ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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1ヶ月以上かかってしまいました……!

本当にどうにかしないと……


独眼の怪物、バサラ・クレイオス

不気味なまでに静寂に包まれた夜

 

校庭に出た一誠達は既に戦闘準備を整えていた

 

一誠は禁手(バランス・ブレイカー)の鎧を身に纏い、祐斗とゼノヴィアもそれぞれ聖魔剣(せいまけん)とデュランダルを構えている

 

この3人が前衛を務め、中衛にイリナ、猫又モードの小猫、ロスヴァイセ

 

後衛にリアスと朱乃が控えており、アーシア、ギャスパー、レイヴェルはアザゼルと共に後方で待機している

 

一方、バサラ・クレイオスは余裕綽々と言った感じでリアス達の方を見ていた

 

造魔(ゾーマ)の執政官シルバーと死神ブラッドマン、“バサラの右目役”と称されるレビィも静観している

 

すると、バサラが手を差し伸べながら呼ぶ

 

「おい、チビスケ」

 

「だから、その呼び方はやめてって言ってるでしょ⁉」

 

「チビスケはチビスケだろうが。さっさと得物を創りな」

 

「もうっ……バサラのバカ」

 

“チビスケ”の呼び名に不満を見せながらも、レビィは人差し指と中指を伸ばした状態の右手で何かを描くような動作をする

 

光の軌跡から生み出されたのは……一振りの刀だった

 

レビィによって創られた刀を受け取るバサラ

 

その様子を見たアザゼルは目を見開き、驚愕に満ちた顔付きとなる

 

『何だ、あの力は……?何処から刀を出した……っ?いや、“創った”のか……⁉まさか、あの娘は神器(セイクリッド・ギア)持ちか……っ?』

 

アザゼルが驚きを隠せないのも当然だった

 

神器(セイクリッド・ギア)の中でも何かを生み出す創造(クリエイト)系の神器(セイクリッド・ギア)は珍しい部類に位置する

 

祐斗の持つ『魔剣創造(ソード・バース)』や後天的に会得した『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』、神滅具(ロンギヌス)の『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』等が広く知られている

 

恐らくレビィも創造(クリエイト)系の神器(セイクリッド・ギア)で刀を創り出したのだろう

 

しかし、それは『魔剣創造(ソード・バース)』でも『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』でもない

 

アザゼルですら初めて見る程の代物……

 

バサラは刀の使い心地を確かめるように1回、2回と刀を振り、リアス達に視線を移す

 

「ハンデだ、先に1発打たせてやる。誰でも良いから、かかってきなよ」

 

バサラは左手をクイクイっと動かして挑発する

 

その一挙一動(いっきょいちどう)に対して不快感を(あらわ)にするリアス達

 

そこで一誠が1歩前に出てくる

 

「お前……さっきから人をバカにしやがって……っ!後悔するぞ……っ!」

 

「おっ、テメェがやるのか?テメェは確か……セキセイインコのひょうたんイチジクだったな」

 

赤龍帝(せきりゅうてい)兵藤一誠(ひょうどういっせい)だッッ!何処もかしこも間違いだらけなんだよ!ワザとやってんのか⁉」

 

「あー、ギャンギャンうるせぇな。吠える暇があるなら、さっさと来いよ駄犬(ワンコロ)

 

バサラの挑発オンパレードに一誠は我慢の限界を迎えたのか、握った拳を震わせ―――背中のブーストを噴かして飛び出していった

 

距離を詰めて右拳を力の限り突き出し、バサラの顔面にドゴンッ!と拳打が派手な音を立てて突き刺さる

 

手応えのある感触だったのか、一誠は内心で“ザマァ見ろ!”と毒づき、他の皆も一矢(いっし)ぐらいは(むく)いただろうと表情を緩める……だが―――っ

 

ニヤリ……ッッ!

 

「「「「「「「――――っ⁉」」」」」」」

 

全身をムカデが這い回るような気味の悪い怖気(おぞけ)が走り、拳を打ち込んだ一誠は反射的に飛び退いてしまう

 

それもその筈、渾身の力で顔面に拳打を食らわせたにもかかわらず―――バサラ・クレイオスが無傷で(たたず)んでいたのだから……

 

「なるほど、石炭まみれのひょうすべインターハイと言われるだけの事はあって、そこそこ良い拳打を打ち込んでくるじゃねぇか。三流程度の奴なら1発でKOされてらぁ」

 

『コ、コイツ……まともに食らったってのに全く効いてない……⁉しかも、鼻血すら出てないって……っ』

 

バサラの平然とした態度、先程の威圧感に一誠は戦慄するしかなかった

 

そして、同時にこうも思った

 

“石炭まみれのひょうすべインターハイって、どんな間違い方だ……っ”と……

 

一誠が心中でツッコミを入れる最中、バサラは得意気に言う

 

「まあ、それも平和ボケに満ちた平和主義世代での話だ。本物の死線と修羅場を潜り抜け、激動の時代を生き抜いてきた俺達ハンター世代には全く……通用しねぇんだよ」

 

そう言いつつバサラは刀を右手から左手に持ち替え、腰を深く落として半身(はんみ)の姿勢を取り、左手に持った刀は体の後ろに置くように引き、刀の切っ先を相手に向け、その(みね)に右手を軽く添えた

 

分かりやすく言えば、ビリヤードの(キュー)を構えた状態に近い体勢だ

 

独特な構えを取った……その刹那――――っ

 

ドンッッッッ!!!!

 

地面が()ぜ、バサラは瞬時に距離を詰めて一誠に刀での突きを食らわせた

 

「……ッッ⁉」

 

いったい何が起きたのか……?

 

一誠や祐斗だけでなく、グレモリー眷属の誰もが反応さえ出来なかった……

 

更に凄まじい突進の勢いを維持し、一誠の右肩を(つらぬ)いたまま校舎の壁を粉砕して突き進む

 

(いく)つもの壁や障害物を破壊し、離れた体育館の壁も突き破ったところでようやくブレーキを掛ける

 

右足を踏ん張らせて土煙を上げながら止まり、刀を引き抜くバサラ

 

一誠は慣性の法則によってそのまま吹き飛び、壁に叩き付けられた

 

右肩と口から血を出す一誠は倒れ込み、バサラが一瞥する

 

「何だよ、ドラゴンの鎧を纏ってるからどれだけ(かて)ェのかと思えば―――強度がまるでオモチャ並みじゃねぇか。竜の字はこんな弱っちい奴らとつるんでたのかよ」

 

そのまま立ち去ろうとするバサラだが、後ろから「ま、待て……っ!」と苦悶を孕んだ声が聞こえてくる

 

振り返ってみると一誠が立ち上がり、再度攻撃の構えを取っていた

 

しかし、先程のダメージが響いたせいか呼吸が乱れており、兜と鎧も半壊している

 

そんな状態の一誠を見て、バサラはつまらなそうに吐き捨てる

 

「おとなしく寝ていた方が身の為だぜ?致命傷じゃないとはいえ、肩を貫いたんだ。もうテメェはまともに戦えやしねぇよ」

 

「うるせえっ!こんな傷が何だってんだ……!まだ勝負はこれからだァァァァッ!」

 

一誠は声を荒らげ、殴りかかろうとするが―――バサラが右手に持ち替えた刀で一誠の肘関節を打ち、攻撃の勢いを止める

 

すかさず左手で一誠の右肩を掴み、負傷した箇所を握り潰しに掛かる

 

「ぐわぁぁぁあああぁぁぁぁあああああっ!」

 

傷口を(えぐ)られた一誠は絶叫を上げ、バサラが右手で一誠の顔面を鷲掴み―――

 

「寝てろ」

 

ガゴンッッ!と床に叩き付けた

 

 

――――――――――

 

 

一方その頃、取り残されたリアス達はハッと我に返ったように後方へ視線を向ける

 

思考さえも止めたバサラの突き……まさしく一撃必殺……

 

その速度および破壊力は“凄まじい”の一言に尽きるものであり、校舎に開けられたドデカい風穴がそれを物語っていた……

 

バサラの剣腕(けんわん)を目の当たりにしたリアス達は、嫌な汗が止まらなかった

 

(しばら)くするとバサラが崩壊した穴を介して戻ってきた

 

左手に握る刀からは血が(したた)り落ちている……

 

静寂を壊すようにバサラが後方を親指で差しながら言う

 

「回復役がいるなら、さっさと行きな。死んじゃいねぇけど襤褸(ボロ)切れみてぇになってるからよ」

 

「―――ッ。急げっ、アーシアッ!」

 

「……っ、は、はい!」

 

アザゼルはアーシアを連れて一誠の救護に向かい、バサラはその様子を見据えてから歩みを再開

 

祐斗とゼノヴィアの前に立ち、刀に付着した血を

舌で舐め取る

 

「石像定食のガキの血は青(くせ)ェ味してんな。美味くも不味くも()ェ」

 

一誠の拳打をまともに受けてもダメージらしき傷を受けていない頑丈さ、一撃で仕留める剣腕、そして得体の知れない狂気具合……

 

どの点から取ってもバサラ・クレイオスは桁違いの恐ろしさを滲み出していた

 

自然と祐斗の呼吸も乱れ始め、ヌルリとした嫌な汗が止まらない

 

それでも……1歩も退くわけにはいかない

 

気力を振り絞り、地面を蹴って飛び出す祐斗

 

幾重もの残像を生み、フェイントを混ぜてバサラとの距離を詰めていく

 

目にも留まらぬ素早さを駆使する祐斗に対し、バサラは―――欠伸(あくび)をするだけだった

 

侮辱的な態度に祐斗は内心で憤慨しながらも、冷静に仕掛けるタイミングを(うかが)

 

そして……右から攻める―――と見せかけて左サイドからの剣戟を見舞った

 

バサラは瞬時に読んだのか、左手の刀で難無く防ぐ

 

簡単に防がれてしまう祐斗だったが……機転を利かせて左手にもう一振り聖魔剣を創り、挟み込むようにしてバサラの刀を封じる

 

そこへゼノヴィアがデュランダルを振りかざして向かってきた

 

刀ごと左手の動きを封じている以上、防ぐ(すべ)は無い筈

 

ゼノヴィアはデュランダルに聖なるオーラを(たぎ)らせ、バサラの頭部目掛けて振り下ろした

 

だが……ガキィンッッ!と鈍い金属音が鳴り響く

 

「……っ⁉素手でデュランダルを受け止めた……っ⁉」

 

ゼノヴィアが驚くのも無理はない

 

渾身の剣戟をバサラは空いている右手で難無く制していたのだから……

 

バサラは余裕の満ちた笑みを浮かべて告げる

 

「そんな腕じゃあ、俺は斬れねぇよ」

 

(ザン)ッッ!

 

バサラは体を(ひね)って両手の剣戟による風圧で祐斗とゼノヴィアを薙ぎ払い、周囲の地面を切り裂く

 

祐斗とゼノヴィアは斬られながらも体勢を立て直した

 

疲弊の色を見せる2人に対して、バサラは“大した事ねぇな”と言わんばかりに口の端を吊り上げる

 

そこへ猫又モードの小猫が俊敏な動きで殴り掛かってくるが、バサラはそれを(ことごと)(かわ)していき―――

 

「どいつもこいつも欠伸(あくび)が出ちまうな」

 

侮蔑するように吐き捨て、刀で小猫を斬ろうとするバサラ

 

そこへイリナが光の槍を複数投げて牽制、バサラは瞬時に回避した

 

しかし、投げつけられた光の槍を1本掴んでおり、それを素手で握り潰す

 

「こんなもんかよ」

 

再びつまらなそうに吐き捨てるバサラ

 

リアスが正面から極大の消滅魔力、朱乃が上空から雷光をそれぞれ撃ち放った

 

前方と上空からの同時砲撃

 

バサラは腰を深く落として構え、斬り上げるように雷光を切り裂き―――返す勢いで消滅魔力を豆腐のように両断する

 

ロスヴァイセの全属性による魔術砲撃も容易(たやす)く斬り払い、霧散させた

 

(しばら)くグレモリー眷属の猛攻が続いたが、バサラはそれらをいとも簡単に(かわ)し、防ぎ、斬り払っていく

 

どれだけ攻撃しても届かない……無駄だと言う虚無感が押し寄せてくる……

 

「そろそろ潮時だな」

 

そう(つぶや)いた直後、バサラは距離を取るように飛び退く

 

(がん)()()(ぜつ)(しん)()。人の六根(ろっこん)(こう)(あく)(へい)。また各々(おのおの)(じょう)(せん)。……一世(いっせ)三十六(さんじゅうろく)煩悩(ぼんのう)

 

バサラが神仏の説法(せっぽう)らしき言葉を唱えた後、左手に持った刀を頭上に掲げ、その腕に右手を添えて構える

 

「テメェらの攻撃はだいたい分かった。及第点ぐらいはやっても良い。だがな……所詮テメェらは井の中の(かわず)だったんだよ」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!

 

突如、バサラの全身から禍々(まがまが)しいオーラが放出され、持っている刀にも伝播していく

 

その気迫、その威圧感はまるで巨大な魔獣にでも睨まれているかのようだった……

 

「1つ聞いておく。テメェらは―――魔獣のような斬撃(ざんげき)を見た事があるか?」

 

禍々しいオーラの濃さが増していき、バサラの眼孔が妖しく光る

 

そして――――ッ!

 

「―――クロス・バースト……ッッ!」

 

勢い良く刀を振り下ろした刹那、極大の斬撃が(ほとばし)り、轟々(ごうごう)と地を(えぐ)りながら突き進む

 

しかも、その斬撃は見覚えがあるもので……新が度々(たびたび)使用していた剣戟波と同じものだった

 

否……厳密には少し違っていた

 

撃ち放たれた斬撃は、先程バサラが言った通り―――魔獣の(ごと)き恐ろしげな形相と化していたのだ……っ!

 

その尋常ならざる斬撃に一瞬の判断が遅れ、小猫と空を飛んでいたイリナが斬撃の余波を食らってしまう

 

直撃だけは(まぬが)れたものの、余波だけで全身の内外を激しく痛めつけ、2人をそれぞれ吹き飛ばす

 

イリナは崩壊した校舎の壁に激突して落ち、小猫は木に叩き付けられてしまう

 

想像を絶する威力に戦慄する面々

 

もし直撃をくらってしまえば、消滅は必至だろう……

 

バサラは持っている刀で土煙を軽く斬り払い、一言だけ告げる

 

「峰打ちだ、勘弁しろよ」

 

いったい何処をどう見れば“峰打ち”になるのだろうか……?

 

祐斗は得物を聖魔剣から聖剣にチェンジし、禁手(バランス・ブレイカー)の龍騎士団を生成する

 

アウトレンジ戦法に切り替えたのだろうが、バサラ相手に生半可な攻撃は通用しない……

 

向かってくる龍騎士団の剣戟を(かわ)し、得物を(かす)め取りながら龍騎士を刀で(ほふ)っていく

 

龍騎士を全滅させたバサラは奪い取った2本の剣を得意気に見せ、その内の1本を地面に突き刺す

 

「一世三十六煩悩、二世(にせ)七十二(ななじゅうに)煩悩」

 

先程放った剣戟波と同じ様に構えを取り、禍々しいオーラを刀に纏わせる

 

“また、あの斬撃が来る……ッ!”

 

危険を察知したリアス、朱乃、ロスヴァイセは「そうはさせないっ!」とばかりにそれぞれ極大の魔力を撃ち放った

 

滅びの塊、雷光、魔術砲撃のフルバーストが一斉に向かっていく

 

ゼノヴィアも便乗し、デュランダルから極大の聖なるオーラを(ほとばし)らせ―――それを解き放った

 

祐斗は聖剣を再び聖魔剣に持ち替え、リアス達を囲むように幾重もの聖魔剣を出現させる

 

聖魔剣でシェルターを作り、更にリアス、朱乃、ロスヴァイセが防御魔法陣を展開してシェルターをより頑丈にする

 

一方、バサラは二振りの刀を振り下ろし―――再び魔獣の斬撃を放った

 

先程よりも巨大で凶悪な形相となった斬撃が4つの攻撃と正面衝突

 

否……一方的に消し去り、聖魔剣のシェルターをも容易く呑み込んでいった

 

凄まじい爆発と爆煙が巻き起こり、シェルターがバラバラに吹き飛ぶ

 

爆煙が晴れると……死屍累々(ししるいるい)と倒れているリアス達の姿が映った……

 

「……ッ!何なんだよ、これ……っ」

 

戻ってきたアザゼル、肩を貸してもらっている一誠、アーシアは愕然とする

 

バサラが戻ってきた3人に気付くと、口の端を吊り上げて言う

 

「よお、カラスのオッサン。まだコイツらに続けさせたいか?」

 

挑発してくるバサラに対し、腹立たしさを沸かせるアザゼルだが……悲惨に成り果てた現状を見て激情を抑え込む

 

“これ以上続ければ命に関わる……!”

 

アザゼルはやむを得ず、降伏を宣言しようとしたが……アーシアの治療を終えたばかりの一誠が前に出てきた

 

「……我、目覚めるは王の真理を天に掲げし、赤龍帝(せきりゅうてい)なり……っ!」

 

「―――っ⁉イッセー⁉」

 

「無限の希望と不滅の夢を抱いて……王道を往く……っ!我、紅き龍の帝王と成りて……っ」

 

「やめろっ、イッセーッッ!傷を治したばかりで『真・女王(クイーン)』は無茶だっ!」

 

アザゼルが必死に呼び止めるが、仲間をやられた現状を見てしまい、激情が爆発した一誠は止まらない……

 

アーシアの声も……アザゼルの声も……今の一誠には全く届かず、一誠は最後の呪文を唱えた

 

「「「「「「(なんじ)を真紅に光り輝く天道へ導こう―――ッ!」」」」」」

 

Cardinal(カーディナル) Crimson(クリムゾン) Full(フル) Drive(ドライブ)!!!!』

 

籠手の宝玉から力強い音声が鳴り、真紅の鎧が一誠の全身を覆う

 

真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)』となった一誠はドラゴンの両翼を広げ、ブーストを噴かして猛然と驀進(ばくしん)する

 

それを見たバサラは不敵な笑みを浮かべ―――両腕の筋肉を大きく脈動させる

 

血管が浮かび上がる程に膨らんだ両腕で刀を持ち、一誠の放った拳打を軽々と打ち返した

 

バサラの剣圧に押し負けた一誠は体を起こし、両翼からキャノン砲を展開して魔力をチャージしていく

 

Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)!!!!』

 

音声を何度も何度も響かせる最中、バサラは地に突き刺していた刀を引き抜き―――3本の刀を右手の指の間に挟むようにして持つ

 

その様相はもはや刀と言うより爪である

 

まるで竜の爪……っ

 

3本の刀を挟んだ右手を掲げ、先程と同じ様に禍々しいオーラを溜めていく

 

一世(いっせ)三十六煩悩、二世(にせ)七十二煩悩、三世(さんぜ)百八煩悩」

 

天変地異の前触れか……世界崩壊の前触れか……

 

バサラの全身から揺らめく禍々しいオーラは、この世のものとは思えなかった……

 

「クリムゾン……っ、ブラスタァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアッッ!」

 

Fang(ファング) Blast(ブラスト) Booster(ブースター)!!!!』

 

一誠が吼え、両翼のキャノンから莫大な赤いオーラが放射された

 

一誠の怒りを表すかの如く、赤い奔流が天地全てを震撼させながら突き進んでいく

 

その砲撃の余波も凄まじく、離れた場所にいるレビィが(めく)れそうになったスカートを押さえる程であった

 

真紅の砲撃に対してバサラは―――三振りの刀による魔獣の斬撃を放った……!

 

魔獣の斬撃が大口を開き、真紅のオーラを掻き消しながら悠然と猛進

 

次々とあり得ない現状を目の当たりにした一誠は目元を引くつかせ、再び絶叫した

 

「ウアアァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」

 

魔力を底上げさせて対抗しようとするが、それはただの悪足掻(わるあが)きにしかならなかった……

 

赤い奔流が端々から掻き消され、最終的に魔獣の斬撃は一誠の全身を呑み込んだ……っ

 

真紅の鎧は砕け散り、全身をズタズタに斬られ、焼かれ、肉体の隅々から血が噴き出し、黒煙が立ち込める

 

この一撃によって一誠の意識は途絶え、膝をつき……倒れ込んだ

 

「……イッセー、さん……っ?イッセーさん……⁉イッセーさんッッ!」

 

アーシアが泣き叫んで駆け寄り、一誠の体を起こす

 

だが、一誠は完全に意識を失っており……酷い有り様となっていた

 

止められなかったアザゼルはワナワナと震え始め、一誠のもとへ歩み寄る

 

その震えは怒りから来るものではなく―――バサラ・クレイオスに対する戦慄・圧倒的恐怖から来るものだった

 

『こんな事が……現実なのか……っ⁉こんな奴が、本当に存在するのか……っ⁉』

 

目の前にいるのは、もはや人間ではない……

 

他を一切寄せ付けず、あらゆる障害をねじ伏せる

 

まさに稀代の怪物……っ!

 

アザゼルは現状が夢幻(ゆめまぼろし)であって欲しいと願った……

 

そんな心中を見抜いたのか、バサラが奪い取った聖剣を捨てて告げる

 

「おい、オッサン。残念だがコイツは夢でも幻でもねぇよ。テメェらが見てるのは現実、リアルだ。いくら目を逸らそうが、血迷った戯れ言をほざこうが変わらねぇ―――たった1つの真実と結果。分かっただろ?これが……テメェらが俺に喧嘩を売った代償―――いや、こんなもんは代償ですらねぇ。ただの自爆、ガキが火遊びに手を出したしっぺ返しってところだ」

 

さも当然の如く冷淡に吐き捨て、(きびす)を返すバサラ

 

圧倒的な実力差と勝利を見せ付け、シルバーがパチパチと賛辞の拍手を贈る

 

「お見事です、バサラ様。さすがは魔剣聖(ヴァンキッシュ)の異名を持つ御方(おかた)。無礼極まりないグレモリー眷属も理解した事でしょう。我々造魔(ゾーマ)に歯向かうのがどれだけ愚かで無謀な事かを。しかし、宜しいのですか?この場で消した方が良い見せしめになるかと―――」

 

「ほっとけ、シーチキン。この程度で心が折れるようなら、俺どころかお前らの相手にもなりゃしねぇよ」

 

「そうですか。……あと、シルバーです」

 

面白味が無くなったのか、バサラは興醒めした様子でアザゼルに再び吐き捨てる

 

「テメェらと俺じゃあ、(くぐ)ってきた修羅場の数が違うんだよ。―――アホが」

 

侮蔑の視線と言葉を贈るバサラ

 

アザゼルは口元に血が滲むほど歯を噛み締めるが、一誠達の治療を優先すべく動く

 

バサラはフンッと溜め息を吐き、帰り支度をしようとした

 

その時、不意に正門側から殺気を孕んだ視線がバサラに向けられる……

 

それは彼にとっても嬉しい来客のものだった

 

「よお、随分と遅かったじゃねぇか?昼寝でもしてたのか―――竜の字?」

 

バサラが呼ぶ―――“竜の字”

 

腐れ縁であり、一誠達よりも幾分か歯応えのある男

 

痛々しく巻かれた包帯、疲弊が抜けていない体を引きずって現れた男

 

「……っ……っ!やってくれたな……っ、バサラァ……ッッ!」

 

憎々しげにバサラを睨み付ける男―――新

 

本気の殺意を孕んだ視線にバサラは嬉々として言った

 

「良いじゃねぇか、その目付き。その気迫。やっと昔のテメェに戻った気がしてきたぜ。あの頃の狂気、見せてくれよ」

 

闇皇(アラタ)魔剣聖(バサラ)、ここに相対する……!




今回はバサラ無双回でした!

次回は病み上がりの新がバサラと激突します!

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