「……気乗りしないわね」
「あぁ……全くだよリアス部長」
リアスと新は朝から溜め息を吐いていた
何故なら本日は授業参観の日
リアスには父親とサーゼクス・ルシファーが来るらしい
新は無論、父親の竜崎総司が来るのだが……悩みの種が1つ増えていた
学校の玄関口で別れ、新は席に着くなり突っ伏す
「なぁ新。そんなに親御さんが来るのが嫌なのか?」
「それが九分九厘。残りはな―――――レイナーレ逹も来るんだよ」
一誠は驚いた
過去に自分を殺した堕天使がこの学校の授業参観に来るなんて予想だにしてなかっただろう
彼女は今や殆どバウンティハンターとして働いており、新の家に居候している身である
「レ、レイナーレも来るの……?」
「カラワーナとミッテルトもだ。な〜んかヤケに張り切っててさ、断ろうとしても絶対行くって聞いてくれねぇの」
多分、新の授業を受けている姿を見たいのだと思う
そんな中、ゼノヴィアが新に近づいてきた
「ん?どうしたゼノヴィア」
「新。先日は突然あんな事を言って申し訳なかった」
「――――っ?あぁ、あの事か。別に気にする必要は無いんだが」
「私は君の事を考えずに突っ走り過ぎた。やはり、いきなりそんな事は難しいと思う。だからこそ―――――まずはこれを用いて練習しよう」
そう言うとゼノヴィアはスカートのポケットから小さな袋に包まれた物を取り出した
………コンドームだった
「ゴフッ!」
それを見た瞬間、新の口からあり得ない音が飛び出し、クラス全員の視線が一斉にコンドームへ集まった
「おみゃあはバカか!?バカなんですか!?大衆の面前でコンドームなんか出すな!大体コンドームを何処で用意してきやがった!?」
「新!あまりコンドームコンドームって大声で言うな!クラスの皆がざわついてる!」
クラスの皆は新とゼノヴィアの関係について討論会を始め、新は今日の授業参観で疲れはMAXになるだろうと言う悩みを植え付けられた
「それで新、性交の予定だが……」
「お前ちょっと口を閉じろ」
―――――――――
「アラタ〜!やっほ〜!」
「来たぞ新。こんなに可愛いお嬢さん逹とお知り合いとは、なかなかやるじゃないか」
「げっ、親父……何でレイナーレ逹と一緒にいるんだよ?」
時刻は昼休み、飲み物を買いに自販機へ向かうと―――――偶然レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、更には竜崎総司と遭遇した
彼女逹も新を探そうとしたら偶然総司と出くわし、一緒に探していたらしい
レイナーレは
3人ともレベルが高いせいか、男子の視線を集めている
「アラタの父親ってアラタ以上にエッチね。初対面にもかかわらずお尻を触られたわ」
「私もだ。しかし、アラタを探してくれた事には感謝しよう」
「はっはっはっ。私は新の父親だからね。そのくらいは当然さ」
「総ちゃ〜ん!置いてっちゃやだ〜!待って〜!」
突然総司のもとに、フリル付きの服を着た小柄の女性がやって来る
それを見た新はガチガチと歯を鳴らした
「ごめんよ
「エヘヘ〜。総ちゃんのナデナデ〜♪」
「新!誰なんだこの女の子は!?まさかお前の親御さんの浮気相手か!?50歳を過ぎたオッサンがこんな可愛い女の子をたらし込むなんて犯罪だぞ!警察を呼べ!」
「新。あの女性もあなたのお知り合いなの?」
一誠は羨ましいと思いながら新に詰め寄り、リアスは怪訝そうに訊く
だが、新は首を横に振った
「はっはっはっ。君逹、失礼だな。梓は私の妻で―――――新のお母さんだよ」
「「「「「お母さんっ!?」」」」」
その場にいた全員が驚いた
何処からどう見ても十代半ばにしか見えない外見だが、梓と言う女性は新の母親らしい
「新ちゃんのお母さんをやってます、
「この外見で50歳!?新の両親って何者なんだ!どうやったらこんな若々しく見える!?」
「とても息子がいる人の顔じゃないわね……若過ぎるわ」
「はぁ……だから嫌なんだよ。この2人は俺より目立つから黄色い声が絶えねぇの」
「新さんの困り顔……何だか新鮮ですわ♪」
「あ、部長。それに皆も」
自販機の前で談笑していると、今度は祐斗がやって来た
「あら、祐斗。お茶?」
「いえ、何やら魔女っ子が撮影会をしていると聞いたもので、ちょっと見に行こうかなと思いまして」
魔女っ子と言う単語にほぼ全員が首を傾げたが、ただ1人―――――総司だけは何処からともなくカメラを出していた
――――――――
カシャカシャッ!
フラッシュの音が聞こえ、カメラを持った男逹が廊下の一角で何かを撮影してるのが見えてくる
新は強引に人垣を潜り抜け、魔女っ子らしい美少女を見つけた
アニメで見る様なスティックをくるくる回しており、時折パンツがチラチラ見えてたりする
総司もいつの間にか至近距離で撮影していた
「なっ!」
人垣を通り抜けてきたリアスが魔女っ子見た途端に慌てふためく
あまりの狼狽ぶりに新と一誠も驚いた
「ほらほら、解散解散!今日は公開授業の日なんだぜ!こんなところで騒ぎを作るな!」
生徒会の知り合いである匙が、メンバーらしき女子と共に撮影現場にいる男子逹を追い返す
総司だけは避難しながら撮影を続けている
「あんたもそんな格好をしないでくれ。って、もしかして親御さんですか?そうだとしても場に合う衣装ってものがあるでしょう。困りますよ」
「えー、だって、これが私の正装だもん☆」
「良いじゃないか君。それを言うなら、私なんてトレジャーハンターの服以外似合う物が無いんだ」
2人の態度に奥歯をギリギリ鳴らす匙
すると、廊下の後方から生徒会長であるソーナ・シトリーが紅髪の男性2人を先導しながら近づいてきた
「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決しなさいといつも言って――――――」
「ソーナちゃん!見つけた☆」
「ちゃん?生徒会長を『ちゃん』付け?」
「ああ、セラフォルーか。キミもここへ来ていたんだな」
紅髪の男性の1人――――サーゼクス・ルシファーがコスプレ美少女に声をかける
その時に出たセラフォルーと言う名前に新はまさかと思った
「リアス部長。セラフォルーってまさか……レヴィアタン様……?」
「そうよ。あの方は現四大魔王のお一人、セラフォルー・レヴィアタン様。そしてソーナのお姉さまよ」
「ええええええええええええええええええええっ!?」
一誠の絶叫が廊下に響き渡る
四大魔王の中で唯一の女性魔王を、大人の色気溢れる女性だと思い込んでいたのだろう
「セラフォルー様、お久しぶりです」
「あら、リアスちゃん☆おひさ〜☆元気にしてましたか?」
「は、はい。おかげさまで。今日はソーナの授業参観に?」
「うん☆ソーナちゃんったら酷いのよ。今日の事、黙ってたんだから!もう!お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだから☆」
「そんな些細な事で天界に喧嘩を売ろうとしたのか!?」
本気なのか冗談なのか分からない態度に新は驚くしかなかった
「イッセー、新。ご挨拶なさい」
リアスの言う通り、新と一誠は頭を下げてセラフォルー・レヴィアタンに挨拶する
「は、はじめまして、兵藤一誠。リアス・グレモリー様の下僕『
「同じく『
「はじめまして☆私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」
ピースサインを横向きでチェキする魔王レヴィアタン
こんな軽いノリでも四大魔王のお一人である
「ねぇ、サーゼクスちゃん。この子が噂のドライグくん?」
「そう、彼が『
「へ〜。で、あなたが『
「レヴィアたん……様。俺的には闇皇の蝙蝠って呼んで欲しいんですけど、まぁそうです」
「ふ〜ん……」
セラフォルー・レヴィアタンは新の周りを歩きながら品定めする様に見ている
「な、何すか?」
「あなた、本当に『
「え?まぁ、一応そうですけど」
新が頭を掻きながら答えると、今度はサーゼクスに聞く
「サーゼクスちゃん。新くんのスペックを考えると、とても『
「彼には『
「『
理由が分かったセラフォルーは再び新に近づこうとする
「相変わらず可愛いね、セラフォルーちゃん。そんなに新が気に入ったのかい?」
「あっ!総くん☆おひさ〜☆」
「総くん!?総くんって、親父の事かっ!?」
「私もゼクスくんやセラフォルーちゃん逹と一緒に
面識があるどころのレベルじゃねぇだろと新が突っ込む
どれだけの偉業を成し遂げたのか気になってしまうくらいだ
「ところで、セラフォルーちゃん。そろそろ君のおっぱいを触らせてくれないか?」
「四大魔王様になんて事を言ってんだよ!?」
「え〜、ダメ〜☆総くんは既婚者でしょ?」
「スゲェ軽く返した!四大魔王はいつもこんなテンション!?」
「はっはっはっ。仕方ないか。じゃあ新におっぱいを触らせるのかい?新もセラフォルーちゃんのおっぱいを触りたいだろ?」
「ここで俺に話題を振るんじゃねぇ!つーか出来るかッ!四大魔王のお一人にそんな事したら消し飛ばされるわぁっ!」
新は総司に飛び蹴りをくらわそうとするが、やっぱりかわされてしまう
事態はソーナ会長とレヴィアタン様の話に発展する
「ソーナちゃん、どうしたの?お顔が真っ赤ですよ?せっかくお姉さまである私との再会なのだから、もっと喜んでくれてもいいと思うのよ?『お姉さま!』『ソーたん!』って抱き合いながら百合百合な展開でもいいと思うのよ、お姉ちゃんは!」
凄まじい難易度にソーナ会長は目元を引きつらせながら言う
「……お、お姉さま。ここは私の
「そんなソーナちゃん!ソーナちゃんにそんな事を言われたら、お姉ちゃん悲しい!お姉ちゃんが魔法少女に憧れているって、ソーナちゃんは知っているじゃない!きらめくスティックで天使と堕天使、闇人をまとめて抹殺なんだから☆」
「お姉さま、ご自重ください。魔王のお姉さまがきらめかれたら小国が数分で滅びます」
これでは魔法少女ではなく、魔王少女である
「ふむぅ……」
「……っ?な、何でしょうか?」
気がつくと、新を押さえていた総司がソーナ会長をマジマジと見ていた
そして、怪訝そうな口調で切り出す
「君は……どうしてそんなに新の事が気になってるんだい?」
「――――っ!?」
「それもただ気になってるだけじゃない。何と言うかこう……新に何かされるのを少し期待している様な感じが―――――」
「――――っ!し、失礼します!」
この場の空気に耐えられなくなったソーナ会長は、目元を潤ませて走り去っていく
「待ってソーナちゃん!お姉ちゃんを置いてどこに行くの!」
「ついてこないでください!」
「いやぁぁぁん!お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇぇぇぇっ!ソーたぁぁぁぁん!」
「『たん』付けはお止めになってください!」
駒王学園内で魔王姉妹の追いかけっこが始まった
新と一誠は何かの拍子で学校を消さないで欲しいと密かに念じる
「あ、そうだ。ゼクスくん。丁度良かったから少し人目につかない場所で話をしないか?リアスちゃん逹も一緒に。新は堕天使の女の子逹と遊んでなさい。大事な話があるから」
「遊んでる暇はねぇよ。つーか、俺にも言えない話っつうのは―――――」
「さて、善は急げだ」
総司は無理矢理サーゼクスとリアス、一誠を連れて何処かに行ってしまった
取り残された新はレイナーレ、カラワーナ、ミッテルトに昼食をせがまれて買い出しに向かう羽目に……
―――――――――
比較的人目につかない空き教室にやって来た総司、サーゼクス、リアス、一誠
誰もいない事を確認してから教室の中に入り、総司は窓際に歩いていく
「総司さん。大事なお話とはやはり……新くんの『闇皇の鎧』についてですか?」
サーゼクスの言葉に総司は無言で肯定する
「そうだ。君達は私をどう思う?全ての魔族を滅ぼそうとする闇人の力を息子に宿させた―――――この私を」
今の彼には茶目っ気など欠片もない
真剣な面持ちで一誠逹に問う
「いや、あの……正直言ってまだ分かんないっす。新は今、俺達の……大事な仲間なんです。だから、総司さんの質問にはまだ答えられません」
「……新が闇人の力に溺れかけてもかい?嘗ては『闇皇の鎧』の力に呑まれかけた――――この私みたいに……」
「新は自分で言っていました。自分の道は自分で決めると。『闇皇の鎧』の事を知った時も、一切迷わずにそう言いました」
一誠の言葉に続き、リアスの言葉に総司はジッと2人を見る
「万が一、新が闇人の力に支配されかけても……俺達が引きずり出します。殴ってでも引きずり出してやりますよ!それじゃあダメですか?」
「ふふっ。君達に拾われて良かったよ。新は良いお友達を持った」
総司は優しい微笑みを見せてくれた
「リアスちゃん、兵藤くん。これからも息子を―――――新をよろしく頼むよ」
「はい!」「お任せください」
話を終えた総司は扉を勢い良く開け放つ
「さ〜て、悩みが消えたところで――――――目一杯女子高生をナンパするぞ〜♪」
「最低だなあんた!」
「新が彼を嫌がる理由が分かった気がするわ……」
次回がギャスパー登場回です