ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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若手悪魔会合、やっぱり新はデタラメ過ぎる

「皆、もう1度確認するわ。何が起こっても平常心でいる事。何を言われても手を出さない事。上にいるのは将来の私達のライバル逹よ。無様な姿は見せられない」

 

翌日、新と一誠が上流階級及び貴族について勉強している間、リアス逹はグレモリー城観光ツアーに行っていた

 

朝から勉強三昧だったので2人の頭はパンク寸前

 

特に新は堅苦しい事が大嫌いなので、何度か脱走にチャレンジしたが全て失敗に終わったり、詰め込み過ぎて走馬灯を5回も見たとか……

 

そしてリアス逹が帰ってきてすぐに若手悪魔との会合の場に向かい、都市で1番大きい建物に足を踏み入れた

 

かなりの上階でエレベーターの扉が開かれ、広いホールへ出た

 

通路を進んでいくと、リアスが複数の人影の中の1人を見た

 

「サイラオーグ!」

 

「サイラオーグ?サイボーグの親戚か?」

 

新が冗談混じりでそんな事を言っていると、紫色の目をした筋肉質で短髪の男が近づいてきた

 

「久しぶりだな、リアス」

 

「ええ、懐かしいわ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟(いとこ)でもあるの」

 

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

「バアルって確か魔王の次に偉い大王の名前じゃねぇか。すげぇな」

 

感心する新と驚く一誠をよそに、リアスとサイラオーグは会話を再開させた

 

「それで、こんな通路で何をしていたの?」

 

「ああ、くだらんから出てきただけだ」

 

「……くだらない?他のメンバーも来ているの?」

 

「アガレスもアスタロトも既に来ている。挙げ句ゼファードルだ。着いた早々ゼファードルとアガレスがやり合い始めてな」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

突然建物が大きく揺れ、近くから破砕音が聞こえてくる

 

「全く、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

 

リアスはすぐに駆け出し、サイラオーグも新逹もその後に続く

 

音の根源らしき大広間に着くと、両陣営に分かれた悪魔逹が睨み合っていた

 

「ゼファードル、こんな所で戦いを始めても仕方なくてはなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」

 

淡いグリーンを含んだブロンドに眼鏡をかけ、青いローブを着た女性悪魔が言い放つ

 

恐ろしげな言動をするものの、見た目は新好みの女性だった

 

「ハッ!言ってろよクソアマッ!俺がせっかくそっちの個室で1発仕込んでやるって言ってやってんのによ!アガレスのお姉さんはガードが固くて嫌だね!へっ、だから未だに男も寄って来ずに処女やってんだろう!?ったく、魔王眷属の女どもはどいつもこいつも処女臭くて敵わないぜ!だからこそ、俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」

 

下品な言葉を連発しているのは顔や体に魔術紋様の如きタトゥーを入れ、緑髪を逆立てたヤンキーっぽい男だった

 

「ここは時間が来るまで待機する広間だったんだがな。もっと言うなら、若手が集まって軽い挨拶を交わす所でもあった。ところが、若手同士で挨拶したらこれだ。血の気の多い連中を集めるんだ、問題の1つも出てくる。それも良しとする旧家や上級悪魔の古き悪魔逹はどうしようもない」

 

説明をしてくれるサイラオーグ

 

聞き入っていると、一誠の隣にいた筈の新がいつのま間にかいなくなっていた

 

「――――っ!?部長?新がいないんすけど……」

 

「えっ?新が?まさか……」

 

「な、何なんですかあなたは?いきなり割って入って、邪魔をする気?」

 

声のした方角を見てみると、案の定新が眼鏡をかけた女性悪魔に近づいていた

 

「いやいや、若手悪魔の会合だから是非挨拶したいなと思いまして。俺は竜崎新と申します。お姫様のお名前を教えていただけないかな?」

 

「……シ、シーグヴァイラ・アガレス。大公アガレス家の次期当主ですが?」

 

「シーグヴァイラ・アガレス……じゃあ、シーグヴァイラ姫と呼ばせていただきます」

 

新は紳士的な振る舞いをしながら、シーグヴァイラの手を取る

 

奇妙な立ち振舞いにシーグヴァイラは唖然としていた

 

「おいてめぇ!クズ悪魔が!人の獲物を横取りしようとしてんじゃねぇよ!ぶっ殺されてぇか!?」

 

「シーグヴァイラ姫、あそこで鳴いてるニワトリもどきは何ですか?」

 

「二、ニワトリ……!うくくっ……!」

 

新の罵倒にシーグヴァイラと眷属は思わず笑ってしまい、逆にヤンキーは湯気を噴き出しながら激昂した

 

「あぁっ!?誰がニワトリだぁ!?」

 

「コホンッ……。あれはグラシャラボラス家の凶児ゼファードルです」

 

「ゼファードルねぇ……。よしっ、お前今日からニワトリドルに改名しろ。決定〜♪」

 

「ハッハッハッハッハッハッ!リアス!お前のあの眷属は面白いな!規格外の『兵士(ポーン)』だと聞いていたが、ここまで凄いとは恐れ入った!」

 

「もう……新ってば……」

 

リアスは顔を真っ赤にして俯き、一誠逹も苦笑いした

 

そして新の『ニワトリドル』と言う名付けにシーグヴァイラ及び眷属は笑いを堪えきれなかった

 

一方ニワトリドル(笑)――――――もとい、ゼファードルは怒り心頭になっていた

 

「ゼファードル。あなたよりも、ここにいる彼の方がよっぽど紳士的で良いわ。ぷくくっ……!」

 

「笑ってんじゃねぇッ!このクソアマがぁッ!」

 

怒り狂ったゼファードルはシーグヴァイラの顔に魔力の弾を撃ち放つ

 

新は後ろを向いたまま右手に『闇皇(やみおう)の鎧』を展開し、シーグヴァイラの顔を狙った魔力の弾を拳で打ち消した

 

「なっ!?後ろを向いたままだと!?」

 

「……それはまさか、噂に聞いた『闇皇の鎧』?」

 

「ニワトリドル。女の顔を狙うとは最低だな」

 

「はぁっ?小せぇ魔力打ち消したぐらいで調子に乗ってんじゃねぇよ。クズが、次は何だ?その鎧を付けた手で俺を殴るか?」

 

ゼファードルは挑発的な物言いをするが、新は鎧を解除して拳を下ろす

 

「はっ!ビビったのかクズが!さっさと退けや!ゼファードル様の前から消え――――――」

 

ヒュッ、ドゴォッ!

 

バゴォォォンッ!ガラガラガラ………

 

ゼファードルが言い終わる前に新は顔面に膝をぶち込んで壁にめり込ませた

 

一瞬の出来事に全員が驚き、新は首を鳴らしていた

 

「あああああああ……新ぁぁぁぁぁぁっ!さっきあれ程手を出さないでって言ったのに!何をしてるのよっ!?」

 

「え?だから、手は出さずに膝を出したんだけど?」

 

「そう言う問題じゃないでしょう!?」

 

「おのれ貴様!」

 

「よくもゼファードル様を!」

 

「下級悪魔の分際で!」

 

主、ゼファードルをぶっ飛ばされた眷属が飛び出しそうになるが、サイラオーグが割って入る

 

「主を介抱しろ。まずはそれがお前らのやるべき事だ。これから大事な行事が始まるんだ、主をまずは回復させろ」

 

サイラオーグの一言にゼファードル眷属は動きを止め、壁にめり込んだ主を介抱する

 

シーグヴァイラは関心を持った様子で新に近づいた

 

「あなた、やりますね。ゼファードルを一撃で退けるなんて……少し胸が弾んでしまいました」

 

「礼には及ばねぇよ、お姫様」

 

「ハハハッ。俺が止めようとしてたんだが、すっかり出番を取られてしまったな。今のは良い膝だったが、もう少し言葉というものを選ぼう。ニワトリドルは酷い」

 

「え?そうかな?あのヤンキーには妥当だろ」

 

サイラオーグは新の発言に再び笑う

 

リアスはズカズカと近づき、新の頬を強くつねった

 

「全く、どうしてあなたは場の空気を読まないのかしら……!」

 

いひゃいいひゃいいひゃい(痛い痛い痛い)まりょふほふぉへふはぁ(魔力を込めるな)!」

 

「まぁまぁ、リアス。説教は後にしたらどうだ。今広間を片付けさせるから。おい誰か!修復作業を手伝ってくれ!」

 

その後、リアスの話でサイラオーグが現若手悪魔のナンバー1だと言う事が判明した

 

 

―――――――――

 

 

「先程は失礼しました。改めて自己紹介を。私はシーグヴァイラ・アガレス、大公アガレス家の次期当主です」

 

修復作業が終わり、ゼファードルとその眷属を抜かした者達でテーブルを囲んでいる

 

――――と言っても主は席に着き、眷属は後方で待機している感じである

 

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

 

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 

「俺はサイラオーグ・バアル。大王バアル家の次期当主だ」

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

 

お茶を飲んでいた少年も優しげな声で自己紹介をする

 

「グラシャラボラス家は先日、御家騒動があったらしくてな。次期当主とされていた者が不慮の事故死を遂げたばかりだ。先程のゼファードルは新たな次期当主の候補と言う事になる」

 

サイラオーグが説明してくれた

 

あんなヤンキーが次期当主候補だと先行きが不安である

 

ここに集まった悪魔の家柄は名高い名門ばかり

 

グレモリーがルシファー、シトリーがレヴィアタン、アスタロトがベルゼブブ、グラシャラボラスがアスモデウス、そして大王バアルと大公アガレス

 

超豪華なドリームメンバーが揃っていた

 

「おい兵藤。間抜けな顔を見せるなよ」

 

匙が嘆息しながら一誠にそう言った

 

「だってよ、上級悪魔の会合だぜ?緊張するじゃないかよ。皆強そうだ」

 

「何言ってんだよ。お前は赤龍帝(せきりゅうてい)だぞ?竜崎みたいにもう少し堂々とすれば良いじゃないか」

 

「そんな事言ってもよ……。って、なんで匙がキレてんだよ?」

 

「眷属悪魔はこの場で堂々と振る舞わないといけないんだ。相手の悪魔逹は主を見て、下僕も見るんだからな。だから、お前がそんなんじゃ先輩にも失礼だ。ちったぁ自覚しろ、お前はグレモリー眷属で赤龍帝(せきりゅうてい)なんだぞ」

 

匙から強面(こわもて)に意見された一誠はちょっと驚いた

 

それをよそに新はアガレス家の姫、シーグヴァイラに呼ばれ隣へ座る

 

「竜崎新さん、でしたね?是非『闇皇(やみおう)の鎧』とやらをもう少し見せていただけないかしら?その力と、あなた自身にも興味が湧いてきました」

 

「え、いや〜。お姫様の頼みとあれば断れないな。良いですよ」

 

新は闇皇(やみおう)に姿を変え、マントを(ひるがえ)しながらポーズを決める

 

「これが噂に聞く『闇皇(やみおう)の鎧』か……。禍々(まがまが)しい姿に血が(たけ)ってくる」

 

「私達悪魔の天敵とも言える闇人(やみびと)の力、この力を持った者を眷属にしているグレモリー家が羨ましいわ」

 

「恐れ入ります、シーグヴァイラ。けれど、彼を眷属にするには相応の覚悟がいりますよ?」

 

気になるシーグヴァイラにリアスは耳打ちする

 

すると、シーグヴァイラは顔を真っ赤にして胸を押さえた

 

「そ、それは本当なの……?」

 

「えぇ、本当です。私も聞いた当初は同じ反応でした」

 

ソーナ会長も若干頬を染めながらシーグヴァイラに言う

 

「――――っ?2人してどうした?顔が赤いんだけど」

 

「い、いえ……あの、出来ればそう言う事はお控えになった方が宜しいかと……。私には、まだ心の準備と言うものが……」

 

しどろもどろなシーグヴァイラに新は疑問符を浮かべた

 

 

―――――――――

 

 

ついに行事とやらが始まり、若手悪魔の面々は異様な雰囲気が漂う場所に案内された

 

高い所に置かれた席には悪魔のお偉いさんが座っており、もう1つ上の段にはサーゼクス・ルシファー

 

隣にはセラフォルー・レヴィアタンが座っていた

 

その隣にはベルゼブブとアスモデウスも座っており、新逹は高い位置から見下ろされている状態にある

 

リアスを含めた若手悪魔6人が1歩前に出た

 

尚、新がブッ飛ばしたゼファードルも復活していたが、顔には生々しい膝の痕が残っていた

 

「よく集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するため、集まってもらった。これは一定周期ごとに行う若き悪魔を見定める会合でもある」

 

初老の男性悪魔が手を組みながら威厳の声で言い、ヒゲを生やした悪魔が「早速やってくれたようだが……」と皮肉げに言った

 

首謀者は殆ど新である

 

「キミ逹6名は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらおうと思う」

 

「我々もいずれ『禍の団(カオス・ブリゲード)』や闇人(やみびと)との(いくさ)に投入されるのですね?」

 

「それはまだ分からない。だが、出来るだけ若い悪魔逹は投入したくはないと思っている」

 

「何故です?若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なお何も出来ないとなれば―――――」

 

「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし無謀だ。何よりも成長途中のキミ逹を戦場に送るのは避けたい。それに次世代の悪魔を失うのはあまりに大きいのだよ。理解して欲しい。キミ逹はキミ逹が思う以上に、我々にとって宝なのだよ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」

 

サーゼクス・ルシファーの言葉にサイラオーグは一応の納得をしたが、不満がありそうな顔をしていた

 

だが、これはやはりサーゼクスなりの優しさだと言えよう

 

「最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」

 

サーゼクスの問いかけにサイラオーグは1番最初に答えた

 

「俺は魔王になるのが夢です」

 

威風堂々と迷い無く言い切ったサイラオーグ

 

その目標にお偉いさん逹は感嘆の息を漏らした

 

「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

 

「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」

 

再び言い切ったサイラオーグに続き、リアスも今後の目標を言う

 

「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝する事が近い将来の目標ですわ」

 

リアスの目標を初めて聞いた新と一誠は、その目標に支援する事を決めた

 

そして最後はソーナ会長だった

 

「冥界にレーティングゲームの学校を建てる事です」

 

なかなかの目標に新と一誠は感心していたが、お偉いさん逹は眉根を寄せていた

 

「レーティングゲームを学ぶ所ならば、既にある筈だが?」

 

「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行く事が許されない学校の事です。私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔ての無い学舎(まなびや)です」

 

差別の無い学校を建てる

 

これからの冥界にとって良い場所になるかもしれない

 

その目標に感心し、匙も誇らしげに聞き入っていたのだが……

 

『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!』

 

突如お偉いさん逹の声が会場を支配し、嘲笑を浮かべながら口々に言う

 

「それは無理だ!」

 

「これは傑作だ!」

 

「なるほど!夢見る乙女と言うわけですな!」

 

「若いと言うのは良い!しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がその様な夢を語るとは。ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったと言うものだ」

 

新と一誠は理解出来なかった

 

何故ソーナ会長がバカにされているのかを……

 

「……今の冥界がいくら変わりつつあるとしても、上級と下級、転生悪魔、それらの差別はまだ存在する。それが当たり前だと未だに信じている者逹も多いんだ」

 

祐斗の説明で新は大雑把に理解した

 

"こいつらは以前会ったライザー・フェニックスと同じ様な考えを持っているのか"と

 

新の表情が険しくなる中、ソーナ会長が真っ直ぐに言った

 

「私は本気です」

 

姉のセラフォルーもうんうんと力強く頷いていたが、お偉いさんは冷徹な言葉を口にする

 

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出だされるのが常。その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても変えて良いものと悪いものがあります。全く関係の無い、たかが下級悪魔に教えるなどと……」

 

その一言に匙は黙っていられなくなった

 

「黙って聞いてれば、なんでそんなに会長の――――ソーナ様の夢をバカにするんスか!?こんなのおかしいっスよ!叶えられないなんて決まった事じゃないじゃないですか!俺達は本気なんスよ!」

 

「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の(しつけ)がなってませんな」

 

「……申し訳ございません。あとで言ってきかせます」

 

「会長!どうしてですか!この人逹、会長の、俺達の夢をバカにしたんスよ!どうして黙っているんですか!?」

 

「サジ、お黙りなさい。この場はそういう態度を取る場所ではないのです。私は将来の目標を語っただけ。それだけの事―――――」

 

「チッ」

 

突如会場に響いた舌打ち

 

その音の根源は―――――――険悪な表情をした新だった

 

新はズカズカと扉の方へ進んでいく

 

「ちょ、ちょっと新くん?どうしたんだい?突然何処へ―――――」

 

「何処って、屋敷に帰るんだけど?」

 

その言葉にサーゼクスやセラフォルー、若手悪魔全員が驚いた

 

新は険悪な顔で更に言い放つ

 

「俺もう帰るわ。他人の夢をバカにする様な老害共の話なんざ、これ以上聞けねぇわ。つーか聞きたくねぇ」

 

「ちょっと新!?何を考えて――――――」

 

「待たんか下級悪魔。貴様、今の自分の立場が分かっているのか?これ程までに(しつけ)のなってない下級悪魔がいるとはな」

 

リアスが止めようとしたところで、お偉いさんの1人がドスを効かせた声で言う

 

新は全くビビる様子を見せずに、その方向を向く

 

「なにが下僕の(しつけ)がなってねぇだよ。あんたらの方がよっぽど失礼だ。真剣に語った夢や目標を踏みにじりやがって、それが先人悪魔のする事か。旧家の顔を潰す事になるとかどうとか言ってたけどよ、俺から見れば……てめぇらのその態度こそが恥だな」

 

新の発言にお偉いさん逹が怒りの表情を見せ始めた

 

「伝統や誇りにすがり付くのは構わねぇよ。だがな、それだけに固執し過ぎて他勢力―――――闇人(やみびと)に滅ぼされたら本末転倒だろうが。そういうのを人間界でなんて言うか教えてやりましょうか?バブル世代って言うんだよ。自分は偉いから威張って当然、偉いから差別するのも当然って考えが頭に執着してやがる老害。もしこれが人間界の就職面接だったら、俺は速攻で蹴ってますわ。そんな会社で働きたくねぇもん」

 

「貴様ぁ!下級悪魔の分際で我らに意見するのか!」

 

「意見も何も、俺はおかしい事をおかしいと言ってるだけ。そして老害共の話を聞きたくないから出ていくだけだ。話を聞きたくない奴がここにいても邪魔なだけだろ?だから、俺はここを出て屋敷に戻る。後はどうぞ、ご勝手に話を進めてくださいや」

 

投げやりな敬語で新は扉を開けようとした

 

「新くんの言う通りだよ!だったら、うちのソーナちゃんがゲームで見事に勝っていけば文句も無いでしょう!?ゲームで好成績を残せば叶えられる物も多いのだから!」

 

新が退場する直前にセラフォルー・レヴィアタンが怒りながら提案してきた

 

「もう!おじさま逹はうちのソーナちゃんをよってたかっていじめるんだもの!私だって我慢の限界があるのよ!あんまりいじめると私がおじさま逹をいじめちゃうんだから!」

 

セラフォルーが涙目で物申し、お偉いさん逹はその反応に困っていた

 

ソーナ会長は恥ずかしそうに顔を手で覆い、新はグッとセラフォルーに向けて親指を立てた

 

セラフォルーがそれに気付き、新にピースサインを返した

 

「丁度良い。ではゲームをしよう。若手同士のだ。リアス、ソーナ、戦ってみないか?」

 

2人は顔を見合わせ、目をパチクリさせて驚く

 

サーゼクスは構わず続けた

 

「元々、近日中にリアスのゲームをする予定だった。アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったものだからね。だからこそ丁度良い。リアスとソーナで1ゲーム執り行ってみようではないか。対戦の日取りは、人間界の時間で8月20日。それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。詳細は後日送信する」

 

サーゼクスの決定により、リアスとソーナ会長のレーティングゲームが開始される事になった

 

 

―――――――――

 

 

「新!あなたってヒトは何度言ったら分かるの!少しは考えて行動しなさい!」

 

「いや〜、わりぃわりぃ。あまりにも老害共の言い草がムカついたもので」

 

会合が終わり、リアスは先程の新の行動に説教していた

 

お偉いさん逹に喧嘩を売る様な言動をしたのだから咎められるのは当然で、一誠逹は生きた心地がしなかったらしい

 

「リアス。お前の眷属は本当に面白いな!途中で帰るなんて言い出したから、流石の俺もビックリしたぞ!」

 

「笑い事じゃないわよサイラオーグ!1歩間違えたら大変な事になってたのよ!?」

 

「過ぎた事をもう言ってやるな。確かにそいつの言葉には一理ある。夢をバカにして良い権利なんて誰にも無い。あの後、サーゼクス様がその事を話してくれたお陰で他の方々も理解し、自粛してくださった。上級悪魔の方々に、あそこまで正面から言った眷属なんて初めて見た」

 

サイラオーグが腕を組みながら感嘆するように頷く

 

「もしかしたら、竜崎新は悪魔の歴史に残る様な男になるかもしれない。そうなったら名誉な事じゃないか」

 

「真逆の意味で歴史に残る言動よ!はぁ……何だか頭が痛くなってきたわ」

 

リアスは額を押さえてフラついた

 

新はそんな事はお構い無しに、トイレの場所を聞いてそこに向かう

 

リアス一行は先に帰ってしまった

 

数分後、用を足し終えた新がトイレから出て、しばらく歩いてるとソーナ会長に遭遇した

 

「竜崎くん……」

 

「おぉっ、ソーナ会長。どうしたんすか?」

 

「あの……さっき私逹の事で、あんな行動を起こしたんですか?」

 

ソーナの問いに新は当然の様に返答する

 

「あぁ。平気で他人の夢を踏みにじる様な奴に遠慮なんかする必要ねぇかなと思って。それにあのお偉いさんも、自分逹の伝統と誇りを闇人(やみびと)にバカにされたらキレる筈だ。そういう事も言いたかったんだが、頭に血が(のぼ)り過ぎて忘れてた」

 

新は気まずそうに頭を掻いて反省する

 

「竜崎くん……私の、私達の夢をどう思いますか?」

 

「とても良い目標だ。差別を無くした学舎を作るってのは、今の冥界にとって大きな1歩になる。誰の前でも誇れる夢だ」

 

「ありがとうございます……。でも、行動は奇抜過ぎでしたよ?」

 

「ハハッ……まぁ、俺は他人が思ってる程大人じゃないんでね。少しは自重するわ」

 

「新く〜ん!」

 

新が後ろを振り向くと、セラフォルーが抱きついてきた

 

頭をグリグリ擦り付けて嬉しさを表現している

 

「お姉様!?」

 

「新くん☆ソーナちゃんの為に怒ってくれたんだよね!私すっごく嬉しかったよ☆」

 

「えっ、ま、まぁ……そう言いますかね。ってか、四大魔王の人がこんな事してて良いんすか?さっきから胸が当たってるから、俺としては嬉しい」

 

「良いの良いの☆私、今のでキュンとしちゃった。もう今すぐにでも新くんが欲しいぐらい!」

 

「それは眷属としてすか?」

 

「違う。男の子として……んちゅっ☆」

 

セラフォルーが新にキスした

 

しかも、頬ではなく唇に……

 

「おおおおおおお姉様!?竜崎くんに何を……!?」

 

「んっ……ちゅむ、ちゅぱぁ……れろぉ。ふふっ、私のファーストキスあげちゃった☆」

 

「いやいやいやいやいや!流石にこれはダメだろ!?何やっちゃってまんの!?」

 

「だってだって、本当に嬉しかったんだもん☆それにソーナちゃんを嫉妬させちゃおうかな〜って♪ソーナちゃんが欲しくないって言うんだから」

 

「だ、誰もそんな事は言っていません!それに!竜崎くんはリアスの眷属ですから!欲しいとかそう言うのは―――――」

 

「もうっ、素直になってよソーナちゃん☆えいっ!」

 

セラフォルーがソーナ会長の背後に回り込み、彼女の背中を押した

 

思ったより力が強く、ソーナ会長は新を巻き込む形で倒れてしまった

 

ムニュッ………

 

「「あ………」」

 

新の手がソーナ会長の乳房(おっぱい)を鷲掴みにしてしまった

 

自己主張控えめなバストの触り心地はとても良く、新も思わず生唾を飲みながら指を動かしてしまう

 

「りゅ、竜崎く――――――ひゃんっ……あ、ダメ……早く退いてください……」

 

「あ〜っと、こりゃ失敬」

 

新はすぐに退いて、ソーナ会長は顔を真っ赤に染めて胸を押さえる

 

「お姉様っ!いきなり何をなさるんですか!竜崎くんに……む、胸を触られてしまったじゃないですか!」

 

「女の子ならそれぐらいのアピールは当然だよ☆ソーナちゃん、ボンヤリしてたら私が新くんを取っちゃうよ?」

 

「で、ですから何故そう言う話になるんですか!?」

 

「新くん。私とソーナちゃん、どっちにエッチな事がしたい?勿論、姉妹一緒にってのも良いよ☆」

 

「話を聞いてください!お姉様!」

 

「まぁ、出来ればお二人一緒に」

 

「竜崎くんも真顔で答えないでください!」

 

今日は色んな意味で大変な会合となってしまった……


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