一瞬何が起こったのか、全員は理解出来ずにいた
そんな時に2つの声が聞こえてくる
「キヒヒヒヒヒヒッ。
「霧使いめ、計画の再構築が必要だ」
独特の笑い声と聞き覚えの無い声
上を見てみると、そこには見覚えのある少年が
そいつの名は―――――
「――――
「おっひっさ〜♪グレモリーのお姉さん逹〜。元気にしてましたか〜?今日はスペシャルなゲストを連れてきたよ~」
カプリンチョを食べながら地に降り立つ『チェス』の一員にして『ビショップ』の称号を持つ
そして宙に浮いたままでいる男は――――
「お初にお目にかかる。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く正統なる後継者だ。先程の偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したと言うのにこのザマとは」
「ディオドラ・アスタロトくんもザマァ無いよね〜?シャルバっちからオーフィスの蛇を貰ったのにボッコボコ、アガレスのお姉さんとの試合でも無断で蛇使っちゃってさ〜。予見されて計画台無し、愚行が過ぎるよね~?」
今回の首謀者――――――旧ベルゼブブと共にやって来た神風
『
ディオドラが2人に懇願するような顔で言う
「シャルバ!
神風はディオドラにゆっくり近づき一言だけ発した
「やだ♪」
グバァァァッ!バキグチャッ!
突如、神風の右腕が狂暴な獣の形と化してディオドラの上半身を噛み砕いた
その後、神風は嫌気丸出しの顔で吐き捨てる
「ボクが君みたいなクソカス悪魔を助けると思ってたの?せっかくシャルバっちからアーシアちゃんの
「ふんっ、哀れだなディオドラ」
冷淡に吐き捨てるシャルバ
彼もディオドラを見限っていたようだ
残った下半身も喰った神風は腕を元に戻し、今度は絶命した村上に近寄り
「村上さん。あなたもヴァカだよね〜?
グシャアッ!
神風は冷酷な目で頭部のみとなった村上を踏み潰した
肉と血が飛び散って床を汚す
「さ・て・と♪グレモリーのお姉さん。本当はボクのおっぱい枕にしてあげたいんだけどぉ、シャルバっちから言われててさ。お姉さんを殺さないといけないらしいんだ〜。理由は現魔王の血筋を滅ぼすためだって」
「グラシャラボラス、アスタロト、そして私達グレモリーとシトリーを殺すと言うのね」
リアスの問いかけに神風は笑顔で頷いた
「そうだよ〜♪ボクも最初は断るつもりだったんだけどぉ、
「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私達真の血統が貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ。まあ、今回の作戦はこれで終了、私達の負けだ。まさか
「シャルバ・ベルゼブブ……!直接現魔王に決闘も申し込まずにその血族から殺すだなんて卑劣だわ!神風!あなたもこんな事をして恥ずかしいと思わないの!?」
リアスの怒声を聞いてもシャルバは口の端を吊り上げ、神風は爆笑するだけだった
「それで良い。まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味が無い」
「キャハハハハハハハッ!ボクはただシャルバっちも『
「その通りだ。今は
「――――この外道ッ!村上京司より遥かに腐ってる!何よりもアーシアを殺した罪!絶対に許さないわッ!」
「キャハハハハハハハッ!絶対に許さないとか、古臭いんですけど〜?チョー受けちゃうよ!キャハハハハハハハッ!」
リアスは激昂して全身から紅いオーラを
他の皆も殺意を明らかにして戦闘態勢に入るが―――――
「アーシア?アーシア?」
一誠だけはフラフラと歩きながらアーシアを呼んでいた
「アーシア?何処に行ったんだよ?ほら、帰るぞ?家に帰るんだ。父さんも母さんも待ってる。か、隠れていたら帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」
覚束ない足取りでアーシアを探す一誠
しかし、いくら呼んでもアーシアはいない………
「アーシア?帰ろう。もう誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう。体育祭で一緒に二人三脚するんだから……」
正直言って、とても見ていられなかった
小猫とギャスパーは嗚咽を漏らし、朱乃も顔を背けて涙を頬に伝わせる
リアスは一誠を優しく抱き、何度も頬を撫でる
「なになになぁに?あまりのショックで壊れちゃったのかな〜?その死んだ魚みたいな目、チョー受けるんですけどぉ♪キャハハハハハハハッ!」
「……許さない。許さないッ!斬るッ!斬り殺してやるッ!」
叫びながらゼノヴィアがデュランダルとアスカロンでシャルバに斬りかかる
「神風ェェェェェェェェェェッ!」
新も殺意全開で神風に突っ込むが、攻撃は両手で防がれた
「無駄だ」
「鬱陶しいんだよ」
ドガァァァァァァアアアァァァアアアッ!
神風の
シャルバは聖剣の二刀を光り輝く防御障壁で防ぎ、ゼノヴィアの腹部に魔力弾を撃ち込んだ
ゼノヴィアは床に叩きつけられ、二振りの聖剣が床に突き刺さる
「ぐっ……!アーシアを……返せよ……!コンチクショウガァァァァっ……!」
「……私の……友達なんだ……ッ!……優しい友達なんだ……。誰よりも優しかったんだ……ッ!どうして……ッ!」
新は膝をつき、ゼノヴィアは手元から離れていった聖剣を握ろうとする
神風は一誠に向かって非情な事を言い放った
「
「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。全くもってグレモリーの姫君は趣味が悪くてかなわないな」
一誠が神風とシャルバをジッと見つめ続ける
無表情で見続ける姿は異様だった
『リアス・グレモリー、今すぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去した方が良い』
「どういうこった!ドライグ――――っ!?な、何だこの嫌な魔力は……!?」
怒号を発する新はすぐに異変を感じ取った
そしてドライグの声は神風とシャルバに向けられる
『そこの小僧と悪魔よ。神風、シャルバと言ったか?お前は選択を間違えた』
一誠はリアスを振り払い、
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
神殿が大きく揺れ、一誠が血の様に赤いオーラを発していく
それは最大級に危険なオーラだった
そして一誠の口から老若男女、複数入り交じった呪詛のごとき呪文が発せられる
『我、目覚めるは――――』
〈始まったよ〉
〈始まったね〉
『覇の
〈いつだって、そうでした〉
〈そうじゃな、いつだってそうだった〉
『無限を
〈世界が求めるのは――――〉
〈世界が否定するのは――――〉
『我、赤き龍の
〈いつだって、力でした〉
〈いつだって、愛だった〉
≪何度でもお前達は滅びを選択するのだなッ!≫
一誠の鎧が鋭角なフォルムを増していき、巨大な翼まで生えてくる
両手両足から爪が伸び、兜からは角がいくつも形作られていく
その姿はドラゴンそのものだった
全身の宝玉から絶叫に近い声が老若男女入り乱れて響く
「「「「「「「
『
一誠の周囲――――床、壁、柱、天井が赤いオーラによって破壊されていく
「ま、まさかこれが……!?アザゼルの言ってた『
「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああああああああっ!アーシアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
獣の叫びに似た声を発する一誠は四つん這いになって飛び出す
小型ドラゴンと化した一誠は神風の肩に食らい付いた
「おぉっ!?いつの間に!?てゆーか、痛いんだけど!」
神風は右腕を肥大化させて一誠の顔面を掴み、そのままメキメキと握り潰そうとする
しかし、一誠の宝玉の1つから刃が生まれ、神風の右腕を切断した
「チィッ!鬱陶しいなクソドラゴンッ!」
神風は一誠を蹴り飛ばす
肩の肉を食い千切られたが、すぐに右腕と共に再生する
一誠は壁に四肢で着地すると、食い千切った肉を床に吐き捨て――――今度はシャルバに噛みついた
「ぬううううっ!おのれっ!」
シャルバは右腕で光の攻撃を放とうとするが、別の宝玉から赤い鱗に覆われた龍の手が出現し、シャルバの右腕を止める
ブチブチブチッ!
宝玉から飛び出た龍の手がシャルバの右腕を引き千切る
更に肩の肉を食い千切って床に着地する
「げごぎゅがぁぁ、ぎゅはごはぁっ!ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「キャハハハハハハハッ!もう人間の言葉すらも発せなくなっちゃったよ!凄いね!これが噂に聞いた『
「おのれぇぇぇッ!汚物が調子に乗るなァッ!」
神風は楽しそうに笑いながら獣型の雷を100体放ち、シャルバは残った左腕で極大な光の一撃を放った
その瞬間、
『
「うひ〜!
「ヴァーリの力か!おのれ!何処までもお前は私の前に立ち塞がると言うのだなッ!ヴァーリィィィィィィッ!」
まだ楽しそうに笑っている神風と怒りに吼えるシャルバ
シャルバが今度は魔力の波動を撃つ
しかし、絶大な魔力の波動は翼の羽ばたきだけで弾かれた
ビィィィィィィッ!
赤いレーザーが一直線に伸びてシャルバの左腕を吹き飛ばす
神風は寸前で横に回避した
レーザーは神殿の床や壁、天井を一直線に抉り、その場所から爆発が巻き起こる
「ぬあああああがああああああっ!」
咆哮を上げながら全身にオーラを発生させる一誠
オーラを漂わせるだけで周囲が大きく抉れ、巨大なクレーターとなる
「ば、化け物め!こ、これが『
「暴走状態でこの威力か~。キャハハハハハハハハハハッ!こりゃ面白いねぇ!」
シャルバの顔が遂に恐怖に包まれた
瞳には怯えの色が強く、完全に一誠を恐怖の対象として捉えている
一方の神風は余裕を見せつけ、狂ったように哄笑を上げる
新は呆然としており、リアス達も怯えていた
「なんて
赤いオーラが発射口に集まり、横に広がった翼も赤い光を辺り一面に放つ
「くっ!私はこんな所で死ぬわけには!」
シャルバは残った足で転移魔方陣を描こうとするが――――その足が動きを停める
「……と、停めたのか!私の足を!」
鎧の眼が赤く
まるでギャスパーの
増大を続けるオーラの危険性に、新はこのままではマズイと直感した
「リアス!ここを離れるぞ!ここにいたら巻き込まれちまう!」
「イッセーを置いていくって言うの!?そんな事出来る訳ないでしょうッ!」
「このままだと全員が死ぬぞ!それでも良いのかッ!?」
新はリアスの胸ぐらを掴んで説得させるが、ドライグから声が聞こえる
『
「マジかよ!チキショウがァッ!だったら―――――俺の中にある全魔力を盾にして防ぐッ!全員俺の後ろに隠れろ!」
「無茶よ新!防げるかどうかも分からないのに――――――」
「黙れリアス!間に合わねぇんだったら、やるしかねぇだろうが!さっさと隠れろ!」
新はリアスを無理矢理後ろにやって全員の前に立ち、両手を前に出して巨大な蝙蝠型のバリアーを張る
「新さん!」
「先輩!」
「心配すんな朱乃、小猫。俺を誰だと思ってやがる?俺はこんな事じゃ死なねぇよッ!」
魔力を特化した『
新はそう考えてリアス達を真後ろに避難させたのだ
『
『
「キャハハハハハハハッ!良いね良いねぇっ!僕と力比べをしようって言うの!?上等だよ!くたばっちまえ!クソドラゴンがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
神風の繰り出した巨大な
そして砲撃はそのままシャルバにも向かっていく
「バ、バカな……ッ!真なる魔王の血筋である私が!ヴァーリに一泡も噴かせていないのだぞ!?ベルゼブブはルシファーよりも偉大なのだ!おのれ!ドラゴンごときが!赤い龍め!白い龍めェェェェッ!」
シャルバは