レイナーレ逹と一悶着があってから数日が経ち、新は賞金引換所でマスターと駄弁っていた
「で、その女堕天使逹を
「まぁな。俺好みの良い女逹だったぜ」
「はっはっ!相変わらずの鬼畜っぷりだな新!」
大笑いする新とマスター
席を外して賞金首のリストが貼ってある看板の前に行く
目ぼしい賞金首はいないかと探していると、『はぐれ悪魔』バイサーの名が新の目に止まる
「マスター。こいつはどんな賞金首なんだ?結構な値段が付いてるぜ」
「そいつは主を裏切ってこの町に潜伏し、人間をおびき寄せて喰らうはぐれ悪魔だ。しかも喜べ、上半身裸の女悪魔らしいぞ」
上半身裸と言う素敵なワードに反応するが、すぐにダメだなと首を横に振る
「女と言ってもはぐれ悪魔。欲望を晒け出し過ぎると心も肉体も醜悪になる………そう言う化け物は圏外だ」
「ははっ。そうか」
新ははぐれ悪魔バイサーの手配書を手に取って
「マスター。こいつが何処にいるのか分かるか?」
「あ~。少し離れた廃墟で何人も行方不明者が出てるって聞いたから、多分そこじゃないか?」
「オッケー、サンキュー」
新は酒代を払ってバイクで目的地に向かう
生活費を稼ぐためと言う不純な動機を秘めて
―――――――――
目的の廃墟に到着した新
スタンドを立てて停め、頭部を守るバイクメットを外す
「ここが例の廃墟だな。確かに異様な気配と血の臭いが漂ってくるぜ……儲けさせて貰おうか」
新がいざ行かんと1歩足を踏み出そうとした時、彼のすぐ近くで魔方陣が浮かび上がる
いきなりの事態に思わず飛び退いた新は警戒を強める
魔方陣から出現したのは、紅い髪を靡かせる女性と黒髪のポニーテールをした和風美女、剣を持ったイケメンに小柄な少女
そして何より、新を驚かせる者がいた
「――――っ!?お前、堕天使に殺された高校生じゃねぇか!どういう事だ!?
「堕天使!?お前、
―――――――ただ今新が説明中(省略し過ぎ)
「そう。偶然イッセーが殺される現場を見てしまったって訳ね」
「まぁ、そんなところだ。ところで、あんた逹は何者だ?」
「あら。人に名前を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀じゃなくて?」
堕天使に言った台詞が自分に返ってくるとは……
新は苦笑いしながら自己紹介をする事に
「俺は竜崎新。職業バウンティハンターだ。その制服、確か私立
「えぇ、そうよ。じゃあ次は私逹ね。祐斗、あなたから自己紹介してくれる?」
「はい。初めまして、僕は
「よろしくイケメン」
「…………1年生。………
「変わった名前だな………ま、よろしく」
「3年生、
「おっぱいデカイな。よろしく」
「2年の
「おう。イッセーって呼ばれてたな。俺も新って名前で呼んでくれねぇか?名字で呼ばれんのは何か嫌なんだ」
「分かった。よろしく新」
「よろしくな一誠」
握手を交わす新と一誠
「最後は私ね。私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、新」
「――――っ!あんたがこの町を領土にしているグレモリーか。朱乃さんと同じくらいデカイおっぱいだな。揉み応えありそうで」
「部長のおっぱいを揉むのは俺だ!」
一誠が新とリアスの間に割って入る
「あらあら。イッセーくんと同じくらいエッチな子ですわね」
朱乃の言葉に新は一誠にある質問をする
「一誠。お前、女の裸は見た事あるか?」
「ブッ!部長逹の前で何聞いてんだ!?」
「あるのか無いのかどっちなんだよ?」
一誠はフフンと鼻を鳴らして自慢気に答える
「俺は一昨日の朝、部長のおっぱいを見た!」
「イッセー。あまり大きな声でそういう事を言わないで。流石に恥ずかしいから」
「じゃあよう。乳首を味わった事あるか?」
新の言葉で一誠だけでなく全員がフリーズした
「………何て?」
「そのままの意味だ。乳首を舐めたり、吸ったりして味わった事はあるか?」
「な………無い」
「乳輪を爪でなぞった事は?」
「………無い」
「乳首を摘まんだ事は?」
一誠は沈黙した
「無いか。俺は全部した事あるぜ。それだけでなく首筋、鎖骨、脇の下、わき腹、腿、尻。女の性感帯と言う性感帯を全て味わってきた」
「………ド変態」
小猫の言葉が新の心に刺さる
「とにかく、おっぱいを見ただけじゃあまだまだだな」
「そ、そこまで自信満々に語るって………お前まさか!?」
「ふんっ。12歳で童貞を卒業した」
「ぐああああああああああああああああああああっ!!」
新の童貞卒業発言に打ちのめされた一誠
完全に敗者の顔となっていた
「んんっ。ところで新。あなたはここに何をしに来たのかしら?」
「賞金首になっているはぐれ悪魔を殺しに来たんだよ。こいつだ」
新は懐に入れてた手配書を取り出してリアス逹に渡す
実はリアス逹も逃げ込んだはぐれ悪魔の討伐の為にここに来たのである
「つまり、殺した賞金首の肉体の一部を持っていかないと報酬が貰えないんだ」
「それがバウンティハンターの仕事なのね。でも、私達も大公から依頼を受けてるの。あなたにだけ手柄をやるなんて出来ないわ」
リアスは腕を組んでそう答える
これは頑固そうだなと、新は仕方無くはぐれ悪魔討伐をリアス逹に任せる事にした
そして一同が廃墟の中に入る
中は血の臭いが漂っており、小猫は制服の袖で鼻を覆う
新は職業上、何度も嗅いだ事があるので気にしていなかった
「リアス・グレモリー。気になったんだが、悪魔って大昔に堕天使や神と長年争い合ったんだよな?戦争は数百年前に終結したって聞いたが、あれ以来どうしてるんだ?」
「確かに我々悪魔と堕天使、そして天使を率いる神は大軍勢を率いて、永久とも思える期間、争い合ったわ。その結果、どの勢力も疲弊し、勝利する者もいないまま、戦争は終結したの」
「悪魔側も大きな打撃を受けてしまってね。二十、三十もの軍団を率いていた爵位を持った大悪魔の方々も部下の大半を長い戦争で失ってしまったんだ。もはや、軍団を保てない程にね」
リアスの語りに祐斗が続き、更に朱乃が説明を続ける
「純粋な悪魔はその時に多く亡くなったと聞きます。しかし、戦争は終わっても堕天使、神との睨み合いは現在でも続いています。いくら、堕天使側も神側も部下の大半を失ったとはいえ、少しでも隙を見せれば危うくなります」
俺が思ってるよりも深刻な状況になってるのか……と、新はしみじみと深く感じた
そこでリアスが再び語り出す
「そこで悪魔は少数精鋭の制度を取る事にしたの。それが『
「イーヴィル・ピース?」
聞き慣れない単語に疑問符を浮かべる新と一誠
重要そうなのでちゃんと耳を傾ける
「爵位を持った悪魔は人間界のボードゲーム『チェス』の特性を下僕悪魔に取り入れたの。下僕となる悪魔の多くが人間からの転生者だからって皮肉も込めてね。それ以前から悪魔の世界でもチェスは流行っていた訳だけれど。それは置いておくとして。主となる悪魔が『
新は長話になりそうだと思いながらも、聞く姿勢を崩さない
更にこのチェスのルールが爵位持ちの悪魔に好評であること、『レーティングゲーム』と呼ばれる上級悪魔同士の戦いが悪魔の間で大流行し、大会まで行われる程発展した事も聞かされた
悪魔の間では駒の強さ、ゲームの強さが地位や爵位に影響される程になっていると言う
「ん?今さっき転生っつったよな?一誠が生きているのは、その『
「良いところに気付いたわね。そう、イッセーは『
「へ~」
「あっ、部長。俺の駒は、役割や特性って何ですか?」
「そうね―――――イッセーは」
大事なところで言葉を止めたリアス
その理由は、何かが放つ殺意・敵意と言った空気が濃度を増したからである
「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」
不快極まりない声音が聞こえてきた
新はその方角を睨む
「はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅しに来たわ」
リアスがそう言うと異様な笑い声が辺りに響き、暗闇から上半身裸の女性が姿を現した
「おっぱい!」
「そこで反応するなよ。アレはどう見たってバケモンだ」
そう。現れたのは女性の上半身と獣の下半身を持った化け物
両手には槍が1本ずつ存在する
「主のもとを逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」
「こざかしいぃぃぃぃ!小娘ごときがぁぁぁ!その紅の髪のように、お前の身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁ!」
小悪党感丸出しの台詞に新は『お決まりな奴だな』と溜め息をつく
「雑魚ほど洒落のきいたセリフを吐くものね。祐斗!」
「はい!」
近くにいた祐斗が命令を受けて、物凄い速さで飛び出す
「おぉっ。あいつ結構なスピードだな」
「新、お前反応出来たの!?」
一誠が驚いたような声を上げる中、リアスが
「祐斗の役割は『
『
悲鳴をあげる化け物の足元に小猫が近付いていく
「次は小猫。あの子は『
「本当だ。全然余裕で持ち上げてる」
化け物の足をどかした小猫はジャンプし、どてっ腹に拳を打ち込んだ
化け物は後方へ大きく吹っ飛び、瓦礫の下敷きとなる
「最後に朱乃ね」
「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」
「朱乃さんは『
「いいえ。朱乃は『
なんというチートだ
「ぐぅぅぅぅ……」
「あらあら、まだ元気みたいですね?それなら、これはどうでしょうか?」
朱乃が手を上に
激しく感電する化け物に対し、朱乃はただ不敵に笑う
「あらあら。まだ元気そうね?」
カッ!
再び雷が化け物に落ちる
一誠は完全にビビっていたが、新は軽く笑い声をあげていた
「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。雷や氷、炎などの自然現象を魔力で起こす力ね。そして何よりも彼女は究極のSよ」
「何となく分かる。あれは天性のドSだ」
トンでもない事をサラリと言うリアスと新
「あれはSってもんじゃないでしょう!」
「普段は優しいけれど、一旦戦闘となれば相手が敗北を認めても自分の興奮が収まるまで決して手を止めないわ」
「それは良い。特に化け物相手に優しくする必要なんて無いからな」
「あなたもなかなかのSね」
「いやいや、それ程でも」
その間にも朱乃の雷攻撃は続き、一息ついたところでリアスが化け物へ近付く
「最後に言い残すことはあるかしら?」
リアスが聞くと、化け物から発せられたのは「殺せ」の一言だけだった
「そう、なら消し飛びなさい」
冷徹な一声の直後、
グレモリーの力を目の当たりにした新は思わず息を飲んだ
「これが……悪魔の戦いか……」
これにてはぐれ悪魔の討伐が終了
リアス達が帰り仕度を始めた時に、一誠は疑問を思い出した
「部長、聞きそびれてしまったんですけど。俺の駒……っていうか、下僕としての役割は何ですか?」
「『
紅髪のリアスは微笑みながらハッキリとそう答えた
簡単に言えば1番の下っ端
それを聞いた新は笑いを堪えるのに必死だったが、結局耐えきれず大爆笑していた