最近どんどん書くスピードが遅くなってる……
「ヒュルッ」
先に攻撃の口火を切ったのは
両腕と自分自身に竜巻を纏わせ、空中へと飛び出し―――猛然と襲い掛かっていく
その“厄災”に対して、新はその場を動かず……火竜を纏わせた拳を突き出した
竜巻と火竜が衝突し、衝撃の余波が室内の全てを揺らす
テンペスターはもう一方の腕で新の腹を殴り、その勢いのまま突き進んで壁に叩き付ける
更に顔面に膝を叩き込み、再び火竜を纏わせた拳でテンペスターを殴り飛ばした
新はすかさず追撃を仕掛けるべく飛び出した
今度は火竜を足に纏わせ、跳躍からの踏みつけ攻撃
テンペスターの
大きく鳴り響く打突と破砕音
相手に反撃の
否、正確には突然の“新の変貌ぶり”に戦々恐々としていた……
『やっぱりおかしい……っ。これは―――いつもの新くんの戦い方ではありません……。まるで、殺意と敵意をむき出しにした野獣のような……っ』
新は現役のバウンティハンターゆえに、クレバーな戦法を取る事もあった
そうしなければならない場面もあるからだ
しかし、今の新は全く違う……
ただ力任せに暴力を振るい、相手を徹底的に殺さんとする
こうなった原因は無論―――ここへ戻る前にバサラ・クレイオスと対峙してしまった事である
バサラ・クレイオスに出くわしてから、新は明らかに苛立ちや怒りの色が濃密なモノとなり―――人が変わったようになっていた
過去に因縁があったゆえか、新はその
最初は違和感を覚えた程度の認識だったが、ここへ来てソーナは新が“いつもの様子と違う”事を確信し―――新のもとへ駆け寄った
「もう止めなさいっ、新くんっ!」
「…………アァ?」
今まで聞いた事の無い程低くドスを利かせた声、血走らせた眼孔
敵ならいざ知らず、ソーナ……仲間に対して向けるのは初めてだろう
ソーナは一瞬萎縮しかけるが、殴ろうとしている新の拳に自身の手を掛ける
新はハッと我に返り、力が抜けたように息を吐いた
「悪い……っ」
「落ち着きましたか、新くん?」
「ああ……お陰さまで」
「下の階で何かあったのですか?あなたがあんなに取り乱すなんて」
「……別に。ここ最近の
新はバサラ・クレイオスと遭った事を伏せて、その場凌ぎの嘘で弁明する
本当なら話しておきたいところだが、そうなるとリアス達にまで話が行き渡ってしまう恐れがある……
『俺とアイツの問題にリアスやソーナ、皆を巻き込みたくない……っ。巻き込みたくないが……アイツの性格からして無理だ……。話しておくべきなのか……?いや、それでも―――』
苦々しい表情で思慮していた矢先、新の背後から再び“厄災”の
「ジャキンッ」
テンペスターは十指を刃物のように変化させ、新の背面を切り裂く
完全に不意を突かれた新の背中から鮮血が噴き出し、新は飛び退いて距離を取った
あれだけ痛めつけられたにもかかわらず、テンペスターは驚異的な回復力で復活を遂げていた
「ぐ……ッ!こいつ、まだ生きてたのか……⁉」
「余所見とは余裕だな、お前達の厄災はまだ終わってないぞ。―――ヒュルッ」
テンペスターの周りに複数の竜巻が現れ、新やソーナ達に襲い掛かる
新は今の状態では防ぎきれないと踏んで、自分の内にある竜の力を解放
『真・
黒い火竜と漆黒の巨腕を一斉に撃ち放って、全ての竜巻を
莫大な爆煙が立ち込め、その中から十指を刃物に変化させたテンペスターが斬りかかって来た
間に合わないせいか、新は自前の両腕でテンペスターを押さえ込もうとするが……“厄災”の十指が新の両腕を貫く……!
両腕に走る激痛に耐えながら、新はそのままテンペスターの両肩を掴む
更にそこから雷炎モードとなり、大口を開けて炎と雷の塊をチャージしていく
超至近距離での砲撃
テンペスターは直ぐに距離を取ろうとしたが、新が漆黒の巨腕でその動きを封じる
「―――『
炎と雷が入り乱れた砲撃が“厄災”の全身を焼き払う……ッ!
極大の砲撃は室内の壁を突き破り、空の彼方へ消えていく
砲撃が止み、テンペスターの体からブスブスと黒煙が立ち込める
“厄災”は力尽きて倒れ伏し、新も雷炎モードを解除して座り込んだ
そこへソーナが歩み寄り、声を掛ける
「大丈夫ですか、新くん?」
「あ、ああ……何とかな。ただ、こんなバケモノみたいな奴が
新は大きく息を切らしながらも立ち上がろうとするが、足元がふらつき倒れそうになる
ソーナは直ぐに『
戦闘が終わっても新は浮かない表情をしており、ソーナは不安と疑心を
そこへセラフォルーがソーナに話し掛ける
「今日の新くん、いつもと様子が変だよね」
「お姉さまもお気付きになりましたか。……ええ、今の彼は明らかにいつもと様子が違います。まるで何かに
「そうよねっ。ソーたんも私も、
「そういう問題では……いえ、確かにそうですよね。いつもの彼なら、視線ぐらいは向けてもおかしくありません」
セラフォルー、ソーナ、シトリー眷属女子は先程のテンペスターとの戦いで服が破れ、際どい格好になっている
いつもの新なら戦闘の最中でもエロい格好のソーナ達に視線を向ける筈だが、今回は全く反応を示さなかった
それだけを
『やはり……さっき彼が下の階を見に行った時に、何か遭ったのでしょうか?リアスにも伝えた方が良さそうね』
とりあえず今は倒れ伏しているテンペスターのもとへ行き、その身柄を冥界へ移送しようとした
転送用の術式を施そうとした―――その時、テンペスターの目が見開いてソーナを睨む
『――――っ⁉』
突然の復活に驚愕するソーナとシトリー眷属の面々は、直ぐに距離を取って身構える
しかし、テンペスターは倒れたまま淡々と告げてくる
「……我がここまでダメージを受けるとは計算外、想定外のダメージ。我の回復力でもこれ以上の戦闘は不可能と見た。……我は1度、死ぬしかない」
「死ぬ……?それはどういう意味?」
「“相手が悪かった”―――と言う事だ」
ボシュンッッ!
次の瞬間、テンペスターの肉体が灰になるかのように吹き飛び、黒い霧が室内一杯に広がった
「―――ッ!かは……っ!ぐ……あぁ……っ!」
「ソーナちゃんっ⁉どうし―――っ!ア……ウゥ……っ!」
突如、ソーナやセラフォルー、シトリー眷属全員が苦しみ始めた
首や口元を手で押さえ、咳き込み、血を吐き出す
その異変は新にも
だが、新はこの痛みが“前にも1度、味わった事がある”事に気付く……っ
そう……魔獣騒動の時に新が倒した―――“初代キング”の放った闇
あの時と全く同じ状況と苦しみが、再び牙を剥く……!
全身を駆け巡る激痛に苦しんでいると、闇の一部が1つの塊になるよう集結する
『……深淵の闇、それは生きとし生けるものを
闇の塊から発せられたのは、先程霧散した筈のテンペスターの声
確かな意味では死んでいなかった……!
『我は1度本部へ戻り、肉体を再生させる。だが、お前達は厄災の呪毒によって闇の彼方へ堕ちる』
「ま、待て……ッ!」
『厄災に終わりは無い。だが、お前達は滅び
そう言い残し、闇の霧と化したテンペスターはその場から消え去っていく
一方、新達は一転して窮地に追いやられてしまった
全員が闇の霧に
“このままではソーナ達が死ぬ……っ!”
そう直感した新は悪状況を打開すべく、また無茶な方法を取らざるを得なかった
それは……あの時と同じく―――周囲一帯に
しかし、その方法は
そのせいで1度、闇に呑み込まれて生死の
『それでも……やるしかねぇ……ッッ!』
新は意を決して口を開き、室内に漂う闇の霧を吸い込み始めた
浮遊している闇の霧が導かれるように、新の口へと吸い込まれていく
薄れる意識の中、その光景を見たソーナが目を見開く
「新くん……何を……っ⁉」
「この霧をっ、全部吸い込む……ッ。竜の呼吸法を会得した俺なら……これぐらい……ッ!」
「や、やめなさいっ!あなたは1度、その方法で命を落としかけたのでしょう⁉」
「他に方法がねぇんだ……ッ!やるしか、ねぇんだよ……ッッ!」
皮膚に次々と裂傷が生まれ、全身の至る所から血が噴き出しながらも―――新は闇の霧を吸い込み続けた
そうしなければ、ソーナ達を助けられない……
無茶をしなければ、“
様々な思考が頭の中で交錯し、焦燥感が新に無茶を働かせる
止めようとするソーナだが、闇の霧に体を蝕まれているので思うように動けず―――ただ傍観するしかなかった……
やがて、全ての霧を吸い込み終えた新は体を震わせる
「……っ……っ。これで……もう、大丈夫―――」
ブシャアァァァッッ!
目、口、鼻、耳、そして全身から鮮血が
倒れた場所から血が広がり、致死量とも言っても過言ではない程の血が床一面に染み込む
「―――っ!あ……新くんッッ!」
ソーナの悲痛な叫びが血染めの室内に響いた……
―――――――――――――――
「はぁ……はぁ……っ」
「フム……オレの攻撃にここまで耐えた奴は初めて見たな。案外骨があるやもしれん」
施設の外で未だに戦闘を繰り広げていた一誠とトランザー
一誠の鎧はボロボロの状態となっており、本人も息を切らしている
それに対してトランザーは余裕の様子で指を鳴らす
“そろそろ遊びは止めようか”と構えた直後、トランザーの耳に小型の魔法陣が展開される
恐らく通信用の魔法陣だろう
その魔法陣から出された指示にトランザーはコクリと
「悪いが今日はこれで切り上げさせてもらう。お前達の実力はだいたい把握できた。やはり、到底我々と善戦できるレベルでは無さそうだ」
「何だと……っ⁉」
「いずれ
そう言った直後、トランザーの足元から転移用魔法陣が開き、トランザーは転移の光の中へと消えていった
ソラノを守れたのは良かったが、一誠としては歯痒い気持ちを抑えられない……
また
落胆、失望、軽視される屈辱感
これまで戦ってきた『
更にこの後、新とソーナ達が倒れた事をリアスより知らされ……グレモリー眷属、シトリー眷属ともども手痛い打撃を与えられた
直ぐに堕天使系列の病院に緊急搬送され、一誠達はアザゼルから事の
「
ソーナ達の病室から離れた集中治療室に足を運び、“面会謝絶”の札が貼られた扉を開ける
ベッドには口元に呼吸器を着け、力無く横たわる新の姿があった……っ
身体中に付けられた管からは輸血用の血液が流れ、医師や看護師達が慌ただしく動いている
新の痛々しい姿を見て、誰もが絶句した
アザゼルが沈痛な面持ちで口を開く
「最低でも3日間は絶対安静だ。新の場合は特に体内汚染が酷い……。ソーナ達を守ろうとして、撒き散らされた毒を一身に吸い込みやがった……っ。どれだけ危険な事か、分かっていただろうに……!」
「新は……新はどうなるの……っ?助かるのよね……っ⁉答えなさいっ、アザゼルッッ!」
リアスは恐慌しながらアザゼルの肩を掴み、ガクガクと揺さぶって問い詰める
アザゼルは「落ち着け!」と一喝し、リアスの動きが止まってから再び告げる
「ついさっきアジュカにも連絡を取った。解呪方法を急ピッチで調査して、奴に直接解呪してもらう。術式の構築と解析に長けたアジュカなら解呪の術式も割り出せる筈だ。……後はアジュカに任せる他ない……っ」
リアスを
その理由は……またしても
「今回の1件、俺達が護衛してた施設は―――奴らにとっちゃ
「足止め……交渉……⁉」
「俺達が足止め役と一戦交えている間に、奴らは各国の企業や組織とのバックアップを広げる交渉をしてやがった……!そっちが本命、
今回の護衛は全てが無駄骨、徒労に終わらされたと言う事だろう
またも
――――――――――――――
場面変わって
ボコボコと気泡を噴くのは―――培養液が満たされた黒い繭
その中には新と戦い、自爆して呪毒を撒き散らしたテンペスターが浸かっていた
頭部も胴体もところどころが欠けており、黒い繭によって修復されている最中なのだろう
『迷惑を掛ける、キリヒコ』
テンペスターが一言漏らす
彼の眼前にはユナイト・キリヒコ―――否、ユナイト・クロノス・キリヒコが
「ご心配なく、
『……テンペスター、それが我の名前か?だが、我は肉体を再生させる度に記憶が欠落する。ゆえに名前など意味が無い』
「
『我の再生にはどれくらい時間が掛かる?』
「そうですね、本来なら1日あれば完全に再生できますが……残りの繭にも魔力と呪力を供給しなければならないので、2日もしくは3日ほど掛かるかと」
キリヒコの言葉にテンペスターは『そうか』と一言だけ呟いて瞑目する
キリヒコは
そこへトランザーが姿を現す
「我々が単なる足止め役とは気が引けるものだが……任務である以上は仕方無いか」
「
「不満とまでは言うまい、それなりに楽しませてもらった。……しかし、テンペスターが自爆する程の相手がいたとはな」
「
嫌味な笑みを浮かべるキリヒコの周りで、複数の黒い繭が静かに鳴動を続ける……
―――――――――――――
「バサラ様、今回の件について報告です。各国の企業および組織との交渉は可決。
「そっか。ご苦労なこった、シーザーサラダ」
「シルバーです。……あなたは何度間違えればお分かりになるのですか?それに
「常軌を逸してこそ開かれる活路ってのもあるんだよ。今の世の中、考え方が凡人・凡庸・凡夫な奴らばかりでつまらねぇ。堅物な老害どもや平和ボケ主義の
「シルバーです。まあ、日々
「ああ、そうだ。刀ってのは元来“斬る”為に在るモノだ。“力”は磨かねぇとナマクラに成り下がっちまう。
「その彼らと“交渉”しに行くとは、どういう風の吹き回しですか?」
「見定めてやるんだよ、俺がアイツらの器量を。今の俺は
「私としては即全面戦争になりかねないと思いますが」
「その時はその時、それが奴らの答えで器量の底だ。底が浅かったと踏ん切りがつくだろ?」
「見た目に反して嫌なやり方ですね」
「それが世の
―――――――――――――――
だが、新は未だに呪毒に
『初代キング』の闇と同質のモノだったので、解析は思ったよりも早く進められるが―――それでも解呪には1日かかるらしい
本来なら3日間は絶対安静にしなければならないが、いつ
通信用魔法陣の向こうでサーゼクスが重い口を開く
『恐らく
「バレようがバレまいが関係無い……っ、ある意味『
アザゼルが険しい表情で歯を噛み締め、サーゼクスも沈痛な
『とにかく……新くんの復帰を待つ事が先決だ。この状況下で
「お前の言いたい事は分かってる。ここで下手に爆発させたら、それこそ奴らの思う壺だろう。……サーゼクス、本当はお前も爆発しそうなんじゃねえのか?」
アザゼルの指摘にサーゼクスは眉根を潜め、指を強く握る
どうやら図星のようだ
しかし、今はその爆発を懸命に抑えようとしている……
感情的になれば、それこそ
『……正直に言えば、今すぐにでもそちらへ向かいたい。だが、四大魔王が安易に動けば格好の
「ああ、全くだ……!出来る事ならこれ以上、後手に回りっばなしってのは避けたい……っ。何かしらの情報を掴めれば良いんだが……」
アザゼル、サーゼクス、新を除いたオカルト研究部の
しかし、理不尽や災難は
ゾワ……ッッ!
突如アザゼルや一誠達の全身を駆け巡る―――激しい悪寒と
それは今までに味わった事の無い感覚だった
部室の壁や床、窓、天井に亀裂が走り、空気がビリビリと震撼する程だ……っ
「な……っ!何なんだっ、この異常なまでの気配は……っ⁉」
アザゼルが真っ先に窓から外を見やる
しかし、校庭や正門前には誰もいない……
『まさか、こんなドデカい殺気を“遠くから直接ここに放ってる”のか……⁉仮にそうだとしても、警備の奴らが直ぐに気付く筈!なのに……連絡が一切来ないまま、あっさりと侵入された……⁉こんな気配が今の今まで気付かれなかったなんてあり得るのか……⁉』
あまりにも不可解な侵入と気配に当惑せざるを得ないアザゼル
ただ確実に言える事が1つだけある……
それは―――“その殺気の主がこちらに近付いてきている”という事だ……!
映像越しに見ていたサーゼクスにも殺気が届いたのか、嫌な汗が出てくる
『……アザゼル、どうやら
「そのまさかだろう、サーゼクス。間違いねえ……
アザゼルが憎々しげに出した言葉に、その場にいた全員にも戦慄が走る
その遥か遠くで“殺気の主”は―――アザゼル達がいる
「あれがアイツらの
「真っ正面から堂々と敵地へ足を運ぶあなたのお考えには笑えないでしょうけど」
「おいおい、手荒い歓迎を用意してくれてるかもしれねぇんだぞ?そういう
「つまり、裏を返せば―――その気になれば小細工無しで奴らを全滅できる……と言いたいわけですね。確かにあなたの圧倒的かつ理不尽な
「分かってるじゃねぇか、シルバーシート」
「……シートは余計です。バサラ様、交渉に向かうのは我々だけでよろしいですか?」
「いつものように
「死神……ブラッドマンですか。これだけでほぼ勝利確定ですね」
「向こうがその気なら、それなりに応戦するだけだ。さーて……そろそろ
遂にやって来た
新不在のまま、取引と言う名の戦いが始まる……!