしねぇよ。ただ、もうこれでお前らの出世の道は絶たれた訳だから――――――いっそ、バウンティハンターやってみねぇか?」

 

 

 

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

 

 

新以外の全員の声がハモる

 

 

 

「賞金首にはぐれ悪魔も多いから、悪魔を滅する力を持つ堕天使は仕事で使えるなって思ってたんだよ。それに、お前ら3人とも結構好みだし」

 

 

 

「冗談じゃないわ!悪魔ごときに成り下がったあなたの下僕になれって言うの!?」

 

 

 

「下僕じゃなくて仕事仲間。どうせ、あの村上って奴から闇人全体に俺達の名が広まっていくだろ。お前らだって例外じゃない。そうなったら何処にも逃げられねぇ。この町に残るしか方法は無いって事だ」

 

 

 

「むぅ……確かに一理あるが……」

 

 

 

「で、どうするんだ?それとも今ここで死にたいのか?」

 

 

 

新の眼光に堕天使3人はビビる

 

 

 

悪魔の提案に乗るのは屈辱だが、死にたくない

 

 

 

そんな思いから取った行動は――――――――

 

 

 

 

「………仕方無いわね、乗ってあげるわ。私だって死にたくないもの」

 

 

 

「じゃあ、交渉成立」

 

 

 

新はレイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、3人の堕天使を飼う―――――――もとい、仕事仲間に加えた

 

 

 

 

―――――――――新の家

 

 

 

 

「つー訳で、今日からお前らはここに居候させるから、仕事はキッチリしてくれよ?」

 

 

 

「言われなくても分かってるわよ。それより他に服は無いの?Yシャツだけじゃ寒いわ」

 

 

 

「お風呂ひっろ~!エロいだけじゃなくてセンスあるぅ~」

 

 

 

「上質な酒ばかりだ。ん?ロマネ・コンティまであるじゃないか」

 

 

 

「おう、丁度今が飲み頃だぜ。今夜はパァーっと飲み明かすか」

 

 

 

「良い度胸ね。酔い潰させてあげるわ」

 

 

 

「上等。酒に溺れる程、俺は落ちぶれちゃいねぇぜ?」

 

 

 

 

 

――――――――リアス邸

 

 

 

 

 

「良かったのかリアス?あれは最後の『変異の駒(ミューテーション・ピース)』だったのに」

 

 

 

「えぇ、お兄様。彼の力はそれ位の価値があったの。イッセーと同じ様に。それより………先程のお話の続き」

 

 

 

「うん。闇人についてだね?とうとう奴らが動きを見せてきたか………リアスも覚悟しておいてくれ。この先、近い内に闇人の重鎮組織が集まるかもしれない」


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