「アイツが……親父の弟子……っ?」
突然のカミングアウトに新もリアス達も混乱する一方、バサラはフンっと鼻を鳴らすように笑う
総司は先程の攻撃で痛めた手を
「ああ、そうだ。私の唯一の弟子であり、最大の汚点とも言うべきかな。彼は私からバウンティハンターのノウハウや技術を盗み、独学で会得した。そして、異例の早さで
総司がバサラに視線を向けて言う
「バサラ、キミはそこまでして戦いに身を落とすのか? 自分の命すら惜しまないキミのやり方は……ハッキリ言って周りに良くない影響を及ぼす。バケモノ染みた強さを持つキミでも命は1つしか無い。何故その命を大事にしようとしない? やはり、キミは―――」
「命を大事に? 本気で言ってんのか?」
急に総司の言葉を
嘆息した後に語り出す
「命は1つしか無い……だから大事にしろと誰もが言いやがる。テメェらの親も、先公も、テレビに出てくるコメンテーターとか言う
バサラは額に手を当てて笑いを堪えるような仕草をした後、左目をカッと見開かせる
「―――だから、テメェらはダメなんだよッ! 命ってのはもっと粗末に扱うべきものなんだ。
力説するバサラは次に新の方に視線を移す
「その点、竜の字は違う。命の使いどころってヤツを心得ている。さっきも言ったように竜の字はヘタレ発言を繰り返しちゃいるが、決める時には決めてくる。何故なら―――本質は俺と同じように“戦いの中で生きてきた獣”だからだ。生きるか死ぬかの瀬戸際、ギリギリの淵でこそ見えてくる闘争心、本性。その全てが俺と酷似している。ただ1つ違うとすれば……環境の悪さだ」
「環境の悪さ……?」
「ああ、平和ボケなぬるま湯に浸かり過ぎて、くだらねぇ毎日を送り続け、日々を無駄に塗り潰す。強く生きようともしねぇ奴らが量産されて満足しようとしてやがる。日常? 平和? そんな
“諸行無常”―――この世に存在する一切のモノは常に変転して
確かに完璧な平和など存在しない……
今もこの世の何処かで争いや
それを認知せずに平和や平穏を
平和に
「だから、俺がテメェらに教えてやるよ。テメェらがほざく平和なんてモノはやって来ねぇ。生きている限り
常在戦場……
アザゼルやグレモリー眷属を始めとする三大勢力への宣戦布告とも取れる……
徹底的に平和や平穏を否定するバサラの極論に、一誠はワナワナと震えた
「そんなの……メチャクチャじゃねぇかっ!? 狂ってるどころの話じゃないっ!」
「ザコには分からねぇよ。―――“ただ生きたいだけ”のザコにはな」
一誠の反論を一蹴するバサラ
凶悪な実力に
そんな中、総司が1歩前に出る
「やっぱりキミは話しただけで分かってくれる男じゃないよね」
総司の体からオーラが
鬼と蝙蝠が混ざったような怪人と化した総司は、両手にオーラを集束させていく
普段はオチャラケている総司だが、ここぞと言う時に見せる本性は味方でありながら恐ろしい程の寒気を感じさせてくる……
怪人と化した総司を見たバサラは―――嬉しそうに口の端を吊り上げた
「ハハッ、やっぱオッサンもオッサンじゃねぇか! そっちの方が遥かに良いぜ? まあ、今日は挨拶代わりに来た程度だから、オッサンには置き土産をくれてやらぁ」
そう言った、次の瞬間―――っ!
ズシャアァァァッッ!
「「「「「「「――――ッ⁉」」」」」」」
総司以外の全員が目の前の光景に仰天した
それもその筈……バサラの胸から剣の柄らしき物体が飛び出てきたのだ……!
それも1本だけじゃなく、2本……3本……4本……5本……総計6本
バサラは飛び出てきたソレを掴んで、自身の胸から引きずり出す
右手と左手に3本ずつ
右の三振りは炎の如く波打つ赤い剣、鉱物のように
左の三振りは水と氷が混ざり合った青い剣、鳥の羽を模したような鮮やかな緑色の剣、眼の如き柄から稲妻を
その六振りの剣を見たアザゼルは信じられんとばかりに驚愕した
「何なんだ、あの剣は……ッ⁉
「前に戦った時よりも剣の数が増えてる……ッ⁉」
新も驚きを隠せない様子だった
六振りの
「止められなくなっても知らないよ? キミのやり方は、その魔剣どもと同じく周りの全てを戦禍に巻き込み、暴走させる……っ!」
「恐れるに足らねぇなぁ。戦いに生きる―――それが俺だ」
少しの言葉を交わした直後、バサラの六振りの魔剣と総司の打撃が一瞬でぶつかり―――極大の衝撃が巻き起こった
その衝撃は新の時の比ではない……
校舎どころか町の全てを震撼させる程のモノだった……
あまりにも次元が違う衝突に目を
「――――ッッ。嘘だろ……っ? 雲が……天が割れてる……ッ⁉」
アザゼルの言った通り、広大な天が先程の衝撃によって裂かれていた……!
その発生源たる総司とバサラは互いに1歩も
「今日は久々にスカッとしたぜ、オッサン。とりあえず引き上げてやらぁ」
「その方が良い。これ以上続けたら、ただの大災害になってしまうからね」
上機嫌のバサラは全ての魔剣を体内に戻し、総司も元の姿に戻る
バサラがシルバー達のもとに行こうとした時、総司が呼び止めてくる
「そうだ。1つだけ気になっている事があるんだけど、聞いても良いかい?」
「あ? 何だよ?」
「その右目は―――いったい誰に潰されたんだ?」
総司の言葉に奇異の視線が集まり、総司が話を続ける
「今までそんな眼帯なんて着けていなかったじゃないか。バケモノ以上のバケモノであるキミが
「……妙なところで
バサラは開き直ったのか、指摘された右目の眼帯を取り外す
バサラの右目は―――眼球その物が完全に無くなっていた……
骸骨のように薄暗い空洞が露呈し、その異様な顔立ちが
殆どの者が目を
バサラは不敵な笑みを絶やさずに言う
「こういう事が起こりうるから、戦いってのは止められねぇんだ。どんな奴でも化ける可能性を秘めている。たとえば―――ウチのチビスケとかな」
バサラが流し目でチビスケ……もといレビィを見据える
対してレビィは何故か気まずそうな表情をしていた
その話を聞いて総司は何かを得心したような顔付きとなる
「やっぱりね、その
「おっと、
「またな、竜の字。次に
そう言ってバサラ達は魔法陣の中へと消えていき、脅威が去った事で空気が一気に軟化する
恐怖で張り詰めっぱなしだった為、多くの者がその場でへたり込み、
新もようやく気持ちが落ち着いてきたのか、血走っていた眼が普通の様相に戻っていく
総司は足早に立ち去ろうとしたが、アザゼルに「ちょっと待て!」と止められる
「おっとっと、その顔は……聞きたい事が山程あるって顔をしてるね?」
「よく分かってるじゃねぇか、嘘吐きオヤジ。奴の事も、あのおかしな魔剣についても色々知っていそうだから洗いざらい吐いてもらおうか?」
総司は“野暮な事をしなきゃ良かったかな”と後悔しつつ、仕方がないと前置きをしてから話す事を決めた
「こうなってしまった以上、話すとしよう。避けては通れない相手だからね。アレは―――魔王や神だけじゃなく、次元すらも滅ぼしかねない禁じられた魔剣だ」
――――――――――――――
「―――
バサラ達が去り、部室に戻ってきたアザゼルとグレモリー眷属一同は総司から聞き慣れない単語を聞かされた
総司が神妙な面持ちで説明を続ける
「そう、それがバサラ・クレイオスの持つ魔剣の正体―――
「ロンギヌスって言葉が付くぐらいだから……
アザゼルの疑問は
アザゼルはこれまで
しかし、話題に挙げられた
その疑問に総司が答える
「当然だね。今は亡き聖書の神が存在を
「なっ、何だとっ⁉」
総司の言葉にアザゼルは勿論、オカルト研究部の全員が驚いた
発見されていない物は多いが、存在すら認知されていない物は初耳だった
それだけならまだしも、“発生源たる聖書の神が存在を隠蔽していた”と聞かされたら度肝を抜かれるのは当然だろう
総司は
「―――
「自らヒトを引き寄せる……? 独立具現型の
アザゼルの問いに対し、総司は首を横に振る
「そんな優しいモノだったら、どれだけ良い事か……。引き寄せるだけならまだしも、宿主に
「
続々と出てくる衝撃の事実にアザゼルも、新も、リアス達も開いた口が塞がらない……
そんな危険極まりない
しかも、規格外の強さを見せつけたバサラ・クレイオスの手に……
「バサラ・クレイオス……彼が持っているのは
「つまり、ヤツの中には文字通り6体の
アザゼルが憎々しげにバサラとのファーストコンタクトを思い出す
バサラが放っていた重圧は彼自身に加え、彼の体内に巣食っている魔剣群―――
総司が
先程見た魔剣群を簡単なイラストで描き、それぞれに封印された魔獣達を明かす
「あの魔剣に封じ込められている魔獣は、どれも神話や伝承に名高いモノばかりだ。中にはキミ達がよく知っている神もいるだろう。まずは火の魔剣、天界から火を盗み、人類に“火”と言う知性を与えた神―――プロメテウス。尽きる事の無い紅蓮の炎を操り、
「プロメテウス……人間に火を与え、文明や技術を発展させたと同時に戦争を起こす引き金にもなったギリシャ神話の神か。あの戦闘狂にピッタリだな……」
「水の魔剣に封じられているのは北欧神話の神―――エーギル。海で死した者の魂を喰らい、水、氷、幻を操る
ここまでの説明だけでも破格過ぎるバサラの魔剣……
ギリシャ、北欧、イラン神話と様々な神があの魔剣に封じ込められている……
アザゼルは顔を
それでも総司は説明を続ける
「地の魔剣に封じられているのは
「ガーゴイルって漫画やゲームなんかで出てくるザコキャラみたいな奴じゃあ―――」
「それは違う。本来のガーゴイルは
次は雷の魔剣に視点を置く
「雷の魔剣には先程のプロメテウス同様、ギリシャ神話の神キュクロプス―――通称サイクロプスが封印されている。単眼から大地を焼き払う程の
「サイクロプスって……あの一つ眼の巨人みたいな怪物が⁉ つーか、神様だったのか⁉」
驚く一誠に、総司は淡々と語っていく
「また漫画やゲームでの先入観から来る誤解だね。サイクロプスは元々才能ある
最後に血の紋様が刻まれた漆黒の魔剣について語り始める
「そして、闇の魔剣……。コイツが1番厄介な代物でね。彼が最初に手に入れた
総司の口から全ての魔獣の名が明かされ、部室内は不気味な静寂に包まれる……
張り裂けそうな空気の中、アザゼルは絞り出すように総司へ問い掛ける
「……いつから奴はあの魔剣を持っていた?」
「私と出会う以前から持っていたそうだよ。と言っても、最初の内は2本だけだったけど。残りの魔剣は
「運命の
「それがバサラ・クレイオスと言う
総司の言葉に静まり返る一同
総司は真剣な
「アザゼルくん、これから先は本当に厳しい戦いになると思うよ。彼は―――バサラは戦いを楽しむ
警告とも取れる総司の言葉にアザゼルは何も言えなかった
ここまで来た以上、引っ込みなどつけられない……
そんな事をすれば、バサラは
総司の視線が新に向けられ、総司が新に伝える
「新、お前もバサラの性格は知っているだろう? 彼の目的は“キミと戦い続ける事”だ。だが……今のままでは到底キミに勝ち目など無い。怒りをぶつけるだけではダメだ。頭のてっぺんからつま先まで自分を使いこなせ。今のお前なら出来なかった事も出来る筈だ」
「……俺を使いこなす……?」
「と言うわけで、今から
「こんな時に食欲なんか湧くかよ……」
「良いから良いからっ」
総司は新の手を掴み、
部屋を出る寸前、総司がアザゼル達に告げる
「アザゼルくん、リアスちゃん、皆も今日はご飯をしっかり食べて気分をスッキリさせたまえ。さっきは脅すような口振りだったけど、バサラはキミ達の這い上がる姿も期待しているんだよ。ただ、そのやり方が過激過ぎるのが難点だけどね。とにかく、自分を見失わない事。良いね? それじゃっ」
そう言って総司は新を連れて部室から出ていった
すっかり
―――“やっぱりね、その
―――“どんな奴でも化ける可能性を秘めている。たとえば、ウチのチビスケとかな”―――
その言葉からアザゼルは最悪の予想を脳裏に
『―――あのレビィって娘にも
アザゼルは心の底から“とんでもない組織を敵に回そうとしている”と後悔してしまった……
――――――――――――――――
「バサラさま、本当によろしかったのですか?グレモリー眷属を野放しにしたままで」
「良いんだよ、今日は挨拶代わりに来ただけだ。ここで終わらせちまったら
「そうですか。しかし……これで彼らも思い知ったでしょうね。六振りの魔剣―――
「この程度で尻尾巻いて逃げるようなら興醒めだ。俺が
「『
「おいおい、シルクスカーフ。うちのチビスケみたいに化けるかもしれねぇだろ?」
「シルバーです。……それより、バサラさま。指揮官から次の襲撃地点の
「三大勢力の拠点か」
「はい。つきましては傘下に入った盗賊ギルドの3人を向かわせようかと」
「ああ、あの連中か。確かパンダトレーニングって奴ら―――」
「『
「構わねぇよ、好きに暴れさせてやりな」