ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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闇皇、覚醒

ガフッ!

 

新の口から飛び出る血が剣護の腕にかかった

 

邪聖剣が引き抜かれ、貫かれた場所からも鮮血が噴出する

 

新は傷を押さえながらその場に膝をついた

 

「……ッ!神代剣護ォォォォォォォォッ!」

 

激昂した一誠は籠手で殴り掛かるが、柄頭(つかがしら)で一撃を防がれる

 

「感情優先は身を滅ぼすぞ」

 

剣護は左の蹴りを一誠の腹に叩き込み、タックルで突き飛ばす

 

「ぐあぁっ!」

 

「仲間が1人やられたくらいで(わめ)くな。戦いで感情に呑まれた者は死ぬ。お前らバカ共の末路は皆そうだ」

 

「黙りなさい!私の下僕への侮辱は万死に値するわっ!」

 

「ふん。ならば俺を滅してみるか?グレモリーの娘」

 

剣護は指をクイクイと往復させ挑発する

 

リアスは手に特大の魔力を集中させていく

 

「消し飛べェェェェェェッ!」

 

リアスの手から最大級に溜めた滅びの力が撃ち放たれる

 

剣護はデスカリバーを左手に持ち替え、右拳に炎を宿らせた

 

しかも、ただの炎ではなく――――神々しい輝きを帯びた聖なる炎

 

元々はエクスカリバーから改造された剣ゆえに本来の能力も兼用出来る

 

漆黒の鎧を纏った拳が赤く変色し、蒸気と熱気が放出される

 

「『炎爆熱の拳(ヒート・ナックル)』!」

 

ドゴォォォォォォンッ!

 

聖なる炎を帯びた右拳は、滅びの力を空の彼方へ打ち返した

 

「なかなか良い力だ。少し手が痺れたぞ」

 

「……っ!?拳で弾いた!?」

 

滅びの力が簡単に打ち返された

 

リアスが狼狽する中、朱乃が雷を落とす

 

剣護は邪聖剣の炎で雷を相殺した

 

「この程度か?バラキエルの力を宿す者」

 

「……私をあの者と一緒にするなッ!」

 

朱乃は雷を連発するが、全て剣護のデスカリバーに斬られてしまう

 

戦いを見物しているコカビエルは笑いが止まらなかった

 

「悪魔に堕ちるとはな!ハハハ!全く愉快な眷属を持っているな、リアス・グレモリーよ!赤龍帝、禁手(バランス・ブレイカー)に至った聖剣計画の成れの果て、バラキエルの娘、挙げ句に天敵とも言える魔族の鎧を宿した小僧!お前も兄に負けず劣らずのゲテモノ好きのようだ!」

 

「コカビエル!兄の―――――我らが魔王への暴言は許さないっ!」

 

「余所見をしている場合か?『双頭の炎龍(ツイン・プロミネンス)』!」

 

剣護が邪聖剣から2つの頭部を持つ炎の龍を解き放った

 

炎の龍は大口を開けて、回転しながら突き進んでくる

 

リアスは魔力弾、朱乃は雷を放って相殺しようとするが力負けしてしまう……

 

「キャァァァァアアアッ!」

 

「うわぁぁぁあああっ!」

 

炎の龍が起こした大爆発をくらってしまう一同

 

煙が晴れると、一誠逹は地に倒れて呻き声をあげる

 

「どうした?数ではそっちが勝っていると言うのに、俺の中級技にも耐えられないのか?つまらんな」

 

剣護は興味をなくした様に(きびす)を返して、未だに傷を押さえて死にそうになっている新とゼノヴィアの所へ足を運ぶ

 

「神……代、剣護……!てめぇ、ゴホッ!本気でゼノヴィアを殺す……気か!?こいつは、今までお前を尊敬してたんだぞ!ゲホッ!そんな女を!」

 

「それがどうした。最初からいない物に酔狂にすがり付き、人を救っていこうなんてバカげた(おこな)いをしている奴がいるなんて反吐(へど)が出る。神がいなければ今後どうしたら良いのかも分からん奴なんざ―――――死ねば良いんだよ」

 

剣護の冷酷な発言に新は遂にキレた

 

血を流しながらも、許せないと言う想いを糧に立ち上がっていく

 

「ふざけんじゃねぇぞ……!自分の部下に死ねとか言ってじゃねぇ!ゼノヴィア!お前、かつての上司にこんな事言われて悔しくねぇのか!?」

 

「……だが、私は……これからどうすれば……」

 

「神がいない事を聞いただけで腑抜けてんじゃねぇ!神がいなくても、人間や俺達は前に進めるんだよ!こいつの言葉に耳を貸すな!こいつは前に進む事から逃げただけ―――――ガフッ!道が無いなら……自分で作れ!お前しか歩けない道を、作りやがれ!ゲボッ!ゴホゴホゴホッ!」

 

項垂れていたゼノヴィアは顔を上げる

 

彼女の目には、涙が浮かべられていた

 

「茶番だな。そろそろ灰になれ」

 

剣護は慈悲の欠片も見せないまま邪聖剣に聖なる炎を集結させる

 

新はゼノヴィアに言い聞かせる様に叫んだ

 

「自分の道を切り開け!それが悪魔だろうと何であろうと、生きてる奴全てが出来る事だァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

ドクンッ……!

 

ゴォォォォォオオオオオッ!

 

新の全身から今までに無い程、膨大な魔力の柱が発生する

 

「っ!?何だ!この異様なオーラを放つ魔力は!?」

 

剣護を始め、コカビエルや一誠達が驚く

 

その魔力は魔王級かもしれない程の質量だった

 

「……っ!力が身体中に溢れてきやがる……!新しい力が、頭の中に流れてきやがるっ!」

 

新は脳内に流れてきた"新しい力のひとつ"を読み取り、闇皇剣(やみおうけん)を天に(かざ)

 

「神代剣護、お前言ったよな?神がいなくなった事に感謝してるって。神がいないから邪聖剣を手に入れたってよぉ。簡単に言えば、祐斗の聖魔剣もお前の邪聖剣も―――――神と魔王が不在の世界で生まれたバグ要素って事だ」

 

「それがいったい何だ?」

 

「俺もバグ要素になるぜぇ?恐らく、未来永劫語り継がれるだろう―――――最凶最悪のバグの誕生だァッ!!」

 

柄の蝙蝠の目が赤い輝きを放ち、新は"力の名"を大きく叫んだ

 

 

「『進化する昇格(エボルシオン・プロモーション)』ッ!!『騎士(ナイト)』ッ!!」

 

 

強いオーラを放つ闇皇剣が、西洋式の槍に形を変えていく

 

新が槍を掴むと黒いマントはジェット機のウイングの様な翼となり、背中の中央には幾つものブースターが備わっていく

 

両肩、両腕、両足からは刃物が隆起し、胸部には剣柄だった蝙蝠の顔がアーマーとなって装着される

 

機械と西洋騎士が混ざった様な風貌の闇皇が、魔力のオーラを振り払って誕生した

 

「何だと……!?傷も回復した上に、何なんだ……この身震いさせる程の魔力は!?」

 

「満を持して降臨したぜ。これが俺の新しい力!神と魔王が不在のバグった世界によって覚醒した『闇皇の鎧』の進化形態、『闇皇の神速槍騎士(アーク・カイザー・ジェットスピア・ナイト)』だ!今から俺の速度は、光をも凌駕するぜェェェェェェェッ!」

 

「新が……進化した!?」

 

禁手(バランス・ブレイカー)ではない力……!?あの子はどこまでデタラメになっていくの!?」

 

一誠、リアス達は勿論……コカビエルもこの異常事態に驚かざるを得なかった

 

「何だあの小僧は!これ程の力を隠していたと言うのかっ!?」

 

「違うな堕天使。新しく覚醒したんだよ。禁手(バランス・ブレイカー)の様で禁手(バランス・ブレイカー)では無い!さぁて、覚醒した力を存分に発揮してやるかァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

背中のブースターから魔力が噴出され、新は通常の『騎士(ナイト)』を凌駕するスピードで剣護に迫り、左拳を腹に入れた

 

「がはっ……!い、いつの間にっ……!?」

 

「さっきのお返しだ!ガンガン行くぜェェェェェェェッ!」

 

新はその場から姿を消し、今度は背中に蹴りを入れる

 

剣護を吹っ飛ばすと、すかさず転倒予定位置に先回りして上空に蹴り上げる

 

「な、なんて速さだ……!さっきの『騎士(ナイト)』とは、比べ物にならない程の速度で攻撃している……!」

 

剣護の体が上昇し、数百メートル上空で制止した

 

「くっ!ナメるな!『燃え盛る光砲(フレイミング・レーザー)』ッ!」

 

炎のサークルから巨大なレーザーが発射される

 

新はレーザーが来る前に超高速―――――いや、超神速移動した

 

剣護の背後に出現し、槍を構える

 

「武器も新しくチェンジしたぜ。こいつは闇皇剣(やみおうけん)ならぬ、闇皇槍(やみおうそう)だ!」

 

「なっ!?」

 

ズガガガガガガガガッ!

 

新は高速かつ連続の突きを打ち放つ

 

剣護はデスカリバーで防御するが、全部の突きを受けきる事は出来なかった

 

「ぐおぉぉぉぉおおおおおっ!」

 

突かれた勢いで地面に落下した剣護は、大きな穴を作り上げた

 

土煙の中、剣護は邪聖剣を杖代わりにして立ち上がる

 

「……チッ。今の俺では、奴に勝てないか……恐ろしい男だ。良いだろう……この場は退いておく。命拾いをしたなゼノヴィア」

 

剣護は炎の柱を発生させて姿を消した

 

勝てない事を理解して逃げるのは正解であろう

 

「ハハハ!こいつはスゲェやッ!次はてめぇの番だコカビエル!この『闇皇の神速槍騎士(アーク・カイザー・ジェットスピア・ナイト)』で、その翼全部に風穴開けてやらぁっ!」

 

「……フフッ。フハハハハハハハハハ!面白い!面白いぞ闇皇の小僧!瀕死の状態から復活した上に、新たな力を得るとはな!流石の俺も拳が疼いてくるわ!」

 

コカビエルは狂喜にまみれて地上に降り立つ

 

「俺はこれを機に戦争を始めるぞ!お前達の首を土産に!俺だけでも、あの時の続きをしてやる!我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せ付けてやる!」

 

「言ってろクソ堕天使ィッ!今の俺は、てめぇに負ける気が一切しねぇ!リアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』竜崎新の力と、仲間を侮辱した罪――――――思い知りやがれェェェェェェェッ!」


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