ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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連続投稿です


灼熱の男

それから数日経った放課後、部活動を終えた新達は公園に集まり神父やシスターの変装をする

 

内容は、神父やシスターの格好で人気のない場所を中心に町中を歩くと言う物だった

 

何とかエクスカリバーの足を掴みたいと意気込んではいたが、手掛かりを掴めず時間だけが過ぎていく

 

「ふぅ。今日も収穫なしか」

 

匙が気落ちするように言う

 

何日も何日も神父とシスターの格好で歩き回った挙げ句、成果が上がらないとなれば無理も無かった

 

……すると、ここで先頭を歩いていた祐斗が歩みを止め、最後尾を歩いていた新が辺りを見回す

 

「っ!上だ!」

 

新の声で全員が上空を見上げる

 

すると、見覚えのある白髪が長剣を構えながら降ってきた

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

ギィィィン!

 

祐斗が素早く魔剣を取り出し、フリードの一撃を防いだ

 

「フリード!」

 

「ようやく見つけたぞ。クソ神父」

 

「――――!その声はイッセーくんと元クソ人間ちゃんですかい?へぇぇぇぇ、これはまた珍妙な再会劇でござんすね!どうだい?ドラゴンパゥワーは増大してるのかい?悪魔になったパゥワーはどうですかい?そろそろ殺していい?」

 

相変わらずのイカレ口調全開ぶりを見せるフリード

 

新達は神父の服を脱ぎ捨て、普段の制服の姿へ戻る

 

「おっと!おっ始める前にこいつを2個投入してみましょうかね〜!行けぇぇ!モソヌターボールちゃぁん!」

 

フリードが懐から黒い球体を2つ、地面に叩きつける

 

球体が割れると、中から化け物が4匹出現した

 

「なっ!何だよこいつらは!?」

 

「そういや、匙は知らなかったな。あれは闇人(やみびと)。俺に宿ってる『闇皇(やみおう)の鎧』を作った怪物だ」

 

「ヒャッハハハハハハハ!どうよどうよ!?村上の旦那から新しい化け物ちゃんズを貰いましてね〜!この前のネズミとは桁外れに強ぇのよ〜!だから死んでチョンマゲ!」

 

フリードの言葉通り、今回出てきた闇人は量産タイプのネズミ型ではなく―――――腕が8本の蛸型、巨大な鎌を携えた蟷螂(かまきり)型、ショットガンらしき銃を向ける羊型、尻尾が刃となっているカメレオン型と多様な姿を持っていた

 

「一誠!二組(ふたくみ)に分担して潰すぞ!俺と小猫で闇人を潰すから、お前らはフリードをぶっ潰せ!」

 

「分かった!気を付けろよ!ブーステッド・ギア!」

 

Boost(ブースト)!!』

 

一誠の『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』から力が膨れ上がるのを合図に、新と小猫は闇人と対峙する

 

「いけるか小猫?アレはお前からすれば、この前の奴より強ぇぞ」

 

「……問題ありません」

 

「上等だ。2匹ずつ仕留めるぞ」

 

新は両腕両足に鎧を展開して、剣を手に持つ

 

新は蛸型とカメレオン型の闇人に狙いを定めた

 

「たった2人で何が出来る!」

 

蛸型の闇人が8本の腕を伸ばして攻撃してくる

 

先端が刃物状になった腕で刺し殺そうとするが、新は全て斬り落とす

 

グニュグニュグニュ……

 

なんと傷口から肉が盛り上がり、斬られた腕が再生を果たす

 

「……っ?斬られた腕が再生しやがった?再生能力持ってんのかよ」

 

「ケケケケケケッ!」

 

カメレオン型が刃の尻尾で突いてくる

 

新は右に回避して尻尾を掴み、蛸型に向かって投げつける

 

「おのれ!このドチビが!」

 

「……ドチビ?」

 

ブンッ!ドゴッ!

 

隣では蟷螂型と羊型VS小猫の戦い

 

小猫の禁句を言ってしまった蟷螂型は拳を鳩尾に打ち込まれた

 

「グボアァッ……!」

 

「……ベチョベチョ。キモいです」

 

蟷螂型から出された吐瀉物が小猫の胸元にかかる

 

更に小猫は蟷螂型に容赦無き蹴りを入れる

 

「向こうは心配無いようだな……じゃあ、そろそろ殺すか!」

 

「好きにはさせんぞ!」

 

8本の腕が巨大な1つの刃となり、新に振り下ろされる

 

新は刀身に魔力を流し、巨大な刃を一撃で両断

 

完全再生される前に突っ走り、蛸型を一刀両断した

 

斬れ目から噴き出る血しぶきが新の顔に付着する

 

「ケケケケケケッ!コロス!コロス!」

 

カメレオン型の姿が徐々に消えていき、肉眼では視認出来なくなった

 

「透明化しやがったか。だったら、こいつでいぶり出してやる!」

 

新は先程両断した闇人の死骸(しがい)を持ち、そこから血の塊を辺り一面にばら蒔く

 

ベチョッ……

 

何も無い筈の空間に血が付着

 

姿は見えていないが、気配と血で分かる

 

「そこか!」

 

「ギャァァァアアアアッ!」

 

カメレオン型は尻尾を斬られ、悲鳴をあげる

 

新は足を蹴って転がし、顔に剣を突き立てて絶命させる

 

「よしっ、こっちは終わった!小猫は―――――おわぁっ!?」

 

新が小猫の方向を向くと、傷付いた小猫が飛んできた

 

「……すみません。新先輩」

 

「いって〜……まぁ気にすんな。乳首見れてるからゴブゥッ!は、腹がっ……!」

 

「……見ないでください!ドスケベ!」

 

小猫は新の腹にパンチを入れ、露出している小振りな乳を隠す

 

新がふと前を見ると、蟷螂型は地面に突っ伏したまま動かなくなっている

 

そう考えると……小猫をボロボロにしたのは、残った羊型と言う事になる

 

ショットガンの銃口を向けている闇人に向かって魔力弾を放つ

 

「僕のスピードにはどんな攻撃も効かないよ」

 

そう言った闇人の姿が風を切る様な音と共に消えた

 

「――――っ!?何処行きやがった!」

 

意外にも羊型は超高速移動の使い手だった

 

傷付いた小猫を庇いながら、素早い敵と戦うのは至難の技

 

新は闇皇に変異する

 

「どうする?あの羊の動きを止めねぇと攻撃しようがねぇ……こうなったら」

 

新は小猫に視線を移す

 

「小猫、頼みがある。この状況はどうしてもお前の協力が必要なんだ」

 

「……私の協力?どんな協力ですか?」

 

「あ〜、何と言うか……奴の動きを止める為の協力だ。その間、何があってもジッとしててくれ」

 

「……意味がよく分かりませんが、私にしか出来ない事ですか?」

 

新は真剣な表情で頷き、小猫もそれに応える様に頷いた

 

新は意識を集中させて闇人の気を探る

 

右……左……斜め後ろ……

 

正面……から気配が来た瞬間、新は――――

 

「そこだ!必殺『小猫ブロック!』」

 

「きゃあっ!?」

 

新は小猫の両腕を掴んで自分の前に移動させた

 

ここで小猫は自分の格好に気が付く

 

そう……制服が破れて小さなおっぱいが丸見え

 

『小猫ブロック』とは恐らく……乳房が露出した小猫の姿を見せつけ、相手の動きを止める技の様だ

 

「いいっ!?おっぱい!?」

 

闇人が小猫の乳房に気を取られ急ブレーキをかける

 

その一瞬の隙を逃さず、魔力を込めた剣で羊型闇人を斜めに斬り裂いた

 

しかし、新は勝った気がしなかった……

 

何故なら……盾にされた上、闇人に乳房を見られた小猫が怒気を発しながら半眼で睨んでいたからである

 

「……………………」

 

「い、いや……あの、小猫様?俺最初に確認を取りましたよね……?確認を取って小猫様が承諾したから羊を倒せたのデスヨ?お、俺はぶつかった時にしか見てませんでしたけど拳をしまってください!スンマセンした!マジスンマセンした!お願ぇします!何でも言う事聞きますから!どうか、どうかお命だけはお助けくだせぇ小猫様!」

 

羊の超高速移動にも劣らないスピードで謝罪と土下座をする新

 

もしこれがオリンピックの種目ならば、確実に金メダルを取れていただろう

 

「……新先輩。ジッとしててください」

 

「は……はい……」

 

殺されると腹を括った新の耳にビリビリと何かを破る音が聞こえた

 

「………っ?っ!ギャァァァアアアアッ!俺のマントがァァァァァァァァッ!?」

 

なんと小猫は『闇皇の鎧』のマントを破り、それを自身の体に巻きつけた

 

「何ばしよっとですか小猫様ァ!?」

 

「……緊急胴衣」

 

「俺のマントは救命胴衣じゃごぜぇませんよぉ……?」

 

あまりのショックに新はキャラが崩壊してしまった……

 

「おっと、悲しんでる場合じゃねぇ。小猫!一誠達を援護するぞ!」

 

「……了解」

 

新は一誠のブーステッド・ギアのパワーが良い具合に溜まったであろう頃合いを見計らって、ある作戦を決行する

 

「小猫!一誠ロケット、発射準備開始!」

 

「……はい」

 

小猫は一誠に近付き、彼を豪快に持ち上げる

 

「小猫!一誠ロケット発射ァァァァァァァァッ!」

 

「……イッセー先輩。祐斗先輩を頼みます」

 

ブゥゥゥゥン!

 

「うおおおおおおっ!小猫ちゃぁぁぁぁん!」

 

一誠は悲鳴をあげながら、祐斗がいる方向へ一直線に飛んでいく

 

「はっはっはっはっはっは!ナイス発射だ小猫!」

 

新大爆笑

 

そして『Transfer(トランスファー)!!』と言う音声が発せられる

 

ブーステッド・ギアの能力『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』が祐斗に魔力を与えた

 

「……もらった以上は使うしかない!『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!」

 

祐斗の創る魔剣が路面、電柱、壁など、あらゆる場所から出現する

 

祐斗は神速で縦横無尽に動き回り、魔剣を次々とフリード目掛けて飛ばす

 

「うっは!これは面白サーカス芸だね!だ・け・ど、俺様のエクスカリバーは『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』!速度だけなら負けないんだよッ!」

 

フリードの聖剣の切っ先がブレ出し、神速で飛んでくる及び周囲の魔剣を全て破壊していく

 

最後は祐斗が両手に持っていた魔剣を粉々にして、聖剣を振り下ろそうとした

 

「やらせるかよ!」

 

匙が自身の手の甲に装備しているトカゲの顔らしき物の口から舌が伸び、フリードの足に絡み付いた舌を引っ張る

 

フリードの体が引っ張られて体勢を崩す

 

更にトカゲの舌が淡い光を放ち、それが匙の方へ流れていく

 

「……これは!クッソ!俺っちの力を吸収するのかよ!」

 

「へっ!どうだ!これが俺の神器(セイクリッド・ギア)!『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』だ!こいつに繋がれた以上、お前さんの力は神器(セイクリッド・ギア)に吸収され続ける!そう、ぶっ倒れるまでな!」

 

なんと匙は神器(セイクリッド・ギア)の所有者だった

 

嬉しい誤算を物にするチャンスである

 

「祐斗!今がチャンスだ!とりあえずフリードをブッ潰せ!エクスカリバーも危険だが、今はそいつの方が危険だからな!」

 

「……不本意だけど、ここで君を始末するのには同意する。奪われたエクスカリバーはあと2本ある。そちらの使い手に期待させてもらうよ」

 

「大した度胸だ。こういうのを身の程知らずと言うんだろうな」

 

突然第三者の声が届く

 

声がした方向を見ると、フードを被った怪しい輩が黒い剣を肩に乗せて新達を見ていた

 

「……っ!?何だこの異様な気迫は……!?静かなのに、一気に爆発を起こしそうな感じだ……」

 

新は今までにない危険な迫力を感じ取った

 

ズドドドドドドドッ!

 

フードの輩から重い銃声の様な音が鳴った

 

放たれた全弾が新に命中する

 

「ぐぁあああっ!」

 

「新!」「新先輩!」

 

新は銃撃らしき攻撃で吹っ飛ばされた

 

特に右腕の負傷度が大きく、傷口から血が滴る

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』。使い手の技量次第で無類の力を発揮するレアな神器(セイクリッド・ギア)か……だからこそ、自分の力量を把握出来ないと大局を見誤る。そうだったよな?バルパー」

 

フードの呼び掛けに応じ、初老の神父が出てきた

 

それは聖剣計画の当事者であり、祐斗の仇敵……

 

「……バルパー・ガリレイッ!」

 

「いかにも」

 

バルパーは堂々と祐斗の言葉に肯定する

 

そこへフードの人物がフリードにスタスタと近づく

 

「何やってるんだフリード。こんな奴ら相手に手間取るとは」

 

「旦那!この(わけ)の分からねぇトカゲくんのベロが邪魔で逃げられねぇんスよ!」

 

「ふんっ、聖剣の使い方がまだまだだな。聖剣とは―――――こう使うんだ」

 

ゴォォォォォッ……!

 

ブシュッ!

 

フードの携える黒い剣から炎と輝きが放たれ、匙の神器(セイクリッド・ギア)を簡単に切断した

 

「逃げさせてもらうぜ!次に会う時こそ、最高のバトルだ!バルパーのじいさん!撤退だ!コカビエルの旦那に報告しに行くぜ!」

 

「致し方あるまい」

 

捨て台詞を吐くフリードだが、「逃がさん!」と言う声と共に新達の前にゼノヴィアとイリナが駆けつけていた

 

「やっほ。お手伝いに来たよ」

 

「イリナ!」

 

「ここに来て助っ人の登場か。数だけならこっちが有利だが―――――あのフードが気になる……」

 

新はフードの輩をマークしている

 

尋常ならざる気迫と炎を発する黒い剣

 

ある最悪の考えが頭の中を過った

 

「フリード・セルゼン。バルパー・ガリレイ。反逆の徒め。神の名のもと、断罪してくれる!」

 

「ハッ!俺の前で憎ったらしい神の名を出すんじゃねぇや!このビッチが!あばよ、教会と悪魔の連合どもが!」

 

フリードが光の球を地面に投げると、閃光が辺りを包み込む

 

光が止むと、そこにはフードの輩しかいなかった

 

「追うぞ、イリナ」

 

「うん!」

 

「僕も追わせてもらおう!逃がすか、バルパー・ガリレイ!」

 

ゼノヴィアとイリナのあとを追う祐斗

 

フードの輩は駆け出していくゼノヴィアとイリナに首を向けた

 

「……何も変わってないな。愚か過ぎる程、未だに神を信仰していやがる」

 

「てめぇ!いったい何者なんだ!フリードの仲間か!」

 

一誠が声を荒くしてフードの輩に問い詰めた

 

フードの人物は乾いた笑い声を出しながら自身の頭部を覆っていたフードを外す

 

太陽の様な色をした髪と目

 

左頬に傷のある男の顔が、フードから現れた

 

その顔には見覚えがあった……

 

「おい……お前、名前何て言うんだ?」

 

新が恐る恐る男に名を尋ねる

 

出来れば違って欲しかったのだが―――――その思いは見事に砕打ちかれた

 

「俺の名は―――――神代剣護(かみしろけんご)

 

ゼノヴィアとイリナが探している写真の男の名前と一致してしまった……


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