『……いつも余裕をかましてるキリヒコが、今回は逆に追い詰められてやがる……っ。こんな状況、初めて見た……! そして―――マジでミルたんって何者なんだ……っ⁉』
アーシアの治療を受けている新が心中でそうツッコミを入れる。それもその筈、キリヒコと対峙しているのは一般人である筈の
一般人に片膝をつかされたせいか、全身から邪悪なオーラを解き放つキリヒコ。それは今までに見た事が無いほど凶悪に満ちていた。一方、ミルたんは本調子のままで―――。
「魔法少女☆ミルたんのミルキーパゥワーは、悪の邪神なんかに負けないにょ!」
「
キリヒコは薄気味悪い哄笑と共にくぐもった声音で自分に対する皮肉を吐く。罵詈雑言らしきフランス語を吐き、ミルたんに対して完全に敵意を超えた殺意を孕む。右腕の
「効かないにょ! 正義のミルキーパゥワーを纏ったミルたんは無敵だにょ!」
相変わらずブッ飛んだ持論で常識を破壊していくミルたん(笑)。ミルたんのミルキーパゥワーでキリヒコが撃ち放った光弾は全て弾き飛ばされ、距離を詰められる。
「ミルキィィィィィィィィィ・ダイナマァァァァァァァァイト・ラブリィィィィィィィプゥゥアァァァァァァァァンチィァァッ!」
周りを震撼させる程の勢いを乗せた拳が
またしても剛拳を食らったキリヒコは吐血し、後方に飛び退いてしまう。腹を押さえ、苦悶に歪む呻き声を絞り出す。ミルたんは再度『ミルキー・ダイナマイト・ラブリーパンチ』を突き出していく! ダメージが溜まっているせいで逃げられないであろうキリヒコに、ミルたんの剛拳が迫り来る………ッ!
ガゴォォンッ! ―――と大きく響き渡る音……。再びミルたんの剛拳がキリヒコの芯を捉えたかと思ったが―――。
ブシュゥゥ……ッ! ミルたんの右腕から血が噴き出し、ミルたんの彫りの深い顔が苦痛に歪む。
「……ッ! とっても硬いにょ……っ!」
堪らず
「ポーズだけがクロノスの
「―――ッ!? お前、まさか……っ!」
「
そう言ってキリヒコは右腕の『
唯一違う点があるとすれば、2つ以上の強化能力を同時に発動するのが出来ない事である。キリヒコ
しかし、1つずつしか使えないと言えど……ただでさえ時間停止能力を持つユナイト・クロノス・キリヒコが身体強化の錬成能力まで使うとなれば、鬼に金棒どころの話じゃない……。
キリヒコはズンズンと足跡を刻みながら歩み、ミルたんに近付いていく。一方、ミルたんは自前のスティックを構えて迎え撃つ体勢を取った。
「ミルキィィィィィィィィィ・マァジカルゥゥゥゥゥゥゥゥ・コメットォォォォォォォォォォ・スゥィィィィィィィィィィングァァァアッッ!」
直後、ミルたん自前のスティックが弾き飛ばされ、ミルたんの
「これが悪の邪神の邪悪パゥワー……ッ。
「いい加減あなたの
『
必殺の音声が鳴り、キリヒコの全身から揺らめいているオーラが更に邪悪さを増していく。一般人たるミルたんに対して容赦の無い念押し。それ程までにキリヒコの苛立ちは募っていたのだろう……。ミルたんは相変わらず自分のミルキーパゥワーを信じ、筋骨隆々の肉体を脈動させ―――地鳴りと共に飛び出していった!
「愛とぉっ! 勇気とぉっ! 正義のミルキーパゥワーッ! ミルたんに力をくださいにょぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっっ! ミルキィィィィィィィィィィィ・ゴッド・シャァァァァァイニングゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・クロスチョォォォォォォオォォォォッップゥァァァァァァアアアッッ!」
巨木のような両腕を交差させ、ミサイルのような速度でキリヒコに向かっていくミルたん。キリヒコも邪悪なオーラを全開にして、足元に時計盤の幻影を出現させる!
『
幻影時計盤の針が回転する動作に合わせて、キリヒコの蹴りが走り―――ミルたんのクロスチョップと正面衝突……ッッ! 極大の爆発と爆風が発生し、余波がリアス達にも襲い掛かる!
リアス達は直ぐに防御魔法陣を張り巡らせるが、予想以上に衝撃の余波が強かったせいか―――防御魔法陣は
「うぅ……っ、なんて威力……っ」
リアスが痛む体を起こして、皆の安否を確認。
ミルたんは苦悶に顔を歪ませ、両腕からは血を流し、筋骨隆々の全身が傷だらけとなっていた。一方、キリヒコは足から血を流しているものの、他に目立った外傷は無し。どうやら必殺技の衝突はキリヒコの方に軍配が上がったようだ。キリヒコが大きく息を吐いて言う。
「本当にバカげた存在ですね、あなたは。……
『
なんと、キリヒコは再び必殺技の音声を鳴らせて、全身から邪悪なオーラを噴出させ始めた! 新や一誠でさえ死にかけたような技をミルたん相手に連続で発動。どうやら本気で殺るつもりだ……っ。邪悪なオーラが今度はキリヒコの足に集束していく。
「
『
フランス語で罵倒らしき言葉を吐き散らし、キリヒコは高速で飛ぶように水平移動を開始。その勢いを利用した回転蹴りがミルたんのボディに食い込む! ミルたんは筋肉をパンプアップさせて防御しようとしたが……敵う筈も無く、極大の衝撃と共に後方へ吹き飛ばされてしまった!
しかし、これだけでは終わらない……。ミルたんの背後に時計盤の幻影と同じ様な紋様が描かれた
情けや容赦など微塵も無いオーバーキルな所業に、新もリアス達も言葉を失ってしまう……。爆炎の中からミルたんがドサッと地面に落下。全身はズタボロの血まみれ、もはや立ち上がる事すら出来ないだろう……。しかし、それでもミルたんは―――ッ!
「……ミ、ミルたんは……魔法……少女、だ……にょ……っ」
「まさか、あれだけの攻撃を受けても死なないとは……未知のバケモノですか、アレは? まあ、これで少しは
皮肉をタップリ混ぜた礼を告げるキリヒコ。あとはトドメを刺すだけと言わんばかりに再び『
それを見て危険だと判断したリアス達は直ぐにキリヒコへ攻撃を仕掛けようとした。ロスヴァイセが魔法で出した着替えを着用し、全員が手を向けるが―――キリヒコは既に読んでいた。
「鬱陶しいんですよ―――
『
『
キリヒコは即座に振り返り、邪悪なオーラに満ちた砲撃をリアス達に見舞った。砲撃は複数に分裂し、リアス達を残らず殲滅するべく襲来してくる。先程と同じように防御魔法陣を展開するリアス達だが、耐えられる筈も無い……。防御魔法陣の壁が撃ち破られた、その刹那―――。
「本邦初公開! レヴィア・バリアーッ!」
セラフォルーが自前のスティックを振るうと、リアス達の身体が輝きを纏い始めた。直後にキリヒコの放った砲撃を受け、吹き飛ばされたものの、リアス達は奇跡的に無傷で済んだ。この不可思議現象を目の当たりにしたキリヒコは再び怒りを表す。
「
「それが私、魔法少女マジカル☆レヴィアたんのミルキーパワーだからよ!」
「またソレですか……っ。バカのひとつ覚えのように意味不明な力を発揮して、私を怒らせたいようですね」
キリヒコは『
『『『
『
『
『
三者同時に必殺の音声を響かせ、邪悪なオーラが全身から噴出される。キリヒコ(分身А)が刃を向けた『
それとほぼ同じタイミングで『
「ミルキー・スパイラル・レヴィアビィィィィィムッ!」
セラフォルーの杖から
火花が散り、衝撃の余波が地を
「うぅ……っ。さすが
セラフォルーの放った魔力が一層勢いを増し、徐々に斬撃と砲撃を押していく。セラフォルーのマジカル砲撃が双方の攻撃を完全に押し退け、2体のキリヒコ(分身)は
肩で大きく息をするセラフォルー。何とか押し返したが……まだ本体の攻撃が残っている……!
「終わらせましょうか―――
爆煙の中から邪悪なオーラを纏ったキリヒコが飛び出し、先程と同じように高速の水平移動で距離を詰めていく。邪悪なオーラが右に集まり、セラフォルーに必殺の蹴りを見舞うべく迫り来る……!
セラフォルーも負けじと自前のスティックに膨大な魔力を流し、☆マークと❤マークがセラフォルーを囲うように飛び交う。セラフォルーがスティックを突き出して叫ぶ。
「ミルキー・ラブアンドピース・レヴィアアタァァァァックッ!」
セラフォルーの強大なマジカルスティック攻撃とキリヒコの邪悪極まる必殺キックが激突し、特大の衝撃波と火花が辺り一面に散らばるっ! 2人の力はほぼ互角……と言いたいところだが、キリヒコの方が若干
「うぅ……っ! ミルキーパワーは絶対に負けないもん……っ!」
「そのふざけた力もどうやらネタ切れのようですね。腹立たしかったですが、なかなか面白くもありましたよ。それでは……永遠に
キリヒコがトドメを刺そうと
雷炎モードの新はキリヒコの蹴り足に雷炎を纏わせた拳打を叩き込み、キリヒコの体勢を崩した。横槍を入れられたせいでキリヒコはセラフォルーのマジカル攻撃もまともに受けてしまい、後方に吹き飛ばされる。
その一瞬の隙を見逃さず、新は兜の口部分を開いて魔力をチャージ。セラフォルーも「新くん! 一緒にいくわよー!」と自前のスティックを
「―――『
「レヴィアビィィィィィィムッ!」
雷炎が迸る砲撃と膨大なマジカル砲撃が同時に発射されるが、キリヒコは余裕を崩さない。何故ならヤツには時間停止能力があるから……。キリヒコはバカ正直に食らうつもりは無いとばかりに時間停止能力を発動させる。
『
「――――っ⁉ 何故発動しない⁉ まさか、あの珍妙な生物の攻撃を食らったせいで不具合が起きた……!?」
まさかの事態発生! なんとキリヒコの『
特大の二重砲撃は目前。急遽変更して錬成能力を発動し、全身を鋼鉄化。防御力を高めたキリヒコが二重砲撃に呑み込まれる……!
砲撃が止み、爆煙の中からキリヒコが姿を現す。全身からは煙を噴き、血も流している。先程とは打って変わって疲弊した様子を見せるキリヒコ。しかし、それでもヤツはくぐもった声で不敵に笑う。
「……フッフッフッフッフッフッ。
「……お前にしては珍しい弱腰発言じゃねぇか。さすがにキツかったか?」
「
そう言うとキリヒコは
「……ふぅっ。今回は散々だったな、いろんな意味で……おっと」
フラつく新をリアスが支える。一方でセラフォルーは泣き顔になっていた。何故なら先程のバトルで自前のスティックが破損してしまったから……。ボロボロのスティックを
「ふぇぇぇぇえええんっ! 私の……私のスティックが壊れちゃったよぉぉぉぉぉお……っ! お気に入りだったのにぃぃぃぃぃぃ……っ!」
「お姉さま、仮にも四大魔王なのですから。そんな事で大泣きしないでください」
「うえぇぇぇぇぇんっ! ソーたんの意地悪ぅぅぅぅ! 皆を守ろうと頑張ったのにぃぃぃぃぃっ!」
ギャン泣きするセラフォルーに頭を痛めるソーナ。そこへリアスが
「セラフォルーさま、それなら私が買って差し上げます。形はどうあれ、新と皆を守ってくださったのですから。お礼をさせてください」
「ホント⁉ ありがとね、リアスちゃん☆ それと先に謝っておきまーす、ゴメンね?」
「―――っ?」
リアスが疑問を顔に浮かべた途端、ポンッと軽い音がする。今度はロスヴァイセを含めた女性陣の衣服が綺麗サッパリ消え去り、再び全裸祭りと化していた(笑)。
「実はさっきのバリアー、どんな攻撃からも守ってくれる代わりに、使用後は魔法少女もののエッチなお約束パターンになっちゃうの。テヘペロ☆」
『キャアアアアアアアッ!』
再び悲鳴を上げる女性陣。朱乃とゼノヴィアは先程と同じように「あらあら」「やれやれ」と冷静でいた。リアスも嘆息しつつ手ブラで隠す。一方、2度目はしっかりと巻き込まれたロスヴァイセは涙目になっていた。
「うぅ……っ、また新さんに恥ずかしいところを……。これでは本当にお嫁に行けなくなってしまいます……っ」
「まあ、そう言うな。いずれ俺が貰う予定なんだから」
「―――っ。こんな状況でも新さんはブレませんね。……今の言葉、絶対に忘れないでくださいよ?」
ロスヴァイセは紅潮した顔を
「……先輩、シャツを貰います」
「今度は問答無用で追い剥ぎか⁉ つーか、さっき俺の上着を引っ剥がしていっただろう! それにもうインナーシャツしか残ってねぇんだぞ⁉」
「……さっきの攻撃で無くなりました。おとなしくインナーシャツを渡してください」
「そう言いつつもヘッドロック掛けるお前の神経に脱帽する痛ダダダダダダダダッ!
小猫の全裸ヘッドロックで締め上げられる新。今の新に身包みを渡さないと言う選択肢は与えられない……。そこへ再びゼノヴィアが参戦。
「それじゃあ、私は今度こそ新のズボンを貰うとするか」
「ゼノヴィア⁉ 本当に新くんのズボンを
「ああ、穿くぞ? それともイリナが新のズボンを穿くか? いや、その方が良いかもな。私の裸で新の視線を釘付けにしようか」
「ええっ⁉ お、男の子のズボンを私が穿いちゃうの⁉ そ、それは天使的にもしてはいけない感が……。でもっ、このままスッポンポンは恥ずかしいし……っ。新くん! 私はいったいどうしたら良いのかな⁉」
「とりあえず、俺の頭蓋骨が破裂する前にこのバカ2人の暴走を何とかしろ……っ!」
再び繰り広げられる珍妙なコント(笑)。その代償として新はインナーシャツとズボンを奪われ、パンイチになってしまった……。
「今回の新は悲惨ね。ふふっ、笑っては悪いでしょうけれど……っ」
「そ、そうですね。でも、一番の原因は私の身内なんですが……」
珍妙な目に遭っている新を見て、笑いを堪えきれないリアスとソーナ。しかし、ソーナの言う通り……今回の元凶はセラフォルーである。当の本人はと言うと、妹ソーナの全裸に興奮し続けていた。
「ハフゥぅんっ! ソーナちゃんの生まれたままの姿! お姉ちゃん、今ならどんなお仕事でも余裕で終わらせちゃうわ!」
「セラフォルーさま……」
「リアス、こんな姉ですみません……」
もはや嘆息するしかないリアスとソーナ。そこへパンイチの新が
「おいコラ」
「きゃっ、新くん。そんな格好で女の子に迫ってくるなんて大胆☆」
「元はと言えばアンタが原因だよな⁉ アンタがこんな騒動に巻き込むから俺はパンイチにされる羽目になっちまったんだぞ! いや、そもそもパンイチにされる意味が分からん!」
「ん〜、そこは私にも分からないかな。でもでもっ、可愛い女の子達に囲まれるのは男の子から見ればラッキーじゃない?」
「俺がパンイチじゃなければな!」
「新、もう諦めましょう。セラフォルーさまには何を言っても敵わない気がするわ……」
新を
否、世の中そうは問屋が
パァァンッ! 小気味良い音が響くと、セラフォルーの衣装が弾け飛び―――全裸となった。小柄な身体には不釣り合いとも言える豊満なおっぱいがプルンプルンっと揺れ、程良い細さの腰、綺麗な形に整ったお尻が新の眼前に
「……あら?」
「お姉さまっ!?」
キョトンとするセラフォルー、驚愕するソーナ。一同もソーナと同じような反応を示す。何故このような事態になったのか?
セラフォルーの衣装だけ特別強固な術式を
『……あ、あらら〜っ。遂に私もエッチなハプニングに巻き込まれちゃった……。そう言えば私、新くんに裸まで見られるのは初めてかも……っ。ここはとりあえず、可愛らしさをキープしつつ恥じらう!』
セラフォルーは頬を赤く染め、手ブラで
「いやんっ☆」
「セラフォルーさま、こんな時にポーズを決めてる場合ですか……」
リアスが嘆息しながら言う。ソーナは慌てた様子でセラフォルーに駆け寄り、遮るようにセラフォルーの前に立つ。
「あ、新くん! お姉さまを見てはいけません! それと私の方も見ないでくださいっ!」
「どんな要求やねん」
思わず関西弁でツッコむ新。身を挺して姉の裸を死守しようとする
「うぅっ、ソーナちゃんっ! 自分も裸なのにお姉ちゃんを守ってくれるのね⁉ はふぅんっ! 嬉しさと
「お、お姉さま⁉ 何をわけの分からない事を―――きゃあぁっ!」
献身的な妹の姿に感極まったセラフォルーは、ソーナを抱き締めるように密着してきた。ソーナの小振りなおっぱいとセラフォルーの豊満なおっぱいがくっつき合い、ムニュムニュと形を歪ませる。ここから更にセラフォルーの暴走が始まる……。
「お姉さま! ふざけるのはやめてくださ―――ひゃあぁぁっ! ど、何処を触ってるんですか!?」
「ハァハァ☆ ハァハァ☆ ソーナちゃんのスベスベで柔らかいお肌……! お胸……! お尻……! どうしよう、お姉ちゃん変な気持ちになってきちゃった……っ! これはマジカル☆レヴィアたんの闇落ち
「何を意味不明な事を言ってるんですか! いい加減に―――ぁん……っ! リ、リアスっ! 新くん! 助けてくださいっ! お姉さまの奇行を止め―――にゃぁぁんっ!」
「あ、新! セラフォルーさまを止めましょう! このままだとソーナの大切なナニかが色々と失われるわ!」
「お、おう。分かった」
新とリアスはセラフォルーの奇行を止めるべく、急ぎ足で向かうが……モミクチャしているセラフォルー、必死に抵抗するソーナ。両者の足が絡み合ったせいで体勢が崩れ、新とリアスもろとも巻き込んで倒れた。
「ぶべらっ!」「「きゃあっ!」」「あぁんっ☆」
新は後頭部を打ち、その両隣にリアスとセラフォルーが倒れ込む。そして、ソーナは……新の上に覆い被さるように倒れてしまった。モミクチャに巻き込まれたせいで新の右手はセラフォルーのおっぱいを、左手はリアスのおっぱいをそれぞれ
「ぅんん……っ。ちょ、ちょっと新……っ」
「やんっ☆ 新くんってばぁ♪」
紅潮するリアスと何故か喜ぶセラフォルー。それよりも問題は……ソーナの方だった。新は現在パンイチで仰向け、ソーナは全裸で新の上に覆い被さるように倒れている。
第三者の視点から見れば―――「これ、間違い無く入ってるよね?」と思われるほど危ない体勢になっていた……。自分の現状に気付いたソーナは、顔が一気に赤くなり湯気まで噴き始めてしまった。
「ぁ……ぁぁ……っ。ふにゃぁぁ……っ」
「ソーナっ!? ソーナが気絶しちゃったわ! 新! あなた、ソーナになんて事を……っ!」
「いやいやいや! 俺なにもしてないんだけどぉ⁉」
「はぅぅんっ! 新くんに跨がるソーナちゃんも、恥じらい過ぎて気絶しちゃうソーナちゃんも可愛いッ! これはもう永久保存版決定ね! でもでも、新くん! ソーナちゃんの処女はまだあげられないわ! お姉ちゃんたるレヴィアたんの試練をクリアしてからじゃないと!」
「アンタもさっきから何を言ってんの⁉ もう嫌だ、こんなカオス! 誰か止めてくれ!」
そんな新の懇願にやって来たのは……ジト目の小猫でした(笑)。小猫は新の髪を掴んで引き剥がし、そのまま捻って自身の方に向かせる。ゴキッと嫌な音がなりつつ、小猫が危険な雰囲気の睨みを利かせる。
「……先輩、エロエロな展開で楽しいですか?」
「こ、小猫……っ? まずは落ち着け。これに関して俺は何も悪くない筈―――」
「……問答無用です」
ブゥゥンッ! 小猫は新を空中へ勢い良く放り投げ、それを追うようにジャンプ。空中で逆さまとなった新の両足を交差させて左手でロック。そのまま背中合わせにたすき掛けして強烈なエビ反りを掛ける形で新の上半身を右脇に捕え、更に顔面を右膝に押し付けるようにして固定する。それはまるで数字の“
後はそのまま地面へ着弾するのみ……。
「小猫っ、お前パーフェクト奥義まで使いこなせるようになったのか!?」
「……先輩、ダイヤモンドパワーで耐えてください」
「俺にそんな技は使えなグベァァァァアアアアアッッ!」
エロ祭りの代償として、新の背骨と頭蓋骨は
―――――――――――――
後日。余談だがオーディションは当然ご破算。監督達一般人の記憶から今回の事件は消して、リアス達が参加した事は無かった事にされた。セラフォルーは凄く落ち込んでいたが……。
ミルたんはキリヒコの攻撃によって重傷を負っていた筈だったが、いつの間にか姿を消していた。本当に謎だらけの
「あの娘、力強く清い瞳を持っていたわ。きっと、私と同等かそれ以上のミルキーパワーを有した魔女っ子なのよ。私、駒がまだ余っているし、ぜひぜひ眷属にスカウトしたいぐらいだわ☆」
ツッコミどころ満載だったが、新は「一誠、あのミルたんとか言うバケモノをお前の眷属にしろ。あれはキリヒコを倒せる切り札になるぞ」と更に斜め上の進言を一誠にしたそうな……。無論、速攻で「絶対に嫌だボケ!」と拒否されてしまったが。
更にセラフォルーは魔法陣から何かを取り出す。
「あ、そうだっ。聞いて聞いて。実はね、『魔法少女マジカル☆レヴィアたん』特別ストーリー編の制作が決まったの! タイトルは『魔法少女マジカル☆レヴィアたん VS
セラフォルーが取り出したのは『魔法少女マジカル☆レヴィアたん』の番組ポスター。それには先程言ったタイトルが大きく掲載されており、クロノス化したキリヒコがレヴィアたんの敵としてそのまま掲載されていた。既に1話が放映され、その視聴率は従来以上の数字を叩き出したらしい……。
『魔法少女マジカル☆レヴィアたん』の監督にクロノス化したキリヒコのキャラクター案を持っていったところ、即座に「良いね、それ!」と採用されたとか(笑)。制作陣も今までに無かった前衛的なアイデアに刺激を受け、特別長編の制作が決定した。
「更に更に! それに合わせて『魔法少女マジカル☆レヴィアたん』のフィギュアも作っちゃったの! しかも、3万個に1つの確率でシークレットフィギュアが当たるのよ! 監督にお願いして私だけ先取りしちゃった! 見て見て☆」
セラフォルーが高々と掲げたのは勿論――――クロノス化したキリヒコを模したシークレットフィギュア。細かいところまで再現したシークレットフィギュアは完成度が無駄に高く、ファンの心を
「今まで私達は利用されてきたんだもの! だったら、こっちも思う存分利用してあげるわ! これでレヴィアたんの人気と冥界経済もウナギ登りよ☆」
もはや、何からツッコんで良いのか分からない……。
―――――――――――――――
「……
無論、そんな情報が
「もう、冥界全土はこの情報で持ち切りだって。コメントも『時戒神マジカッケー!』とか『レヴィアたん頑張れ!』、『クロノスのデザインはまさに神www』って書かれてるの」
「完璧にナメてますね、奴らは。こんなバカみたいな商業に利用されるあなたもマヌケですが、セラフォルー・レヴィアタンはそれ以上に大バカ極まりない。こんな事で
シルバーが不快そうに吐き捨てる中、キリヒコはタブレットの映像とシークレットフィギュアの画像を見た後、「ふむぅ……」と考え込む。
「……いよいよ私もレア物扱いですか」
「「えっ?」」
「……フッ、フフッ。……フッフッフッフッフッフッ、フッフッフッフッフッフッ」
キリヒコは不敵な含み笑いをしながら、その場を離れていった。その様子を見て、レビィは思った。
「……もしかして、満更でもない?」
――――――――――――――
―――とまあ、こんな事がありました(笑)。
新達は場所を自室から移して、竜崎家に増設された地下プール場のプールサイドに
新と一誠は海パン一丁。レイヴェルは泳がないのか、水着の上にTシャツを着ている。しかし、服の上からでもボリュームのある胸部が
ソーナは柄の可愛いワンピースタイプの水着。生徒会長の水着姿なんて早々に見られないレアものだった。
「家族以外の男性に水着姿を見せたのは新くんが初めてかもしれませんね」
「おっ、意外だな。まあ、私服姿もそうだが……水着も見れたのは確かにラッキーだな」
「とは言え、新くんにはもっと恥ずかしい姿を見られてますけど……」
「あー、裸とか、あの時の姉妹サンドとか?」
「―――っ! だから、そういう事を平然と言わないでください! 本当に恥ずかしかったんですから………っ」
ソーナはオーディション時の騒動を思い出したせいか、顔を真っ赤にして目を逸らす。あの時はセラフォルーが主な原因だったので、ハチャメチャかつエロい展開になってしまったから無理もない。
「……いつか本当に責任取ってもらいますよ」
「ん、何か言ったか?」
「な、何でもありませんっ。とにかく、破廉恥な言動は控えめにしてくださいね?」
ソーナに釘を刺される新だが、人に言われて控えるような男ではない(笑)。一方、死神っ
≪あっしはここが一番落ち着くんですぜ≫
「変なヤツだな……。せっかく来たんだし、少しぐらい泳げば良いのに」
≪お誘い感謝致しますぜ、オッパイザーの旦那。でも、あっしはこう見えてインドア派なんで勘弁してくださいな。その代わりと言っちゃなんですが、あっしに関する小粋な情報を1つ≫
「何だ?」
≪あっしはノーパン・ノーブラ解放主義ですぜ≫
「ぶっふぅっ!?」
唐突なベンニーアのノーパン&ノーブラ宣言に、新は飲もうとしていたお茶を噴き出してしまった。新はゲホゲホと
「ベンニーア! こんな場所でそういう事を言うのは止めなさい!」
≪いやいや、マスター。これはお詫びの意味も兼ねた重要な事ですぜ。実際、世の男性の大半がノーパン・ノーブラにときめくらしいじゃねぇですか≫
「間違った知識を鵜呑みにしてはいけません!」
≪おや、アテがハズレちまいましたかね?≫
クスクスと笑うベンニーアに、赤くなった顔で注意するソーナ。新はようやく落ち着きを取り戻してハァッと深く息を吐く。
「イリナには負けん!」
「ゼノヴィアには負けないわ!」
100メートルもある地下プールで泳ぐのはゼノヴィアとイリナ。壮絶な水泳対決の真っ只中であり、物凄い勢いの水音と共に
「どちらも負けないでくださーい!」
プールサイドで2人を応援しているのはスク水姿のアーシア。そのすぐ近くでプールに入っているのは黄金の変態―――ファーブニル。
『アーシアたんのスク水。俺様、アーシアたんの浸かったプールの水を飲み干したい』
相変わらずのド変態ぶり……。その頭部にはオーフィスが鎮座しており、更にオーフィスの頭上にも小さなドラゴン―――ラッセーが乗っかっていた。これぞ……ドラゴンの3段重ねである(笑)。
「我、この三体合体なら、グレートレッドに挑戦できる、と思う」
『合体してねぇよ、ただの鏡餅体勢じゃねぇか……』
そう心中でツッコむ新は、一誠とドライグに「あのパンツドラゴン、そろそろヤキ入れとかねぇか?」と進言するも―――。
『俺様、何も見えない』
「俺様も、ナニもミエナイ」
一誠とドライグは既に壊れていた……それもファーブニルの口調を真似する程に……。ファーブニルが加わって以降、疲れが溜まっているのが目に見えるようだ。
「『
「魔法使いの集まりは結構ありますものね」
新の質問に朱乃が
他にもルシファー眷属の『
あとは人間からの転生悪魔でありながら、最上級悪魔にまで上り詰めたリュディガー・ローゼンクロイツが過去に在籍していたと言う『
悪魔と魔法使いの関係はかなり密で、改めて魔法使いの各組織を頭の中で巡らせていると……この地下プール場を訪れる者が居た。
「にゃー。疲れたわ」
やってきたのは黒い着物を纏った女性―――
「ただいまにゃー」
黒歌が不意に新に近付いて抱き着く。着崩れた着物からきめ細やかで白い肌のおっぱいがこれでもかと主張し、もにゅんと柔らかな感触を与え、新の頬に自分の頬を擦り付けてくる。
「にゃはは〜、リューく〜ん♪ ちかれたんで癒やしてほしいのよねー」
ファサッと掛かる黒髪から
朱乃が不安げな表情で見つめる。彼女は身内以外の女性が新に近付くと、年上の女性とは思えないぐらい不安がってしまうのだ。
「黒歌。お前、ヴァーリに呼ばれて向こうに行ってたんだろう?」
新が頬擦りしてくる黒歌にそう問い掛ける。小猫、ギャスパー、レイヴェルを助けるべく魔法使いの集団(実際は
「そうなのよー。もうさー、アジ・ダハーカが襲ってきてねー」
『――――ッ!?』
この場にいる全員(新、一誠、朱乃、レイヴェル、ソーナ)が黒歌の言葉に驚いた。それもその筈、アジ・ダハーカとは以前、アザゼルが話していた滅んだ邪龍の1体……。
「……滅んだ伝説の邪龍の1匹ですわ。確か、凶悪なドラゴンの1匹だと……」
レイヴェルがそう言って、ソーナが続く。
「千の魔法を操り、ゾロアスターの善神の軍勢に牙を剥いた邪悪なドラゴン。英雄スラエータオナが封印に近い形で滅ぼしたと伝えられていますね。……そのドラゴンもグレンデル同様に現世に
どうやら予想以上に事が大きくなっているようだ……。『
『……ある意味でここが正念場かもしれん。赤龍帝として、な』
ドライグも覚悟を持った声音でそう呟き、一誠も神妙な面持ちとなる。最悪な状況下での
黒歌は頬を離して、目元を若干厳しくさせた。
「……私達ってさ、その手の
黒歌は新のティーカップを勝手に取って、口を付けてから話を続ける。
「……あの邪龍は殴っても蹴っても斬っても笑って向かってきたわ。血を全身から噴き出しながらよ? 倒れる気配が全く無かったの。……ありゃ、ダメよ。まともじゃないわね。個人的に戦っちゃいけない部類のモンスターだと思うにゃ。その英雄何たらも封印でやっとってのも納得できる程のしぶとさだったわ」
ドライグが低い声音で言う。
『……出来れば戦いたくはないな。恐らく、アルビオンもそう思った筈だ。破壊衝動と自滅願望を
豪気で剛胆なドライグも邪龍との戦いだけは否定的になるぐらいだ。それほど厄介な部類なのが
「そのあと、もう1体の滅んだドラゴン―――グレンデルとローブを着た男が現れまして……その場でアジ・ダハーカとグレンデルが私達との戦いを巡って争い始めてしまったのです。あまりに混迷したので、私達はそこで一時退散する事にしました」
確かにグレンデルとユーグリットはヴァーリが現れた事を聞き付けていたが、転移した先で仲間割れを起こしていたのは意外だった。……否、邪龍同士には仲間意識すら無いのかもしれない。
“頭のネジがハマってすらいない”―――。このドライグの弁が邪龍を的確に表している事に寒気すら覚える……。
「あれとの戦いを喜んで迎えたヴァーリもどうしようもないバカ者だったにゃ」
呆れた口調で黒歌はそう言う。新と一誠も『アイツは戦い以外の事にも興味を抱いた方が良い』と心中で同意した。
「あとでその件に関していくつか質問してもよろしいでしょうか?」
ソーナがルフェイに問うと、彼女も「はい」と素直に応じていた。黒歌が新の鼻を摘みながら言う。
「リューくん。あんたはあんなドラゴンになっちゃダメよ? きっと、リューくんはリューくんのままでなきゃいけないんだと思うにゃ」
「言われなくても、俺はヴァーリのようなバトルバカにも邪龍みたいなイカレた奴にもなるつもりはねぇよ」
新の率直な意見に黒歌も「良い子にゃ」と
バサラ・クレイオス、ユナイト・クロノス・キリヒコ、エンドヴィル・ジョロキア―――次々と現れる
だが、越えてはいけない線を越えなければならない時が来てしまった場合は―――歯を食い縛り、どれだけの罵詈雑言を一身に受けてでも越える……っ。新はその覚悟を取り戻しつつあった。
ここで黒歌が話を切り替えるように訊く。
「で、何を話していたのかにゃ?」
「魔法使いとその組織の事についてだ」
新がそう言い、レイヴェルが会話の流れを黒歌達に説明してくれた。すると、ルフェイが手を上げて恐る恐る口にした。
「実は私、元は『
中級悪魔昇格試験の折、冥界で曹操によって空間の中に閉じ込められた時にも彼女の転移魔法が活躍した。珍しい魔法を使えたのも有名どころに所属していたお陰でもある。
レイヴェルが頬を膨らませながら言う。
「組織の名前の繋がりですけど、この間、攻めてきた『はぐれ魔法使い』の集団―――『
しかも、『
朱乃がうんと1つ頷いて言う。
「それらの魔術師組織が有名所ですわね。私達若手悪魔の主な取り引き相手はメフィストさまのところでしょうけれど」
現状では『
『……『
新が心中で毒づく。実を言うと……新は『
そして、そのトップの1人でもある
『また、あの女が絡んでくるだろうな……。先日、最悪の形で会ったばかりだってのに……あの性悪女め……っ!』
―――話はつい先日まで
今回はネタが豊富でした(笑)。なるべく早く更新したいのに、なかなか出来なくてもどかしいです……。次回は新の黒歴史が少し分かる回にしたいと思います!