ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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いよいよ4章編もこの回でラストです。


光帝の蝙蝠と愉快(?)な仲間達

「あ、新と同じ鎧……でもない……?けど、蝙蝠っぽい」

 

「あぁ。だが、あっちのは金色だし目も(あか)い。あんな鎧は初めて見た……何なんだあいつは?」

 

皆が視線を集中させる中、黄金に輝く蝙蝠は異形の剣を持ちながら村上に歩み寄っていく

 

剣の(つば)が口を開いた狼の頭部となっており、頭のてっぺんから湾曲した刀身が伸びている

 

「いくよ。魔狼剣(まろうけん)フェンリオス」

 

黄金の蝙蝠が剣の刀身に魔力を込めていく

 

狼の目が光り、金色のオーラが現れる

 

「『光帝(こうてい)の鎧』……。奪われた『闇皇(やみおう)の鎧』と同様に、我ら闇人(やみびと)の元から消えたもう1つの力。貴様はやはり……三嶋(みしま)の子孫かッ!」

 

「そうだよ。でも名字は違う。それに、教えてと言われても教えられない。あなたは僕が狩るから」

 

「裏切り者の末裔がほざくな!『古代樹の刀剣(ユグドラシル・ブレイド)』!」

 

村上が両腕を広げると、周りから何本もの樹木が生え、刃を向けながら襲い掛かる

 

黄金の蝙蝠は居合いの様な構えを取り―――――――

 

ズバババババババッ!

 

向かってきた古代樹の刃を1本残らず伐採した

 

「ぬぅぅぅっ!『薔薇の大蛇(ローズ・スネイク)』!『薔薇の荒鷲(ローズ・イーグル)』!『巨躯の薔薇(ギガント・ローズ)』!」

 

村上が薔薇の花びらで蛇と鷲の大群、ひとつ目の巨大な怪物を作り上げた

 

村上が手を前に(かざ)すと薔薇の怪物達は一斉に向かっていった

 

黄金の蝙蝠は冷静に回避していくが、数が多いせいか……攻撃を仕掛けられない

 

「ふっ、どうだ?これだけ多くの攻撃を回避し切れるか?」

 

「それ程疲れる作業じゃないよ」

 

「減らず口を。たった1人で何が出来ると言うのだ!」

 

「言った筈だよ?僕達はあなたを狩る……と。ふっ!」

 

黄金の蝙蝠が剣鍔(けんつば)の狼に魔力を流していくと、狼の眼が点滅を始めた

 

そして剣を水平にして、口の位置に狼の頭部が来る様に構える

 

「何をしようと無駄だ!殺れッ!」

 

薔薇の花びらで作られた蛇、鷲、巨躯の怪物が直前まで迫ってきた

 

「ハァッ!」

 

ウオォォォォォォォォォォォオオオオオオンッ!

 

光帝(こうてい)が強い声を発したと同時に狼の眼が強い光を放ち、口から超音波が出される

 

村上が産み出した怪物達は超音波によって崩壊し、村上にもダメージを与えていく

 

「ぐあぁぁぁぁぁああああああっ!な、何だこの超音波はっ……!?」

 

魔狼剣(まろうけん)フェンリオス、全てを切り裂く刃となれ」

 

再び魔狼剣(まろうけん)の刀身に魔力が注入され、剣は金色のオーラを放つ

 

剣を逆手に持ち替え、上空へ飛び上がる

 

「おのれぇっ……!肉体に負担は掛かるが仕方無い!超魔身(ちょうましん)ッ!」

 

村上が魔人態(まじんたい)から再び超魔身態(ちょうましんたい)に変異し、背中から無数の薔薇を出して串刺しにしようと鞭の様に伸ばす

 

「往生しなさいッ!」

 

何処からか聞こえてくる女性の声と共に水色のオーラが薔薇を凍らせた

 

「なにっ!?私の薔薇が!?」

 

村上は声がした方向を向く

 

視線の先には巨大な氷の斧を構える女性がいた

 

腰辺りまでありそうな純白の長髪と琥珀(こはく)色の瞳と、異国人の様な風貌を醸し出していた

 

「しっかり決めなさい!(わたる)ッ!」

 

「ありがとう祐希那(ゆきな)

 

逆手に持った魔狼剣(まろうけん)の輝きが強くなっていき、凍結した薔薇を蹴散らしながら急降下する

 

「こんな奴らに私が殺られると言うのかッ!?認めん!私は認めないぞォォォォォォォォッ!おのれぇぇぇぇぇっ!三嶋の子孫めェェェェェェッ!」

 

村上が全身から(いばら)を伸ばして1本の巨大な螺旋槍を作るが……

 

ザンッ!

 

金色の戦士は逆手に持った魔狼剣(まろうけん)で、螺旋槍ごと超魔身態(ちょうましんたい)の村上を斜めに斬り払った

 

左肩からズレ、血を噴き出しながら上半身が地に落ちる

 

残った体も仰向けに倒れ、2つの肉塊は煙の様に消滅していった……

 

「ふうっ。流石は『チェス』の『ポーン』だね。少し苦戦しちゃった」

 

「気をつけなさいよ渉。『チェス』の1人を倒したと言ってもこいつは組織じゃ末端。まだ上には5人もいるのよ?」

 

「うん。これから気をつけるよ」

 

「これからこれからって……渉!」

 

「お取り込み中スマねぇけどよ、お前ら何者なんだ?」

 

「あ、自己紹介がまだだったね」

 

弱い閃光が放たれた直後に黄金の鎧が解除される

 

光帝(こうてい)の鎧の下は肩まで伸びた茶髪に旋毛(つむじ)辺りからピョコンと出るアホ毛、深紫色の目、中性的な顔立ちをした者だった

 

「おぉっ!美少女じゃないかッ!隣の女の子もなんて可愛――――ブギャアッ!」

 

一誠が歓喜に震えようとした瞬間、氷の斧を持っていた美少女から蹴りが飛んできた……

 

一誠を殴り飛ばした琥珀(こはく)髪の少女は手を消毒しながら言う

 

「気持ち悪い目で見るんじゃないわよ!変態!ホモ!(わたる)(れっき)とした男の子よ!」

 

蹴られた一誠は目玉を飛び出させた

 

新は最初から気付いていたのであまり驚いていない

 

「マ、マジで……?お前、男なの……?」

 

「うん、僕の名前は八代渉(やしろわたる)。ちゃんとした男の子だよ?今君を蹴ったのは高峰祐希那(たかみねゆきな)。こっちは正真正銘の女の子さ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああんっ!」

 

一誠はギャスパーの時と同じ様に、見た目で性別を騙された悔しさで泣き崩れた

 

「また騙された!何でだよ!何でこんな可愛い顔をした奴が男なんだ!男だなんて!この顔の下にチ◯コが生えてるなんて!」

 

「渉の前で下ネタ言うな!このホモゴキブリ!」

 

「やめてやってくれ。一誠は最近、うちの部員の祐斗やギャスパーとのホモ疑惑が目立ってるんだ。これ以上ツラい現実を浴びせたらマジでホモ世界に走りかねない(笑)」

 

「本当にホモだったの!?キモッ!来ないで!その人らだけじゃなく、渉まで犯す気!?」

 

「ねぇ祐希那。そのホモってどういう意味?」

 

「傷心の男の前でホモホモ言うなーッ!もう俺の心のライフは0なんだよぉぉぉぉぉぉっ!」

 

一誠は涙が枯れるまで泣き続けた……

 

 

――――――――

 

 

「しかし、驚いたぜ。まさか俺の『闇皇(やみおう)の鎧』の他にも鎧が存在していたなんてな」

 

「僕達は世界中を放浪しながら、人知れず闇人(やみびと)を狩っていたんだ。ある日『闇皇(やみおう)の鎧』の噂を聞いて、最近日本に来ました。そこで運良く『チェス』の1人と交戦している君達を見つけたって訳さ。そして、この鎧―――――『光帝(こうてい)の鎧』は僕の父さん、三嶋昂(みしまのぼる)が亡くなる直前に宿してくれた遺品とも言える物なんだ」

 

アーシアの神器(セイクリッド・ギア)で回復したリアス一行は渉の話を聞き入っていた

 

渉は自分の胸に手を当て、『光帝(こうてい)の鎧』を持った経緯(いきさつ)と自分達が現在している行動について話す

 

「『光帝(こうてい)の鎧』か……。じゃあお前の二つ名は差し詰め、光帝(こうてい)の蝙蝠ってところだな。光と闇は表裏一体って言うし」

 

「ちょっと、渉に変な事吹き込まないでよね。だいたい何?そのネーミングセンス、だっさ」

 

「何かやたらと噛み付いてくるな、この女は。さっきも俺の気配を消したタッチを(かわ)しやがったし」

 

「私はね、エロい奴が大っっっっっっっっっ嫌いなのよ!24時間年中無休でエロい事考えてる様な奴は死ぬべきね。跡形もなく」

 

「だそうだ、一誠。お前は死んだ方が良いって」

 

「何で俺だけなんだよ!新なんか俺よりエロいくせにッ!」

 

新と一誠は押し付け合う様な喧嘩を始めたが結果は新の圧勝

 

新は更に気になる事を聞き出す

 

「そういえば、さっき村上の薔薇を凍らせた斧――――――あれは神器(セイクリッド・ギア)なのか?」

 

「そうだよ。祐希那(ゆきな)神器(セイクリッド・ギア)―――――『全凍結の氷斧(フリズド・クレバス)』。炎や風、形の有無にかかわらず、自分がイメージした通りに対象物を凍らせる神器(セイクリッド・ギア)なんだ。普通の武器としても使えるよ」

 

「初めて聞く神器(セイクリッド・ギア)ね……」

 

「部長にも知らない神器(セイクリッド・ギア)があったんですか?」

 

「えぇ。私だって全ての神器(セイクリッド・ギア)を知っている訳じゃないわ」

 

リアスの意外な事情に新と一誠はへぇ〜っとハモる

 

「あとさ、村上がお前を"三嶋の子孫"って言ってたんだが……お前の名字は八代だったろ?なんで名字が違うんだ?」

 

「僕は闇人(やみびと)と人間の混血児で、八代は僕のお母さんの名字なんだ」

 

「「「「「「「「「闇人(やみびと)と人間の混血児っ!?」」」」」」」」」

 

驚きの事実を聞かされ、綺麗にハモったリアス一行

 

渉は少しビックリしたが、気を取り直して自分の出生について話し始める

 

「僕の父さんは闇人(やみびと)だったんだけど、昔から争いを好まない特異な性格だったらしいんだ。他の闇人(やみびと)は自分達以外の魔族を滅ぼそうとしても、父さんだけは反対していた。『初代キング』の怒りを買ってしまい、殺されそうになったところを竜崎総司さんに助けられて、悪魔や天使、堕天使の皆さんと共に『初代キング』を封印した……」

 

「『初代キング』の封印に、お前の父親も絡んでいたのか……初耳だ」

 

「『初代キング』を封印した後、父さんは八代早雪(やしろさゆき)―――――お母さんと出会って恋に落ち、2人の間に僕が生まれた。父さんは『初代キング』を封印する代償として、寿命をかなり削り取られ―――――僕が10歳を迎える誕生日に亡くなった……。その時に僕が闇人(やみびと)と人間の混血児だと言う事を知らされたんだ」

 

予想以上の重い話にリアス達は無言になってしまう

 

「でもさ、全ての闇人(やみびと)が殺戮や支配を望んでいる訳じゃない事を同時に知れました。人間や他の種族を愛したり、共存したりする事だって出来る筈。父さんもそう願っていた。だから僕は、父さんの夢を叶えてあげたいんだ。その為にも中枢となる『チェス』を倒して――――闇人(やみびと)を変えてあげたい」

 

真剣な眼差しで言い放つ渉

 

その目標に、新はなるほどなと頷く

 

闇人(やみびと)でありながら争いを好まず、平和を願った男の子孫か……。お前、なんか気に入っちまったよ」

 

「俺もだよ。闇人(やみびと)の中にもこんな良い奴がいるんだ。きっと出来る筈だ!」

 

新と一誠は渉に握手を求め、渉はそれに喜んで応じた

 

「でも、僕達は君達と共には行動出来ないよ?祐希那(ゆきな)の頼みを聞かなきゃいけない時期なんだ」

 

「あの女の頼み?何だよそれは?」

 

「……私の主を殺した闇人(やみびと)を見つけて殺すのよ」

 

ドスの効いた声音で口を開いた祐希那(ゆきな)

 

その言葉の意味に、リアスはいち早く勘づいた

 

「あなた、もしかして誰かの眷属悪魔だったの?」

 

「……そうよ。私は元々『戦車(ルーク)』の転生悪魔。3年前に、いきなりやって来た闇人(やみびと)に主と他の眷属達を殺されたのよ……!」

 

祐希那(ゆきな)はその当時の全貌をリアス達に聞かせた

 

3年前に突如、屋敷にやって来た1人の闇人(やみびと)

 

まだ眷属になったばかりの祐希那(ゆきな)は、その闇人(やみびと)の力と残虐ぶりに歯が立たず、主と他の眷属達を守れなかった……

 

全身を血で染めた闇人(やみびと)は、(かろ)うじて生きていた祐希那(ゆきな)にトドメを刺そうとした

 

その時に、闇人(やみびと)を狩り回っていた渉に助けられ一命を取り留めたが……主と眷属達を守れなかったショック、自分の不甲斐なさから精神が崩壊してしまった

 

それ以来、渉が付きっきりで看病した

 

1年と言う長い治療期間を経て祐希那(ゆきな)は心を取り戻し、渉に戦いを教わりながら一緒に闇人(やみびと)を狩り回った

 

自分の主と仲間を殺した闇人(やみびと)への復讐を誓って……

 

「……酷い話ね」

 

「あの目だけは忘れない……忘れられないわ……!殺しを楽しむようなゲスな目!奴を殺さない限り、私や主、仲間達の無念は晴らせない!」

 

祐希那(ゆきな)は拳を握りながら怒りを(あらわ)にした

 

壮絶な過去を聞いて、一誠もその闇人(やみびと)を許せなかった

 

「殺しを糧に生きてる闇人(やみびと)か……。あのクソ神父よりゲス野郎だな」

 

「何か情報を掴んだら教えて欲しい。少しでも、どんな小さな事でも良いから」

 

「あぁ、良いぜ。これ以上頼もしい味方はいないからな」

 

新は渉と携帯番号を交換し合い、その番号を部員全員に送信した

 

「じゃあ、僕達はもう行くよ。総司さんにもよろしく伝えてね」

 

「あ、あぁ。そっちも頑張れよ」

 

渉は『光帝(こうてい)の鎧』を装着し、祐希那(ゆきな)をお姫様抱っこしながら空へ飛び立った

 

「新、なんか俺さ……闇人(やみびと)にもあんな奴がいてホッとしたよ。『2代目キング』も、何だかんだで仁義って物がありそうでさ」

 

「そうだな。俺達も少しは見習わないとな」

 

その後、新達は魔方陣の中に入り姿を消した

 

 

―――――――――

 

 

「ねぇ渉。あんなエロい奴らを信じる気?」

 

「勿論だよ。それに総司さんの息子―――――竜崎新さんが『闇皇(やみびと)の鎧』の所持者で良かった。いずれまた会って、助けてあげたいな。総司さんが父さんにしてくれたみたいに」

 

「はぁ……渉。友達は選ばないといけない物だって知ってる?」

 

『そうそう。あたしも少し心配になってきたわ。渉って人との免疫力が皆無なのよね』

 

「ご、ごめん祐希那(ゆきな)、フェリス。次からは気をつけるよ」

 

「『その言葉は何回も聞いたし飽きた』」

 

「うぅっ……」

 

 

―――――――――

 

 

「キヒヒッ。見事に殺られちゃったね〜?『ポーン』の村上さん?命を2つ持ってなかったらとっくに死んでたよ〜?」

 

「『ビショップ』か……弁解する気も起こらない。まさか三嶋の子孫が介入してくるとは思わなかった……」

 

「キャハハハハハ!それに君の超魔身(ちょうましん)もまだ未完成だからね〜♪少しは節度を守らないとぉ、本当に肉体が崩壊しちゃうよ?」

 

「……取り合えず恩にきる」

 

「あっ、あとついでなんだけどぉ、君の他にも2人『ポーン』の称号を与えたから♪」

 

「……っ!?『ポーン』は私1人では無いのか!?」

 

「今までと同じじゃあ奴らには勝てないよ♪2人とも去年入ったばかりの新参者だけど、少なくとも君よりは互角かそれ以上の実力を持っているから、文句は言えない筈だよ?」

 

「くっ……!だが、まぁ良い。組織の拡大は我々にとって重要だからな」

 

「キヒヒッ。話が分かる人は長生きするよ〜♪それからさぁ、今からカプリンチョとクリームソーダ買いに行かない?勿論、村上さんの奢りで♪ボクが運んであげてるんだから、それぐらいの礼は貰わないと」

 

「……手痛い出費になりそうだ」




4章編終了しましたぁ!次回から5章に突入します

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