「日本のヤマトナデシコは良いのぉ。ゲイシャガール最高じゃ」
オーディンが来日して数日経ったある日の夜
新達グレモリー眷属、アザゼル、オーディン、ロスヴァイセはスレイプニルと言う8本足の軍馬の馬車に乗って空を移動していた
外には護衛として祐斗、ゼノヴィア、イリナ、バラキエルが空を飛んでついてきている
テロリスト等を迎え撃てる様にするためだ
朱乃は無言で新に寄り添っている
未だにバラキエルに対して気が立っている様だ
新は何も言わず、朱乃の肩に手を回す
「オーディンさま!もうすぐ日本の神々との会談なのですから、旅行気分はそろそろお収めください。このままでは帰国した時に他の方々から怒られます」
「まったく、お前は遊び心の分からない女じゃな。もう少しリラックスしたらどうじゃ?そんなだから男の1人も出来んのじゃよ」
「か、か、彼氏がいないのは関係ないでしょう!す、好きで独り身やっているわけじゃないんですからぁぁぁっ!」
涙目になるロスヴァイセ
新はため息をついてからオーディンに言う
「ジイサンよ。少しは労ってやれや。女をいじめるなんざ趣味悪いぜ」
「りゅうざぎざぁぁぁぁんっ!分かっていただけますよね!この人酷いですよね!?」
「
「ジイサンがひでぇだけだ。いつかストレスでやられんぞ」
新が嘆息しながら言ったその時――――突然馬車が停まり、皆が不意の出来事に態勢を崩した
態勢を崩したロスヴァイセを新は右腕で確保する
「おい、大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます……」
「しっかし、いったい何だ?テロか?」
「分からん!だが、こういう時は大抵ロクでもない事が起こるもんだ!」
ロスヴァイセとアザゼルは警戒し、外にいるバラキエル逹も戦闘態勢になる
新も
すると、前方に黒いローブを身につけた若い男が浮遊しており、その姿を確認したロスヴァイセは心底驚き、アザゼルは舌打ちをしていた
男がマントを広げ、口の端を吊り上げて高らかに喋りだした
「はっじめまして諸君!我こそは北欧の
「ロキ?ロキってあのロキか?」
ロキとは北欧神話に出てくる悪戯の神で、世界を滅ぼす神としても有名である
アザゼルが黒い翼を羽ばたかせて馬車から出ていく
「これはロキ殿。こんなところで奇遇ですな。何か用ですかな?この馬車には北欧の主神オーディン殿が乗られている。それを周知の上での行動だろうか?」
アザゼルが冷静に問い掛けると、ロキは腕を組みながら口を開いた
「いやなに、我らが主神殿が、我らが神話体系を抜け出て、我ら以外の神話体系に接触していくのが耐え難い苦痛でね。我慢出来ずに邪魔をしに来たのだ」
悪意満々の宣言にアザゼルは口調を変えた
「堂々と言ってくれるじゃねぇか、ロキ」
「ふはははは、これは堕天使の総督殿。本来、貴殿や悪魔逹と会いたくはなかったのだが、致し方あるまい。――――オーディン共々我が粛正を受けるが良い」
「お前が他の神話体系に接触するのは良いってのか?矛盾しているな」
「他の神話体系を滅ぼすのならば良いのだ。和平をするのが納得出来ないのだよ。我々の領域に土足で踏み込み、そこへ聖書を広げたのがそちらの神話なのだから」
「……それを俺に言われてもな。その辺はミカエルか、死んだ聖書の神に言ってくれ」
アザゼルは頭をボリボリ掻きながらそう返す
「どちらにしても主神オーディン自らが極東の神々と和議をするのが問題だ。これでは我らが迎えるべき『
「ひとつ訊く!お前のこの行動は『
アザゼルの問いにロキは面白くなさそうに返した
「愚者たるテロリストや
「……『
アザゼルが馬車の方に顔を向けると、オーディンがロスヴァイセを引き連れて馬車から出ていき、足下に魔方陣を展開して空中を移動していく
「ふむ。どうにもの、頭の固い者がまだいるのが現状じゃ。こういう風に自ら出向く阿呆まで登場するのでな」
「ロキさま!これは越権行為です!主神に牙を向くなどと!許される事ではありません!
ロスヴァイセは瞬時にスーツ姿から鎧に変わりロキに物申すが、
「一介の
返答を迫られたオーディンが平然と答える
「そうじゃよ。少なくともお主よりもサーゼクスやアザゼルと話していた方が万倍も楽しいわい。日本の
「……認識した。なんと愚かな事か。――――ここで黄昏を行おうではないか」
ロキから凄まじいまでの敵意が放たれる
新は抗戦の宣言と解釈してマントを翼に変え、馬車から飛び出していく
「おい!新!?相手は北欧の神様だぞ!?」
「一誠、ビビってもしょうがねぇだろ?あの
ドガァァァァァァアアアンッ!
話してる途中でロキに波動が襲い掛かる
ゼノヴィアがデュランダルを振って聖なるオーラを飛ばしたようだ
「先手必勝だと思ったのだが、どうやら効かないようだ。流石は北欧の神か」
ゼノヴィアの言葉通り、ロキは何事も無かったかのように浮いていた
「聖剣か。良い威力だが、神を相手にするにはまだまだ。そよ風に等しい」
祐斗は
それを見てロキは笑う
「ふははっ!無駄だ!これでも神なんでね、たかが悪魔や天使の攻撃では―――――ッ!」
「あらよっとぉっ!」
ザシュッ!
ロキの突き出した左手を新が
虚を突かれたロキは新をジッと見た
「悪いな。ヤバそうだったから不意討ちさせてもらったぜ?」
「そうだった。ここには
ロキが嬉しそうに笑う中、カウントを終えた一誠が
リアスと朱乃も翼を広げて馬車から出てくる
「紅い髪。グレモリー家……だったか?現魔王の血筋だったな。堕天使幹部が2人、天使が1匹、悪魔がたくさん、
「お主のような大馬鹿者が来たんじゃ。結果的に正解だったわい」
オーディンの一言にロキは頷き、不敵な笑みを一層深めた
「よろしい。ならば呼ぼう。出てこいッ!我が愛しき息子よッ!」
ロキがマントを広げて高らかに叫ぶと、空間に歪みが生じる
その歪みから10メートルぐらいはありそうな灰色の狼が現れ、眷属全員が全身を
「……ハハッ。やっぱそうだよな。間違いねぇ、あれは
新の一言に全員が驚愕と同時に納得した
「フェンリル!まさか、こんなところに!」
「……確かにマズいわね」
「イッセー!新!そいつは最悪最大の魔物の1匹だ!神を確実に殺せる牙を持っている!そいつに噛まれたら、いくらその鎧でも保たないぞ!」
祐斗とリアスは警戒態勢をより一層強め、アザゼルが声を荒らげる
ロキがフェンリルを撫でながら言う
「そうそう。気をつけたまえ。こいつは我が開発した魔物の中でトップクラスに最悪の部類だ。何せ、こいつの牙はどの神でも殺せるって代物なのでね。試した事は無いが、他の神話体系の神仏でも有効だろう。上級悪魔や伝説のドラゴン、
ロキの指先がリアスに向けられる
「本来、北欧の者以外に我がフェンリルの牙を使いたくはないのだが……。まあ、この子に北欧の者以外の血を覚えさせるのも良い経験となるかもしれない」
新はその言葉に歯軋りをしながら理解した
――――リアスを狙うつもりだと
「――――魔王の血筋。その血を舐めるのもフェンリルの
オオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオンッ!
フェンリルが遠吠えを上げると同時に、新は『
「新!」
「新さん!」
リアスと朱乃から悲鳴が上がる
フェンリルの力は凄まじく、流石の新も余裕が無かった
「ぐぅぅっ!こんのクソ犬がぁぁぁぁ……!調子こいてんじゃねぇぇぇっ!」
新は両肩の刃を伸ばしてフェンリルの目を斬りつけた
フェンリルは攻撃をくらいながらも新を噛み砕こうとしている
「新!」
『
一誠が背中のブーストから火を噴かしてフェンリルに向かう
「俺のダチに―――――何しやがるんだァァァァァァァァァァァァッ!」
ドゴンッ!
一誠がフェンリルを横から殴り飛ばした
しかし、フェンリルは首を振って血を払い、平気そうな顔をしている
「サンキュー、一誠。助かったぜ」
「気にすんな。これぐらい―――――ごぶっ」
一誠が突然血を吐いた
よく見てみると鎧の腹部に大きな開いていた
それを見た新はすぐにフェンリルを見やる
「イッセー!」
「くそっ!一誠が殴った瞬間に奴も爪で攻撃してたのかよ!祐斗!すぐに一誠を!」
体勢を崩しそうになった一誠を祐斗が支え、馬車にいたアーシアが回復のオーラを作り出す
「
「ロキィィィィィィィッ!」
ロキがフェンリルに指示を送ろうとした瞬間、アザゼルとバラキエルが光の槍と
「フェンリルを使わずとも、堕天使2人程度では我の相手は無理だ」
魔方陣が盾となって空中に大きく広がり、アザゼルとバラキエルの攻撃を容易に防いだ
「――――ッ!北欧の術かッ!術に関しては俺らの神話体系よりも発展していたっけな!流石は魔法、魔術に秀でた世界だ!」
アザゼルが憎々しげに吐き捨てる
「だったら、同じ術式で!」
ロスヴァイセがロキと同様の魔方陣を何重にも展開して、縦横無尽の魔法攻撃を放つ
しかし、ロキの防御魔方陣はロスヴァイセの攻撃を難なく防ぐ
「では、次はこちらの手番だな」
「ふざけんじゃねぇぞ……!
新が怒りにまみれて槍を構え、鎧の口が自然と開く
その時、視界に光が一閃流れて―――――
『
グバババババンッ!
フェンリルを中心に空間が大きく歪み、フェンリルは動きを封じられた
だが、すぐに牙で歪みを噛み切って解き放つ
「兵藤一誠、竜崎新、無事か?」
「ヴァーリ!」
新達の目の前に現れたのは
その横から金色の雲に乗っている
「――――ッ!おっとっと、
ロキがヴァーリの登場に嬉々として笑んだ
「初めまして、悪の神ロキ殿。俺は
「
そう言ってロキはフェンリルを自身のもとに引き上げさせ、空間に大きな歪みを作る
「だが、この国の神々との会談の日!またお邪魔させてもらう!オーディン!次こそ我が子フェンリルが、主神の喉笛を噛み切ってみせよう!」
ロキとフェンリルがこの場から姿を消したと同時に一誠は意識を失い、新はガクリと肩を落とした
―――――――――
「……新先輩、ご無事で良かったです」
「すまねぇな、小猫」
新達は現在、
「オーディンの会談を成功させるにはロキを撃退しなければいけないのだろう?このメンバーと
新はヴァーリの声がした場所に歩みを進める
見てみると、その後方に
特に
「は〜い。エッチ蝙蝠くん。久しぶりにゃぁぁん♪」
隣にいた小猫は隠れる様に
「ヴァーリ、お前がロキやフェンリルを倒すってのか?」
「残念ながら、今の俺でもロキとフェンリルを同時には相手に出来ない。だが―――――」
「なぁるほど……分かったぜ。二天龍と俺が手を組めば話は別ってか?」
ヴァーリの考えを察した新の言葉にリアス達は驚愕した
そして言葉も出ないリアス達にヴァーリは言う
「今回の一戦、俺は兵藤一誠、竜崎新と共に戦っても良いと言っている」
―――――――――
「キヒヒヒヒッ。北欧の