その日の放課後、オカルト研究部の面々は部室に集合しており、職員会議を終えてきたロスヴァイセが少し遅れて合流
ソファに座る新達を確認したリアスが立ち上がり、見渡すように話し始める
「さて、皆、今日集まってもらったのは他でもないの。―――今日から例の件、『魔法使い』との契約期間に入っていくわ」
―――魔法使いとの契約
悪魔と魔法使いの関係は古くより太く濃密で、人間が悪魔に願い、契約する形態とは違う代物である
魔法使いと言う人種は基本的に自分の魔法研究を生涯に渡って磨き続ける魔の探求者
黒魔術、白魔術、召喚魔術、精霊魔術、ルーン文字式、地域ごとの術式、その他にも多くの魔法があり、その中から自分なりのテーマを決めて、一生をそこに注ぐ
研究を自分だけの秘匿としたり、探究の仕方も人それぞれ
その魔法使いと悪魔の関係についてリアスが改めて言う
「魔法使いが悪魔と契約する理由は大きく3つ。1つは用心棒として。いざと言う時、バックボーンに強力な悪魔がいれば、イザコザに巻き込まれた時に相手先と折り合いが付けられるからよ」
「丸っきりヤクザだな」
新がそう言うとリアスも苦笑いしながら「そうね」と答え、指を2本立てた
「2つめ、悪魔の技術、知識を得たいが為。もっと言えば冥界の技術形態ね。魔法使いが研究に使う為にそれらが効力を発揮するの」
それだけなら直に冥界に行って欲しい物を直接手に入れたり、他の陣営経由でも入手できる筈なのだが、それらの方法は高リスクらしい
前者は冥界に行く為の手段が相当限られている為
新や一誠などが手軽に冥界へ行けるのは「上級悪魔グレモリー」の眷属だからであり、悪魔でもない魔法使いが気軽に行ける程、冥界までの道のりは楽ではない
仮に行けるとしてもハイリスクな条件を要求され、魔術師の歴史に名を残す程の者なら冥界へのパスも手に入れられるが……それに関しても相当な限定条件が課せられる
つまり、悪魔や堕天使でもない者がそう簡単に冥界に行く事は出来ない……ヴァーリ等が冥界にヒョッコリ姿を現すのは異常な強さゆえにだ
そういう意味では己の強力な転移魔法のみで冥界に侵入する魔法使いも中には居るようだが……その手の
そして、後者の「他の陣営経由から欲しい物を手に入れたらどうなのか」と言う事だが、そちらは仲介料を取られてしまう為、値段がバカみたいに跳ね上がるらしい
欲しい物次第では下手をすれば生涯の研究で得た富―――全財産でも足りないぐらいの値段を付けられてしまう
たとえばフェニックスの涙は冥界でも高級なアイテムだが、一般の魔法使いからしてみれば10個でも少ないと評される程にレアだと言われている
その為、悪魔と契約して直に等価交換した方が安上がりになる(それでもだいぶ高値の取引となるらしい)
リアスが指を3本立てた
「最後に、簡単な事よ。己のステータスにする為、悪魔と契約するの。強力な悪魔と契約すればそれだけで大きな財産となるわ。私のお父様やお母さまだって、魔法使いと契約しているのよ? 何か遭った時は相談事を受ける為に召喚に応じるってわけね。上級悪魔及び、その眷属ならばそれが義務の1つなの」
上級悪魔グレモリーの娘たるリアスが適正の年齢に達した為、リアスを始めとするグレモリー眷属は魔法使いとの契約期間に突入する事になり、それが今回の集まった理由でもある
ゼノヴィアが複雑そうに首をかしげる
「まさか、私が魔法使いに呼び出される側になるとは、人生とは面白いものだ」
リアスが苦笑して言う
「そうね。異能に
『はい!』
リアスの言う通り、これは仕事―――悪魔としてこれをこなさずに上級悪魔を目指そうと言うのはあり得ない
魔法使いとの契約―――良い相手を見つければ、それだけ高ステータスを確保できる
『……出来れば美人の魔女とかが良いよなぁ』
「……いやらしい事を考えていましたね?」
膝上に座っている小猫に足をつねられる新
そんなやり取りをしている内に、リアスが部室の時計を確認していた
「そろそろ時間ね。皆、魔法使いの協会のトップが魔法陣で連絡をくださるの。キチンとしていてね」
それを聞いて膝上の小猫も膝から降りて、新の隣の席に座り直す
ソファに勢揃いしたところで部室の床に大きな魔法陣が出現し、淡い光が円形を描いていく
「……メフィスト・フェレスの紋様」
祐斗がボソリと口にしたメフィスト・フェレスとは……
そんな事を思い返している内に現れた魔法陣は立体映像を映し出し、椅子に優雅に座った中年男性の立体映像が目の前に現れる
赤色と青色の毛が入り乱れた頭髪をピッチリと固めて、切れ長の両眼は右が赤で左が青と言うオッドアイ
アジュカ・ベルゼブブに似た怪しい雰囲気を
その
『これはリアスちゃん、久しいねぇ』
何とも軽い声音、もっと
リアスが挨拶に応じる
「お久しぶりです、メフィスト・フェレスさま」
『いやー、お母さんに似て美しくなるねぇ。キミのお
「ありがとうございます」
リアスが新達にメフィスト・フェレスを改めて紹介する
「皆、こちらの方が
『や、これはどうも。メフィスト・フェレスです。詳しくは関連書物でご確認ください。僕を取り扱った本は世界中に溢れているしねぇ』
いきなりのメタ発言をしているが、伝説の悪魔かつ魔法使いを束ねる
新の脇に座っていたレイヴェルがコッソリと口を開く
『……初代ゲオルク・ファウストも契約した後、初代が亡くなられた後も人間界に
『ふーん、人間界が気に入ったのか?』
「個人なんですよね。家とかじゃなくて」
一誠がつい気になって質問を投げ掛け、質問に対してリアスが説明をくれる
「メフィスト・フェレスさまは悪魔の中でも最古参のお一人で、活動の
『タンニーンくんには僕の「
タンニーンはメフィスト・フェレスの『
レイヴェルが更に補足説明をくれる
『メフィスト・フェレスさまは旧四大魔王さまと同世代だそうですわ。仲が悪かったようですけど。だから旧政府とは仲違いをして、人間界にお隠れになったそうですわ』
『旧四大魔王と同期……って事は、何年も生きてる中身爺さん悪魔か』
悪魔は魔力で見た目を変えられる上、同じぐらい長生きしているアザゼルやミカエルも外見は若い
まさに見た目は子供、頭脳は大人の探偵のような感じだ
耳打ちを聞かれたのか、メフィスト・フェレスが大きく頷いていた
『そうそう、その通り。僕は彼らがだいっ嫌いだったからねぇ。だから、今のサーゼクスくんやセラフォルーちゃんの事は大好きさ。何せ僕のやっている事の大半は容認してくれているからね。前魔王の連中ときたら、あれをしろ、これをしろって要求ばかりで嫌になってしまったよ。ま、現魔王のアジュカくんとだけは思想の違いで意見が対立しているけど、それにしたって嫌いって程じゃない』
つまり、現冥界政府とは良好と言うわけだ
『年寄りの話を聞いてくれるリアスちゃんは本当に良い子だねぇ。グレモリーはキミのお
「は、はい。グレモリー領の辺境でヒッソリと過ごされてますわ」
家督の引き継ぎの際、現当主は次の家主に全てを託すと隠居生活に入るらしく、その話を以前リアスに聞かされていた
リアスは既に隠居後の事も視野に入れ、日本に住むとも言っており、まだ当主にもなっていないのにだいぶ先の事まで考えているようだった
そこからリアスとメフィスト・フェレスの昔話、世間話、昨今の魔術師業界についての話が続いていった
「では、メフィスト・フェレスさま。ソーナとは既にお話を?」
『ううん、残念だけどね、あとになってしまったよ、リアスちゃん。なんでも新しい眷属を迎えてからお話をしたいと言うから、キミ達が先になったんだ。ちなみにサイラオーグ・バアルくんとシーグヴァイラ・アガレスちゃんとは既に話は済んだよ』
「そうですか。ソーナの新しい眷属。話には聞き及んでおりますわ」
遂に増えるソーナの新眷属、話では『
『いやー、キミ達「
“
聞き慣れない単語を耳にした新は、レイヴェルに訊いてみた
『最近つけられたサイラオーグ・バアルさま、シーグヴァイラ・アガレスさま、リアスさま、ソーナさまの若手悪魔4人を称した名称です。近年を
―――そこへ部室にアザゼルが入ってくる
「わりぃわりぃ、俺だけ会議が長引いてな。お、メフィストじゃねぇか!」
魔法陣に映し出される立体映像を見かけると、直ぐさま笑顔で対応
相手もアザゼルを見ると
『やーやー、アザゼル。この間ぶりだねぇ。先にリアスちゃんと話をさせてもらっていたよ』
「ああ、魔術師の協会も大変なもんだな。それより、今度こっちで飲まないか? 良い酒を手に入れてな」
「お知り合いなんですか?」
一誠がアザゼルに訊く
「まあな。長い付き合いだ。メフィストが悪魔側の旧政府と距離を置いている時期にな、 グリゴリは独自の接触をさせてもらっていたのさ」
『グリゴリの情報網は大変役に立ったよ、アザゼル。今でも世話になっているしねぇ』
「お互い様さ、メフィスト。ま、グリゴリ的に魔法使いの協会と裏でパイプを持っていて損は無かったわけだ。それも三大勢力の和平で秘密裏にする必要も無くなったが」
そこからは他の皆を置いて、2人だけで業界トークが始まってしまった
「なぬ! マジか! 同盟拒否ってたあそこの神話体系が交渉を?」
『と言うよりも、例のドラゴンの件を掘り返している
「……その件か。ま、古参の神話体系は他の勢力に対して完全に黙殺だからな。たとえ、自分のところの反乱分子がこちらに牙を向けても知らぬ存ぜぬを
『それだけ信仰者を奪われた事に対して心を閉ざしているのさ。特に僕ら聖書に記されし天使、堕天使、悪魔は他勢力に酷く嫌われているからねぇ。どれだけの神話を潰して、信仰と伝説を広めたやら。今まで和平に応じてくれたところだって、腹の中じゃどう思っているかな。各神話の主神さまの指導っぷりに期待するしかないねぇ。基本、僕らは本来の魔王と神を失っているから、神話体系の真実としては酷いぐらいに弱者だ。今の僕らが歩いている歴史は
「……それでも生きなきゃどうしようもねぇだろうが。神や魔王がいなくても俺らは生きてんだからよ」
『ま、僕も今の魔王達が好きだから、文句は無いよ』
……あまりにも深く高次元な会話に新はついていけなかった
それを察したのか、アザゼルとメフィスト・フェレスは会話を止めて、本題に入る事にした
『長くなってしまって悪かったね、リアスちゃん。それでは、キミ達と契約したいと言っている魔法使いの詳細データを魔法陣経由で送るよ』
そう言いながら映像のメフィスト・フェレスが指をクルクルと回して、新達の方に向ける
新たな魔法陣が部室の宙に展開し、そこから書類が多量に降ってきた
それを朱乃や祐斗が回収し、新や他の皆も書類の山を動かしていくが……魔法陣から落ちてくる書類は後を絶たず、次々と送られてくる
少し確認すると、履歴書みたいな書面が目に飛び込んできた
顔写真、または肖像画で魔法使いの顔らしきものが認識でき、あとは悪魔文字や魔術文字で項目が書かれていた
書面に目を落としていた祐斗が言う
「昔はともかく、今の悪魔に対する魔法使いの契約って言うのは、まず書類選考だよ。その後の選考、決定の仕様は僕達に
「就職活動ならぬ、契約活動ですね。今はこれが主流なんですよ。抜け駆けを目指す契約合戦をして、血に
ロスヴァイセが山盛りの書類を抱えて言う
それだけ力ある悪魔との契約はステータスであり、生涯の経歴として大きな意味合いを持つ……
そんな事を思っている内に、送られてきた書類の山を指名された者ごとに仕分けていく
1番書類が多かったのはリアスで、アザゼルはその結果に至極当たり前と言った
「ま、当然だろう。リアスはグレモリー眷属の『
「分かっているわ。じっくり選ばせてもらうつもりよ」
リアスが選ぶ魔法使いなら、名のある相手になるだろう
次に多いのはロスヴァイセだった
「なるほど、魔法を研究する上で私の北欧で得た知識―――世界樹ユグドラシルに関するものを欲したのでしょうね」
ロスヴァイセは自分の評価を冷静にそう分析していた
北欧神話の真実や知識を得たい魔法使いが多いと言ったところだろう
更にロスヴァイセは悪魔でヴァルキリー、稀少な存在でもある
次に多かったのは―――意外にもアーシアだった
「……こ、こんなにたくさんの書類をいただけるなんて……私で本当に良いのでしょうか?」
恐縮しているアーシア、自分がこんなにも多く求められているとは
メフィスト・フェレスが言う
『回復と言う能力はメリットが大きい。どこの時代、何処の誰でも癒しの力とは究極のテーマの1つだよ。キミと契約を結び、回復の恩恵を受ける。それを使って富を得る事も容易に可能だからねぇ』
確かに癒しの力を求める者は世界中にいる、それを考えればアーシアとの契約は大きい
儲け話にも出来る上、如何なる取り引きにも使えるだろう
「アーシア! 相手は慎重に選べよ!
『まあ、僕達協会が人選した者達だから、そこまで非道な輩はいないさ』
メフィスト・フェレスがそう言ってくれるものの、やはり心配なものは心配だ……
「安心なさい。私や朱乃もアーシアの相談に乗るのだから、下手な交渉はしないわ」
リアスと朱乃がついてくれるなら、心配事も薄れる
話を戻し、アーシアの次に並んだのが一誠➡新➡祐斗➡朱乃➡ゼノヴィア➡小猫➡ギャスパーと言う結果だった
全員のオファー具合を見てアザゼルが言う
「まあ、『
『ハハハハ、ま、大半が雑兵さ』
協会の理事たる者がそう言う事を言って良いのだろうか……?
『その割には冥界で人気者であり、
「魔法使いの連中はステータスも重視するが、それ以上に業界内の
『『いやいや、あんなおっぱい番組が流行る冥界の方が変だと思う……』』
新と一誠は渋い顔でそう思った……
メフィスト・フェレスはコホンと咳払いすると告げてくる
『そのようなわけで、今回の書類は全部送らせてもらったよ。めぼしい子がいたら、連絡をいただけるとありがたいねぇ』
「……今回? またあるって事か」
新が
「ええ、それはそうよ。今回で決まるとは限らないし、仮に契約を結んだとしてもその魔法使いが悪魔のように長生き―――永遠に等しい時間を生き続けられる筈もないわ。今回良い相手がいなかったら、また新たに書類をいただけば良いだけよ。契約を結んだとしてもその相手が寿命や事故で亡くなれフリーになるのだから、新規契約となるわ」
つまり、今回で無理に決める必要はない
祐斗が追加情報をくれる
「それに契約したとしても、期間限定の場合もあるからね。たとえば、相手の都合により1年だけの契約だったり、契約の代価を支払えなくなって解約と言う形もあり得るよ」
期間を設けての契約、不利益による解約……まさにビジネスそのもの
ファンタジーでダークな印象と思いがちだが、実際はとっても商業的だったようだ
山盛りの書類は持ち運べないので、転移魔法陣で自宅に送る
そんな中、メフィスト・フェレスが皆の手伝いをしていたレイヴェルに話しかける
『そこの女人はフェニックス家の者かな?』
「は、はい。レイヴェル・フェニックスと申します」
丁寧に挨拶するレイヴェルに、メフィスト・フェレスはアゴを手で
『うん……これはうちの協会だけに届いている極秘の情報なのだけれどね。どうにも「はぐれ魔術師」の一団が「
何とも不気味な情報にリアスが問い返す
「……それはどういう事なのでしょうか?」
『フェニックスの涙が裏でテロリストに流通していたのは知っているね?』
メフィスト・フェレスの問いにレイヴェルが頷いた
「はい。一部の卸業者が裏取引をしていたと耳にしましたわ。ですが、それはもう粛清されて、流通は元に戻ったと―――」
『いや、闇のマーケットで「フェニックス家」産ではない涙が、新たに売買されているようだよ』
その情報に全員が驚いた
製造元がフェニックス家ではない『フェニックスの涙』が流通している……
リアスが眉根を寄せる
「純正ではないのでしたら、偽物―――効果の無いものだと思いますが……。―――ッ!まさか……」
何かに気付いたリアスにメフィスト・フェレスが首を縦に振る
『そうだよ、リアスちゃん。純正に等しい効果を示す涙が裏で流れているんだ。ほら、これだ』
メフィスト・フェレスの手に小瓶―――“偽物”のフェニックスの涙が現れる
『どうやっているかは知らないけれど、フェニックス産ではないフェニックスの涙が流通し、それに呼応するかのようにはぐれの術者達がフェニックス関係者に接触している。ま、繋がっているだろうね。そこでそこのお嬢さんが狙われるかもしれないから、気を付けてほしいと思ったのだよ』
「…………」
メフィスト・フェレスの言葉にレイヴェルも表情を少しだけ陰らせていた
「俺の方もグリゴリでどうなっているか当たらせる。なーに、心配すんな。レイヴェルには強い王子さまが付いてんだ。問題ないさ。それに三大勢力の同盟関係にあるこの周辺は強力な結界やらが張ってある。そうそう侵入はされないだろう。
アザゼルが新の頭をポンポンと叩くが、不意に不安な情報を言い出す
「と言うよりもな。どうにも『
やめてもらいたいものだが、アザゼルの嫌な予感はだいたいが当たってしまう……
瓦解した『
メフィスト・フェレスが改まる
『話が逸れて申し訳なかったね。と言う事で、うちの魔法使いをよろしく頼むよ。良い契約が叶う事を願わせてもらうからねー』
こうして、魔法使いの協会理事―――メフィスト・フェレスとの話は終わる事となる
フェニックスの件も気になるが、まずは自分の元に送られてきた書類に目を通さなければならい
『今夜は長くなりそうだ……』
―――――――――――――――
「あー、頭が
数日後の深夜、その日の悪魔稼業を終えた新は、自宅にある空き部屋で山盛りの書類に目を通していた
「新さま、この魔術文字の解読が済みましたわ。読んでくださいましね」
横につくのは敏腕マネージャーのレイヴェル、新とレイヴェルは床に書類を並べて、1つ1つ確認作業をしていた
他の部屋では皆がそれぞれの見方で魔法使い式の履歴書を見ている
時折リアスと朱乃に相談したりするが、基本的にはレイヴェルと話し合いながら書類を見ている
『
勿論、最終的な確認はリアスに取ってもらうが、そこに至るまではレイヴェルと協力していこうと考え―――そう伝えた時のレイヴェルの喜びようは……「お任せください! 私が新さまに相応しい相手を選び抜いてみせます!」とやる気充分だった
今も書類1つ1つに視線を落として、辞書や資料を片手にあれやこれやとチェックしており、彼女の一生懸命な姿に新も気合いが入る
レイヴェルは書類審査に一定の基準(主にグレモリーにとって、あるいは闇皇たる新にとって有益かどうか)を設け、それに満たない者をバッサリと切り捨て、残った者をつぶさに調べていた
無論、バッサリ切った者達についても基本的な調査を終えていた
その中にはスタイル抜群で美人の魔女も落とされてしまったと言う……
「この魔法使いの男性は錬金術に於いて、希少なレアアース、レアメタルの魔術的利用方法を研究されてますわ。こっちの女性は―――」
分かりやすく噛み砕いて情報を教えてくれるレイヴェル、契約した時の有用性も考慮して新に伝える
小猫から聞いた話によると、休み時間にも人目に隠れて調べていたようだ
それと先日のフェニックスの者が狙われると言う情報は改めてフェニックス家からも届いたそうで、レイヴェルの兄―――ライザーが酷く心配していた
「レイヴェルは俺より遥かに詳しいよな」
ふと新がそう漏らすと、レイヴェルはエヘンと胸を張った
「当然ですわ。これでも悪魔歴は新さまより長いです」
「ゲームもライザーの隣で見ていたんだよな?」
「勿論です。……直接の戦闘参加は兄に避けられてしまいましたが、直に本場の風を肌に感じてますわ」
「そのレイヴェルから見て俺達グレモリー眷属はどうだ?」
新の問いにレイヴェルは手に持っていた資料を置き、正座して改まる
「一言で称するのでしたら、超高火力重視のチームですわね。下手な指示がいらないぐらいに圧倒的ですわ」
「ああ、それは俺も感じてた。その反面、弱点も多いんだよな。テクニックタイプ、搦め手に
そう、グレモリー眷属は超高火力の反面、弱点が多い
策に嵌まると一気に崩される……アザゼルにも指摘され、実際シトリー戦では見事にやられ、曹操にも手痛い目に遭わされている
しかし、レイヴェルは懐疑的な反応を示した
「そうはおっしゃいますが、私から言わせていただければ、そんな事はどのチームだって恐れて当たり前なんです。卓越した技術派が敵にいれば、誰だって怖がります。逆に言えばですね、超高火力のグレモリーチームを相手にする方も大層な恐怖だと思います」
「―――ッ。新鮮な意見だな」
「それにグレモリー眷属は新さまも含めて、皆さんご自分の弱点を補おうと切磋琢磨していますわ。正直、今のプロプレイヤー陣は己の実力、戦術に誇りを持ち過ぎて、自身を鍛える事なんてしません。上級悪魔そのものが努力や修行と言った類を好まず、家の特色と血に流れる才能を重んじて行動しています。眷属の力が足りないと感じれば、トレードで済ませようとしてますもの。勿論、自分が選んだ眷属に誇りを感じる上級悪魔のプレイヤーも多いです。けれど、トレードはプレイヤー間でよく
プロのプレイヤーは力が足りないとトレードをする、だからレーティングゲームに対しての修行と言う概念が根付かない
使えないと感じた眷属はトレードで流されてしまう……非常に割り切り過ぎだ
レイヴェルの話を興味深く聞く新に、彼女は更に弁舌を振るう
「その中でリアスさまのご眷属は
確かにグレモリー、シトリー、バアル眷属はテロリスト相手に成果を出していた
若手を戦いに送りたくないサーゼクスの意思とは裏腹に、新達の力は冥界の役に立ってしまっている
レイヴェルは目をキラリと輝かせて断じた
「私が思うグレモリー眷属のあり方とは、下手に戦術で動くよりも個々を鍛えて総合チームバランスを底上げしていくだけで充分だと思うんです。戦術が足りないとその事を重視して、本来の能力発揮の
アザゼルともリアスとも違う考え方……メンバーによってはその方が成長しやすいだろう
レイヴェルの言い分に呆気に取られていると、レイヴェルがハッと気付き、オロオロし始めた
「……す、すみません。私とした事が出過ぎた物言いで……」
「いや、感心していたんだ。スゲェな、レイヴェル。俺なんかよりもずっと物事を考えている。軍師に向いてるな」
新の賛辞を聞いて、レイヴェルは顔を真っ赤にする
「ぐ、軍師は言い過ぎですけれど、これでも日々勉強しています! いろいろ考えていますわ!」
「俺ももっと頑張らねぇとな。でも、あれだよなー。こんなに頑張っているレイヴェルに礼の1つも出来ないのは申し訳ねぇよ」
新は心の底からそう感じてならなかった
せっかくマネージャーとして一生懸命動いてくれているレイヴェルに何もしてあげられない……
すると、レイヴェルは更に顔を紅潮させて、言葉少なにこう漏らす
「……で、では、あ、頭を撫でてください……」
思ってもいないリクエストに新はキョトンとする
「良いのか、頭を撫でる程度で? 他に欲しい物とか無いのか? 何ならデートでもしようか」
しかし、レイヴェルは首を横に振り、真っ正面から言ってきた
「新さまのマネージャーをするだけで光栄なんです。だから、頭を撫でていただけるだけで、私はどんな事でも頑張っていけます」
『―――っ。レイヴェル、お前ホントに良い
新は抱き締めたくなる気持ちが先走りそうになるが、そこを抑えてレイヴェルの頭を撫でる
「……えへへ」
満面の笑みで応じるレイヴェル
新はレイヴェルと共に今後も頑張っていこうと改めて誓い、途端にレイヴェルは思い出したかのように
「あ、そうです。この後、『おっぱいドラゴン』と『オッパイザー』のお仕事についてもスケジュール調整しますわ。
『……敏腕なのは良いが、少しは休ませてくれっ!』
――――――――――――――
「協会のランク付け、確認したか? メフィストのクソオヤジの所じゃ、今期若手悪魔のランクが発表された途端に話題騒然になったってよ」
「ああ、今回の若手悪魔はここ何十年の比じゃないぐらいに突出した連中なんだってな」
「もう、連なるところから別格だわ。魔王の妹が2人、大王次期当主と獅子王、大公次期当主、グリゴリ新副総督の娘、闇皇、天龍の
「そりゃ、協会の奴らがこぞって契約の書面を提出するわけだ」
「……『
「ああ、その『
「どのぐらい強いか。
―――――――――――――
……………………………………
コ コ ハ ド コ ダ ?
ナ ゼ オ レ ハ コ コ 二 イ ル ?
『
ダ レ ダ オ マ エ ハ ?
オ レ ハ イ ッ タ イ ナ 二 モ ノ ナ ン ダ ?
『
ド ウ ホ ウ ?
オ レ タ チ ヲ ソ ウ ゾ ウ ス ル モ ノ ?
『
ダ ー ク ロ ー ド ?
『ええ、闇をも喰らう深淵の使者……。あなた方7人と私で、この世を思うように作り替える―――悪い話ではないと思いますが?』
ヨ ク ワ カ ラ ン ガ オ マ エ 二 キ ョ ウ リ ョ ク ス レ バ イ イ ノ カ ?
『その通りです、
ワ カ ッ タ
ト コ ロ デ オ レ ノ ナ ハ ?
『名前ですか……それはあなた方が完全に生まれた時に名乗ると良いでしょう。それまではこう呼ばせていただきます。―――「
ル ク ス リ ア ワ ン ?
『