ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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やっと投稿できました……。数ヶ月遅れての投稿……最近は趣味と言える物が何も出来なくなってきてしまい、本当に気が滅入ってます……。


兵藤一誠と幽神正義、2人を合わせれば迷コンビ、『イッセーギ』の誕生だッ!?(前編)

 ――――と、教会トリオはそのような事があったそうだ。

 

 あの後、新と一誠はそれぞれ『エロゲ』について女子から相当問い詰められた挙げ句、皆でエロゲをプレイする羽目になり、そのお陰で一誠の性癖の1つが赤裸々になったそうです(笑)。

 

「最近はゼノヴィアさんとイリナさんまで新くんに大胆になってきているので、面食らう事もしばしばだとリアスにうかがってますが……。とうの新くんも大変そうじゃないですか?」

 

 ソーナが冷静にそう(たず)ねるが、新は「最近はもう慣れちまったよ」と返す。たまにゼノヴィアとイリナが強引過ぎて痛い目に遭うのがたまにキズだが……。

 

「……後発は(つら)いですわ」

 

 レイヴェルが遠い目をしている。マネージャーを務める彼女は新の膝上(と言う名の指定席)を先輩に取られてなんとも言えないようだ。あとでアフターフォローしてあげましょう(笑)。

 

 ソーナがメガネをキラリとさせながら言う。

 

「学校ではそのような事はしないように。学内でのエロスは禁止です」

 

「相変わらず厳しいな、ソーナは。……だが、断るッ! 俺からエロスを取ってしまえば、もはや何も残らないッ! たとえ禁止にされようが、俺は俺のやりたいようにやるッ!」

 

 新は意気揚々とエロス禁止を突っぱね、堂々とエロス宣言。ソーナは軽く(ひたい)を押さえて嘆息する。ゼノヴィアがテーブルに置かれたクッキーを1つ摘まむと訊いてくる。

 

「ところで何の話をしていたんだ?」

 

 新と一誠はゼノヴィア達に魔法の事で話していたと返すと、ゼノヴィアは途端に渋い表情を浮かべた。

 

「……私はヴァチカンにいた頃から魔法使いの相手が苦手だったな」

 

 確かにゼノヴィアの戦闘スタイルから見れば、魔術師や魔法使いの(たぐい)とは相性が悪い。主に力技で突き進む脳筋パワーゴリ押し戦法(笑)は破壊力こそ申し分無いが、(から)め手を多用するテクニックタイプが相手では一方的にやられてしまう……。特に今後は厄介な相手が増えていく為、課題になるとも言えよう。

 

 アーシアが会話に続く。

 

「教会でも魔法の使用については賛否がありましたよね?」

 

 ゼノヴィアとイリナが「その通り」と同時に(うなず)いた。アーシアが言うように教会でも魔法の使用について未だに是非が分かれていて、一般的な魔法は悪魔の魔力が大元なので、信仰心の厚いお偉方にとっては面白くない代物らしい。

 

 他の神話体系にある魔法(例えば北欧式など)も聖書の神の範疇から逸脱するものゆえ、更に賛否が分かれている。宗教の思想の相違というものだ。その辺を割り切ってコッソリ魔法を使用してる教会の戦士もいるらしい。

 

 新は参考までにゼノヴィアとイリナに問う。

 

「お前らに訊きたいんだが、魔法を突破するには何が必要だと思う?」

 

 今度のテロリストは魔法使いが絡んできているので、その対策は必要不可欠。すると、2人が出した答えは―――。

 

「何だかんだ言っても魔法を(はじ)けるだけのパワーは必要だと思うっ!」

 

「前衛ならそれもありよね。もちろん、後衛のフォローありでだけれど」

 

「結局パワー頼りの脳筋ゴリ押し戦法かよ……」

 

 全く参考にならなかった答えに新は呆れ、一誠も苦笑いするしかなかった……。すると、誰かが嘆くように息を吐く。

 

「魔法に対する心構えですか? よろしい、私がお話ししましょう」

 

 そこにいたのはロスヴァイセで、ジャージ姿での登場だった。百均ショップへ買い物に行ったままだったが、ようやく帰ってきたようだ。……美人なのに普段の生活がジャージなので勿体無い(笑)。

 

「良いですか、アンチマジックとは―――」

 

 ロスヴァイセが生徒に教えるようにゼノヴィアとイリナに対魔法の持論を語り始めた。新は“面倒臭そう”と言う理由でバックレようとしたものの、ロスヴァイセが魔法陣を展開してすかさず捕縛。

 

 捕縛された新はゼノヴィアとイリナの間に座らされ、ロスヴァイセから説教&対魔法の持論責めを喰らう羽目になった……。

 

 そんな場面を見て苦笑していた一誠のスマホから着信音が鳴る。発信元は『幽神(鬼)』と表示されていた(笑)。発信元を見た一誠は少し固まった後、恐る恐る通話ボタンを押す。

 

「……この電話番号は電波の届かない所にあるか、電源が入っていないか、相手との通話を避けている為かかりませんっ」

 

『ほう、貴様でもそんな冗談を言える立場になったとは、 良い度胸だ。ならば、今から突撃しても問題は無さそうだな』

 

「大いにあるからやめてくれっ! さすがに他人様(ひとさま)の家で刃傷沙汰(にんじょうざた)、流血沙汰を起こせば訴えられるぞっ!?」

 

『安心しろ。訴えられるのは貴様だけだ』

 

「なんで俺だけぇ!?」

 

『それは貴様自身が理解しているだろう? この世に生を受けた瞬間から変態の皮を被ってるような人種が何をほざく』

 

「思うんだけどさ、最近のお前って口撃(こうげき)刺々(とげとげ)しさが増してないかっ!? 相手が俺じゃなかったらとっくにメンタル折られてるぞ!」

 

『折られるだけで済んでマシだと思え。本来なら貴様など百と八つに切り刻み、粉になるまで挽いてから跡形も無くなるよう溶かして殺りたいぐらいだ』

 

「理不尽ここに極まれりってヤツだよ……。で、俺にそんな罵詈雑言を浴びせる為だけに電話してきたのか……?」

 

『それはついでだ。今日は造魔(ゾーマ)に関する情報が少し手に入ったから、耳としての機能を忘れた貴様の耳にも入れてやろうと思ったんだ』

 

「いい加減泣くぞっ!?」

 

 容赦が微塵も無い口撃に一誠は既に涙目となっていた(笑)。それもその筈、通話相手の鬼―――もとい、幽神正義(ゆうがみまさよし)は一誠が最も苦手とする人物。色々確執があったものの、彼は現在グリゴリに属し、遊撃兼諜報部隊として活動している。造魔(ゾーマ)に関する情報を少しでも集めるべく、アザゼルは幽神兄弟を動かしていた。造魔(ゾーマ)の情報はなかなか手に入らず、大きく動けば情報を入手する前に封殺されかねない……。

 

 そこで幽神兄弟の隠密性と行動力に白羽の矢が立ち、彼らは造魔(ゾーマ)に関する情報収集に努めていた。

 

「それで、情報は手に入ったのかよ?」

 

『難航したが無いよりはマシ程度には掴んだ。造魔(ゾーマ)は様々な企業や富裕層どものバックアップは勿論、ここ最近は周辺組織を傘下にする吸収活動を活発化させている』

 

「周辺組織ってどんな奴ら?」

 

『半グレや愚連隊のような組織だ。多額の契約金、または実力行使で傘下に加え、汚れ仕事の斡旋(あっせん)もしている。もはや造魔(ゾーマ)は裏社会を代表する大元の企業(そしき)と言っても過言ではない』

 

「先生もそんな事を言ってたっけ。造魔(ゾーマ)は大企業みたいな組織だって」

 

『今回手に入った情報は造魔(ゾーマ)の傘下に入った組織―――まあ、一兵卒程度の連中ばかりだが、それなりに有名だったらしい。まずはカラーギャングだ。それぞれ赤・白・青のメインカラーで区別された組織がある。赤の「ブラッディ・アイ」、白の「ホワイト・スネイク」、青の「ブルー・サンダー」―――この3つがカラーギャングどもの大元になっている。最近では黒の「黒霊兵団(こくりょうへいだん)」、黄色の「ガン・ドッグズ」等も加入したそうだ』

 

 幽神正義から造魔(ゾーマ)の傘下に入った組織の情報を聞かされた一誠は顔を(しか)める。ただでさえ凶悪なメンツが揃っているのに、勢力拡大にも余念が無い動きを見せ付けられている……。少なくても情報を入手できるだけ(さいわ)いと言ったところだ。幽神正義が話を続ける。

 

『その他にも構成員が甘党だらけの組織「未留奇衣(みるきー)」だの、「肉巣威(にくすい)」、「鉄血裏(てっちり)」、「古魔津成(こまつな)」、「水鳴州(みずなす)」、「不愚鎖志(ふぐさし)」、「過萬兵柄瑠(かまんべーる)」、「矢貴雨鈍(やきうどん)」と言った弱小組織もおこぼれを目当てに参入してきた』

 

「何か居酒屋にでもある名前ばっかりだな……」

 

『ただ……問題なのはそう言った木っ端どもを束ねる大元の組織が4つある事だ。さっき説明したカラーギャングどもとは全く次元が違う。そいつらは四勢力の間で同盟を結びつつ、造魔(ゾーマ)のバックアップも得ている。つまり、造魔(ゾーマ)が大手企業や元請けと例えるなら―――その4つの組織は中堅企業ならびに下請けと言ったところだ』

 

「って事は……その4つの組織を潰せば、造魔(ゾーマ)の勢力拡大も止める事が出来るってのか?」

 

『少しは頭を使えるようになったみたいだが、それも容易(たやす)い事ではない。中堅と言えど猛者揃いだ、並大抵の力では太刀打ち出来まい。まず1つめが「凶獣団(ビースト)」と呼ばれる組織だ。四勢力の中で最も数が多く、主に自分の姿を動植物等に変える―――いわゆる獣化(じゅうか)能力を持つ(やから)で構成されており、雑兵(ぞうひょう)どもを6人の隊長が統率している。その中には「神器(セイクリッド・ギア)」持ちもいるそうだ』

 

「獣化に加えて『神器(セイクリッド・ギア)』持ちか、また嫌な敵が増えそうだな」

 

『2つめは……』

 

 ここで幽神正義が口を止める。その事に気付いた一誠は「どうした?」と訊くと、彼は『チッ』と舌打ちをした。

 

「え、なんで舌打ち? 俺そんなに嫌われてるの?」

 

『……2つめの組織は貴様の大好物だから胸糞悪くなって自然と舌打ちしただけだ』

 

「ここまで嫌悪感を出されるともう清々(すがすが)しくなってくるわ……。って、俺の大好物ってどういう事?」

 

『2つめは「蝶の楽園(パピヨン)」と言って、女のみで構成されている組織だからだ。しかも、かなりの美人揃いらしい……チッ』

 

「なぁにぃっ!? 美女美少女だらけの組織ィッ!?」

 

 一誠は即座に食い付き、グフフの変態顔となる。幽神正義が舌打ちをする理由も納得(笑)。彼は女性に対する免疫力が低い―――特にスケベな要素が大の苦手だ。しかし、以前と比べればマシになった程度まで来たが……それでも不安の種は拭い去れない。

 

「そうかぁ。幽神、お前もそれを調査できる程に成長したんだな……。以前のお前なら鼻血噴射を避けるべく諦めていただろうに……っ。何か感動したっ! と言うわけで、早速紹介してくれ。いったいどんな美女美少女達がいるんだ?」

 

阿呆(あほう)が。聞こえは良いが、実態は男を奴隷や家畜のように扱った挙げ句、痛ぶり殺して(えつ)に浸る相当な外道集団だぞ。貴様はマゾっ気があるのか?』

 

「えっ、そんな悪の女王みたいな集まりなの……? いや、夢と希望を諦めるにはまだ早いッ! たとえ相手が外道でも、美人のお姉さんや可愛い美少女がいるなら、俺の勝利は確約されたも同然! 大義名分の『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』が火を噴くぜッ!」

 

 一誠の意気揚々で気分上々な決意表明を聞かされた幽神正義は『…………チッッッッッッ』と過去最大級の舌打ちを放つ。そして話を戻す。

 

『3つめは「六魔凶将(オラシオンセイス)」と呼ばれる少数精鋭の組織だ。名前の通り、構成員は6人しかいない。だが……個々(ここ)の戦闘力は非常に高く、単独でも大陸1つを制圧できる程だと言われている』

 

 たった6人、されど6人。襲い掛かってくる脅威は造魔(ゾーマ)だけに(とど)まらない……。一誠は固唾(かたず)を呑んで話を聞くしかなかった。

 

『そして、4つめは「六魔凶将(オラシオンセイス)」よりも更に人員が少ない組織―――「双角(そうかく)剣刃(けんじん)」。こいつらに関する情報は(ほとん)ど無い。2人の剣客(けんかく)と言う情報以外はな。まあ、バケモノじみた強さである事は間違いないだろう。「凶獣団(ビースト)」、「蝶の楽園(パピヨン)」、「六魔凶将(オラシオンセイス)」、「双角の剣刃」―――この四勢力を通称「四獄(よんごく)同盟」と言い、造魔(ゾーマ)の基盤を固めているらしい。とりあえず調査で得られた情報はこれぐらいだ』

 

「逆によくここまで情報を掻き集めたもんだな。尊敬できるよ」

 

『貴様らが表立って動けない分、俺達は自由に動ける。まともに情報収集もできない貴様にとっては渡りに舟だろうな』

 

「せめて尊敬の念を一瞬で消し飛ばすような罵倒はやめてくれっ!? これでも感謝してるんだぞッ!」

 

『貴様やアザゼル(悪徳堕天使)から感謝と言う似つかわしくない戯言(ざれごと)を聞かされるぐらいなら、羽虫の羽音を聞く方がまだマシだ』

 

「やっぱ俺、お前が嫌いだわッッ!」

 

『安心しろ、俺も貴様如き愚物(ぐぶつ)を最初から好いてなどいない。本来なら有無を言わさず肉塊になるまで蹴り潰して殺るところだが、アーシアの事を(かんが)みて何とか我慢してやっているに過ぎん。それを忘れるな』

 

「そう言う割には、つい数日前まで俺を殺す気で追い掛けてきたよなぁっっ!?」

 

『あれは貴様が悪い。それ以外に理由など無い、以上だ』

 

 幽神正義からの通話が切れて、一誠は「ハァ……っ」と深い溜め息を吐く。そこへアーシアが話し掛けてくる。

 

「イッセーさん、どうかされましたか?」

 

「いや、大丈夫だ、アーシア。ちょっと鬼からキツい説教めいたものをくらっただけだから……」

 

「鬼、ですか……?」

 

 アーシアが頭に疑問符を浮かべる中、一誠は幽神正義に追われた事を思い出してしまう。それはアーシア達教会トリオが秋葉原から帰ってきた日の翌日まで(さかのぼ)る……。

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 いつも通り授業が終わり、新、一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナが帰路につこうとした矢先―――少し離れた場所に見覚えのある人物2人が(たたず)んでいた。1人は幽神正義、もう1人はその弟、幽神悪堵(ゆうがみあくど)。彼らは(みずか)ら出向く事は滅多に無いのだが……この日は何故か兄弟揃って姿を見せていた。

 

「あれ、幽神じゃないか? おーい、どうしたんだ〜?」

 

 一誠が呼び掛けた直後、幽神正義は弟・悪堵から“何か”を受け取り、“何か”を装着した顔を伏せながら歩いてくる。

 

「幽神、いったい何の用があって来t―――ッッ」

 

 一誠の言葉が急に止まる。それもその筈、一誠は本能レベルで危険を察知し、危険の正体を目撃してしまったのだ……。幽神正義の歩みがだんだん速くなり、手に握られた鈍色(にびいろ)の得物が一瞬だけ光る。

 

 血管が浮き出るほど強く握り締められる得物―――出刃包丁の切っ先を一誠に向けて……幽神正義が()えた。

 

死ャァァァ嗚呼ァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!

 

「ホォヮアァァァァアァァァァァッッッッッ!!? ちょっ、いきなり何すんのぉッ!?」

 

 音速を超えるようなスピードで突進してきた正義に対し、一誠は限界まで体を(ひね)ってギリギリで回避した。土煙を上げて止まる正義は、並々ならぬ殺意を孕ませて告げる。

 

「……貴様ァァァッッ、よくもやってくれたなぁ……ッッ! よくも……よくも……よくもヨクモよくもヨクモよくもヨクモォォォォオォッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 振り返った正義は般若の面を着けており、一誠の全てを滅ぼさんとする鬼へと変わり果てていた……っ。その気迫と殺気に思わず悲鳴を上げそうになる面々。だが、身に覚えの無い一誠は抗議を放つ。

 

「ちょっと待てっ、話が全く分からん! なんでいきなり刃物を突き付けられなきゃならないんだッ!?」

 

「とぼけるなぁッッ! 貴様がアーシアに何かを吹き込んだんだろうがッッッ! その影響を受けてしまったアーシアがジュビアに何かを吹き込み、あのような暴挙へ走らせたッッ! そのせいで俺は……俺は……また、あの世へ逝きかけたんだァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 話を要約してみると―――秋葉原から帰ってきたジュビアが早速コスプレショップの店員に推奨された衣装『ウェディング・ビキニ』を着て正義へ猛アプローチ。不覚にもエロ衣装姿のジュビアを見てしまった正義は鼻血だけでなく、耳や目からも血を噴射。体積の9割以上の血液を排出し、失血死寸前まで逝ったそうだ……。ようやく輸血を終え、意識を取り戻した正義はジュビアからアーシア達教会トリオと共に秋葉原のコスプレショップに行った事を聞き、即座に一誠が原因だと突き止め……理不尽な殺意を爆発させた(笑)。

 

 正義がブチギレている理由を聞かされた一誠は慌てて猛反論しようとした。

 

「いやいやいや! 待て、落ち着けって! そもそも俺関係ないじゃんッ!? 俺の知らないところでそんなオイシイ話―――」

 

「何も違ってないッ! 関係ないとも言わさんッ! 貴様が悪いッ! 全部貴様のせいッ! 貴様が変態で、変態が貴様だから起こったんだッッ! そうじゃなければ、俺が何度も何度も死にかけるなんて事があるわけ無いだろうがァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「とんでもない理不尽暴論ッ! と、とにかくアーシアも怖がってる事だし……一旦深呼吸して落ち着こう、なっ? そんな怖いお面も取って、面と向かい合って話し合いましょう! そうすれば、きっと分かり合い許し合える筈ッ!」

 

 まるでアザゼルと同じように必死に弁明を(まく)し立てて、落ち着かせようとする一誠。だが、正義は般若の面を取り外し―――その下に潜んでいた自前の(般若)を見せて再度訊ねる。

 

「兵藤、今の俺が貴様の言葉に耳を傾けると本気で思ってんのか……ッ?」

 

「…………お面(般若)の下にも、素顔(般若)が潜んでたのね……ッッッッ」

 

「そういう事だ……ッ。さあ、覚悟は良いか……ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 弁明は無意味だと悟った一誠はアーシアに鞄を渡し、澄んだ表情で告げる。

 

「アーシア、先に帰っててくれ。俺は……今晩無事に帰れないかもしれない……。もし、生きて帰れたら……優しく慰めて欲しい……っっ」

 

「は、はいっ! イッセーさんの帰りを、いつまでも待ってますッ!」

 

「ぐすっ……ありがとう、アーシア……。それじゃあ―――いってきまァァァァァすッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 

 

 一誠は命を懸けた猛ダッシュでその場を離れ、般若の面を着け直した(幽神正義)が2本の出刃包丁を構えて追い掛ける。本人のみならず、その影までも鬼と見紛う程の気迫を込めて……。

 

 突然始まった『DEATH鬼ごっこ』に誰もが呆然とする中、幽神悪堵がアーシア達のもとへ歩み寄る。

 

「悪かったな、こんな形で呼び止めちまって。今日はジュビア(ねえ)さんに頼まれて来たんだ。コイツをアーシアに渡してほしいって」

 

 そう言うと悪堵はポケットから数枚のチケットを取り出し、アーシアに渡す。それはレジャー施設の割引招待チケットだった。場所は駒王町(くおうちょう)から10駅ほど離れた町で有数のレジャースポット『水流・絶ランド』。室内に多彩なプールや売店、更には水族館まで併設している大型の娯楽施設だ。悪堵が話を続ける。

 

「この間、トレミスの一件で迷惑かけちまっただろ? あの時のお詫びも兼ねた親睦会って事で、ジュビア姐さんが提案してきたんだ」

 

「良いんですか? こんなにたくさんいただいて」

 

「ああ、何か知らねぇけどジュビア姐さんが推してくるんだ。それに……一度アンタと話がしたいらしい。何を話すかは分からんが、とにかく来てくれ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 アーシアが丁寧にお辞儀して礼を言う。用事を終えた悪堵は、『DEATH鬼ごっこ』を続けている兄・正義のあとを追っていった。

 

「兄貴〜っ! 追加の包丁だ! どれを使う!」

 

刺身包丁(さしみぼうちょう)を寄越せ、相棒。抜群に切れ味の良いヤツをな。今日は変態トカゲの三枚おろしを振る舞って()る」

 

「変態トカゲって嫌な仇名(あだな)を付けるなぁッ! ってか、鬼が増えたァァァッ!? イィィィィィィィヤァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!」

 

 一誠は喉が潰れそうな程の絶叫を上げながら爆速で逃げていき、(幽神正義)と悪堵は複数の得物(包丁)(たずさ)えたまま獲物(一誠)を追い掛けていった……。

 

 その場に残された面々、ゼノヴィアは「あれは……良い鍛錬になりそうだ」と脳筋バカ発言。アーシアとイリナは苦笑するしかなく、新は「一誠、死ぬなよー」と棒読みで応援する気皆無のエールを送るだけだった。その後、一誠は親睦会の日を迎えるまで『DEATH鬼ごっこ』を続ける羽目になったそうな(笑)。

 

 

 ―――――――――――――――

 

 

 そして、迎えた親睦会当日。レジャー施設『水流・絶ランド』の前までやって来た一誠とアーシア。一誠はまだ『DEATH鬼ごっこ』の疲れが残っているせいか、ドンヨリと沈んだ表情をしていた。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ……ちょっと疲れが抜けてないだけだから……」

 

 一誠は顔をパンパンと叩き、気を持ち直す。何せ本日は待ちに待った親睦会で、場所は室内プールを売りとしているレジャースポット。一誠は心中で嬉しさを吐露する。

 

『室内プールで親睦会ッ! つまり、アーシアや他の女の子達の水着を見られるって事だッ! 今日に至るまで何度か死にかけたけど……その分ハイリターンがやって来ると思えば! グフフのフッ♪ アーシアの水着も楽しみだけど、今日はそれだけじゃないッ!』

 

「イッセーさま、よろしかったのですか? 私達までご招待いただいて」

 

 一誠に確認を取るのは銀髪の美少女―――ユキノ・アンジェル。以前、造魔(ゾーマ)絡みの一件で知り合い、現在はグリゴリの管理下で働いている。彼女の他にもオレンジ髪の小悪魔めいた(見た目は)美少女チェルシー・ルビナス。金髪の女剣士ディマリア・ロディーナ。更にはユキノの姉―――ソラノ・アンジェルと美人揃いに囲まれていた。テンション爆上がりの一誠は勢い良く答える。

 

「もちろんっ! むしろ向こうから招待してくれたんだから、お言葉に甘えるのが礼儀っすよ! にしても、まさかソラノさんまで来るとは思わなかった」

 

「フフ〜ン、ワタシとユキノは姉妹なんだから、いつでも何処でも一緒なんだゾ? こんな楽しいイベントがあるなら、行かないわけにはいかないゾ? イッセー、ユキノのたわわでキャワワな水着姿を見てハァハァしても良いんだゾ?」

 

「きゃあッ! お、お姉さま……ダメです……っ! イッセーさまの前でそんな……っ」

 

 ソラノが背後からユキノの豊満なバストを鷲掴み、形を歪める程に揉みまくる。一誠は見事なまでに鼻の下を伸ばす。これだけでも疲れが取れそうなぐらいだ。

 

 そうこうしてる内に幽神兄弟と、親睦会の提案者たるアスタロト家の息女ジュビアがやってきた。他にもアスタロト家と懇意にしているヴァサーゴ家の双子姉妹―――ウェンディとシャルル。元過激派教団の一員で、現在アスタロト家に居候中の美女―――ヒメガミ・フブキとフローラ・コスモス。そして、リント・セルゼン―――以上が親睦会に参加する面々である。到着するや否や、幽神正義が一誠に敵意を込めた睨みを放つ。

 

「貴様ァ……また痴女(おんな)を増やしたのか……ッ! アーシアと言うものがありながら、何処まで汚い我欲を撒き散らすつもりだッ⁉」

 

「ちょっ、幽神っ! ここでの流血沙汰は勘弁してくれっ! 今日は親睦会の筈だろ!?」

 

「親睦会? いいや、違うな。今日開かれるのは―――()(ぼく)会だ。死ぬまで貴様を撲殺するDIE()イベントだと聞いている」

 

「物騒過ぎる当て字やめてッ!?」

 

 今にも爆発しそうな怒りを燃やす正義。そんな中、珍しくジュビアが前に出て正義を止めに入る。

 

「正義さま、今日はジュビアが提案した親睦会の日です。今日1日は嫌な事を忘れてください。日頃の疲れを癒やす為に来たのですから、たまには羽目を外しましょうっ」

 

「……ジュビアの言う事も一理ある、か。……分かった。ジュビアに免じて今は勘弁してやる。さっさと行くぞ」

 

 正義は不機嫌ながらもスタスタと施設の方へ歩いていき、ジュビア達もあとに続く。とりあえず命の危機を脱した一誠は安堵の息を漏らし、気を取り直して皆と共に施設へと入っていく。

 

『ハァ……始まる前から殺意を向けられるとかシャレにならねぇよ……。しかーし! 中に入ってしまえば、そこからはノータッチ! これだけ多くの美女美少女達の水着を合法的に拝めるッ! 親睦会を開いてくれたジュビアさんっ、ありがとうございますっ! よーしっ、今日は皆のムフフな水着姿を拝み倒してやるぞーっ!』

 

『……ついに、この時がやって来ました……っ! 正義さまとの仲を深めつつ、恋敵(アーシアさん)の真意を探る……ッ! 正義さまが度々(たびたび)口にする恋敵(おんな)……ッ。し、か、も! 正義さまが愛の告白をしたのに、正義さま自ら退くと言うあり得ない暴挙をさせた恋敵(おんな)……ッ! 何故そんな事になったのか、洗いざらいジュビアが吐かせてあげましょう……ッ! たとえ、如何なる手段を使ってでも……ッッッッ!』

 

 一誠のスケベな心中と、ジュビアの物騒な心中が不吉に(ただよ)う。十中八九、この親睦会は無事に終わらないだろう……。

 

 何故なら―――良からぬ気配を宿した者達が、施設の中へと入っていく一誠達を見張っていたのだから……。




今回は長めで前編を書きました!次は中編を予定しています!

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