ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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教会へ殴り込み!

「―――――――ここか」

 

 

 

教会前に停まる一台のバイク

 

 

 

バイクメットを外して教会を睨み付ける男――――――新だ

 

 

 

村上と名乗る男にやられた傷を高額な回復薬で治療し、アーシアを取り戻す為にやってきた

 

 

 

「女を見捨てる、守れなかったなんて男の恥だ。ぜってぇ取り戻す」

 

 

 

両腕・両足に鎧を展開させ、万全の戦闘態勢で教会に入ろうとする

 

 

 

 

そこで新に呼び掛ける声がしたので、その方向を向く

 

 

 

「祐斗、小猫、一誠。やっぱり考える事は同じか」

 

 

 

 

「当たり前だ。絶対にアーシアを助ける」

 

 

 

「僕達も手伝うよ」

 

 

小猫も小さく頷く

 

 

 

無口な娘だなぁと思いつつも、新は数が足りない事に気付く

 

 

 

「おい。リアス・グレモリーと朱乃さんがいないじゃねぇか」

 

 

 

「2人は別行動を取ってるよ。それより気付いているかい?教会から妙な異質の魔力が出ている事に」

 

 

 

祐斗の言葉通り、教会から変な力が零れている

 

 

 

悪魔歴が浅い一誠でも気付く程の魔力が………

 

 

 

「これから教会に攻め込む訳だが、一誠は大丈夫か?そこの2人は戦闘慣れしているだろうが―――――お前はどう見てもド素人だ」

 

 

 

「た、確かに俺は戦闘慣れしてないし。木場や小猫ちゃんより劣るかもしれないけど」

 

 

 

「兵藤くん。部長が仰ってた事を忘れたの?君には『プロモーション』がある。『兵士(ポーン)』特有の力がね」

 

 

 

「『プロモーション』?」

 

 

 

一誠の特性『兵士(ポーン)』には特別な力、『プロモーション』が備わっている

 

 

 

『プロモーション』とは普通のチェス同様で『兵士(ポーン)』が相手陣地の最深部へ入った時、『(キング)』以外の全ての駒に昇格する能力である

 

 

 

「なるほど。つまり、リアス・グレモリーはここを敵の陣地と認めたって訳だ」

 

 

 

「ああ。朱乃さんの『女王(クイーン)』は負担が掛かり過ぎるからまだ無理らしいけど、それ以外なら変化出来るんだ」

 

 

 

「それなら少しぐらいはマシになるな。ってか、自在に能力を変化させられるから羨ましいぜ」

 

 

 

「なら竜崎くんも、部長の眷属になる?」

 

 

 

祐斗から出た言葉に新と一誠は驚く

 

 

 

「出来んの?一度死なないといけないとか」

 

 

 

「ハハッ。そんなの無いよ。それに部長は君に興味津々なんだ。神器(セイクリッド・ギア)とは違う力を宿している君を気に入ったらしくて」

 

 

 

「それは光栄だな。有名な悪魔の令嬢に興味を持たれるとは。でも、今はその話は後にして―――――行くぞ」

 

 

 

 

新逹一行は教会の扉を開け、一番怪しいと祐斗から教えられた聖堂まで走る

 

 

 

この時点で敵は侵入に気付いている筈、後戻りの選択肢はもう存在しない

 

 

 

そして聖堂の中へ足を踏み入れる

 

 

 

長椅子と祭壇、頭部が破壊された聖人の彫刻が不気味な雰囲気を醸し出していた

 

 

 

「やあやあやあ〜!ご対面!再会だねぇ!感動的だねぇ!」

 

 

 

柱の陰から出てきたのは、村上が救出した神父フリード

 

 

 

「よおクソ神父。今朝はよくも脱獄なんかしてくれやがったな」

 

 

 

「おぉやおや〜!テメェは俺をボッコボコに痛め付けてくれたクソ人間さんじゃあ〜りませんか!しかもそこの雑魚悪魔とご一緒ですか〜!俺としては二度会う悪魔はいないって事になってんだけど!ほら俺、メチャクチャ強いんで悪魔なんて初見で首チョンパ、だったからね〜!でも、お前らが邪魔したから俺のスタンスがハチャメチャ街道まっしぐら!ダァメダァメ〜。人の人生設計をブッ壊しちゃ〜。だからさ、ムカつくんだよ。俺に恥をかかせたクソ悪魔のクズどもとクソ人間がよぉぉおおおおおおおおっ!」

 

 

 

「笑ったり落ち込んだりキレたり、忙しい奴だな。肺活量どれぐらいあるんだ?」

 

 

 

「おい!アーシアはどこだ!」

 

 

 

一誠の言葉にフリードは祭壇を指さす

 

 

 

「んー、そこの祭壇の下に地下への階段が隠されてございます〜。そこから儀式が行われている祭儀場へ行けますぞ〜。お前らブッ殺せば良いから、先に言っといてやります〜。それに」

 

 

 

フリードが指を鳴らすと、また柱の陰から何かが飛び出し、新逹の前に現れる

 

 

 

「っ!?何なんだこいつら!?」

 

 

 

一誠は驚愕する

 

 

 

眼前に現れたのは、今まで見た事もない三匹の人型化け物

 

 

 

外見はネズミに近いが、全身から出る魔力と殺気は凄まじかった

 

 

 

 

「どうどうどう!すげぇっしょ!?俺を脱獄させた村上の旦那が寄越してくれた化け物だぜ〜!こいつらはそこらの悪魔よりも強いし、何よりさっき人間をバリボリ喰らう姿にシビレビレ〜!こんな素敵なプレゼントを贈ってくれてサンキューっ!」

 

 

 

ネズミの化け物は裂けた口からヨダレをダラダラと垂らしまくる

 

 

 

4人は一斉に不快感を覚えさせられた

 

 

 

「新。あの化け物―――――何なのか分かる?」

 

 

 

「流石に見た事ねぇけど、何か………村上って奴の魔力の波動と似てる気がする」

 

 

 

一誠は目を見開く

 

 

 

村上と同じような魔力……ならば村上の正体は、この化け物と同じ類いなのか?

 

 

一誠は頭は疑問だらけとなるが、今は考えてる暇などない

 

 

 

目の前の敵を倒して祭儀場へ進む、ただそれだけだ

 

 

 

「俺があのネズミどもを殺る。お前らはクソ神父を」

 

 

 

「っ!無茶だ!あんな化け物を三匹同時に」

 

 

 

「心配すんな。こっからは本気で殺る。お前らも死ぬなよ?」

 

 

 

「わ、分かった!セイクリッド・ギア!」

 

 

 

一誠が左手に赤い籠手を装着

 

 

 

祐斗も鞘から剣を抜き、敵に剣先を向ける

 

 

 

小猫は自分の何倍もの大きさがある長椅子を持ち上げていた

 

 

 

「ぶっ!なんつー怪力!流石『戦車(ルーク)』だな!」

 

 

 

「……潰れて」

 

 

 

怪力少女は長椅子を敵へぶん投げる

 

 

 

三匹のネズミは散らばって回避し、フリードは懐から出した光の剣で一刀両断

 

 

 

ネズミ逹が奇声を発しながら新に襲い掛かる

 

 

 

「ネズミは大人しくチーズでも食い漁ってろ!」

 

 

 

空中へ飛び出し、ネズミ一匹に鎧の蹴りをぶち込む新

 

 

 

一匹は壁に激突した

 

 

 

着地直後、残り二匹の爪や噛みつき攻撃のラッシュに怯まず回避

 

 

 

隙が出来たところを爪で切り裂く

 

 

 

「ギャシャァアアアアアッ!」

 

 

 

悲鳴に近い鳴き声をあげる二匹のネズミ

 

 

 

新の背後から、さっき蹴り飛ばしたネズミが突っ込んできた

 

 

 

新は気配を察知して避ける

 

 

 

攻撃が単調過ぎるので、かわすのは簡単だった

 

 

 

「じゃあ―――――そろそろ殺すか」

 

 

 

右手を前に出し、鎧の中から剣を取り出す

 

 

 

出した剣を持ち、刀身を左手で擦る

 

 

 

コォオオオオオオオ………!

 

 

 

刀身が赤い色を帯びていき、三匹のネズミの方へ走る

 

 

 

三匹の内、一匹が果敢に突っ込んで来るが―――――新の振る剣で首を切断された

 

 

 

2つの切り口から噴き出す鮮血が新と剣に付着する

 

 

 

「ギャシャァアアアアアッ!」

 

 

 

「はい二匹」

 

 

 

今度は斜めに切り裂き、二匹目のネズミを2つのパーツに分断

 

 

 

三匹目は鋭利な爪を伸ばし、斬りかかってくる

 

 

 

新は爪を剣で防いでいき、片手を斬り落とす

 

 

 

斬られた手を押さえる化け物の手

 

 

 

新はもう一本と言わんばかりに残った手を切断

 

 

 

狼狽するネズミの顔面に剣を突き刺し抉る事で、完全に化け物を沈黙させた

 

 

 

「おい、こっちは終わったぜ。そっちはどうだ?」

 

 

 

新が真後ろを向くと、フリードが左手の銃を乱射しており、祐斗はそれを避けながら攻撃を仕掛けていた

 

 

 

フリードも祐斗の動きを捉えて斬撃を受け止める

 

 

 

「やるねキミ。かなり強いよ」

 

 

 

「あんたもサイコーだぜ!本気でブッ殺したくなっちまうよ!」

 

 

 

鍔迫り合いを中止して距離を取る2人

 

 

 

新は「クソ神父、あいつ噛ませじゃなかったのか」と少しだけ感心する

 

 

 

「じゃあ、僕も少しだけ本気を出そうかな」

 

 

 

祐斗の剣に黒い闇がまとわりつく

 

 

 

舌を出しながら斬りかかってくるフリードに対し、祐斗は闇の剣で迎え撃つ

 

 

 

すると、光の剣が徐々に形を失っていく

 

 

 

「な、何だよこりゃ!」

 

 

 

「『光喰剣(ホーリー・イレイザー)』、光を喰らう闇の剣さ」

 

 

 

「て、テメェも神器(セイクリッド・ギア)持ちか!?」

 

 

 

祐斗も神器(セイクリッド・ギア)の所有者だった事に新と一誠は驚く

 

 

 

しかも闇の剣、イケメンにピッタリの武器だった

 

 

 

光の剣は完全に形を失い、一誠はここしかないと言わんばかりに駆け出した

 

 

 

神器(セイクリッド・ギア)!動けぇぇぇ!」

 

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 

籠手の宝玉から音声が発せられ、更に――――――

 

 

 

「プロモーションッ!『戦車(ルーク)』っ!」

 

 

 

一誠は『戦車(ルーク)』へと昇格

 

 

 

フリードが放つ光の弾丸を物ともせず突っ込んでいく

 

 

 

「『戦車(ルーク)』の特性!それはあり得ない防御力と、バカげた攻撃力だぁああああああああっ!」

 

 

 

一誠の左拳がクソ神父を後方の祭壇まで吹っ飛ばした

 

 

 

「あの時はよくもアーシアに酷い事してくれたな。一発殴れて少しスッキリしたぜ」

 

 

 

「ふっざけんな―――――ふざけんなよこのクソがぁぁあああああああああっ!」

 

 

 

フリードは二本目の光の剣を取り出すが、新は「突撃隣の朝御飯!」と、掌から赤い塊をフリードに撃ち放つ

 

 

 

「イタァイッ!」

 

 

 

魔力の塊をくらったフリードはまた後方へ吹っ飛ばされ、新、一誠、祐斗、小猫が周囲を囲う

 

 

 

「ヒュウッ。俺的に悪魔に殺されるのだけはカンベンしてチョンマゲ!村上の旦那から貰った化け物もバラバラ祭りになっちまったし!つーわけで、はいバイチャ!」

 

 

 

フリードが閃光弾を使って姿を消す

 

 

 

完全に逃げられたが一応は勝利

 

 

 

4人は祭壇の隠し階段を下りていった

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

隠し階段を下りてくと、今度は一本道

 

 

 

進んでいくと、先に大きな扉が見えてくる

 

 

 

「この道の奥……。血の匂いがする……それもたくさんの」

 

 

 

小猫が鼻を押さえ、顔を歪めながら答える

 

 

 

「血の臭い?何でそんな臭いが」

 

 

 

「今更考えてもしょうがない。早くアーシアを」

 

 

 

一誠の言葉に3人は頷く

 

 

 

扉を開けると、血の臭いが鼻を貫く程強くなる

 

 

 

彼等の目に信じられない光景が飛び込んできた

 

 

 

「な、何だこれ……?何がどうなってんだ……?」

 

 

 

さっきのネズミの時と同じように驚く一誠

 

 

 

それもその筈、辺り一面に堕天使の部下であろう神父逹が死体となって転がっていたのだ

 

 

 

首が無いもの、噛み千切られたもの、引き裂かれたもの等が薔薇を咲かせて地面を埋め尽くす

 

 

 

更には3人の女堕天使が全裸で倒れており、薔薇を持つ男が十字架の傍に立っていた

 

 

 

十字架に貼り付けられている少女に向かって一誠は叫ぶ

 

 

 

「アーシアァァ!」

 

 

 

「……イッセーさん?イッセーさん……」

 

 

 

貼り付けられた少女が涙を流す

 

 

 

薔薇を持つ男、村上京司は拍手をする

 

 

 

「感動の対面と言うものか。いやはや、実に滑稽だ」

 

 

 

「村上、こいつはいったい何なんだ?昼間は堕天使と共闘していたってのに、何でこいつらは傷だらけなんだ?」

 

 

 

新がゆっくりと体を起こすレイナーレ達を指差しながら言う

 

 

 

村上は笑いながら答えた

 

 

 

「簡単な事だ。本来なら神器(セイクリッド・ギア)を抽出する儀式を行う予定だったんだが、神器(セイクリッド・ギア)を抜かれた者は死んでしまうのでね。それは困るから裏切らせて貰ったのだよ」

 

 

 

神器(セイクリッド・ギア)を引き抜く。それが儀式の正体か」

 

 

 

「そうだ。だが、私はそんな野蛮な方法よりも彼女を救ってやるのだ―――――闇人(やみびと)に転生させてな」

 

 

 

聞き慣れない単語に全員が理解出来なかった

 

 

 

「闇人?聞いた事ないね。それがあなたの正体なのかい?」

 

 

 

「私だけではない。お前達を襲った三匹のネズミがいただろう?そいつらは闇人に転生させた人間だ」

 

 

 

村上の言葉に全員が驚いた

 

 

 

先程、新が殺した化け物――――――あれは元人間だった

 

 

 

「どういう事だ!?」

 

 

 

「少し我々についての話をしてやろう。闇人とは―――――万物が秘める(よこしま)な感情、あらゆる欲望が集結し、覚醒する事で誕生する魔族。大昔、闇人の先祖であり王とも言える『初代キング』は、闇人こそが冥界、天界、人間界を統治出来る唯一無二の種族だと断言し、数々の魔族を絶滅に追い込んだ。最も目をつけたのが悪魔、天使、堕天使との三竦みの戦争。疲弊したところで上位勢力を滅ぼせば簡単に冥界、天界、人間界を支配出来た。だが、ある男のせいで闇人の勢力の歯車に狂いが生じ、そこを一時団結した三大勢力に突かれ、『初代キング』は封印されてしまった」

 

 

 

村上は淡々と長話を続ける

 

 

 

「支配欲を持つ純粋な闇人は少なくなり、他の種族との共存や隠居と言う逃げ道を選んだ者も出てきてしまった。これではいずれ、闇人の血は歴史から消え去ってしまう。そこで『初代キング』の息子である『二代目キング』はある事を提案したのだ。悪魔逹が人間を使って勢力を増やすなら―――――我々も同じ方法を取れば良いと」

 

 

 

それを聞いた新は奴の意図を理解した

 

 

 

「まさか、アーシアを―――――さっきのネズミみたいな化け物に変えるってのか!?」

 

 

 

一斉に全員の目が見開かれる

 

 

 

村上は高笑いしながら、新の言葉を肯定した

 

 

 

「その通りだ!私の様に人間態に変異出来る力を持つ者がいれば、そのまま魔人態(まじんたい)――――化け物の姿のまま転生を終える者もいる!だが、彼女は神器(セイクリッド・ギア)を宿しているから、人間態になれる力を授かるだろう。この可愛らしい美貌の下に隠された、恐ろしい姿――――――さぞかし美しい闇人が完成するだろうなぁ」

 

 

 

村上がアーシアの頬に手を添える

 

 

 

アーシアの顔には恐怖が浮き出ていた

 

 

 

これから自分が化け物に変えられる事を知ってしまったら無理もなかった

 

 

 

「ふざけないで!その為に私を利用したって言うの!?」

 

 

 

激昂したレイナーレが村上に向かって叫ぶ

 

 

 

傷だらけ、全裸である事など頭に入っていない位怒りに満ちていた

 

 

 

「そうだ。貴重な人材をむざむざ手放す訳がないだろう?アーシア・アルジェントの持つ『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』はあらゆる者を治癒する癒しの力。その力を元に新たな回復術を開発していけば、闇人は無敵の軍勢を率いる事が出来る。そしていずれは『初代キング』の復活に繋がるやもしれない。君のアザゼルやシェムハザに向ける愛など知った事か」

 

 

 

村上は嫌味ったらしい目でレイナーレを嘲笑う

 

 

 

だが、レイナーレの顔には微かな笑みがあった

 

 

 

「間抜けね、私達にはもう一人仲間がいるわ。裏切りの可能性を考慮した上で呼んでいたのよ。あなたはそれに気付いていない。今頃あなたを殺す手筈を整えているわ」

 

 

 

レイナーレは自信たっぷりに言う中、村上は何故か笑っていた

 

 

 

「そうそう、1つ見せたい物があったんだった。よぉく見たまえ。私の薔薇を綺麗な赤にしてくれた――――――堕天使の首」

 

 

 

村上が袋から出したのはレイナーレが言った仲間の堕天使の頭部だった……

 

 

 

「い、いやぁああああああああああっ!」

 

 

 

凄惨な光景を見てしまったアーシアは叫び、新逹の全身に悪寒が走る

 

 

 

レイナーレ逹、堕天使の表情も絶望に溢れた

 

 

 

「ド、ドーナシーク………」

 

 

 

「彼は意外と勘が良くてね。私の裏切りにいち早く気付いてしまったから始末したのだよ。それより見てくれ――――――この顔を。死ぬと悟った瞬間、恐怖にひきつらせた表情は絵画や宝石よりも美しい。更に天界から追放された身だけあって、彼の血肉は私の薔薇を完全な赤に染めてくれた………邪な情を持つ者の血肉ほど、綺麗な赤を生み出す」

 

 

 

嬉しそうに屍となったドーナシークの頭部を見る村上

 

 

 

突如、村上の腹の虫が空腹を合図する

 

 

 

「やれやれ。少し運動したから小腹が空いてしまった。悪いが、食事を摂らせてもらうよ」

 

 

 

そう言った村上の身体から薔薇の花びらが溢れ出し全身を包み込む

 

 

 

新も一誠逹も状況を理解出来ないまま、その様子を凝視する

 

 

 

花びらが散りゆくと、そこには異形の化け物が立っていた

 

 

 

鋭角なフォルムと爪、大きく裂けた口、腕や足に巻き付いた茨、鋭く光る眼

 

 

 

悪魔でも堕天使でも、妖怪でもない化け物が彼等の前に現れた

 

 

 

「何だよあれ………マジで化け物じゃないか!」

 

 

 

「それが魔人態って奴か」

 

 

 

「そう。これが私の魔人態だ。美しいだろう?薔薇を愛する私にはピッタリの姿だ」

 

 

 

魔人態へと変異した村上が大口を開け、頭部のみとなったドーナシークを喰らう

 

 

 

「あ、ああぁ…………」

 

 

 

「ひいっ!」

 

 

 

「うぷっ………!」

 

 

 

「ゲボッ」

 

 

 

頭部を噛み砕く際に発する不快な音

 

 

 

アーシア、堕天使3人、小猫と祐斗は目を背ける

 

 

 

新は殺す等の光景には慣れているが、喰う場面には一度も遭遇した事が無い故に吐きそうになる

 

 

 

一誠は耐えきれず、吐瀉物を地面にぶちまけた

 

 

 

ゴクンと喉を鳴らして食事を終えた村上は口元に付いた血を拭う

 

 

 

「ふぅ……やはり堕天使の血と肉は格別だな。欲や恐怖に溺れた者は、豊潤なワインの様に甘くて喉越しが良く、香りも違う」

 

 

 

村上はドーナシークの血を吸った薔薇の匂いを嗅ぐ

 

 

 

そしてアーシアの方を向く

 

 

 

「さて、そろそろ転生の儀式を始めるとしよう。アーシア・アルジェント、君はどの様な魔人態になるのか楽しみだ」

 

 

 

「「アーシアに触るな!」」

 

 

 

新と一誠の叫びが村上の動きを止める

 

 

 

村上は汚物を見る様な眼で2人を睨む

 

 

 

「触るな?それは私に言ってるのか?」

 

 

 

「あぁ、そうだ!その汚い手でアーシアに触れるんじゃねぇ!」

 

 

 

「何が、私の魔人態は美しいだぁ?ただの蔦の化け物じゃねぇか。自惚れんのも大概にしとけよ」

 

 

 

「はっはっはっはっは。私の力をまだ分かってない様だな。良いだろう――――――君達全員、仲良くあの世へ送ってあげよう。『生ける薔薇の死体(リビング・ローズ)』」

 

 

 

村上が腕を天に向けて翳すと神父逹の死体に咲いていた薔薇が巨大化し、人型となって新逹の前に立ちはだかる

 

 

 

「さぁ、良い声で泣き喚いてくれ。この青い薔薇を君達の骸に突き立ててやりたい」


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