「―――――さて、行くわよ」
部室に集まったオカルト研究部員はリアスの言葉に頷く
今日は三大勢力が集まって会議を行う日
会談は駒王学園の新校舎にある職員会議室で行う
既に各陣営のトップ逹は新校舎の休憩室で待機しているらしい
学園も強力な結界に囲まれているので誰も中へ入れなくなり、会談が終わるまで外には出られない
新はポリポリと頭を掻き、一誠は協議が決裂したりしないかと気が気でなかった
『ぶ、部長!み、皆さぁぁぁぁぁぁん!』
部室に置かれた段ボールから聞こえてくる声
その声の主は引きこもりヘタレヴァンパイアことギャスパーである
時間停止の
そんな訳で、彼は留守番をする事になった
「ギャスパー、おとなしくしていろよ?部室に俺の携帯ゲーム機置いていくから。それで遊んでいて良いし、お菓子もあるから食べても良い。紙袋も置いていくから寂しくなったら存分にかぶれ」
「は、はい、イッセー先輩……」
「よし」と一誠は頷いて部室を最後に出た
―――――――――
「失礼します」
リアスが会議室の扉をノックしてから入り、新逹も後に続く
眼前には豪華なテーブルがあり、それを囲む様に各陣営のトップ逹が座っていた
悪魔側にはサーゼクス、レヴィアタン、給仕係としてグレイフィア
天使側はミカエルと女性天使
堕天使側には黒い翼を12枚生やしたアザゼルと『
大事な会議だけあって、アザゼルやレヴィアタン、サーゼクスは皆装飾が施された衣装を着ていた
「私の妹と、その眷属だ」
サーゼクスが他の陣営に紹介する
コカビエル襲撃についてミカエルは礼を言ったが、アザゼルは「悪かったな、俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」と、あまり悪びれた様子を見せなかった
「そこの席に座りなさい」
サーゼクスの指示を受け、壁側に設置された椅子に向かう
その席の1つには既にソーナ会長が座っていた
その隣にリアスが座り、その横に新、朱乃、祐斗、一誠、アーシア、ゼノヴィア、小猫と順番に座った
「全員が揃ったところで会談の前提条件を1つ。ここにいる者逹は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」
ソーナ会長は事前にリアスか姉のセラフォルー・レヴィアタンから知らされたのだろう
特に驚いてる様子はなかった
普段通りにしているグレイフィアも知っていたらしい
「では、それを認知しているとして、話を進める」
サーゼクスの一言で三大勢力の会談が始まった
―――――――――
「と言う様に我々天使は―――――」
「そうだな、その方が良いかもしれない。このままでは確実に三勢力とも滅びの道を―――――」
会談が進むにつれて、新の眠気が増進されていく
欠伸を堪えるものの、目は若干閉じかけていた
そして眠気に耐えきれなくなり、普通の人間には分からない様にうたた寝をする
途中でリアスとソーナ会長、朱乃が立ち上がり、先日のコカビエル戦での一部始終を各陣営に話した
そこで新の『
多くが三大勢力に大きな影響を及ぼすモノばかりだった
「――――以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件の報告です」
「ご苦労、座ってくれたまえ」
「ありがとう、リアスちゃん☆」
サーゼクスの一言でリアスは着席
セラフォルー・レヴィアタンもリアスにウインクを送った
「ZZZ……ZZZ……」
「……あの、新くん?」
「マジかよこいつ。三大勢力のトップを眼前にしておきながら爆睡してやがる」
「もう、この子は……新、起きなさい!」
バシンッ!
「いでぇっ!っ?あれっ?混浴露天は?美女美少女の裸は何処に消えた?」
どうやら新は爆睡中に、美女美少女達と混浴露天風呂に入ってる夢を見ていたらしい
新の非常識ぶりと夢の内容にリアス逹とミカエルは呆れ、サーゼクスとセラフォルーは苦笑し、アザゼルは爆笑していた
「何だよ、夢だったのか……」
「夢だったのか、じゃないでしょ!会談中に寝るなんて、主の私に恥をかかせないでちょうだい!」
「いや〜、わりぃわりぃ。どうも俺はこう言った堅苦しい空気が苦手で、つい寝ちまった。で、俺に宿ってる『
「あなた今寝てたんじゃなかったの?どうして会談の内容を知ってるのよ?」
「俺は寝ながらでも会話内容を頭に残す事が出来るんだ。どうしても眠い時には必ずこの方法を使っている。スゲェだろ?」
「得意気に話すくらいなら、最初から寝ないで会談を聞いていなさい!」
「眠かったし、めんどくさいから嫌だ」
新の非常識&傍若無人ぶりにリアスは
「リアス、新くんへのお説教はその辺にしておきなさい」
「……すみません、お兄様」
リアスが渋々座ると、サーゼクスは新に話を振り始める
「さて、新くん。今君が寝ながら聞いていた通り、君の体内に宿る『
「……っ?覚醒した力について聞いてくるのは分かりますが、何故俺の今後について聞いてきたんですか?」
サーゼクスの言葉に疑問を浮かべる新
再びサーゼクスが口を開き、ミカエルとアザゼルも話に参加してくる
「リアスから話を聞いてみたが、やはり君の『
「
「出来る限り話せる事だけで結構です。不躾ながら、お聞かせ願えますか?」
各陣営トップ3人の提案に、新は話せる範囲で話す事にした
「まず『
新の説明にサーゼクスとミカエルは複雑そうな表情になり、アザゼルは興味津々な様子となった
「それと俺の今後について話を聞きたいと仰ってましたよね?単刀直入に言ってしまえば、
「新くんは上級悪魔になろうとは思わないのかい?」
「思いませんね。なったらなったで色々とダルそうだし、これと言った目標は無いので、バウンティハンターとして生涯を終えるのも悪くありません。要は自分が後悔しない生き方をします」
「クックックッ。面白い奴だな。下級悪魔なら誰もが目指す道を"ダルい"の一言で一蹴するとはよ。話をいきなり変えちまう様で悪いが、お前んとこに俺の部下が住んでるそうじゃねぇか」
言ってる事は理解出来た
アザゼルはレイナーレ達の事を言っている
レイナーレは1度一誠を殺し、アザゼルに取り入る為にアーシアを騙して殺そうとした――――――だが……
「最終的には
「そりゃあ……1度殺されたから恨みは無いって言えば嘘だよ。けど、今は新がいるからあいつらも変わってきている。何より、レイナーレ達をどうするかは新が決めた事だから、俺は何も言わないよ」
新は「そうだったな」と小さく微笑み、アーシアに聞く
「アーシアはどうだ?悪魔になった事に不満はあるのか?」
「いいえ、そんな事ありません。イッセーさんと新さんがいたから、私は今こうして大切な人達に囲まれています。それに憧れのミカエル様にお会い出来たのですから光栄です!」
アーシアは手を組みながら、今の幸せを語る
新は再び小さく微笑み、アザゼルの方に向き直す
すると、アザゼルはこんな事を言い出した
「それじゃあよぉ、これからも―――――あいつらをお前んとこにいさせてやってくれねぇか?
「それはレイナーレ達を俺に任せると捉えて良いのか?堕天使総督さん」
「まぁ、そんなところだ」
「……分かった。以上で俺からの話を終えても良いすか?」
「構わないよ。今の話で、新くんはこれまで通りにいくと言う事になったが……異存は無いかな?」
「あぁ。良いんじゃねぇか?こいつは自分から何かやらかす様な奴には見えねぇし」
「私も警戒の必要性が無くなったので問題はありません」
「―――――と言う訳で新くん。我々は君の行動に制限を付けたりはしないから、後はリアス達と話し合ってくれ。あと1つだけ、くれぐれも『はぐれ』にはならない様にして欲しい」
「釘を刺されなくても、なる気はありませんよ」
新はようやく座る事が出来た
話を本題に戻そうとしたが、突然セラフォルー・レヴィアタンが挙手してきた
「ねぇねぇねぇ!じゃあじゃあ☆もし新くんがリアスちゃんの下僕を辞めちゃったら、うちのソーナちゃんの下僕にさせても良い?なんなら、私の下僕でも良いよ☆」
「「「「「なっ!?」」」」」
セラフォルー・レヴィアタンの勧誘宣言に全員―――――特にリアスとソーナ会長が驚いた
「お姉さま!?いきなり何を言い出すんですかッ!大事な会談の最中ですよッ!?」
「だってだって〜、『
「えっ!?ど、どうって言われても……あなたは仮にも四大魔王の1人だろ?そんな軽いノリで下僕の構成を決めても良いんすか?」
「良いの良いの☆あ、もしかして私にエッチな事したいの?それともソーナちゃんとも一緒にしたい?」
「いい加減にしてください!それにそう言う問題ではありませんッ!」
「そもそも!新は私の下僕です!ソーナにも、たとえセラフォルー様にも渡しません!」
リアス、ソーナ、セラフォルーがムッとした表情で火花を散らし合う
三大勢力の会談で何故か悪魔側のみで内戦が始まろうとしていた
「一誠。確か今日、俺達は三大勢力の話し合いでここに来たんだよな?何で悪魔陣営だけ険悪な感じになってんだ……?」
「それは多分、お前のせいだと思う……」
新は「やっぱり……?」と言う顔になった
「リアスお嬢様、ソーナお嬢様、セラフォルー様。お静かにお願い致します」
給仕係のグレイフィアがキッと目を鋭くして警告した
彼女から発せられる気迫に3人はビクッと震え――――――
「「「……すみません」」」
すぐに席に座った
一誠達およびサーゼクスとミカエルは苦笑い、アザゼルは腹を抱えながら笑っていた
「……コホンッ。さて、アザゼル。そろそろ本題に戻ろう。先程の報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
「先日の事件は我が堕天使中枢組織『
アザゼルの意見にミカエルが嘆息しながら言う
「説明としては最低の部類ですが―――――あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないと言う話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」
「あぁ、俺は戦争に興味なんて無い。コカビエルも俺の事をこき下ろしていたと、そちらの報告でもあったじゃないか」
確かにコカビエルは自分達堕天使のボスであるアザゼルをかなり悪く言っていた
戦争に消極的で
「アザゼル、1つ訊きたいのだが、どうしてここ数十年
「そう、いつまで経ってもあなたは戦争を仕掛けてはこなかった。『
「
「それはそうだ」
「そうですね」
「その通りね☆」
サーゼクス、ミカエル、セラフォルー・レヴィアタンの意見が一致した
アザゼルはよっぽど信用されていないらしい……
「チッ。神や先代ルシファーよりもマシかと思ったが、お前らもお前らで面倒臭い奴らだ。こそこそ研究するのもこれ以上性に合わねぇか。あー、分かったよ。――――なら、和平を結ぼうぜ。元々そのつもりもあったんだろう?天使も悪魔もよ?」
まさか和平を1番に提示したのはアザゼルだとは思わなかった事態に、皆が驚いた
アザゼルの一言に驚いていたミカエルが微笑む
「えぇ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ち掛ける予定でした。このままこれ以上三竦みの関係を続けていても、今の世界の害となり、
「ハッ!あの堅物ミカエル様が言うようになったね。あれほど神、神、神様だったのにな」
「……失った物は大きい。けれど、いない物をいつまでも求めても仕方がありません。人間達を導くのが我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが1番大事なことだと私達セラフのメンバーの意見も一致しています」
「おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ?――――と思ったが、『システム』はお前が受け継いだんだったな。良い世界になったもんだ。俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」
「我らも同じだ。魔王がなくとも種を存続する為、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。―――――次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」
「そう。次の戦争をすれば、三竦みは今度こそ共倒れ――――もしくは
先程までふざけた調子だったアザゼルが一転
真剣な表情となっていた
「神がいない世界は間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃなかった。俺もお前達も今こうやって元気に生きている。―――――神がいなくても世界は回るのさ」
アザゼルの言葉は新と一誠に感慨深いモノを与えた
「――――とまぁ、こんなところだな。さて、そろそろ俺達以外に、世界に影響及ぼしそうな奴らへ意見を訊こうか。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」
アザゼルの問いに
「俺は強い奴と戦えれば、それで良い」
「戦闘好きか。傍迷惑な答えだな」
新の呟きにヴァーリはチラリと見た
「じゃあ
「えっ?えっと……俺は」
「一誠。今の話の内容、簡単に言えば―――――戦争が起こればセッ◯ス出来なくなるって事だ。勿論、将来ハーレム王になるとか言ってるお前もセッ◯ス出来なくなる。簡単な話だろ?」
新の重要点のみを絞った説明に一誠は激しく理解出来た
「――――ッ!和平でひとつお願いします!ええ!平和ですよね!平和が1番です!ハーレム王になって可愛い女の子とエッチがしたいです!」
欲望をそのまま口にした一誠
新は思った通りの結果に大爆笑、リアス達は苦笑するしかなかった……
その後、真面目な話をしようとしたが―――――その瞬間、時が停まった