ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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第7章編開始です!


第7章 放課後のラグナロクとテンプテーション
男は顔で笑い、心で泣く


「いらっしゃいませ〜」

 

「おう、姉ちゃん。ビール2本とつまみを適当に持ってきてくれ」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

ディオドラとの戦いが終わった次の日の夜、場所は新行きつけの酒場

 

そこでは新が助けたディオドラ眷属総勢14名がパンツ+エプロンと言う奇抜なスタイルで接客業をしていた

 

新が酒場のマスターに話を通し、ウェイトレスとして働かせているのだ

 

更に酒場の隣に寮を設立し、ディオドラ眷属達をそこに住まわせた

 

因みにウェイトレスの制服は度々マスターの趣向によって変更されるので、客の請け合いもバッチリだとか

 

「アラタ、こんなに多くの女性を侍らせたの?色欲魔ね」

 

「アラタのエッチ〜。浮気者〜♪」

 

「アラタ、少し自重しないと体が保たないぞ」

 

「良いじゃねぇか別に。人手が増えた事で売り上げと収入がグンと伸びるんだからよ」

 

新はボンテージ姿のレイナーレ、カラワーナ、ミッテルトに反論する

 

シフト交代制で働いてるので、今の堕天使3人組は客の立場にある

 

「ぶ〜っ。皆うちよりおっぱい大きい……ちょっと嫉妬しちゃう」

 

「それにしても、まさかこの娘逹全員が元シスターや聖女だなんてねぇ……ディオドラ・アスタロトってアラタに似てるわ」

 

「失礼だな。俺は人の弱味につけ込んだりしねぇよ。正々堂々と正面から言ってセッ◯スするんだ」

 

「自信満々に言わなくても良いんだが、そうだな。アラタはそんな奴じゃない」

 

隣に座っていたカラワーナが新の腕にしがみつく

 

逆隣(ぎゃくどなり)のレイナーレも対抗心を燃やしてしがみつき、ミッテルトは下から潜り込んで新の膝に座る

 

「アラタがどんなであろうと、私達はアラタを慕う。レイナーレ様やミッテルトも同じように」

 

「そうね。アラタだから私達は好きになっちゃったのよね。ちゅっ……ふふっ。アラタの味♪」

 

「あ〜!レイナーレ様ズルい!うちも〜!んちゅ〜♪」

 

新は酒を飲みながら3人のキス攻めを受け、それを見た客逹はヒューヒューッ!と盛り上がった

 

 

―――――――――

 

 

「あ、あの本当にありがとうございます。お仕事だけじゃなく、この様な住まいまで提供してくださるなんて」

 

「気にすんな。これから酒場で働いてもらうんだから、これぐらいの配慮は当然だろ?」

 

新はレイナーレ逹を先に帰らせ、ディオドラ眷属達を寮に連れていき談笑をしていた

 

地下にはプライベートプールに大浴場、生活に必要な物は全て完備されている豪華な寮

 

ディオドラ眷属達は勿体ないぐらいの優遇を受けていた

 

「あの……本当にありがとうございます。もし良かったら、私達にご奉仕を申し付けください。いつでも、お待ちしております……」

 

ディオドラ眷属の『女王(クイーン)』が頬を朱に染めて頭を下げると、他の女性逹も頭を下げる

 

新は当然イエスと答えた

 

「分かった。時間が空いたらな。なるべく俺もスケジュールを合わせるから」

 

『はい。アラタ様』

 

新の固有スキル『女堕とし』は敵でさえも効力を発揮する

 

ディオドラ眷属達は完全に堕ちた………

 

 

―――――――――

 

 

この日の深夜、新は眠れずにいた

 

裸で寝ている堕天使3人組や朱乃とゼノヴィア、可愛らしいパジャマを着て寝ている小猫がいても眠れなかった

 

その理由はオーフィスの言葉が気になっていたから

 

去り際に言った"『闇皇の鎧』"は倒した闇の力を奪い取れる"『初代キング』が目覚めつつある"と言う発言が頭から離れずにいた

 

だが、何処にどう封印されているのか分からないのでどうする事も出来ない

 

「倒した闇の力って、いったいどういう意味だ……?何か重要な事には違いないだろうが……クソッ、考えても(らち)が明かねぇ」

 

新はベッドから抜け出して1階に降りる

 

冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに注いで電子レンジで温める

 

ホットミルクを作っているのだ

 

「やっぱ眠れない時はホットミルクだよな」

 

電子音が鳴り、中からホットミルクを出すが……予想以上に熱かったので少し置いて冷ます

 

一通り冷めたところでホットミルクを飲み干し欠伸をする

 

「ふあ〜あっ。さて、寝るかな―――――っ?リアス、どうした?」

 

密かに忍び寄る足音を聞き取って振り向くと、寝間着姿のリアスが階段から降りてきた

 

「ちょっと眠れなくて、新も私と同じ理由かしら?」

 

「あぁ。今ホットミルクを飲み終えたところだ。飲むか?」

 

「そうね、いただくわ」

 

新は別のカップに牛乳を注ぎ、それを電子レンジで温める

 

電子音が鳴り、温まったカップを「ほい、出来たぞ」と渡す新

 

リアスはそれを受け取り、一口飲む

 

一息ついたところでリアスが話を切り出す

 

「……気になってるのね、オーフィスの言葉」

 

「あぁ、気になるさ。何たって『禍の団(カオス・ブリゲード)』トップからの言葉だからな。それに……アザゼルからもオーフィスの事は聞いた。昔はジジイだったらしい。どういう経緯を辿ればジジイからゴスロリ美少女に性転換――――」

 

「本題からズレてるわよ」

 

迷走しかけた新の頭をパコッと軽く叩いたリアス

 

「スマン、そうじゃなかった」と前置きしてから再び本題に取り掛かる

 

「……正直言って……かなり不安だな。何たって悪魔、天使、堕天使を纏めて滅ぼそうとした魔族の親玉が復活するかもしれねぇって言われたんだ。気にならねぇ方がおかしい。その上、倒した闇の力を奪い取れるってのも……どういう意味なのかサッパリ分からねぇ。分からねぇ事だらけだ」

 

新はいつもらしからぬ弱気を混ぜた発言をする

 

やはりオーフィスの言葉や、日に日に異常な速度で進化を続けてしまう力に嫌でも不安を募らせてしまうのだろう

 

リアスも沈んだ表情で「そうよね……」と返すしかなかった

 

ところが、新は自ら両頬を叩く

 

「だから――――今考えても分からねぇ事は取り敢えず考えねぇようにした。解決案が見つかってねぇのに考えた所でどうにかなるって訳じゃねぇ、今後の活動に集中出来なくなっちまう。それに――――」

 

「それに?」

 

「今の(コイツ)の所持者は俺だ。この力がどんな物だろうと使うのは俺であって『初代キング』じゃない。俺は(コイツ)をリアスや一誠、仲間を守る為に使っていきたい。今の俺に出来る事はそれだけだ」

 

真っ直ぐな眼で天井を仰ぎながら語る新にリアスは微笑みを見せる

 

新の隣に座り、彼の手を握る

 

「そうね、深く考え過ぎていたわ。新がそうやって強気になっているとこっちも強気になれそう。不思議ね」

 

「嬉しい言葉ありがとな。ふわぁ~ぁ」

 

ホットミルクが効いてきたのか、新の口から大きな欠伸が出た

 

「そろそろ寝るか」と階段を上がって部屋へ戻っていく新の背中をリアスはジッと見つめる

 

リアスも自室に戻ろうとした――――その時だった

 

通信用魔方陣が展開され、リアスの前に見覚えある人物の映像が映される

 

それを見たリアスは仰天した

 

「お、お母さまっ!?」

 

『リアス、今何時だと思ってるの?そんなに大声を出してはしたないわよ』

 

なんと相手はリアスの母親――――ヴェネラナ・グレモリー

 

リアスが仰天するのも無理は無かった

 

「お母さま、いったいどのような用件で?」

 

『あら、母が娘の心配をしてはいけないのかしら?男の人と1つ屋根の下で暮らす娘が気になるのは当然よ』

 

ヴェネラナが頬に手を添えながら続ける

 

『ところで、リアス?』

 

「何でしょう、お母さま?」

 

『新さんにはもう処女を捧げたの?』

 

「―――――ッ!?」

 

母の口から出た発言にリアスは顔から湯気をボッと噴かした

 

その反応を見てヴェネラナがクスクスと微笑む

 

「おおおおおおお母さま!いきなり何を言い出すんですか!?」

 

『年頃の娘が男の人と一緒に住んでいるのよ?しかも相手が新さん、竜崎総司さんのご子息なものだから既に処女を頂いたのかと思って♪でも、その反応だとまだみたいね?』

 

ヴェネラナの問いに顔を真っ赤にしながら無言で頷くリアス

 

ヴェネラナはやれやれと言った感じで首を横に振った

 

『まあ良いでしょう。最初は一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり、少しずつステップを踏んでいきましょう。ただ――――』

 

「ただ?」

 

『リアスも少しは男性の心理と言うものを学びなさい。いつまでも助けられるだけでは「(キング)」は務まりませんよ?』

 

「だ、男性の心理……?」

 

『そう、たまには新さんを甘えさせてあげなさい。――――彼、ああ見えて寂しがり屋なんですから』

 

ヴェネラナの言葉にリアスは疑問符を浮かべる

 

新が寂しがり屋とはいったいどういう事なのか……?

 

「新が寂しがり屋?今までの彼を見る限り、とてもそんな風には見えませんけど……」

 

『分かってないわね、リアス。男の人とは顔で笑っても心で泣く生き物です。それに新さんはまだ18歳、幼い頃からバウンティハンターと言う過酷な世界を生きてきたのよ。親から離れ、孤独に近い人生を10年以上……それがどんなにツラい事か想像出来る?』

 

リアスは思わず口をつぐむ

 

上級悪魔として生まれ、何不自由無く生きてきた自分には想像出来ない世界……

 

バウンティハンター=賞金稼ぎとは実力主義の蹴落とし合戦の様なものだ

 

賞金首を捕まえ、時には殺して報酬を貰う

 

それは相応の実力が無ければ直ぐに淘汰されてしまう

 

新は一誠達と出会うまでは心の底から信じ合える仲間もおらず、死と隣り合わせの生活を送ってきた……

 

『心の拠り所が無ければ強さも発揮されません。新さんが多数の女性と肉体関係を持っているのは周知――――ですが、それは裏を返せば他者からの癒しと愛情を求めているんだと思います』

 

「そう、なのですか……?」

 

『リアス、本当に彼を大事に想っているのなら、あなたからも歩まなければなりません。いつまでも守ってもらうのが「(キング)」ではありません。彼の心の拠り所になってあげなさい』

 

「…………」

 

『1人じゃ出来ないのなら私も手伝ってあげましょうか?母と娘で新さんを慰めるのも悪くありませんね♪でも、こんなおばさんの体でも喜んでくれるかしら?』

 

「お、お母さま……!?」

 

『ふふっ、それはまた今度話しましょうか。それじゃあリアス、しっかりね』

 

ヴェネラナからの通信が終わり、リアスから溜め息が漏れる

 

暫くソファーに座っていると、新が再び階段から降りてきた

 

どうやらリアスが戻ってこないので様子を見に来たのだろう

 

「どうした、リアス?まだ眠れないのか?」

 

「いいえ、お母さまから連絡が入ったから少し話してただけよ」

 

「そっか、じゃあもう寝ようぜ。眠くて(かな)わねぇや」

 

何度めかの欠伸をしながら部屋に戻ろうとする新

 

しかし、リアスは彼の袖を掴んで制止させる

 

「ん、何だ?」と訊いてくる新に対し、リアスは少しして決心したかの様な面持ちで言った

 

「…………今日は、私の部屋で一緒に寝なさい」

 

 

―――――――――――

 

 

「へ~、中は意外と少女趣味なんだな」

 

ベッドに腰掛けリアスの部屋を見渡す新

 

リアスの口から出たから突然の同衾(どうきん)宣告を断れず、言われるがままリアスの部屋に足を踏み入れた

 

上級悪魔の息女だから高級な家具や置物ばかり置かれているのだと思っていたのか、何度も部屋の内装を見渡す

 

可愛らしい机やスタンドにクッション、更に本棚にはオカルト研究部らしく悪魔の歴史事典や魔術に関する書物もあるが、少女漫画も収納されていた

 

『花より月見男子』『君に届け隊』『彼氏彼女の頭上』など、有名なタイトルの漫画がズラリと並んでいる

 

一通り見渡した所で横になり、少し経ってからリアスが奥の着替え部屋から出てくる

 

下着が見えるネグリジェ姿はいつもの凛としたリアスとはまた別次元の魅力を引き出していた

 

少し顔を赤らめながらも新の隣で寝る

 

「…………今思えば、新と一緒に寝るのって初めてだわ。あんなに凄い事シたのに……」

 

「凄い事?」

 

「ほ、ほら……朱乃を入れた3人で水着を買いに行ったじゃない。その時に……」

 

「確かにそうだな。俺もリアスと一緒に寝るのは初めてだ。今夜はお互いの初めてを更新したって訳だ」

 

新は軽く笑ってリアスの頭を優しく撫でる

 

そのお陰で緊張が(ほぐ)れ、リアスがクスッと笑う

 

「そうね。さあ、明日も早いから寝ましょうか」

 

「おう。さっきのホットミルクで眠気倍増だから……直ぐに眠れそう……zzz」

 

程無くして直ぐに新から寝息が漏れ、やがて泥の様な深い眠りについた

 

無防備で自然体の寝顔を見せる新にリアスは静かに体を近付け、包み込むように抱き寄せる

 

「もう寝てる……。いつもの新ならエッチな事するのに。……お母さまの言った通り、表に出してないけど……この子も本当はいっぱいいっぱいなのかもしれないわね。『初代キング』の事も……これからの事も……」

 

リアスが寝ている新の頬を優しく撫でる

 

「新、あなたには今まで励まされてばかりだったわ。その恩に報いたい。だから、私もあなたの力になってあげたい……。独りで抱え過ぎないで……あなたも誰かを頼ってね……?」

 

新の頬にキスをした後、リアスも深い眠りについた

 

 

―――――――――――

 

 

『新さんがなかなか戻ってこないと思ったら、ここにいたのね。リアスってば新さんの温もりを独り占めするなんて羨ましいわ。……でも、今夜は譲ってあげる。あんな話を聞いた後で連れ戻すのは流石に出来ないもの。ゆっくりお休みなさい』


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