ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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オーディン来訪

 

「ん……あぁ……もう朝か」

 

午後3時から午後11時まで朱乃と性交した新は、弱りきった体を起こそうとする

 

しかし、朱乃と繋がったまま寝てしまったので、どうしたら良いのか困惑する

 

「すげぇ良い寝顔だな、朱乃……」

 

「…………………んんっ。ふわぁ……あ、新。うふふ、おはよう♪昨日はいっぱい愛してくれてありがと」

 

「おはよう朱乃。昨日は魂まで搾り取られるかと思ったぞ……」

 

「うふふ、だって……ずっと待ちわびてたんだから。その分も補充しないと」

 

朱乃が新の鼻をチョンとつつく

 

『朱乃とのセッ◯スは命を賭ける必要がありそうだ……』と新は改めて思い知らされた

 

「朱乃。そろそろ起きねぇか?」

 

「ぁんっ。まだ新とくっついていたいのに……いけずね♪」

 

新はベッドから出て腰を回したり首を鳴らしたりする

 

朱乃も体を起こし、裸で新と向き合う

 

「新、ここを出る前にキスして……」

 

「ハハッ……しょうがねぇな。ちゅむっ……」

 

2人は体を密着させて唇を合わせる

 

ついばんだり、舌を絡めたりして好きと言う表しを往復させる

 

唇を離すと、唾液の糸が橋を作り上げた

 

「うふふ、またおっきくなってますわ」

 

「確かになってるけど、しばらく充電させてくれ。マジでガチで頼む」

 

「そうですわね。お楽しみは待った方が良いですわよね?じゃあ、眠気覚ましにシャワー浴びてきますわ。ちゅっ♪」

 

朱乃は新の唇に軽くキスしてバスルームに入った

 

新がトランクスとズボンを穿いた直後、新のスマホが鳴る

 

ピッ

 

「もしもし?リアス。どうしたんだ?」

 

『新?やっと繋がったわね。実はイッセーの家にオーディン様がいらしてるのよ。急いでイッセーの家に来て。あなたもいないと会談が始まらないから』

 

「あぁ、分かった。準備が出来たらすぐに行くわ」

 

『………その様子だと、朱乃と最後までシたのね?』

 

「……………………………………ノーコメント」

 

『ふ~ん、そういう答えを出すなんて……良い度胸よね……?小猫とゼノヴィアはむくれてるわよ』

 

「そ、そすか……」

 

『ちゃんと責任を取るのよ?あなたは只でさえ、性欲が旺盛で節操無しなのだから』

 

「分かってる。朱乃は絶対に手放さねぇよ」

 

『そう、それなら良いわ。それじゃあね。――――帰ったらゆっくり、ゆっくりと聞かせてもらうから……』

 

ガチャッ………

 

新はスマホをポケットにしまい、シャワーを浴びている朱乃のシルエットを見ながら決意を固めた

 

朱乃は絶対に幸せにすると………そして――――

 

「…………死ぬ時はリアスのおっぱい揉んで死んでやる」

 

自分の命に究極の危機が訪れる事を覚悟した……

 

 

―――――――――

 

 

一誠の家の最上階に設けたVIPルームに入った新と朱乃

 

来て早々、朱乃はガタイの良い男に詰め寄られた

 

「おい朱乃、何なんだその男は。いったい誰なんだ」

 

「いや!離して!」

 

朱乃が激しく抵抗しているのを見て、新は男の腕を掴んで朱乃を解放させた

 

「おい、オッサン。朱乃が嫌がってんだろ。つーか、オッサン誰だ?」

 

新はドスを利かせた目を向けながら男に訊く

 

「今日はオーディン殿の護衛として来ている。堕天使組織グリゴリ幹部、バラキエル――――姫島朱乃の父親でもある」

 

「なっ!?あ、朱乃の親父さん!?」

 

新はあまりに予想外の答えに驚いた

 

オーディンはそれを見て楽しそうに笑いながら爆弾級の言葉を投下した

 

「ほっほっほっ、闇皇(やみおう)の小僧。朝帰りとは……お主なかなかやるのぅ」

 

その場にいた全員が反応して新の方を向いた

 

特に朱乃の父親、バラキエルは真っ先に反応して朱乃に詰め寄った

 

「何だと!?朱乃!それは本当なのか!?」

 

「そうです!私はこの新さんと生涯を共に過ごすと誓いました!邪魔をしないでください!」

 

朱乃が新の腕に強くしがみつき、バラキエルは怒りを孕んだ顔で新を睨む

 

「……この話はまた後でする」

 

バラキエルは爆発しそうな怒りを堪え少し離れる

 

「もう!オーディンさまったら、いやらしい目線を送っちゃダメです!こちらは魔王の妹君なのですよ!」

 

付き人と思われるヴァルキリーがハリセンでオーディンの頭を叩く

 

オーディンは頭をさすりながら半眼で言う

 

「まったく堅いのぉ。サーゼクスの妹と言えばべっぴんさんでグラマーじゃからな。そりゃ、わしだって乳ぐらい見たくなるわい。と、こやつはわしのお付きヴァルキリー。名は―――――」

 

「ロスヴァイセと申します。日本にいる間、お世話になります。以後、お見知り置きを」

 

ロスヴァイセが挨拶してくれた

 

新が軽くお辞儀をすると、目が合ったロスヴァイセは再び挨拶をする

 

その様子を見たリアスと朱乃が新の頬をつねる

 

「新さん?あのヴァルキリーさんとお知り合いなんですか?」

 

「そう言えば冥界に行った時に会っていたわね。……朝帰りしたばかりなのに大したものね、新?」

 

「ちょっ、顔怖いっ。ちょっと見知った程度だよ」

 

「彼氏いない歴=年齢の生娘(きむすめ)ヴァルキリーじゃ。そういえば、以前のレーティングゲームが終わった後では珍しく男に声をかけておったのぅ。しかも、その闇皇(やみおう)の小僧にじゃ」

 

オーディンはいやらしい顔をしながら追加情報をバラす

 

ロスヴァイセは酷く狼狽し出した

 

「そ、そ、それは関係ないじゃないですかぁぁぁぁっ!わ、私だって、好きで今まで彼氏が出来なかった訳じゃないんですからね!好きで処女な訳ないじゃなぁぁぁぁいっ!うぅぅっ!」

 

ロスヴァイセがその場に崩れ落ちて床を叩き出す

 

新は不憫に思ったのか、呆れ顔でオーディンに抗議してあげた

 

「オーディンのジイサン。あんま付き人をいじめてやんなよ。終いにはストレスで胃に穴が開いちまうぞ」

 

「うぅぅっ!竜崎さぁぁぁぁぁんっ!また励ましていただいてありがとうございますぅぅぅぅっ!」

 

ロスヴァイセは涙と鼻水を垂らして礼を言うが、新は朱乃の頬をつねられていた

 

「まあ、戦乙女(いくさおとめ)の業界も厳しいんじゃよ。器量良しでもなかなか芽吹かない者も多いからのぉ。最近では英雄や勇者の数も減ったもんでな、経費削減でヴァルキリー部署が縮小傾向での、こやつもわしのお付きになるまで職場の隅にいたのじゃよ」

 

オーディンはうんうん頷きながら言い、アザゼルがやり取りに苦笑しながらも口を開いた

 

「爺さんが日本にいる間、俺達で護衛する事になっている。バラキエルは堕天使側のバックアップ要員だ。俺も最近忙しくて、ここにいられるのも限られているからな。その間、俺の代わりにバラキエルが見てくれるだろう」

 

「よろしく頼む」

 

言葉少なにバラキエルが挨拶をくれた

 

「爺さん、来日するにはちょっと早すぎたんじゃないか?俺が聞いていた日程はもう少し先だった筈だが。今回来日の主目的は日本の神々と話をつけたいからだろう?ミカエルとサーゼクスが仲介で、俺が会談に同席――――と」

 

「まあの。それと我が国の内情で少々厄介事……と言うよりも厄介なもんにわしのやり方を批難されておってな。事を起こされる前に早めに行動しておこうと思ってのぉ。日本の神々といくつか話をしておきたいんじゃよ。今まで閉鎖的にやっとって交流すらなかったからのぉ」

 

オーディンが長い白ヒゲをさすりながら嘆息する

 

どこの勢力でも厄介事の1つや2つはあるようだ

 

「厄介事って、ヴァン神族にでも狙われたクチか?お願いだから『神々の黄昏(ラグナロク)』を勝手に起こさないでくれよ、爺さん」

 

「ヴァン神族はどうでも良いんじゃが……。ま、この話をしていても仕方ないの。それよりもアザゼル坊。どうも『禍の団(カオス・ブリゲード)』は禁手化(バランス・ブレイク)出来る使い手を増やしているようじゃな。怖いのぉ。あれは希有(けう)な現象と聞いたんじゃが?」

 

グレモリー眷属は新以外驚いて顔を見合わせていた

 

「やっぱり度々起こる各勢力への襲撃は、神器(セイクリッド・ギア)所有者を禁手(バランス・ブレイカー)にさせるためか」

 

「ああ、レアだぜ。だが、どっかのバカが手っ取り早く、それでいて恐ろしく分かりやすい強引な方法でレアな現象を乱発させようとしているのさ。それは神器(セイクリッド・ギア)に詳しい者なら1度は思い付くが、実行するとなると各方面から批判されるためにやれなかった事だ。成功しても失敗しても大批判は確定だからな」

 

「何ですか、その方法って」

 

「リアスの報告書で(おおむ)ね合っている。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦だよ。まず、世界中から神器(セイクリッド・ギア)を持つ人間を無理矢理かき集める。殆ど拉致だ。そして洗脳。次に強者が集う場所――――超常の存在が住まう重要拠点に神器(セイクリッド・ギア)を持つ者を送る。それを禁手(バランス・ブレイカー)に至る者が出るまで続ける事さ。至ったら強制的に魔方陣で帰還させる。お前らの対峙した影使いが逃げたのも禁手(バランス・ブレイカー)に至ったか、至りかけたからだろう」

 

以前、新達と戦った影使いはやはり禁手(バランス・ブレイカー)になろうとしていたようだ………

 

アザゼルが更に続ける

 

「これらの事はどの勢力も、思い付いたとしても実際にやれはしない。仮に協定を結ぶ前の俺が悪魔と天使の拠点に向かって同じ事をすれば批判を受けると共に戦争開始の秒読み段階に発展する。自分達はそれを望んでいなかった。だが、奴らはテロリストだからこそ、それをやりやがったのさ」

 

新は話を理解し、一誠は納得がいかないような顔でアザゼルに訴えかけていた

 

「自分はその様な目に遭って禁手(バランス・ブレイカー)に至りましたけどって訴えかけるような顔だな、イッセー」

 

「そりゃそうですよ、先生」

 

「だが、お前は悪魔だ。人間より頑丈なんだぜ?」

 

「それでも死にかけました!」

 

「おーい、一誠。それを言っちまったら俺なんか、神代剣護(かみしろけんご)にデスカリバーで胸を貫かれたんだぞ?」

 

「その後で反則紛いの力に覚醒したんじゃないか!俺をお前みたいなイカレ野郎と一緒にしないでくれ!」

 

「よし、お前ちょっと表に出な。覚醒した3つの力でボコボコにしてやっから」

 

新が親指でドアを指し示すと、一誠は瞬時に土下座した

 

「どちらにしろ、人間をそんな方法で拉致、洗脳して禁手(バランス・ブレイカー)にさせるってのはテロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』ならではの行動ってわけだ」

 

「それをやっている連中はどういう(やから)なんですか?」

 

一誠の問いにアザゼルが続ける

 

「英雄派の正メンバーは伝説の勇者や英雄さまの子孫が集まっていらっしゃる。身体能力は天使や悪魔、闇人(やみびと)にひけを取らないだろう。更に神器(セイクリッド・ギア)や伝説の武具を所有。その上神器(セイクリッド・ギア)禁手(バランス・ブレイカー)に至っている上に、神をも倒せる力を持つ神滅具(ロンギヌス)だと倍プッシュなんてものじゃ済まなくなる訳だ。報告では、英雄派はオーフィスの蛇に手を出さない傾向が強いようだから、底上げに関してはまだ分からんが」

 

「オーフィスの蛇を使わないテロリストか……どちらにしろ強敵である事には変わりねぇな」

 

その後、話が一段落終わったところでアザゼルとオーディンは堕天使経営のおっぱいパブに行き、新、朱乃、バラキエル以外の皆は空気を読んだのか、その場を去る

 

「竜崎新と言ったな。少し席を外してくれないか。朱乃と話がしたいのだ」

 

「……良いぜ」

 

新が立ち去ろうとした時、さっき席を外すよう言ってきたバラキエルが何故か呼び止めた

 

「聞かないのか?私と朱乃の事を」

 

「親子の会話を盗み聞きするのは趣味じゃないんでな。俺はそこまでセコくねぇんだよ」

 

新は再び踵を返すが、バラキエルが「待て!」と強く呼び止めた

 

「さっき言ったのは撤回しよう。君も同席してくれ。訊きたい事がある……」

 

 

――――――――――

 

 

「単刀直入に訊くぞ。君は朱乃をどう思っている?」

 

新、朱乃、バラキエルのみとなった部屋

 

新はバラキエルの問いに真剣かつ簡潔な答えを出した

 

「朱乃は俺が愛する女だ」

 

「だが、君は各地で多くの女性と関係を持っているじゃないか。中にはアザゼルの部下だった堕天使もいる……君は朱乃もその中に入れるつもりか?」

 

怒気が含まれたバラキエルの言葉に、新は首を横に振った

 

「違うな。朱乃だけは違う。朱乃は唯一、俺が自分から惚れた女だ。他の女達とは違う――――かと言って、他の女を見捨てる気は毛頭無い。俺は欲深い生き物なんだ。欲しいと思った女は必ず傍に置く。それが俺の愛情表現だ」

 

「今の世に、その様な一夫多妻制の考えが許されると思っているのか!」

 

バラキエルは怒りを(あらわ)にして、両手に雷光(らいこう)を纏わせる

 

新はそれでも臆する事なく反論する

 

「許されないのは百も承知だ。その時は世界を敵に回してでも守り通す。本気で守りたい物は何があろうと守る。例え相手が誰であろうとな……」

 

「その相手が私でもか?」

 

「あんたがそうしたいのなら」

 

断言する新、次にバラキエルは朱乃に訊く

 

「朱乃。お前はこの少年をどう思っている?」

 

「私もこの方―――――竜崎新の事が好きです。愛しています。この方以外の男性なんて考えられません。あなたが私と新さんの仲を引き裂くと言うのなら―――――私は死にます」

 

「「なっ!?」」

 

朱乃の真剣な言葉にバラキエルだけでなく、新も驚いてしまった

 

「ちょ、朱乃!それ本気で言っているのか!?」

 

「だって……だって、やっと私を支えてくれる……こんな私を本気で愛してくれる男性に出会えたんですよ?私はあなたと離れたくない!離れるなんて嫌!そんな事になるくらいなら死んだ方がマシよ!」

 

朱乃は涙を流しながら新を強く抱き締める

 

「……朱乃」

 

「来ないで!触らないで!私からこの人を取らないで!今の私には彼が必要なのよ!だから、ここから消えて!あなたなんて私の父親なんかじゃない!」

 

今までに無かった朱乃の強い叫びにバラキエルは雷光を止め、瞑目して言った

 

「……すまん」

 

自分の娘に言われたのがショックだったのか、バラキエルの背中が寂しそうに見えた

 

その会話を陰からコッソリ聞いていた紅髪(べにがみ)女性(リアス)も姫島父娘(おやこ)の確執の深さ、そして朱乃の覚悟と本気を思い知らされた……

 

『朱乃は……そこまで新の事を……。私にはまだまだ足りてないのかしら……』

 

 

――――――――

 

 

一誠の家を出て自宅に戻った新と朱乃

 

新は朱乃に話があると言って、リアスと小猫、ゼノヴィアには出掛けてもらった

 

レイナーレ達も酒場でのバイトでいない

 

完全に朱乃と2人っきりになった……

 

新は覚悟を承知で朱乃に言う

 

「朱乃……お前の過去を、話してくれないか?」

 

「―――――ッ!」

 

朱乃は驚きと動揺を隠せなかった

 

自分の好きな人から、自分の思い出したくない過去について話して欲しいと言われたのだから当然の反応であろう………

 

予想通りの反応に、新は朱乃を優しく抱き締めながら謝った

 

「気持ちの整理がついてない時にこんな事を言ってすまねぇ……。でもよ、朱乃が好きだから……朱乃が本気で俺を愛してくれるからこそ、お前の口から聞きたいんだ。朱乃の過去を……バラキエルとの確執を……」

 

「うぅっ……新さん……あらだざぁん……!ぐすっ、ひぐっ……わがりましだ……ぐしゅっ、話します……」

 

朱乃が涙を拭き、自分とバラキエルの過去について話してくれた

 

朱乃の母は日本のとある有名な寺の巫女だった

 

名前を姫島朱璃(ひめじましゅり)と言い、朱乃はお母さんの姓を名乗っている

 

朱乃のお母さんがいる寺の近くにある日、敵勢力に襲撃されて重傷を負ったバラキエルが飛来し、朱璃は傷ついたその堕天使幹部を救い、手厚く看病した

 

その時にバラキエルと親しい関係になり、朱乃の身に宿した

 

バラキエルは朱璃と生まれたばかりの朱乃を置いていく訳にもいかず、近くで居を構え、そこから堕天使の幹部として動いていた

 

3人は慎ましい生活ながらも充実して幸せな日常を送っていたが、幸せは長く続かなかった………

 

朱乃のお母さん――――朱璃の親類は黒い翼を持つ堕天使の幹部に娘が洗脳されて手籠めにされたと勘違いし、とある高名な術者達をけしかけたと言う

 

バラキエルは何とか退(しりぞ)けたが、やられた術者達は堕天使と敵対している者達へバラキエルの住まう場所を教えた

 

運が悪くその日、バラキエルは家におらず、敵対勢力は朱乃と母が住まう家を躊躇せずに攻撃

 

バラキエルが駆けつけた時には、朱乃は命がけで庇った母のお陰で助かったが……母の朱璃は命を落としてしまい、朱乃は敵対勢力に自分の父――――堕天使の幹部がどれだけ他の勢力に恨みを抱かれているかを語られ、現実を突きつけられた

 

それ以来、朱乃は堕天使に対して良いイメージを持たなくなり、殺された母親の無念を抱いてバラキエルに心を閉ざした

 

それから数年後、堕天使とのハーフでもある朱乃は住む家も追われ、天涯孤独の身となって各地を放浪し、リアスと出会ったと言う………

 

「……………………」

 

話し終えた朱乃は、新の胸に顔を埋めて泣いた

 

溢れんばかりの涙を新はシャツで受け止める

 

「すまねぇ……ツラかったろう?嫌だったろう?でも、よく話してくれた。気持ちが落ち着くまで泣いてくれ……いつまでも待ってやるから……」

 

抱き締めながら朱乃の頭を優しく撫でる

 

今の新に出来る事はそれしか無かった………

 

「新……………キスして、お願い……」

 

新は拒まず朱乃の唇に自分の唇を合わせる

 

朱乃が落ち着くまで、朱乃の涙が止まるまで……新はキスを続けた

 

 

――――――――――

 

 

次の日、新達グレモリー眷属はグレモリー家主催の冥界イベントに主役として参加していた

 

そのイベントとは握手とサイン会

 

新達の前には長蛇の列が出来ており、ファンの子供1人1人にサイン色紙を渡して握手もする

 

乳龍帝(ちちりゅうてい)おっぱいドラゴン』の主役である一誠と『蝙蝠皇帝ダークカイザー』の主役である新は双方共に鎧姿だった

 

サイン色紙を受け取り、握手を交わした子供達は満面の笑みを浮かべる

 

「おっぱいドラゴン!頑張ってね!」

 

「ダークカイザー!ありがとー!」

 

一誠は子供達の喜びを見て鎧の中で号泣、新も照れ臭そうに笑う

 

「スイッチ姫のおっぱい!スイッチ!」

 

「きゃっ」

 

2人の近くで同じくサインと握手をしていたリアスから小さな悲鳴が上がった

 

どうやらイタズラ坊主がリアスのおっぱいをつついていたようだ

 

一誠はそのイタズラ坊主に嫉妬していたが、新に「子供のやる事に嫉妬してどうする」と(いさ)められる

 

別の場所では祐斗もいた

 

祐斗は『乳龍帝(ちちりゅうてい)おっぱいドラゴン』内での敵役『ダークネスナイト・ファング』の姿でファンの女性に応対していた

 

更に獣っ娘衣装を着る小猫の所には大きな友達がたくさん並んでいる

 

小猫は『ヘルキャットちゃん』としてダークカイザーの味方役になっていた

 

暫くしてイベント終了し、楽屋のテントへ戻る

 

慣れない作業に疲れたのか、新は鎧を解除して直ぐに肩を落とした

 

そこへスタッフが近づいてくる

 

「新さま、お疲れ様ですわ」

 

「お、サンキュー、レイヴェル」

 

レイヴェルからタオルを受け取り汗を拭く

 

レイヴェルは新達が冥界でイベントをすると聞き、アシスタントとして協力していた

 

「こ、これ修業の一環ですわ!それに冥界の子供達に夢を与える立派なお仕事だと思えるからこそ、お手伝いをしているのです!べ、別に新さまやグレモリー眷属の為ってわけじゃありませんわ!」

 

「子供達に夢を与える仕事、か……。案外悪くねぇな。昔の俺じゃあ少しも考えられなかったよ。毎日毎日、自分が生き残る為に戦って金を稼いで……全部自分主義の生活だったんだ」

 

「そう、だったのですか……」

 

「あぁ。だから、あんな小さな手で一生懸命握手されちまったら――――その夢を壊しちゃいけねぇって痛感したよ」

 

新は子供達と握手した自分の手を見つめ、子供の夢を真剣に守っていこうと決意を固める

 

そこへリアスが新の楽屋テントへ入ってきた

 

「新、そろそろ人間界に帰還する時間よ」

 

「おう、そうだったな。この後オーディン爺さんの護衛だっけ」

 

「そう、早く戻らないといけないわ。レイヴェルもお疲れ様。今日はありがとう」

 

「い、いえ、勉強の為ですから」

 

「じゃあレイヴェル、また今度な」

 

「はい、イベントの時は呼んでください。わ、私でよろしければ手を貸して差し上げますから」

 

そんなやり取りをした後、新はリアス達と共に人間界へ帰っていった


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