ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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14巻編、始まりますっ!


第18章 進路指導のウィザードとダークロード
平和が1番とか言ってるけど、本当に大丈夫?


 都内にある某会員制高級レストラン、ここで親睦を深める為の会食が(おこな)われていた

 

 ただし、それは和気藹々(わきあいあい)としたものではない……

 

 テーブルに座しているのは―――いずれも裏社会に蔓延(はびこ)る組織の重役

 

 しかも、中には未だ三大勢力の和平に反対する冥界政府の連中もいた

 

 初老から中年の男性ばかり―――否、2人ほど若い者がこの会食に参加している

 

 そして、主催者は……造魔(ゾーマ)

 

 首魁のバサラ・クレイオス、執政官のシルバー・ゼーレイド、“バサラの右目役”と称されるレビィ・シャルティアが出席していた

 

『……なに、この場違い感……』

 

 様々な悪が蔓延(まんえん)する雰囲気に一言も発せず、ガチガチに固まるしかないレビィ

 

 シルバーは参加者の空いたグラスにワインを注ぎ、バサラは皿に並べられた料理を次々と食べていく

 

 しかし、バサラの食事作法は決して行儀の良いものではなかった

 

 何故なら―――全ての料理を手掴みで食べていたからだ

 

 前菜のサラダや魚のムニエルは勿論、熱々に焼かれた肉料理さえも平然と手掴みで食べ進める

 

 まさに“カ○ジ”に出てくる帝王の如し……

 

 ここで参加者の1人が話を切り出してくる

 

「ところで、三大勢力との抗争はどんな具合ですかな? 執政官どの」

 

(おおむ)ね問題ありません。こちら側の戦力を多少減らされはしましたが……所詮は傘下組織、中枢格は微塵も揺るぎません」

 

 シルバーは淡々と答えながら、他の空いたグラスにワインを注いでいく

 

「心強い発言だ。やはり造魔(ゾーマ)に肩入れしたのは正解と言えよう」

 

「三大勢力は我々にとっても目の上のたん(こぶ)だ。こうやって親睦ってのも結構だが、裏社会を領域にしている我々がナメられては他国に隙を見せる事になる。そうは思いませんか、首相補佐官どの?」

 

 参加者の1人に“首相補佐官”と呼ばれた男性は「そうだな」と簡素に返事をする

 

 年齢は30代(なか)ばといった感じのヒゲを生やした男で、如何にも裏がありそうな雰囲気を纏っていた

 

「この日本はまだまだ弱い。今の日本は無能な政治家どもに生殺与奪(せいさつよだつ)の権を握られている。そんな連中が交渉を(あやま)れば……アッサリと我が頭上で核爆弾が炸裂する。三大勢力の連中はシビア意識に欠け過ぎている。そんな奴らに我が国―――日本を語ってもらいたくないものだ。執政官どのから見てもそうは思わないか?」

 

「ええ、おっしゃる通りです。ただ……1つお伺いして宜しいでしょうか?」

 

「何だ?」

 

「……何故、口元に肉が張り付いたままなのですか?」

 

 シルバーの言葉に場の空気が止まる……

 

 それもその筈、確かに“首相補佐官”の口元には皿に乗せられた料理の肉がくっついていたのだ

 

 食べ残しならまだしも、明らかに切り分けたばかりの肉……

 

 “どうやったらそんな風にくっつくんだ?”とバサラ以外の誰もが胸中でツッコむ

 

 シルバーの指摘でその事に気付いた“首相補佐官”は口元に付いた肉を指で摘まみ、そのまま口へ運ぶ

 

「すまない。時々あるんだ、気にしないでくれ」

 

「お言葉ですが、時々でもそんな珍妙なハプニングは起こりませんよ」

 

 シルバーが冷静にツッコミを入れていると、別の席に座っていた男性が話に入ってくる

 

 こちらは白いスーツを着た見た目も若い男だ

 

「説明を求めるだけ無駄だよ。普通ならば1000%起こり得ない状況を、知らず知らずの内に生み出してしまう。彼はそう言う男なのだよ」

 

「はあ……失礼ながら全く意味が分からず、理解も出来ません」

 

「事実とは小説よりも奇なり、今のご時世では何が起こってもおかしくないと言う事だ。誰もが偉大な芸術家になれるわけではないが、誰が偉大な芸術家になっても不思議じゃない。それは表の世界でも裏の世界でも共通する―――お分かり頂けただろうか?」

 

 白スーツの男の語り(ぐさ)にシルバーは疑問が尽きなかったが、周りの参加者が次々に同調する

 

「その通りだ」

 

「さすがは世界に名を馳せるテクノロジー企業―――GAIA(ガイア)コーポレーションの若社長、言う事が違う」

 

「“若”社長はよしてもらいたい。私は永遠の24歳なだけだ」

 

 先程まで止まった空気が(なご)やかになり、参加者が話を戻そうとする

 

「今や造魔(ゾーマ)は裏社会の顔なんだ。しっかりしてもらわないと」

 

「いやね、我々としては造魔(ゾーマ)のような真なる強者こそが裏から統率するのに相応(ふさわ)しいと思っているんだよ」

 

「皆さまにはご迷惑をお掛けするかもしれませんが、ご期待を裏切らないよう善処致します」

 

ここで冥界政府の役人(反三大勢力)が話を切り出してくる

 

「そう言えば執政官どの。噂で聞いたんだが……そちらの魔剣聖(ヴァンキッシュ)どのは闇皇(やみおう)と因縁浅からぬ関係らしいじゃないか」

 

「お耳が早いですね。バサラさま(いわ)く、その者とは同業者時代の腐れ縁だそうです」

 

「なるほど、だから必要以上にグレモリー眷属へ絡み出したのか。更に(みずか)ら敵地へ足を運んでグレモリー眷属相手に圧勝したそうじゃないか。我々としては実に気分が良い話だ。アザゼルの面目(めんもく)が潰れたのだからね。ただ……1つだけ気掛かりがあるのだが、訊いても良いか?」

 

「何でしょう?」

 

「何故その時に闇皇を始末しなかったのかね? 魔剣聖(ヴァンキッシュ)どのの実力なら簡単だっただろうに」

 

 その言葉が聞こえた瞬間、バサラの手が止まった

 

 周りがザワつく中、反三大勢力の冥界政府役人が続ける

 

「あのような雑種にいつまでもデカい顔をされてしまっては、我々の立場も危うくなってしまう。危険な芽は今の内に()んでおくべきではないのかと思って」

 

「…………」

 

「これからは造魔(ゾーマ)と、それに(くみ)するものが影のトップに成り得る時代なんだ。そろそろアザゼルのような老害が仕込んだ雑種には消えてもらいたいのだよ」

 

 “老害が仕込んだ雑種”と言う発言に周りの参加者の殆どが含み笑いをする

 

 静観しているシルバーが不意にバサラの方へ視線を向けると―――バサラは掴んでいる肉を静かに握り潰していた……っ!

 

 肉はどんどん体積を小さくしていき、絞り出された肉汁が皿に溜まる

 

 ただならぬ雰囲気になっているにもかかわらず、反三大勢力の役人は闇皇(アラタ)への侮辱を止めない

 

「アザゼルは今や腰抜け同然の老害と成り果てているんだ。そんな者に教えを受けている闇皇もいずれは老害脳に毒されていく。たかだか転生の雑種ごときが冥界の希望だの何だの、持て(はや)されている事自体おかしい話だ。権利も何も無いのに出張(でば)ってくるのも烏滸(おこ)がましい。あのような(やから)はさっさと消えて(しか)るべきだ。貴殿らもそう思うだろう?」

 

「確かに言えてる」

 

「闇皇も魔剣聖(ヴァンキッシュ)どのの前では赤子同然だ」

 

「やはり時代は造魔(ゾーマ)に傾いていると言うわけだな!」

 

 次々と上がる同調の声に反三大勢力の役人も口の端を吊り上げる

 

 シルバーが嘆息していると……バサラが席を立ち、反三大勢力の役人の所まで歩み寄る

 

「おや、魔剣聖(ヴァンキッシュ)どの。どうかされましたかな?」

 

「ああ、何か弾んだ会話が聞こえてきたからよ」

 

「聞いておられましたか。此度(こたび)の働きは実に胸がすく思いでしたぞ。まるで我々の胸中を代弁してくれたかの如く、貴殿の後ろ楯を得られたお陰で我々も動きやすくなった。感謝しているよ。如何(いかが)かな? 今度の祝いの席は是非我々に(もう)けさせていただきたい。存分に馳走しよう」

 

「……何かめでたい事でもあったのか?」

 

「それはもう―――」

 

 言いかけた刹那、バサラの表情が一変

 

 テーブルに置かれた食事用のナイフを握り、反三大勢力の役人の手に思いっきり突き刺した……ッ!

 

 ザシュッ!と肉を(つらぬ)く音と共に絶叫が響き渡る

 

「ぎゃぁあぁぁぁぁぁあぁっっ!」

 

「何がめでてぇんだァッ⁉」

 

 バサラはナイフを突き刺したまま、空いた左手で役人の頭を押さえつけて睨みを利かせる

 

 突然の凶行に周りの殆どが萎縮し、同胞のレビィも苦い表情で目を逸らす

 

「テメェに竜の字(アイツ)の何が分かるんだ? ()り合った事も()ぇくせに何が分かるんだよ? 今のアイツは芽吹こうとしてる途中だ。大器晩成(たいきばんせい)って言葉と同じように、これから面白くなろうとしてんだよ」

 

「あっが……っ! あ、ああぁぁぁぁあ……ッ!」

 

竜の字(アイツ)が死ぬのがそんなにめでてぇのか、アァッ? めでてぇってのかァッッ!」

 

 バサラは怒号を飛ばしつつ、刺したナイフに何度も力を加える

 

 刺し傷を無理矢理拡げられた役人は更に絶叫を重ね、痛みで体を何度も跳ねさせた

 

 一頻(ひとしき)り刺し終えたところでバサラはナイフを引き抜き、無造作に放り捨てる

 

 だが、これだけでは終わらない……っ

 

 役人が手を押さえて(うめ)いている間に、バサラはシルバーが持っていたワインボトルを奪い取る

 

 ワインボトルで役人の顔面を力一杯殴り、ボトルが割れて中身と共に血が飛び散る

 

「お、おい! いくらなんでも……っ」と参加者の1人が声を上げるが―――誰も止めようとしなかった

 

 バサラは椅子から(ころ)げ落ちた役人の髪の毛を掴んで無理矢理起こし、割れたボトルを目元に(あて)がった

 

 即座に目を(えぐ)り取れる体勢……

 

 役人は歯をガチガチと鳴らし、完全にバサラに(おび)えた挙げ句―――泡を吹いて気絶した

 

 そのザマを見て興醒めしたバサラは「フンッ」と役人を一瞥(いちべつ)し、割れたボトルを床に放り投げて会食の場を去っていった

 

 レビィは慌ててバサラのあとを追い、シルバーが参加者の全員に「大変失礼致しました」と頭を下げる

 

「申し訳ありませんが、私達はこれでお開きとさせていただきます。皆さま方はどうぞお食事を続けてください」

 

 冷静かつ冷淡にそう言い残したシルバーが退室する直前、この場にいる参加者全員に告げる

 

「ああ、言い忘れてましたが……このような些細なイザコザで我々との取引を打ち切ろうなどと考えない方が宜しいですよ? 我々造魔(ゾーマ)は来る者拒まず、去る者追わずの組織ですが、敵に回ると言うのなら話は別です。その時は―――この世に存在していた痕跡すら残さず滅ぼします。では、失礼します」

 

 警告とも取れる言葉を残して退室するシルバー

 

 その場に出席していた参加者は硬直し、今更ながら“とんでもない組織と関わりを持ってしまった”と恐れ、後悔していた

 

 “約2名”を除いて……

 

造魔(ゾーマ)の首領、魔剣聖(ヴァンキッシュ)バサラ……噂以上のクセ者だな。敵である者を(なじ)るかと思いきや、裏では好敵手と認めている。そんな奴の前で好き勝手ほざけば粛清されるのは当然。貴族、悪魔、役人と言った人種は無能ばかりで困るな。だが、明日は我が身になるやもしれん。その時が来るまでに、こちらも準備を整えておかねばならんようだな。我が日本を強国(きょうこく)にする為にも……』

 

『現時点で彼を敵に回せば、こちらの不利益は1000%必至。造魔(ゾーマ)の技術および情報提供によって我が社のテクノロジーが飛躍的に発展したのも事実。生ぬるい三大勢力に代わって我々が表と裏、両方を支配する時代へと進化を遂げる……。その時までにはお互い利用させてもらおうか』

 

 

―――――――――――――

 

 

「ね、ねえ、バサラ。さっきのはいくらなんでもやり過ぎだったんじゃないの……?」

 

「アホか、チビスケ。あの程度で逆ギレして取引を無下にするようなら居ねぇ方がマシだ。貴族だの純血だの階級だの、そんなもんばかりにこだわってるから足元(すく)われちまうんだよ。今の時代じゃ無意味な肩書きだ」

 

「バサラさま。機嫌を損ねたばかりで申し訳ありませんが、是非とも小耳に挟んでもらいたい情報があります」

 

「ああ? 何だよ、シルベッタ・スタローン」

 

「シルバーです。近々、カーミラ派の吸血鬼が三大勢力との会談を(もう)け―――グレモリー眷属と接触するとの事です」

 

「……ほぉ、吸血鬼の連中が遂に動き出すか。しかも会談だぁ? あいつらの事だ。どうせ向こうに不利な条件を突き付けて、一方的なマウントで話を進めるつもりなんだろうよ。吸血鬼ってのは嫌味と陰険の(かたまり)だからな」

 

「その会談、如何(いかが)されますか?」

 

「邪魔するってか? ほっとけほっとけ。あんなクソどもにまともな交渉なんざ出来やしねぇ。せいぜい陰で監視が良いとこだろう」

 

「では、私かブラッドマン辺りに―――」

 

「いや、俺が見とく」

 

「……バサラさま、少しはご自重なさってください。あなたは造魔(ゾーマ)の首領、そのような方がホイホイと敵地へ出向く事はありません。遠足じゃないんですから……」

 

「別に良いじゃねぇか。俺の首を取りたきゃ堂々とかかって来れば良い。闇討ち不意討ち奇襲は大歓迎だぜ?」

 

「やれやれ、本当に底が知れない御方(おかた)ですね、あなたは」

 

「どいつもこいつも肝が据わってねぇだけだ。それにしても……ククッ、カーミラ派の連中が随分偉くなったもんだな」

 

「……?  バサラ、そのカーミラ派の吸血鬼と何か遭ったの?」

 

「なぁに、5年ほど前に吸血鬼どもを狩りまくってたんだが、その時の事を思い出しちまって」

 

「そんなに笑う程?」

 

「当たり前だ。貴族だの純血だの(えら)ぶってやがったのに、チョイと鬼ごっこしただけで泣き叫んでたんだからよ。特に酷かったのはカルビホルスタインって家のヤツだ。追い回したらヒィヒィ泣いた挙げ句、ションベンまで漏らしやがった(笑)」

 

「カルンスタイン家ですね。カーミラ派の女性吸血鬼の中でも古参の一角です」

 

「あー、そいつだ。あの時は腹が(よじ)れるくらい笑っちまったよ」

 

「何か……その吸血鬼が可哀想に思えてきた」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「…………ここは俺の部屋だよな?」

 

 ある日の早朝、新はそんな自問をするほど不可解な状況に身を置かれていた

 

「……すーすー」

 

 ベッドから聞こえてくるリアスの寝息

 

 彼女とはいつも一緒に寝ているので、そこは変わらぬ風景である

 

 問題はここからだった

 

「……新さん……もっと強く……」

 

「……ぐーぐー……」

 

「……うふふ、天界のおまんじゅう美味しい……」

 

「……にゃん……」

 

 官能的な寝言を呟く朱乃、豪快にお腹を出して寝ているゼノヴィア、そのゼノヴィアを抱き枕にしてよだれを垂らしているイリナ、猫のように丸まって寝ている小猫

 

「……アラタ……至高の堕天使となった私に生涯尽くしなさい……」

 

「……えへへ、ウチのちっぱいが世界遺産に登録、あざ~っす……」

 

「……んんっ……そんなに欲しがるな……」

 

 更にはレイナーレ、ミッテルト、カラワーナの3人も思い思いの夢を見ていた

 

 いくら大きなベッドと言えど、さすがにこれだけ多くの人数まともに寝られる筈も無く……

 

 ベッドの上は女子てんこ盛りと言う凄まじい光景だった

 

 新は既にベッドの外にいて、起きる時も床の上で目を覚ました

 

 ゼノヴィア辺りに蹴飛ばされたのだろう

 

 自分のベッドに女の子がたくさん居れば、普通なら嬉しい状況なのだが……入れるスペースが全く無い

 

 新は椅子に座りながら息を吐く

 

 魔獣騒動(まじゅうそうどう)造魔(ゾーマ)の奇襲が終わってから、だいたいの確率で毎朝がこんな状態である

 

 魔獣騒動で死にかけ、命を削るような戦いが頻発したせいか―――眷属女子の行動がいっそう大胆になってきた

 

 それは性的なものと言うよりも生活面のちょっとした事から始まる

 

 朝の登下校で新の横と言うポジションを取り合ったり、部活動で新の膝上に座ろうと小猫とレイヴェルが争ったりetc……

 

 いくら新でも身は1つなので全てには対応しきれない

 

 この事をアザゼルやロスヴァイセに相談してみた

 

 アザゼルからは―――

 

「ま、お前の生死不明と言うあいつらにとって絶望的な一件があったせいか、その反動でお前をいつも以上に求めているんだろう。オマケに『造魔(ゾーマ)』との戦いでもお前は無茶ばかりしてるから、いつ死んでもおかしくない状況に晒されている。一時的なものだと思うから落ち着くまで相手をしてやれ。甲斐性はあるんだろ?」

 

 ……と言われ、ロスヴァイセからは―――

 

「新さんの男子力が試されている時期なのだと思います。バランス良くお付き合いしないと可哀想な目を見る女子が出てしまいますからね。―――っと、私は何を真面目にこんないやらしい事を答えているのでしょうか。新さんや他の女子の影響なのかしら……。でもあれです。敢えて教師としての面から言わせてもらうと、教育上よろしくない事柄です」

 

 ……と、長々と語られた

 

 椅子でベッドの女子軍団を見ながら、新は頭を抱える

 

「……まあ、この場面はオイシイから文句は無いんだよな」

 

 あられもない格好で寝ている女子達の姿に、新の視線は釘付け

 

 リアスと朱乃は透け透けのネグリジェを着ており、乳首も見えている

 

 特に朱乃は寝る時に浴衣を着ているので、こう言ったネグリジェ姿は(まぶ)しく思えてしまう

 

 ゼノヴィアは上がシャツで下はパンツ一丁、イリナは普通のパジャマ

 

 小猫も猫マークの入った愛くるしいパジャマを着ている

 

 レイナーレはビスチェと呼ばれる女性用の下着姿、露出も多めで黒のカラーが良く()える

 

 カラワーナも同じく紫色のビスチェで妖艶さを増長させ、ミッテルトは黄色いキャミソールで無邪気な魅力を引き立てていた

 

 コンコンと不意にドアがノックされる

 

「おはようございます、新さま、リアスさま。―――皆さん起きてますか?」

 

 声の主はレイヴェルだった

 

 新が「ああ、入って良いぞ」と応じると、レイヴェルがドアを開けて入ってくるが……ベッドの状況を見て目を丸くする

 

「……す、凄い事になってますわ。昨夜はこのような状態になるなんて皆さん(つゆ)ほども気配を感じさせなかったのに……。私も参加したかったですわ……」

 

「お前も参加したら俺の寝る場所は床一択になっちまうぞ……」

 

「……ふぁぁぁああ……」

 

 レイヴェルの登場にリアスが起き、寝ぼけ(まなこ)で新とレイヴェル―――そしてベッドの状況に視線を配っていた

 

「……凄い事になっているわね、ベッド」

 

 ベッドの上で寝ている眷属女子達を見て苦笑いするリアス

 

 部屋の中を進み、小猫を揺り動かして起こそうとするレイヴェルは思い出したように言った

 

「そういえばリアスさま。そろそろ魔法使いの方々の契約や例の吸血鬼の方がいらっしゃるとおっしゃってませんでしたか?」

 

 その通り、リアスは少し前に「そろそろ魔法使いとの契約について話し合う時期なの。それと、ヴァンパイアの来客があるわ」と言っていた

 

 魔法使いの件はともかく、“ヴァンパイアの来客”と言うワードに新は眉根を寄せた

 

 実を言うと……新は仕事柄、ヴァンパイアに対してあまり良い感情を持っていない

 

 彼が何よりも嫌う貴族社会や純血至上主義を存分にひけらかしてくるからだ

 

 (しか)めっ(つら)をする新の横でリアスが言う

 

「レイヴェル、魔法使いに関して新のフォローをお願いね。マネージャー、頼りにしているわ」

 

「お任せください! マネージャーたるこのレイヴェル・フェニックスが、新さまに相応(ふさわ)しい魔法使いを選び抜いてみせますわ!」

 

 リアスの一言にレイヴェルは胸を張って(うなず)いた

 

 中級悪魔昇格試験の勉強でもレイヴェルのサポートがとても良く作用していたので、こう言ったマネージャーはありがたい

 

 リアスが「まずは皆を起こして朝食ね」と言い、1日が始まると思いきや―――レイヴェルの後方から思いも寄らない人物が姿を現す

 

「ちゃお♪ お邪魔してるにゃん」

 

「く、黒歌(くろか)⁉ ど、どうしてここに⁉」

 

 現れたのは着物を着た黒髪の美女、猫又の黒歌だった

 

 さすがのリアスも黒歌の登場に驚き、背後を取られていたレイヴェルも「い、いつの間に!」とビックリしていた

 

「あ、どうも。私もお邪魔しております」

 

 黒歌の後ろから現れたのはとんがり帽子の魔法使い―――ルフェイだった

 

 ヴァーリチームの女性陣の登場に、新はまさかと思っていると……黒歌が「ヴァーリ達は来てないにゃん」と新の心中を読んだようにそう答えた

 

「……ね、姉さま。どうしてここに?」

 

 黒歌の声に反応して起きたのか、小猫が目を(さす)りながらベッドから這い出る

 

「どうしてって、白音(しろね)が私から術を習いたいって言ってたから来てあげたのよ。ありがたく思ってほしいにゃ。あ、それと空いている部屋、占拠させてもらってるから。よろしく~♪」

 

「勝手に占拠して更に住み込むつもりか⁉ せめて事前報告ぐらいはしとけよ……」

 

 頭を抱える新、ルフェイが恐る恐る手を上げる

 

「そ、それとですね。魔法使いの方々と交渉するかもとの事なので、僭越(せんえつ)ながら私もアドバイザーとして滞在させていただこうかなーっと。……ご迷惑でしょうか?」

 

 リアスが嘆息して言う

 

「ご迷惑も何もどうして白龍皇(はくりゅうこう)側のあなた達が私達の家にいるの? 敵地に等しいのよ?」

 

 黒歌はズカズカと部屋に入ってきてリアスの頭を撫でる

 

「スイッちゃんは難しいこと考え過ぎにゃー。そんなだから、脳みそに行くエネルギーがお乳から飛び出すようになるのよ?」

 

 リアスのおっぱいをポヨンポヨンと手で弾ませながら黒歌がそんな事を言い、新は吹き出しそうになった

 

 リアスが黒歌の手を払う

 

「大きなお世話よ……。と言うよりも、スイッちゃんって何よ……!……はっ! まさか、以前この家に来た時に転移魔法陣のマーキングをしたのね⁉」

 

「ピンポーン♪ お陰さまでイッシュンデ来られるようになったにゃ。いつでもここのおっきなお風呂使えるってわけね」

 

「なんつー抜け目の無い性悪(しょうわる)猫だ……」

 

 当惑する新達にルフェイが1枚の手紙を出してくる

 

「あ、あの、これ、アザゼル元総督よりのお手紙です」

 

 新がそれを受け取り、封を切って中身を確認する

 

『ヴァーリんところの黒歌とルフェイが度々(たびたび)そこにお邪魔するかもしれねぇがよろしくな♪ ま、酷い事しないだろうから、仲良くしてやってくれや。お前らが尊敬するアザゼルより』

 

「俺は尊敬しとらんがなボケッ!」

 

「んもう! また勝手にこんな事を!」

 

 新は手紙を速攻で破り捨てた

 

「たまにしか来ないから、気にしないで。ね、スイッちゃん? 白音の事、ちゃーんと鍛えるから♪」

 

 手を合わせてウインクしながら頼み込む黒歌

 

 リアスは額に手を当てながら言う

 

「……勝手になさい。その代わり、小猫のこと頼むわよ? それと必要な時は力を貸しなさい。悪魔らしくギブアンドテイクよ」

 

 たまにだが黒歌とルフェイの訪問も加わり、新の家はいっそう賑やかになりそうだ……

 

 

―――――――――――

 

 

『……平和だな』

 

『そうだな~』

 

 ある休み時間、新と一誠は窓から空を眺めながら物思いに(ふけ)っていた

 

 ここ最近は強敵襲来が頻発しているせいか、学園生活が楽しく感じてしまう

 

 普通の授業ですら平和を感じる程に……

 

 平和が1番、昼間は学園生活を送って、深夜は悪魔稼業に(いそ)しんで何事も無く1日を終えたい―――そう切実に願うばかりだった

 

 しかし、敵の襲来が頻発したからこそ、異例の早さで中級悪魔に昇格できたのも事実。このまま行けば、上級悪魔も夢ではない

 

 アザゼルにも既に「上級悪魔になる為の心がけと、昇格した後の進路」を考えるよう言われている

 

 高校2年、もうすぐ冬、親含めての進路相談の話もあるし、進路希望調査のプリントにも希望を書いた2人

 

 人間としての進路は―――駒王学園(くおうがくえん)の大学部への進学、あとは悪魔としての進路が考えものだった……

 

 上級悪魔を目指すのは当然だが、具体的にはどういう生き方を決めるかだ

 

 悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を得て独り立ちする―――それが主な内容だが、詳しい事までは決まっていない

 

 アザゼルにも“独り立ちする時は軍資金を用意しておけ”と言われ、自分の眷属と縄張りを持つのなら、自分の下僕を養うだけの用意が無ければ意味が無いと突きつけられた

 

『まあ、金は無いわけじゃないんだけどな……』

 

 新にはバウンティハンター時代に稼いだ貯蓄と、一誠の『おっぱいドラゴン』同様『オッパイザー』の稼ぎの一部―――著作権の利潤が口座に振り込まれてきている

 

 リアスから悪魔用の口座を貰い、悪魔稼業での働き分がここに入り、それにプラスされて著作権料が振り込まれる

 

 その金額は両者ともに偉い数字なので、高校生が使うには早いと、今はまだグレイフィアに管理されていた

 

 次に転生悪魔のあり方を木場祐斗の師匠―――沖田総司に教わった

 

 人間から転生した悪魔は生き急ぐ傾向があるらしい

 

 永い時を生きるので、早い段階に目標達成を目指して突き進んでしまうと残りの時間が余り過ぎて困ってしまうとの事

 

 所謂(いわゆる)燃え尽き症候群みたいなものが生じて、感情の起伏が(とぼ)しくなってしまいかねないそうだ

 

 ゆっくりと悪魔としての生き方を楽しみながら動いた方が転生悪魔として上手く生きられるらしい

 

 残りの人生を無駄に消費してしないように目標や夢はたくさん見つけておいて損は無い

 

『……まずは上級悪魔にならないとな』

 

 生きていれば他にもやりたい事は見つかる筈

 

 まずはリアスの眷属として生き、将来の為に多く稼ぐ

 

 漠然としているものの、今やれる目標が分かったところで学園生活を平穏に過ごす事を決めた

 

「「死ねぇぇぇぇえええええええっ!」」

 

 背後から2人分の物騒な声が聞こえ、新はつい反射的に襲撃してきた人物の攻撃を(かわ)し―――確認する前にボコボコにした

 

 ボコボコにした後、改めて確認する

 

「ああ、ハゲとメガネか」

 

「殴ってから確認するなよ!」

 

 新がボコったのは一誠の悪友、松田(ハゲ)元浜(メガネ)だった

 

 くだらない嫉妬心で新に奇襲を仕掛けるが、その都度やられるバカコンビである

 

 何故か怒りに震えた様子で新に詰め寄ってくる

 

「やいっ、竜崎! 1年のレイヴェル・フェニックスさんとも親しいらしいな!」

 

「ん? ああ、ここに転校する前から知ってるし。家族のヒトにもよろしく言われてるから面倒見てんだよ」

 

 今は逆にマネージャーと言う立場で世話になっているがそこは割愛(と言うより教えられない)

 

 新の言葉を聞いて、元浜がふるふると全身を震わせていた

 

「お、親公認かよ……どうなっているんだ……。唯一の味方である筈のイッセーもアーシアちゃんとイチャラブ状態……っ。リアス先輩、姫島先輩、塔城小猫さんにゼノヴィアちゃんにイリナさんまで……全員、この学校のマドンナだぞアイドルだぞ……っ! そ、それに加えてレイヴェル・フェニックスさんまで……っ!」

 

「あんたら、その反応、もういい加減やめたら? 端から見ていても飽きるわよ」

 

 そんな事を言いながら登場したのは―――クラスメイトのエロメガネこと桐生藍華(きりゅうあいか)だった

 

 彼女は一誠達と分け(へだ)てなく喋れる数少ない女子である

 

「こんな事言ってはあれだけど、美人のヒトってほら、変わった男性を好きになりやすいって言うじゃない? 竜崎は巧みなエロテクで落としたんだろうけど、アーシアはきっと兵藤のアレっぷりに惹かれるところがあったのよ」

 

「「あー、なるほど」」

 

 手をポンと叩いて納得する松田(ハゲ)元浜(メガネ)

 

 しかし、途端に松田は頭を抱えてしまい、元浜も涙を流して訴える

 

「いや、やっぱり理不尽だって! だったら、同じエロバカな俺や元浜にだって御利益がある筈じゃねぇか!」

 

「その通りだ! 俺や松田のもとには一切美女とのフラグが立たないぞ⁉ どういう事だ! どういう事なんだぁぁぁっ⁉」

 

「まあまあ、きっとそういうフラグが全部竜崎や兵藤に立ってしまったのよ。つまり、あいつらの方があんた達よりもずーっとエロでバカだったって事で諦めるの。ね?」

 

 桐生が松田と元浜の頭を撫でて(なぐさ)めていたが、一誠は猛抗議する

 

「桐生! そんな慰めの仕方があるか!」

 

「聞き捨てならん台詞が聞こえたな。バカは一誠の方で、俺はエロいだけだ」

 

「そうだそうだ―――って、おい! 新も俺をバカの(くく)りに入れるなっ!」

 

 しかし、否定は出来ない事実でもある……

 

「松田と元浜にも主の慈愛があれば良いのだが……」

 

 悲哀の眼差しを向けるゼノヴィア

 

「今度、ミカエルさまにお願いしてみようかしら」

 

 バカ2人の為にミカエルのありがたい慈悲を与えようとするイリナ

 

 「松田さん、元浜さん、今度ミサに参加しませんか? 悲しい事があっても皆と一緒の時を過ごせば少しでも気持ちが楽になれると思うんです」

 

 無自覚で布教を始めるアーシア

 

 教会トリオの文化の違いを垣間見ていると、その横で桐生の目が新を(とら)えてきた

 

 彼女の眼鏡がキラリと光る

 

「ところで竜崎。噂は本当なの?」

 

「何だよ、噂って?」

 

「リアス先輩の事を『リアス』って呼び捨てで呼んでるって」

 

 桐生のその一言は教室中にいるクラスメイトの注目を一身に集めてしまった

 

 誰もが好奇の視線で「そう言えば、そんな噂が流れてたな」「私も訊きたかった事をよく訊いたわ!」等と口にし始めている

 

 一誠は小声で新に詰め寄った

 

『新! お前そんな噂が流されてるのか⁉』

 

『あー、俺って敬語とか“さん”付けで呼ぶのが苦手だからな。それを誰かに聞かれたんだろうよ』

 

『どうすんだよ、下手に勘付かれたら……!』

 

『心配すんな、お前と違ってヘマはしねぇよ』

 

「で、竜崎。結局どうなの?」

 

 ニヒヒと笑みながら訊いてくる桐生に対し、新は平然とした様子でこう言った

 

「それについて話すにはこんな場所ではな~。俺のプライベート事情はそう安くない。出来れば余人(よじん)を交えずに語りたいものだな」

 

誘うような新の言葉に教室中の女子から黄色い声が上がり、男子からは驚愕の声が上がった

 

「ま、まさか竜崎のヤツ……桐生まで手篭(てご)めにする気か⁉」

 

「知りたければ、俺の言う事を聞けって事か⁉ なんてヤツだ! このエロリストめ!」

 

「でもでもっ、噂の真相は知りたいわ! 桐生さんの出方次第で勝敗が決まる!」

 

「大スクープの予感……! しかも、新作のネタが決まったわ! 竜崎くん×桐生さんよ!」

 

教室内で男子からの非難や女子からの歓声が飛び交い、桐生もまさかの提案に「むむっ、そう来たか……」と(しば)し考え込む

 

 そこへ丁度良いタイミングで祐斗が教室の入り口に現れた

 

「イッセーくん、新くん、アーシアさん、ゼノヴィア、イリナさん、放課後の事について話し合いたいんだけど―――」

 

「お、おう! 木場! いま行く! ほら、皆も行くぞ!」

 

 一誠がアーシア達の背中を押して、逃げるように教室を出ていく

 

 新も便乗して桐生の追及から逃れた

 

「ちょっと、竜崎! 逃げる気?」

 

「逃げるが勝ちって言うだろ? じゃあな~」

 

 新はスタコラサッサと一誠のあとを追うように教室を出ていった

 

 

――――――――――――――

 

 

「うーん、やっぱり手強いわね、竜崎のヤツ。さすが何人もの女を口説き落としてるだけの事はあるわ」

 

「「桐生さん」」

 

「ん? あらら、村山っちと片瀬っちじゃない。どうしたのよ?」

 

「あの噂って、やっぱり本当なの?」

 

「竜崎くんがリアス先輩と付き合ってるって……」

 

「それがねー、上手い事はぐらかされて聞きそびれたのよ。なになに、気になってる?」

 

「だ、だって……竜崎くん、修学旅行でロスヴァイセちゃんとも親しげだったし……」

 

「そ、それなのに……私達と、その……っ」

 

「セッ○スしたのに?」

 

「「――――っ⁉」」

 

「あ~らら、図星ですか。まあ、竜崎の女癖の悪さは既に知ってるから良いんだけど……やっぱり、この話題の真相を見逃すわけにはいかないのよねぇ」

 

「ど、どうするの?」

 

「どうもこうも、こうなりゃトコトン追っ掛けてやろうじゃない。今まで女子を丸裸にしてきたんだから、たまには竜崎を丸裸にしてやろうじゃない。エロスクープを目の前にして、私が諦めると思ったら大間違いよ」




遂に始まった14巻編!ここから更に物語が激化していきます⁉


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