ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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引きこもりのビショップと朱乃の秘密

次の日の放課後

 

オカルト研究部メンバーは旧校舎1階の「開かずの教室」とされていた部屋の前に立っていた

 

聞くところによると、この部屋の中にもう1人の『僧侶(ビショップ)』がいるらしい

 

新や一誠、アーシアにとって今まで謎にされていた部員であり、新顔のゼノヴィア以外のメンバーは全員知っている

 

リアスからの話ではその能力が危険視され、現時点では扱いきれないから封印をするように上から言われていたらしい

 

だが、フェニックス家との一戦とコカビエルとの一戦で高評価を得たので解禁された

 

扉には『KEEP(キープ) OUT(アウト)!!』のテープが何重にも張られてあり、呪術的な刻印も刻まれていた

 

「ここにいるの。1日中ここに住んでいるのよ。一応深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出ても良いのだけれど、中にいる子自身がそれを拒否しているの」

 

「つまり、引きこもりの『僧侶(ビショップ)』って訳か。だらしねぇな。女だったら裸にした上で説教してやろうか」

 

新は頭を掻きながら堂々と服脱がし宣告をする

 

「ふふっ。新、その意気込みは叶わないわよ」

 

「……っ?」

 

新はリアスの言葉に疑問符を浮かべる

 

因みにこの引きこもり『僧侶(ビショップ)』はパソコンを介して人間と契約を執り行っており、1番の稼ぎ頭だと言う

 

「さて、開けるわよ」

 

扉に刻まれていた刻印が消え、リアスが扉を開けた

 

その刹那――――

 

「イヤァァァァァァァァァァアアアアアアアアッ!」

 

「うっわ!うるせーっ!」

 

中から耳を破壊するような絶叫が発せられた

 

リアスは驚く事なく溜め息をつき、朱乃と共に部屋の中に入っていく

 

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

 

『な、な、何事なんですかぁぁぁぁ?』

 

『あらあら。封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。さあ、私達と一緒に出ましょう?』

 

『やですぅぅぅぅぅぅ!ここが良いですぅぅぅぅぅぅ!外に行きたくない!人に会いたくないぃぃぃぃっ!』

 

「重症過ぎねぇか!?」

 

完全に拒絶してる様な声に思わず突っ込みを入れる新

 

正体を確かめるべく、新は部屋の中に足を踏み入れる

 

中に入ってみると奥にリアスと朱乃がいて、更にその先に例の『僧侶(ビショップ)』がいた

 

赤い目をした金髪の美少女が床に力なく座り込んでいる姿を目撃した新だったが――――――その美少女を少し見た瞬間、口をワナワナと震わせた

 

「な、何だと……!?」

 

「おおっ!金髪の美少女!やったぁっ!『僧侶(ビショップ)』は金髪尽くしって事か!ヒャッホーッ!」

 

「一誠、お前の夢をぶっ壊す様な現実を突き付けてやる。こいつは男だ」

 

「………………え?」

 

新が苦々しげに放った一言に一誠は固まった

 

そこでリアスと朱乃が言う

 

「新の言う通り、この子は紛れもない男の子よ」

 

「女装趣味があるのですよ」

 

「ええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」

 

「ヒィィィィィッ!ゴメンなさいゴメンなさぁぁぁぁぁい!」

 

一誠の絶叫と金髪美少女――――もとい金髪女装くんの絶叫が合わさった

 

一誠は頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ

 

彼にとってはあまりにも残酷な現実である

 

「こんな残酷な話があって良いものか……!?完全に美少女な姿なのに男だなんて……!チ◯コがついているだなんてぇぇぇぇ……!」

 

「一誠、悔しいのは分かるが事実だ。こいつは男だし、チ◯コもついている。俺も今この場で闇皇に変異して魔力弾をブチ当てた後、脳天に蹴りをくらわせてやりたいくらいムカついてるぜ」

 

新の手は冗談無しに殺気を宿させていた

 

「それにしても新。見ただけでこの子を男の子だと分かったわね。どうして?」

 

「俺ぐらいの男になれば、自然と気配で分かる様になるんすよ。あと決定的なのは胸が無かったから――――――いでででででっ!小猫!背中をつねるな!」

 

「……新先輩は胸の有無で性別を調べるんですね。最低です」

 

新はいつの間にか入ってきた小猫に背中をつねられた

 

「いって〜……だがよ、引きこもりのクセに女装って矛盾し過ぎてねぇか?誰に見せる為の女装なんだよ?」

 

「だ、だ、だ、だって、女の子の服の方が可愛いもん」

 

「可愛いもん、とか言うなぁぁぁぁぁ!クソッ!野郎のクセにぃぃぃ!俺の夢を一瞬で散らしやがってぇぇぇぇぇっ!俺はなぁ、俺はなぁ!アーシアとお前のダブル金髪美少女『僧侶(ビショップ)』を瞬間的にとはいえ夢見たんだぞ!?返せよぅ!俺の夢を返せよぅ!」

 

泣き叫ぶ一誠に、新はポンと肩に手を置きながら言った

 

「人の夢と書いて『儚い』と読み、お前の夢と書いても『儚い』と読む」

 

「新ぁぁぁぁぁ!洒落になってねぇからぁぁぁぁぁ!つーか最後に余計な物を付けるなぁぁぁぁぁ!」

 

「と、と、と、ところで、この方は誰ですか?」

 

女装くんがリアスに訊く

 

「あなたがここにいる間に増えた眷属よ。『兵士(ポーン)』の兵藤一誠と竜崎新、『騎士(ナイト)』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶(ビショップ)』のアーシアよ」

 

4人はよろしくと挨拶をするが、女装くんは怖がるだけだった

 

「お願いだから外に出ましょう?ね?もうあなたは封印されなくても良いのよ?」

 

「嫌ですぅぅぅぅ!僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁぁっ!怖い!お外怖い!どうせ僕が出てっても迷惑をかけるだけだよぉぉぉぉぉっ!」

 

だんだん腹が立ってきたので、新は闇皇に姿を変えて口をガキンガキンッと開閉させ始めた

 

「クォラ〜。悪い子はいねぇが〜」

 

「えっ?ぼ、僕と同じ吸血鬼(ヴァンパイア)?」

 

「お外に出ねぇ悪い子は〜頭から喰い千切ったろかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ヒィィィィィッ!同じ吸血鬼(ヴァンパイア)なのに怖いぃぃぃぃっ!」

 

「あと、俺は吸血鬼(ヴァンパイア)じゃねぇ〜。間違えたので頭から喰い千切ったらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「イヤァァァァァァァァァァアアアアアアアアッ!同じ吸血鬼(ヴァンパイア)に食べられちゃうぅぅぅぅぅぅ!」

 

女装くんの絶叫と共に時間が止まった――――――新とリアスを除いて

 

「ん?一誠、皆?何だこりゃ?」

 

「ええええええっ!?な、な、な、何でこの人はうごけるんですかぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

女装くんは相変わらず叫ぶだけ

 

いつか喉が潰れるんじゃないかと思う新だった

 

そこへリアスが説明してくれる

 

「その子は興奮すると、視界に映した全ての物体の時間を一定の間停止する事が出来る神器(セイクリッド・ギア)を持ってるの。でも、その子自身は神器(セイクリッド・ギア)を制御出来ないから、今まで封印されていたのよ。私は高い滅びの魔力のお陰で、新は悪魔にとって規格外の力である『闇皇(やみおう)の鎧』を宿しているから効かなかったみたいね」

 

「時間停止の神器(セイクリッド・ギア)?それかなりチートじゃねぇか……こいつはいったい何者なんだよ?」

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶(ビショップ)』。一応、駒王学園の1年生なの。―――――そして、転生前は人間と吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフよ」

 

 

―――――――――――――

 

 

「『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』?」

 

一誠の問いにリアスが頷く

 

「そう。それがギャスパーの持っている神器(セイクリッド・ギア)の名前。とても強力なの」

 

「さっきも言ったけどよ、やっぱ時間を停める能力ってチート過ぎねぇか?」

 

「あら。イッセーの倍増の力と白龍皇の半減の力、それに新の『闇皇の鎧』だって反則級の力なのよ?」

 

「確かにそうだ。コカビエル戦の時に進化した力だっけ?アレでコカビエルをボコボコにしちまったもん」

 

「その上、あんなに強い力がまだ3つも眠ってるらしいじゃないか。はっきり言ってしまうと、新くんは現時点で僕達眷属の中でも最強だと思うよ」

 

進化した力とは『進化する昇格《エボルシオン・プロモーション》』の事

 

それにより『騎士(ナイト)』の能力である速度に特化した『闇皇の神速槍騎士(アーク・カイザー・ジェットスピア・ナイト)』と言う新しい形態を手に入れ、コカビエルを圧倒した

 

更に言ってしまえば、新の『進化する昇格(エボルシオン・プロモーション)』には全部で4つの進化形態が存在するらしい

 

この力も、ギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)と大差が無い反則級の力である

 

「話を戻させてもらうが、リアス部長はよく時間停止なんて強力な神器(セイクリッド・ギア)を持った奴を下僕に出来たよな?」

 

「それもそうだな。しかも、駒1つの消費だけで済んでる訳だし」

 

新と一誠の言葉にリアスは手元に1冊の本を出現させ、ペラペラとページを捲る

 

「『変異の駒(ミューテーション・ピース)』よ」

 

「「ミューテーション・ピース?」」

 

疑問の声をハモらせた新と一誠に、祐斗が『変異の駒(ミューテーション・ピース)』の説明を始める

 

「通常の『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』とは違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、1つで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒の事だよ」

 

「部長はその駒を有していたのです」

 

朱乃も説明に参加し、祐斗が更に続ける

 

「だいたい上位悪魔の10人に1人は1つぐらい持っているよ。『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』のシステムを作り出した時に生まれたイレギュラー、バグの類らしんだけど、それも一興としてそのままにしたらしいんだ。ギャスパーくんはその駒を使った1人なんだよ」

 

「つまり、普通とは違うレアな駒をこいつに使ったって訳か」

 

「そうよ。それに、新に使った『兵士(ポーン)』の駒も『変異の駒(ミューテーション・ピース)』よ」

 

「「えっ!?マジで!?」」

 

再び新と一誠の声がハモった

 

「私は運良く2つ持っていたのよ。1つはギャスパーに使用した『僧侶(ビショップ)』。そしてもう1つが『兵士(ポーン)』。以前あなたに渡した『兵士(ポーン)』の駒で、全ての『変異の駒(ミューテーション・ピース)』を使用したわ」

 

「俺にもその『変異の駒』が入ってんのか……。しかもバグの類……何か得した気分だぜ」

 

新はニヒルな笑みを浮かべた

 

「話を戻すけど、彼は類希(たぐいまれ)な才能の持ち主で、無意識の内に神器(セイクリッド・ギア)の力が高まっていくみたいなの。そのせいか、日々力が増していってるわ。―――――上の話では、将来的に『禁手(バランス・ブレイカー)』へ至る可能性もあるという話よ」

 

ただでさえ危険な時間停止の神器(セイクリッド・ギア)

 

その持ち主が『禁手(バランス・ブレイカー)』になれば、かなりの危険を伴う事になる

 

「そう、危うい状態なの。けれど、私の評価が認められたため、今ならギャスパーを制御出来るかもしれないと判断されたそうよ。私がイッセーと祐斗を『禁手(バランス・ブレイカー)』に至らせ、そして新も未知の進化に遂げさせたと上の人達は評価したのでしょうね」

 

一誠は未完成とは言え、『禁手(バランス・ブレイカー)』を発現、新は『闇皇の神速槍騎士(アーク・カイザー・ジェットスピア・ナイト)』でコカビエルを倒した

 

それによって、リアスの評価がグンと上がった(ゆえ)の褒美とも言えよう

 

「能力的には朱乃に次いで2番目なんじゃないかしら。ハーフとはいえ、由緒正しい吸血鬼の家柄だし、強力な神器(セイクリッド・ギア)も人間としての部分で手に入れている。吸血鬼(ヴァンパイア)の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術にも秀でているわ。とてもじゃないけど、本来『僧侶(ビショップ)』の駒1つで済みそうにないわね」

 

「へ〜。そこまでスゲェ奴なのか、この引きこもり吸血鬼(ヴァンパイア)は」

 

 

――――――――

 

 

「ほら走れ。デイウォーカーなら日中でも走れる筈だよ」

 

「ヒィィィィッ!デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇぇッ!」

 

「……ギャーくん、ニンニクを食べれば健康になれる」

 

「いやぁぁぁぁん!小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅぅ!」

 

夕日が差し掛かる旧校舎近くでゼノヴィアがデュランダルを振り回しながら、小猫がニンニクを持ちながらギャスパーを追いかけていた

 

因みに"デイウォーカー"とは、日中でも活動出来る特殊なヴァンパイアらしい

 

リアスから教育係を任されたのは新、一誠、ゼノヴィア、小猫の4人なのだが……

 

「ハハハハハッ!やれやれぇっ!小猫、ゼノヴィア!もっともっといじめてやれぇっ!」

 

新だけは高みの見物をしながら大爆笑していた

 

そこへ誰かが近づいてくる気配を察知し、後ろを振り向く

 

「よー、闇皇(やみおう)の蝙蝠。へぇ。魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してる訳か」

 

「あんたはアザゼル……ってか、浴衣で来るとか飄々としてやがるな」

 

新は肩を竦めながら言う

 

「おっ?警戒しねぇのか?俺、一応堕天使の総督だぜ?」

 

「あんたからは殺気を感じねぇから、警戒する必要がない。それにサーゼクス様が言ってたんだよ。あんたは戦争好きじゃなくて、ただ神器(セイクリッド・ギア)所有者を集めているだけだと。正直、戦争よりそっちの方が平和だから、そうしといてくれるとありがたい。戦争中だとセッ◯ス出来ねぇからな」

 

そこまで言い張った新に、アザゼルは高らかな笑い声を上げた

 

「ハハハハハッ!お前面白ぇ奴だな!堕天使のボスが現れたら誰だって警戒するっつうのによ!」

 

「これでも俺はバウンティハンター時代に鍛えまくってんだよ」

 

「みてぇだな。お前も『禁手(バランス・ブレイカー)』とは違う力に単独で覚醒させやがったぐれぇだし」

 

白龍皇(はくりゅうこう)からでも聞いたのか?」

 

「あぁ。神器(セイクリッド・ギア)じゃねぇのに『禁手(バランス・ブレイカー)』みたいな進化を遂げた奴は今まで見た事ねぇからよ。今度会った時にでも、その姿を見せてくれや」

 

そう言って、アザゼルは一誠達の方へと歩いていった

 

その後、アザゼルを目撃した一誠達は警戒心剥き出しで対峙したらしい

 

 

―――――――――

 

 

数日経った休日

 

新と一誠はとある場所に来ていた、と言うか朱乃に呼び出された。一誠だけに用事があった筈なのに、新にも来て欲しいと言われた

 

町の外れを進んでいくと石段が見えてくる

 

更にその先に視線を向けると神社があった

 

「いらっしゃい、新さん、イッセーくん」

 

「あれ、朱乃っ?」

 

そこには巫女装束を着た朱乃が立っていた

 

2人は石段を上がっていき、先導する朱乃は歩みを止めずに話してくる

 

「ゴメンなさいね。急に呼び出してしまって」

 

「あ、いえ。俺もやる仕事がなくて暇だったので」

 

「つーか朱乃。悪魔の俺達が神社に入って大丈夫なのか?」

 

「ここは大丈夫ですわ。裏で特別な約定が執り行われていて、悪魔でも入る事が出来ます」

 

そう言って朱乃は鳥居を堂々と潜る

 

新と一誠は慎重な様子で潜るが、何も問題は起こらなかった

 

「朱乃はここに住んでるのか?」

 

「ええ、先代の神主が亡くなり、無人になったこの神社をリアスが私の為に確保してくれたのです」

 

「彼が赤龍帝(せきりゅうてい)ですか?」

 

突然発せられた第三者の声

 

2人がその方向へ振り向くと、豪華な白いローブを着た青年の姿を視界に捉えた

 

その青年の頭の上には金色の輪が漂っていた

 

「初めまして赤龍帝(せきりゅうてい)、兵藤一誠くん。私はミカエル。天使の長をしております。なるほど、このオーラの質、まさにドライグですね。懐かしい限りです」

 

まさかまさかの天使側のトップが来ていた……

 

 

―――――――――

 

 

「お茶ですわ」

 

「あ、サンキュー。ズズ〜ッ……あ〜。結構なお手前で」

 

一誠とミカエルが神社の本殿で大事な話をしている間、新は朱乃が生活している境内の家に上がってお茶を味わっていた

 

「しかし、どうにも解せねぇな。天使側のトップが一誠に何の用で来たんだ?」

 

「なんでも、龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の聖剣『アスカロン』を渡しに来たと聞いていますわ」

 

「聖剣?聖剣は悪魔にとって苦手な武器だろ。それに龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)って、一誠が触っても大丈夫なのか?」

 

「ご心配なく。特殊儀礼を施しているので、悪魔のイッセーくんでもドラゴンの力があれば扱えますわ。正確にはイッセーくんのブーステッド・ギアに同化させると言った感じらしいです」

 

新は更に話を聞いていく

 

今度の会談は三大勢力が手を取り合う大きな機会らしく、このまま小規模ながらも争いが続けば間違いなく三大勢力は滅び、闇人(やみびと)が真っ先に冥界、天界、人間界を支配するであろうと言う事を考えた上での執り行い

 

簡単に言ってしまえば、天使側から悪魔側へのプレゼントと言う事である

 

「和平を結ぶ為の下準備ってヤツか。まぁ、俺は平和に賛成だから良いけどな。セッ◯スし放題♪」

 

「うふふ。新さんらしいですわね」

 

話が弾む中、新は以前から心の奥底で引っ掛かっている事を思い返した

 

コカビエル事件の時―――――神代剣護(かみしろけんご)に瀕死の一撃を食らわされ、痛みに耐えていた時に聞いた『バラキエルの力を宿す者』について……

 

「朱乃。1つ聞いても良いか?コカビエル事件の時、神代剣護が言っていた『バラキエルの力を宿す者』って言葉。朱乃はもしかしたら――――――」

 

「……そうよ。元々私は堕天使の幹部バラキエルと人間との間に生まれた者です」

 

表情を曇らせた朱乃、彼女の正体は堕天使と人間のハーフだった

 

朱乃は更に自分の出生について話していく

 

「母は、この国のとある神社の娘でした。ある日、傷つき倒れていた堕天使の幹部であるバラキエルを助け、その時の縁で私を身に宿したと聞きます」

 

複雑な事情を聞く新を前に、朱乃は背中から翼を広げた

 

片方は悪魔の、そしてもう片方は堕天使特有の黒い翼だった

 

「汚れた翼……。悪魔の翼と堕天使の翼、私はその両方を持っています。この羽が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となったの。―――――でも、生まれたのは堕天使と悪魔の羽、両方を持ったもっとおぞましい生き物。ふふふ、汚れた血を身に宿す私にはお似合いかもしれません」

 

自嘲する朱乃の姿を新は真剣に見続ける

 

「……それを知った新さんはどう感じます?堕天使は嫌いよね?この町を破壊しようとした堕天使に良い思いを持つ筈が――――――」

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

朱乃が言い終わる前に新が割って入ってきた

 

「確かにこの町を破壊しようとした堕天使は嫌いだ。だが、それはレイナーレ達や朱乃じゃなくてコカビエルだ。何で朱乃を嫌う必要がある?」

 

「……………えっ?」

 

新の言葉に朱乃の目が潤みを含み、更に新は淡々と言い続ける

 

「朱乃が堕天使と人間のハーフだろうと何だろうと、俺は出生だけで差別なんかしねぇよ。ってか、する必要がねぇし。朱乃は朱乃なんだからそのままで良いんだよ。昔は敵だったレイナーレ達も、今じゃ立派な仕事仲間になってる。俺は堕天使だからって理由だけで女を嫌うなんて事はしねぇよ。それに朱乃の事は好きだし」

 

「――――――っ!」

 

朱乃は驚きの表情となった

 

「朱乃はオカルト研究部の副部長で俺達の仲間。その上、良いおっぱいと乳首もしている。レイナーレ達より上かもしれねぇ良い体をな。そんな良い女達を見捨てたりなんかしねぇ。だから、これ以上自分を卑下するのはやめてくれ」

 

朱乃の顔が赤くなると同時に、目から涙が溢れてくる

 

「……殺し文句、言われちゃいましたわね。……そんな事言われたら……本当の本当に本気になっちゃうじゃないの……」

 

「んっ?どうした朱乃?急に俯いて―――――ホゲッ!」

 

朱乃は感極まり、抱き着く形で新を押し倒した

 

「新さんは……私みたいな女性でも好きだと言ってくれるんですか?」

 

「"でも"とか言うな。朱乃だから好きなんだよ」

 

「……嬉しい!新さん―――――いえ、新!」

 

朱乃は一層強く新を抱き締める

 

「2人っきりの時だけ、新って呼んでも良いですか?」

 

「良いけどさ……俺、かなりの浮気性だぜ?過去に何人もの女と―――――レイナーレ逹ともセッ◯スしたんだ。それでも良いのか?」

 

「構いません……それでも私は……んっ……」

 

朱乃の唇が新の唇と合わさった

 

そこから朱乃は新の口内に舌を潜り込ませ、激しく絡ませる

 

「んちゅ……ちゅぱ、はむっ……んんっ……れろぉ、ちゅう……ちゅるっ」

 

「んっ、くちゅ……ちゅぷ……ぱぁっ。はむっ……ちゅむ……ちゅぅうううっ……」

 

互いに唇を激しく交わし合い、離れた唇から唾の糸が作られる

 

「はぁ……はぁ……俺、何人も女を惚れさせたけどさ、俺自身から惚れたのは初めてだ」

 

「……いつから、私に?」

 

「リアスから聖剣計画の話を聞いて、俺達バウンティハンターも聖剣計画の奴らと同じなんじゃないかって悩んでた時だ。朱乃は俺を励ましてくれたろ?そん時から、"この女だけは誰にも渡したくねぇ"って心の底から思ったんだ」

 

「うふふ。新さんにも初めてがあったんですね」

 

「言ってくれるじゃねぇか。このぉっ」

 

新は朱乃を押し倒し、巫女装束をはだけさせる

 

プルンッと朱乃の乳房が顔を出し、ピンク色の乳首も露出した

 

晒け出された朱乃の豊満な乳房を、新は強弱をつけながら揉みしだく

 

「はぁんっ……んっ、ぁんっ……んんっ……!新さんの、手つきぃ……凄くいやらしいですわぁ……。どんどんっ、私のおっぱいと体を……蹂躙してますぅ……」

 

「朱乃のおっぱいを揉んでると、何かスゲェ興奮してくるんだよな……もっとこの体を、朱乃を支配してやりたいって欲望が底無しに湧いてきやがる」

 

「うふふ。嬉しいですわ。でも……今日はお預けかもしれません。イッセーくんが戻ってきちゃいますし……私の処女は、誰にも邪魔されない場所で新さんにあげたいですから……」

 

「―――――そうだな。極上のお楽しみは熟成すればする程美味いだろうし」

 

新は朱乃の隆起した乳首に軽くキスをする

 

「ぁんっ。おっぱいの先にキスだなんて……新さんは本当にエッチがお上手ですわね」

 

「ありがとよ、朱乃。お前の処女はいつか頂くぜ。セッ◯スは激しくされるのと優しくされるの、どっちが好みだ?」

 

「うふふ。私はSでもMでもいけますわよ?」

 

それを聞いた新は朱乃との性交がますます楽しみとなった直後――――背中から浴びせられるプレッシャーに目を見開き、徐々に震えが増していく

 

あの時……プールの時間、ゼノヴィアの体を弄り回していた時と同じ感覚が背中を這いずり回る……

 

「本当に底無しの性欲ね、新?」

 

後ろから腹を貫かれそうな底冷えさせられる声に新は振り向けず、襟首を強く掴まれ朱乃から引き離される

 

紅髪(べにがみ)を持つ『(キング)』――――リアス・グレモリーのご登場だった……

 

「リ、リアス部長……」

 

「ミカエルとの会談は終わったのかしら?」

 

「はい……。終わりましたでございます……。一誠はミカエルからアスカロンを貰って帰りました……」

 

「なら、もうここに用は無いわね!帰るわよ!」

 

(きびす)を返してズカズカとその場を立ち去るリアス

 

新は「すまん、朱乃」と一言謝ってからそそくさと立ち去っていった

 

「…………くすっ♪もう、リアスったら。早く素直になれば良いのに」

 

 

――――――――――――

 

 

神社の石段を下りていくリアスの足取りは早く、しかも怒りを孕んでいる様だった

 

先程は彼女の凄まじい気迫に押されてしまい、何も出来なかった新は何とか宥めようと頭の中を回転させる

 

すると、リアスが「ちょっと来て」と新の手を引っ張って森の中へ行く

 

木々に囲まれた深部に辿り着いた途端、新の手を放して振り返る

 

さっきまでの気迫とは一転、暗い表情になっていた……

 

「……ねぇ、新」

 

「な、何だ?」

 

「朱乃は……朱乃なのよね」

 

「え?あぁ」

 

「朱乃は副部長、けれど……『朱乃』なのよね。……じゃあ私は?」

 

直ぐに答えようとした新だが、その問いとリアスの表情を見て何かを察知

 

思い詰めた様な顔に新は思い切って自分が思っている事をハッキリ言い出した

 

「あんたはオカルト研究部の部長で、グレモリー眷属を率いる『(キング)』――――リアス・グレモリーじゃないのか?」

 

「…………そうね。私は部長だわ。……でも――――」

 

「それだけじゃねぇ」

 

「…………え?」

 

「普段は凛々しく、厳しく気丈に振る舞っているが……実は人一倍優しくて自分の眷属を大切に思っている。その一方で凄く繊細、誰かが支えてやらないと折れてしまう……この枝と同じ様にな」

 

新は1本の木から生えている小枝を握力だけでパキッと折る

 

折れた枝を地に落とし、リアスの肩を掴む

 

「朱乃が『朱乃』であると同じ様に、リアスも『リアス』だ。俺はそう思っている」

 

「……っ!」

 

「何かあるなら、何かあったなら遠慮しないで言え。頼れ。そうしなきゃまた泣きを見ちまうぞ?」

 

新の口から出された言葉にリアスは思わず眼を潤ませ、直ぐに隠すように目元を手で拭う

 

「……本当に新ってストレートに言ってくれるわよね」

 

「俺はいつだって正直さ。言いたい事は言う、言わずに後悔するより言って後悔する方だ。エロに関してもな」

 

「ふふっ、最後の一言は余計じゃない?でも……お陰で少し気が楽になったわ。ありがとう。さあ、早く戻って三大勢力の会談に備えましょう」

 

リアスはいつもの笑みを取り戻し、駒王学園への足取りを早めようとした矢先――――彼女が振り返って言う

 

「新、1つお願いがあるのだけれど良いかしら?」

 

「ん、何だ?」

 

「これからは私の事――――リアスって呼んでもらえる?」

 

「良いのか?」

 

「ええ、良いわ」

 

「じゃあ、改めて宜しくな――――リアス」

 

リアスは軽く会釈してから再び駒王学園への足取りを早め、新もその後を追っていった

 

『……朱乃が彼に惹かれた理由が分かった気がするわ。相手が誰であろうと差別しないで、自分が思った事を真っ直ぐ正直に伝えてくれる……。それが彼にしか無い魅力なのかしらね』


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