転生天使イリナと一誠の大親友
「えー、このような時期に珍しいかもしれませんが、このクラスに新たな仲間が増えます」
2学期が始まったある日、女子の転校生が来ると言う情報にクラスの男子はワクワクしていた
一誠は朝からアーシアがディオドラ・アスタロトの嫁に行ってしまう夢を見たらしいのだが、今はもうすっかり立ち直って転校生が来るのを待っていた
先生に促されて入室してきたのは栗毛のツインテール美少女だった
『おおおおおおおおおおおおおおおおっ!』
殆どの男子は歓喜の声を上げるが、新や一誠逹は喜びより驚きの方が大きかった
首から下げている十字架を見て間違いないと確信
「
転校生の正体はエクスカリバー強奪事件の時に会った紫藤イリナだった
何も知らない男子がフィーバーする中、先生が手を叩いて言う
「静かに静かに!驚くのはまだ早い。実はな、今日はもう1人―――――体験入学生が来ている!」
更に驚きの事実を告げられ、クラス内は一気に騒然となる
「先生!その体験入学生も女子ですか!?」
「いや、そっちは男子だ」
体験入学生は男だと言う事実を告げられた瞬間、男子のテンションが一気にダウン
『ふざけんなよ……』
『男なんざ来んなよ……』
『マジうっぜぇ……』
『いっぺん死んでこい……』
明らかに不機嫌な顔で悪口を飛ばす男子面々
だが、先生はそれを無視して入室を促す
「じゃあ、入ってきなさい」
ギュィィィィィインッ!
いきなり耳を壊す様なギター音が響き、ドアが勢い良く開けられる
「
派手にギターを鳴らすのは頭髪の中央前部分を白く染め、オールバック気味の髪型をしたイケメンだった
その姿を見た一誠は思わず席を立ち――――――
「お、お前、まさかダイアンか!?」
「おー!久しぶりだ
何故か一誠はこの男を知っている様子、ダイアンと呼ばれた男も一誠だけじゃなく、松田や元浜を知っている
「なぁ一誠、あいつは誰なんだ?知り合いか?」
「あいつは俺の昔のダチだよ。
新と一誠の2学期は朝から波乱が巻き起こりそうになっていた
―――――――――
「ちょっと来てくれ」
休み時間、新が男子や女子から質問攻めを受けているイリナの手を引き、一誠、アーシア、ゼノヴィアと共に人気のない場所へ連れ出した
紫藤イリナは一誠の幼馴染みで、幼少時に外国へ引っ越し、プロテスタント専属の聖剣使いになった
以前のエクスカリバー強奪事件以来会っていなかったが、こんな形で再会するとは誰も思っていなかっただろう
「おひさ〜、新くん、イッセーくん、それにゼノヴィアも!」
ガバッとイリナがゼノヴィアに抱きつく
「ゼノヴィア!元気そうで良かった!立場上複雑だけど、素直に嬉しいわ!」
「ああ、久しぶりだね、イリナ。元気そうで何よりだよ。イリナが胸に下げた十字架がチクチクと地味なダメージを与えてくるのは天罰だろうか……」
元聖剣コンビの再会にゼノヴィアも笑みを見せていた
新は何故イリナがここに来たのか切り出す
「紫藤イリナだったな?神様を狂信する信徒が、悪魔の学舎に何か用か?つーか、いつから俺を名前で呼ぶ様になった?」
「おい、新。そんな言い方は無いだろう?」
新はハッキリ言って神様を好いていない
不機嫌が少し混じった言動にイリナはシュンと落ち込む
「そんな事言わないでよ……。今はもう新くんやイッセーくんを敵視したりしてないから……来て早々にそんな事言われたら哀しくなっちゃう……」
「おろ?以前なら飛び掛かってきたのに、ヤケに大人しくなってんな。冗談だ冗談。気にしなさんな」
「ところで、イリナは何でここに?」
「ミカエル様の
イリナは可愛くウインクをした
そんな時、何者かの手によってイリナのスカートがバッと上げられる
「ヒュウッ♪スパッツ
さっきの体験入学生――――――
「いやぁっ!エッチィッ!」
イリナは素早くスカートを庇って新と一誠、2人の後ろに隠れる
「よぉ一誠!こんな所で何してたん
「ちげーよ。ってか、本当に久しぶりだな、ダイアン。来るなら来るって言ってくれれば良いのに」
「お前を驚かそうと思ってたんだ
ダイアンは自前のエレキギターを軽く鳴らす
「イッセーくん、このエッチな人とお知り合いなの?」
「え?あぁ、
「勿論だ
ギュイギュイギュイギュイギュイギュイギュイギュイギュイギュイィィィィィ!
エレキギターを奏でて嬉しさを表現するダイアン
懐からジャンッ!と言う感じでCDを見せつけた
パッケージにはダイアンが大きく映っており、曲名は『ダイアン's Shock〜興奮への衝撃〜』と書かれていた
「CDデビューしたのか!?スゲーじゃねぇか!」
「まだまだ出番は少ないけど
ダイアンはニカッと歯を見せながらポーズを決める
彼はその後、クラスの女子から注目を集め、得意のギター演奏を披露しに行った
新はリアスに紫藤イリナが来た事をメールで伝えたら、向こうは既に知っていたらしい
―――――――――
「紫藤イリナ。あなたの来校を歓迎するわ」
放課後の部室、オカルト研究部メンバー全員、顧問のアザゼル、ソーナ会長が集まってイリナを迎え入れていた
「はい!皆さん!初めまして―――――の方もいらっしゃれば、再びお会いした方のほうが多いですね。紫藤イリナと申します!教会―――――いえ、天使様の使者として
パチパチパチと部員全員が拍手を送る
その後はイリナが「主への感謝〜」とか「ミカエル様は偉大で〜」等と話し始め、皆は苦笑しながらも聞いてあげていた
新は聞きたい事を容赦なく訊く
「お前はさ、聖書に記された神様が死んだ事は知ってるんだろう?」
「新ぁぁぁぁっ!いきなりそれはいかんでしょう!?」
新に突っ込む一誠を見て、アザゼルは嘆息して言った
「アホか。ここに来たと言う事は、そういうのを込みで任務を受けてきた筈だ。いいか、この周辺の土地は三大勢力の協力圏内の中でも最大級に重要視されている場所の1つだ。ここに関係者が来ると言う事は、ある程度の知識を持って足を踏み入れている事になる」
つまり、神の消滅を既に認知していると取れる
「勿論です、堕天使の総督様。安心して、イッセーくん、私は主の消滅を既に認識しているの」
「意外にタフだな。あれだけ神、神、神と豪語していたのにショックを受けてねぇんだな」
新の言葉の後、イリナは両目から大量に涙を流した
「ショックに決まっているじゃなぁぁぁぁい!心の支え!世界の中心!あらゆる物の父が死んでいたのよぉぉぉぉっ!?全てを信じて今まで歩いてきた私なものだから、それはそれは大ショックでミカエル様から真実を知らされた時、あまりの衝撃で7日7晩寝込んでしまったわぁぁぁっ!あああああああ、主よ!」
イリナはテーブルに突っ伏して大号泣
新は地雷を踏んでしまったなと言わんばかりに顔を逸らした
元教会出身のアーシアとゼノヴィアは共感し、3人でガシッと抱き合う
そして、ふとイリナが立ち上がり、祈りのポーズをする
すると、彼女の体が輝き、背中から白い翼が生えた
全員はその事に驚くが、アザゼルだけは顎に手をやりながら冷静に訊く
「――――紫藤イリナと言ったか。お前、天使化したのか?」
「天使化?そんな現象があるんですか?」
一誠がアザゼルに訊くと、アザゼルは肩をすくめた
「いや、実際には今まで無かった。理論的なものは天界と冥界の科学者の間で話し合われてはいたが……」
「はい。ミカエル様の祝福を受けて、私は転生天使となりました。なんでもセラフの方々が悪魔や堕天使の用いていた技術を転用してそれを可能にしたと聞きました」
三大勢力の協力態勢は天使に転生させる技術にまで進んでいた
更にイリナが話を続ける
「四大セラフ、他のセラフメンバーを合わせた10名の方々は、それぞれ
「分かりやすく言うと、『
新は腕組みをしながら感心する
因みにイリナは
更に将来、『
悪魔VS天使のゲームも可能になる
新たなゲーム革命に全員が楽しそうにしていた
「その辺りの話はここまでにしておいて、今日は紫藤イリナさんの歓迎会としましょう」
ソーナ会長が笑顔でそう言う
イリナの歓迎会が行われようとしていた矢先――――
ピリリリリリリッ!
ピリリリリリリッ!
突如鳴る携帯の着信音
鳴ったのは一誠の携帯電話で、発信者はもう1人の幼馴染み―――――ダイアンだった
「はい、もしもし?」
『よぉ一誠!何してん
「これから部活の皆と歓迎会をやろうとしてるんだけど。お前も来るか?」
『
ガチャッ、ツー……ツー……
「イッセー、誰からの電話だったの?」
「今日体験入学に来ていた、俺の昔のダチです。呼びたかったけど、なんか忙しいらしくて」
「へ〜、イッセーのお友達なら是非会ってみたいわね。どんな子?」
「凄く良い奴ですよ。俺の―――――大親友です」
―――――――――
町外れのとある場所
「ヒュウッ♪一誠はさっきの彼女達とパーティ
一誠に電話を掛けた張本人、ダイアンは教会所属の『
「俺を悪魔と勘違いしてんの
グキグキグキッ!
ダイアンの全身が異形の怪物へと変貌していく
黒き体躯の各部に備わった
悪魔の様な2本角に金色の目が光り、居合いの要領でエレキギターを構える
「化け物め!滅してくれるわ!」
黒い化け物は居合いの構えをしたまま1歩も動かず――――――
バッ!ズドドドドドドドドドドドドドドッ!
怪物が腕を振り抜いた刹那、
それは一誠が電話で言っていた、大親友のダイアン………
一誠の大親友とやらは怪物となってしまっていた………
「イマイチだった