ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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アーシアを救え!

 

 

新VS村上の戦いよりも一足先に開戦の火蓋を落とした一誠はディオドラの腹に拳を打ち、その拳を(ねじ)り込んで

内臓にもダメージを与える

 

ディオドラは口から内容物を血と共に吐き出す

 

「瞬殺がどうしたって?」

 

一誠が拳を引きながら訊くと、ディオドラは腹を押さえて後退(ずさ)りしていく

 

さっきまでの余裕は完全に消え去っていた……

 

「くっ!こんな事で!僕は上級悪魔だ!現魔王ベルゼブブの血筋だぞ!キミの様な下級で下劣で下品な転生悪魔ごときに気高き血が負ける筈が無いんだッ!」

 

ディオドラは手を前に突き出し、無限に等しい数の魔力弾を発射する

 

一誠は避けずに魔力弾の雨の中を1歩1歩進んでいく

 

被弾しても全く意に介さずディオドラとの距離を詰める一誠

 

「ありがとうよ、タンニーンのおっさん。あの修行、効果があったなんてもんじゃねぇ。あいつの攻撃が全く怖くない」

 

『そうだ。龍王との修行はお前を相当鍛え込んだ。シトリーとの一戦はその修行を活かし切れなかったが、制限無しならば力を出し切れる。鎧の防御力もシトリー戦の頃に比べてだいぶ安定してきた。単純なパワー勝負なら、現在のお前はかなりの物だよ』

 

「ああ、ドライグ。匙との勝負ではパワーを発揮出来なかった。けど……今なら違う!こいつ相手なら殺意全開でぶん殴れるッ!」

 

ディオドラは魔力の攻撃を止めて距離を取ろうとする

 

しかし、一誠は背中の噴出口から魔力を噴かして直ぐにディオドラに追いつく

 

その瞬間、ディオドラは幾重もの防御障壁を作り出した

 

「ヴァーリの作った障壁よりも薄そうだな」

 

バリンッ!ゴンッ!

 

一誠の拳打が防御障壁を全て壊し、ディオドラの顔面へ一撃を与えた

 

殴られた勢いでディオドラの体が床に叩きつけられる

 

ディオドラは顔から血を流して涙を溢れさせた

 

「……痛い。痛い。痛いよ!どうして!僕の魔力は当たったのに!オーフィスの力で絶大なまでに引き上げられた筈なのに!」

 

一誠は泣き言を無視してディオドラの体を引き上げ、オーラを纏った拳を腹に叩き込む

 

更に顔面にも叩き込み、次の一撃をくらわせようとした

 

「こんな腐れドラゴンに僕がぁぁぁぁっ!」

 

ディオドラは左手を前に突き出し、分厚いオーラの壁を発現させた

 

一誠の拳がその壁に当たり、勢いを殺されそうになる

 

「アハハハハハハッ!ほら見た事か!僕の方が魔力は上なんだ!ただのパワーバカの赤龍帝(せきりゅうてい)が僕に敵う筈が無いんだよッ!」

 

「――――そのパワーバカのパワーを見せてやろうか?」

 

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背中の噴出口から膨大なオーラが噴き出し、拳の勢いが増していく

 

やがて壁にヒビが生じ、そのままバリンッと儚い音を立てて消失した

 

「わりぃな。パワーバカだから、こんな風に力押ししか出来ねぇや。でも今のお前相手になら充分か」

 

「ひっ」

 

一瞬で顔色を変えたディオドラに、一誠は真っ正面から叫びながら拳を打ち込む

 

「俺ん家のアーシアを泣かすんじゃねぇよッ!」

 

グシャッ!

 

ディオドラの左手を叩き折り、その勢いのまま顔面に拳を打ち込んだ

 

鋭く突き刺さった一撃にディオドラは柱まで吹き飛ばされ背中から激突

 

床に落ち、地べたを這いずりながら叫んだ

 

「ウソだ!やられる筈が無い!アガレスにも勝った!バアルにも勝つ予定だ!才能の無い大王家の跡取りなんかに負ける筈が無い!情愛が深いグレモリーなんか僕の相手になる筈が無い!僕はアスタロト家のディオドラなんだぞ!」

 

ディオドラが手を上へ突き上げると、一誠の周囲に円錐状の魔力が幾重にも出現する

 

切っ先を向け、ミサイルの様に襲い掛かる

 

一誠は身を屈めたり横っ飛びで回避、或いは拳や蹴りでトゲを弾き飛ばすが、切っ先は意志を持ったかの如くうねり始める

 

そして鎧の隙間から一誠の肉体を刺し貫いた

 

一誠は自分に突き刺さったトゲを両手で引き抜いていき、傷口から血が(したた)り落ちる

 

同じ攻撃をしようとするディオドラに一誠は瞬時に距離を詰めて蹴りを放つ

 

鈍い音を響かせ、ディオドラの右足を完全に粉砕した

 

「ちくしょぉぉおおおおおおおっ!」

 

苦痛に顔を歪ませるディオドラは手に魔力を集め始めた

 

どうやら最大限に溜めた魔力の波動を撃ち出すつもりだろう

 

一誠も手にドラゴンのオーラを集束させ、赤い閃光を走らせた

 

同時にディオドラの魔力弾も撃ち出され――――お互いの一撃が宙でぶつかり合う

 

「いっけぇぇぇぇぇっ!」

 

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神器(セイクリッド・ギア)から増加された力が流れ込み、一誠のドラゴンショットのパワーが底上げされる

 

そして赤い閃光はディオドラの極大な魔力弾を打ち消した……

 

 

―――――――――――――

 

 

ドシャッ………

 

新の『|闇皇の魔導銃僧侶《アーク・カイザー・ウィザルドバスター・ビショップ》』によって僅かな頭部以外の肉体を消滅させられた村上京司(むらかみきょうじ)は、目をひくつかせながら魔銃(マガン)と共に地面に転がった

 

「ぐがぁっ、あああ……何故だ……?何故、私がこんな無様な姿に……!三嶋の子孫や貴様ら悪魔は……何故、我々の邪魔ばかりぃぃぃぃぃぃっ……!」

 

ガク……ッ

 

首だけになった村上は新とリアス達を憎しみの眼で睨むも、徐々に白目となり――――絶命した

 

ドゴォォオオオオオオンッ!

 

神殿が大きく揺れる

 

見てみると、一誠が床に拳を叩きつけて巨大なクレーターを作っていた

 

ディオドラは血まみれで左腕と右足が折れており、歯をガチガチ鳴らしていた

 

完全に一誠に恐怖している………

 

一誠はディオドラの胸ぐらを掴み、素顔を晒して睨み付ける

 

「2度とアーシアに近づくなッ!次に俺達のもとに姿を現したら、その時こそ、本当に消し飛ばしてやるッ!」

 

『相棒。そいつの心はもう終わった。そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ』

 

ドライグの声に一誠はディオドラを放す

 

ディオドラはガチガチと震えるだけだった

 

「一誠。そっちも片付いたみたいだな」

 

「新。ってか、何その姿?また覚醒したのか?」

 

「あぁ。『僧侶(ビショップ)』の能力に特化した形態だ。今さっきこいつで村上を殺した」

 

「そっか。俺もこいつを充分に殴り飛ばした」

 

新達は全員アーシアが捕らえられている装置へ駆け寄る

 

そしてアーシアを装置から外そうとしたが―――――少しして祐斗の顔色が変わる

 

「……手足の枷が外れない」

 

「何だと!?」

 

「クソ!外れねぇ!」

 

一誠はアーシアと装置が繋がっている枷を外そうとしたが、赤龍帝(せきりゅうてい)のパワーでも外れず、新やリアス達の攻撃を受けてもビクともしなかった

 

その時、ディオドラが言葉少なく呟く

 

「……無駄だよ。その装置は機能上1度しか使えないが、逆に1度使わないと停止出来ないようになっているんだ。アーシアの能力が発動しない限り停止しない」

 

「どういう事だ?」

 

「その装置は神滅具(ロンギヌス)所有者が作り出した固有結界の1つ。このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。『絶霧(ディメンション・ロスト)』、結界系神器(セイクリッド・ギア)の最強。所有者を中心に無限に展開する霧。その中に入った全ての物体を封じる事も、異次元に送る事すら出来る。それが禁手(バランス・ブレイカー)に至った時、所有者の好きな結界装置を霧から創り出せる能力に変化した。『霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)』、創り出した結界は1度正式に発動しないと止める事は出来ない」

 

祐斗はディオドラに問いただす

 

「発動の条件と、この結界の能力は?」

 

「……発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は――――枷に繋いだ者、つまりアーシアの神器(セイクリッド・ギア)能力を増幅させて反転(リバース)すること」

 

反転(リバース)とは名前の通り、能力の質を逆転させる力

 

例えるなら、これを使えば聖なる力は魔の力に変わり、魔の力は聖なる力に変わる

 

実はシトリー戦にて、アーシアがリタイヤに追い込まれた要因はこの反転(リバース)にある

 

絶大な回復能力が逆転すれば……それは致命傷レベルの物と化す

 

それに気付いた祐斗は更に問いただした

 

「効果範囲は?」

 

「……このフィールドと、観戦室にいる者達だよ」

 

「――――ッ!やべぇぞ!アーシアの回復能力は悪魔や堕天使さえも治すんだろ!?それが増幅されて反転(リバース)されたら――――」

 

「……各勢力のトップ陣が全て根こそぎやられるかもしれない……ッ!」

 

衝撃の事実に全員が青ざめた

 

そんな事になれば人間界、天界、冥界は主導者を失い、闇人(やみびと)がここぞとばかりに攻め込んで来る

 

「会長との一戦でそんな作戦が思い付かれたのか!」

 

「……いや、随分前からその可能性が出ていたようだよ。ただ、シトリーの者がそれを実際に行った事で計画は現実味を帯び、闇人(やみびと)幹部からの知恵を借りた事で確信に変わったそうだ……」

 

それを聞いたリアスが怒りで顔を歪める

 

「堕天使の組織に潜り込んだままの裏切り者がソーナに『反転(リバース)』を貸す事でデータを集め、利用していたかもしれないのね!」

 

「じゃあ……グラシャラボラスの不審死どころか、ソーナ会長との戦いも、お前も、全部『禍の団(カオス・ブリゲード)』と闇人(やみびと)が絡んでやがったのか!」

 

更に神滅具(ロンギヌス)が創った装置も『禍の団(カオス・ブリゲード)』の者が関与しており、ドライグから『絶霧(ディメンション・ロスト)』はブーステッド・ギアよりも高ランクで禁手(バランス・ブレイカー)に至って創られた装置の破壊は無謀である事を告げられ、一誠は床を叩いて悔しがる

 

「イッセーさん、私ごと―――――」

 

「バカな事言うんじゃねぇッ!次にそんな事言ったら怒るからな!アーシアでも許さない!」

 

「で、でも、このままでは、先生やミカエル様が私の力で……。そんな事になるくらいなら、私は―――――」

 

「俺は……俺はッ!2度と、アーシアに悲しい思いをさせないって誓ったんだ!だから絶対にそんな事をさせやしない!俺が守る!ああ、守るさ!俺がアーシアを絶対に守ってやる!」

 

アーシアの肩を抱き、泣きながら言う一誠にアーシアも感極まって涙を溢れさせるが、非情にも装置が動き出す

 

全員が再度魔力の弾を装置にぶつけるが、やはりビクともしなかった

 

「くそっ!どうしたら良いんだ!このままじゃ―――――」

 

「……いや、待てよ。一誠!1つだけ手はあるぜ!」

 

突然新が攻撃を止めて、そんな事を言い出した

 

「直接的な力がダメなら、ブーステッド・ギアの力で高めた妄想の(たぐい)から生じる特殊技ならどうだ?そう……一誠の『洋服破壊(ドレス・ブレイク)』で枷を破壊するんだ」

 

全員が新の答えに絶句した

 

「見てみろ。この枷はアーシアにピッタリとくっついている。もしかしたら、こいつもアーシアが身に付けている物の一部として破壊出来るんじゃないか?」

 

「そ、そんな事が可能なの……?」

 

リアスは恐る恐る訊くが、新は豪語した

 

「可能か不可能かじゃねぇ。やるかやらないかだ!やらなきゃ分かんねぇんだよ!」

 

「ちょ、ちょっと待て新!それはつまり、ここでアーシアを裸にしろって言ってるのか!?」

 

「そうだ!アーシアを装置から解放する手段はそれしかねぇんだよ!アーシア!今から一誠がお前を裸にするが、我慢出来るよな?」

 

新が確認を取ると、アーシアはコクリと頷いた

 

「はい……イッセーさん。お願いします」

 

「……っ!?良いのかアーシア!?」

 

「大丈夫です……。イッセーさんになら、何をされても構いません……。新さんや皆さんに見られても、我慢しますッ!」

 

アーシアの確認に一誠が一旦新の顔を見やり、頷いてからアーシアを捕らえている枷に触れた

 

「高まれ、俺の性欲!俺の煩悩!『洋服破壊(ドレス・ブレイク)』ッ!禁手(バランス・ブレイカー)ブーストバージョンッ!」

 

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一誠の鎧の宝玉が赤く輝き、枷に触れている手に流れ込んでいく

 

「一誠!思い浮かべろ!アーシアの全裸を!半端なイメージじゃ意味がねぇ!全力で思い浮かべろ!」

 

「分かった!アーシアの全裸!何も纏っていない生まれたままのアーシア!俺はそれを脳内に保存しているぞォォォォォォォッ!」

 

「あ、あの……あんまり言われると恥ずかしくなってきます……」

 

アーシアが顔を赤く染め、一誠は鼻血を噴き出しながらアーシアの全裸を強くイメージしていく

 

「もっとだ!もっと思い浮かべろ!」

 

「キメが細かくてスベスベな白い肌!」

 

「柔らかい体!」

 

「そして綺麗な!」

 

「ピンク色の!」

 

「「乳首ぃぃぃぃぃぃっ!」」

 

バギバギバギバギンッ!

 

バババッ!

 

アーシアの両手両足を捕らえていた枷は木っ端微塵に吹き飛び、同時にアーシアのシスター服も消し飛んだ

 

「……で、出来た……ッ!」

 

「……イッセーさん!」

 

アーシアは裸で一誠に抱きつく

 

アーシアが装置から解放されたために、装置の動きも止まった

 

「イッセーさん!新さん!ありがとうございます!」

 

「い、いや〜……破壊出来て本当に助かった。これでダメだったら正直どうしようかと思ってた……」

 

「新!お前失敗すると思ってたのかよ!?コラ!待ちやがれ!」

 

逃げる新を追い掛ける一誠

 

アーシアは朱乃が魔力で出した新しいシスター服に着替え、再び一誠に抱きついた

 

「信じてました……。イッセーさんが来てくれるって」

 

「当然だろう。でも、ゴメンな。ツラい事、聞いてしまったんだろう?」

 

「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」

 

笑顔で嬉しい事を一誠に言うアーシア

 

ゼノヴィアも目元を潤ませ、アーシアと抱き合う

 

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……」

 

「アーシア。そろそろ私の事を部長と呼ぶのは止めても良いのよ?私を姉と思ってくれて良いのだから」

 

「――――っ。はい!リアスお姉さま!」

 

今度はリアスとアーシアが抱き合う

 

ギャスパーは大泣きし、小猫が頭を撫でる

 

これでようやく終わった

 

「さて、アーシア。帰ろうぜ」

 

「はい!と、その前にお祈りを」

 

アーシアは天に向かって何かを祈る

 

一誠が何を祈ったかを訊くと、「内緒です」と返された

 

笑顔で一誠のもとへ走り寄るアーシアだったが―――――突如、まばゆい光の柱が発生する

 

光の柱が消え去ると―――――

 

「……アーシア?」

 

そこには誰もいなかった

 

 

―――――――――

 

 

主よ。お願いを聞いてくださいますか?

 

どうか、イッセーさんをずっとお守りください

 

そして―――――

 

どうか、これからもずっとイッセーさんと一緒に楽しく暮らせますように――――――


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