「「「「各地で三大勢力の拠点が襲撃されている⁉」」」」」
翌日の放課後、アザゼルから開口一番にそう言われたグレモリー眷属とシトリー眷属が口を揃えて驚愕する
実はここ数日で人間界、冥界問わず三大勢力の拠点が次々と襲撃を受け、制圧されているらしい
襲撃の実行犯は言うまでもなく……
本隊だけでなく、傘下組織も荷担している為か―――被害は拡大の一途を辿っていた
「特に酷いのは人間界に潜伏している議員クラスが管理している拠点だ。隣接地帯にまで被害が及んでやがる……」
「その地点の襲撃は
リアスがそう訊くと、アザゼルは何故か
「それがな、
「……?どういう事?」
「前に映像で見た
「そ、それじゃあ、今の
あまりにも突然過ぎる敵戦力の増強に一誠は声を荒らげ、アザゼルも苦虫を噛み潰したような顔付きとなる
「“
アザゼルは直ぐに映像用の魔法陣を展開し、
しかし、三大勢力の拠点は数多くある為、どの地点に行けば良いのか予測できない
アザゼルだけでなく、リアスやソーナも頭を悩ませた
そんな時、通信用の魔法陣がアザゼルの前に出現する
通信の主は四大魔王の1人―――アジュカ・ベルゼブブだった
「アジュカか。何か情報は掴めたのか?」
『かなり気が立っているようだな。……まあ、苛立つのも無理はない。これだけ大々的に拠点を潰されてるからな。だが、こちらもやられっぱなしで黙るつもりは無い。
「そいつぁ吉報じゃねえか。で、次の襲撃予定は何処なんだ?」
アザゼルがそう言うと、アジュカは映像用の魔法陣を映し出し―――
そこは
『
「土地を手に入れる?その目的は?」
『それも予測に過ぎないが……武器製造の他に密輸や密入国ルートを確保するのが襲撃の
「こっちの戦力は削ぎ落とされ、向こうは情報や資金と共に侵入経路を確保。更には刺客を堂々と送り込めるってわけか……クソッタレ……!」
アジュカの推測した
ともあれ、襲撃予定地点が判明しただけでも対処し
『襲撃決行は今夜だろう。……アザゼル』
「ああ、分かっている。少しでも奴らの情報を持ち帰らねえと割に合わん。
アジュカからの通信が切れた直後、アザゼルは皆の方を向いて告げる
「聞いての通りだ。今夜、
アザゼルの言葉に全員が気合を入れた
――――――――――――――――
時刻は深夜帯を回り、新達は襲撃予定地点の警護に当たっていた
施設を囲うようにグレモリー眷属が
特に新と一誠はグレモリー眷属の中でもトップクラスの実力なので―――施設外部の警備を一誠に、内部の警備を新に振り分けさせた
そして、更に今回は超強力な助っ人がいるのだが……
「……どうして、お姉さまがいらっしゃるのですか……?」
「ソーナちゃんがいるところに、お姉ちゃん有りだもんっ!安心してね?
そう、アザゼルが呼んだ助っ人とは―――四大魔王の1人でソーナLOVEの魔王少女セラフォルー・レヴィアタンでした……
確かにこれ以上頼もしいものは無い助っ人なのだが、ソーナにとってはありがた迷惑な話だった
新はそんな様子を眺めつつ下の階層へ向かおうとするが、セラフォルーに呼び止められる
「あれれ?新くん、何処に行くの?」
「下の階層を見て回ってくる。さっきから……何か匂うんだよな」
「もうっ、女の子に向かってそんな言い方しちゃダメよっ。ソーナちゃんも私も、
「いや、そういう意味じゃなくて……。何つーか、嫌な匂いがしてくるんだよ。それも―――とてつもなく嫌な予感をさせる匂いだ……」
新が渋い顔付きで言う
やはり昼休みで見た“夢”の事が気になってしまうのか、終始落ち着かなかった
「ソーナ、とりあえず俺は下の階層を一通り見て回ってくる。何かあったら通信で呼び出してくれ」
「ええ、分かりました。気を付けてくださいね、新くん」
そう言うと新は部屋を出て、下の階層へ続く階段を降りていく
ソーナはいつもと違う雰囲気に包まれた新の背中を無言で見届けていた
『……何でしょうね、いつもの新くんと少し様子が違う……。まるで―――何かに
―――――――――――――
下の階層を散策中の新は、昼休みから終始浮かない表情をしていた
……と言うのも、立て続けに
デスゲーム『クロニクル』、シド・ヴァルディの強化、ユナイト・クロノス・キリヒコの降誕
ただでさえ頭を悩ませる事態が多発しているのに、加えて“嫌な夢”を見る始末……
新の表情は
『嫌な予感とか
思い出したくもない事を思い出してしまった新は、忘れろと言わんばかりに頭を振り乱す
気分を
を始める―――その直後、新の全身に
しかも、それは彼にとって忘れ
『……ッッ!この気配……心臓まで握り潰してくるような寒気……ッ!まさか……アイツがここに来ている……⁉』
信じたくないと願いながらも、ゆっくりと怖気の発生源がいると思われる方に視線を移す
下の階へと続く階段から“何者か”が上がってきている……
1歩、また1歩と近付いてくる
そして、その者が遂に―――新の前に姿を見せた
青いコートを羽織り、右目を眼帯で
新は目を見開いて茫然自失のまま立ち尽くし、眼帯の男はニヒルな笑みを浮かべて言う
「久しぶりだな、竜の字。少し見ねぇ内に老けたんじゃねぇか?」
「な……なんで……っ、なんでお前が……⁉」
信じられなかった……
夢であって欲しかった……
死んでも出くわしたくなかった……
そんな思いが新の頭の中を掻き乱し、平静さを奪い取る
眼帯の男が数歩進み、足を止めて告げる
「やっぱ俺達は何処まで行こうと平行線のように腐れ縁が切れねぇらしいな。決して交わる事が
「……理不尽の権化がそれを言うのかよ……ッ。いや、それ以前に―――なんでお前がここにいるんだ⁉」
「おいおい、そう目くじら立てんじゃねぇよ。懐かしい顔触れにちょっくら挨拶しに来ただけだ。それに―――
―――“
それを聞いて新は耳を疑った
何故この男が
思慮を巡らせた結果―――最悪の答えに行き着いてしまった……
「……お前……っ、まさか……ッ⁉」
「ああ、言ってなかったか?今の俺ァ
「……最悪じゃねぇか……ッッ!」
「おいおい、こんくらいで最悪とか言ってたら身が
「お前の存在その物が最悪なんだよ……ッッ!お前は周りの奴まで、それこそ関係の無い奴まで
「前にも言ったろ?災いや戦渦ってのは理不尽に、立て続けに起こるモンだって。そいつに
新の悪態に全く動じず、いけしゃあしゃあと返し続ける眼帯の男
そして、新はギリリと歯を食い縛った後―――憎々しげに言った
「変わってねぇよな……その考え、その理不尽さ……!昔から何も変わっちゃいねぇ……ッ!また俺の周りを壊し続けるのか……ッ⁉―――バサラ・クレイオス……ッッ!」
新は眼前に現れた
―――“バサラ・クレイオス”―――
新にとって最も忌まわしい男が、よりにもよって危険な組織のトップとなっていた……
眼帯の男―――バサラ・クレイオスは口の端を吊り上げ、再び言う
「簡単に壊れちまうような奴ァ最初から
「平和ボケ、だと……ッ!」
「ああ、力を持った奴はまともな生き方なんて出来ねぇ。力を持てば、知らず知らずに寄ってきやがる。敵だろうと何だろうとな。なのに、テメェらは平和に生きたいとかほざいてやがる。そんなもんは―――ただの幻想に過ぎねぇ。
「……相変わらず極論だな……っ。平和を忌み嫌う典型的な戦争野郎の言い草だ……ッ!」
「戦うのが悪か?強くなる事が悪か?んなもん誰が決めた?俺は俺のやりたいように生きるだけだ。それが俺のライフスタイル、生き様ってヤツよ。誇りも尊厳も信念も捨てて生きるような奴ァ、ただの家畜だ。だから……俺はテメェらの平和主義を否定する。これから先の戦渦に耐えられるかどうか、俺が試してやるよ。まずは―――前菜を
そう言うとバサラは
その刹那、外の方で大量の転移型魔法陣が開かれ、中から大勢の人影が降ってくる
それを見た新は仰天し、直ぐにバサラの方を向く
「バサラ!今なにをした⁉」
「慌てんなよ、俺達に協力する連中を向かわせただけだ。テメェらがそれぞれ警備してるポイントに送り込んでやった。これぐらいは
「テメェ……ッッ!」
「おっと、竜の字。助けに行こうなんてシラケる真似はすんなよ?せっかくお膳立てしてやった
「……!そうか……お前は俺を足止めする為に……ッ!」
新はバサラの
新がこの場を離れれば、バサラは直ぐにでもソーナ達の所に向かうだろう
この男の恐ろしさ、身勝手さ、
一誠やリアス達に
―――――――――――――――
場面が変わって、施設の東門前
そこの警備を担当するリアス、朱乃、アザゼルは急襲してきた
アーシアとレイヴェルは後方にて支援と回復に徹しており、アザゼルが用意した簡易結界が攻撃の飛び火を防いでいた
リアスは消滅魔力の塊を、朱乃は雷光を放って空の敵を撃ち落とし、アザゼルは光の槍で地上の敵を撃破していく
「いきなりこんな大群で攻めてくるとはな!だが、大量の敵を相手にするのが得意なお姫さま2人―――相手が悪かったな!」
「私達を侮辱し続けた事を後悔させてあげるわッ!」
「覚悟はよろしいですわね?」
アザゼルの言う通り、リアスと朱乃は範囲攻撃メインなので大群相手には打ってつけだった
しかし、相手も負けておらず……生半可な攻撃では倒れやしない
少なくとも中級から上級悪魔クラスの強さを持っているのだろう
『恐らく今頃はイッセー達の方にも
――――――――――――
西門エリア、ここを警備しているのは祐斗、ゼノヴィア、イリナの3人
三者はそれぞれの得物で襲い掛かってくる
祐斗は自慢の速度で立ち回りながら敵を斬り、ゼノヴィアはデュランダルのパワーで一挙に薙ぎ払う
イリナも光の攻撃で牽制しながら量産型
恐らく、この兵隊達のリーダー的な役割だろう
鞘からサーベルを引き抜き、切っ先を祐斗達に向ける
「かの有名な
「ゼノヴィア、イリナさん。彼は僕が引き受けよう。周りの連中は任せても良いかい?」
「分かった、ザコは任せてくれ」
「オッケーよ!」
ゼノヴィアとイリナは周りの敵を討伐しに行き、祐斗はサーベル男の前に立つ
それぞれが得物を構え、一瞬の静寂が流れる……
刹那、サーベル男は目にも留まらぬ速さで連続の突きを繰り出してきた
しかも、ただの突きではなく―――回避し続ける祐斗の周りを削る程の突き……
「ほう、私の突きを
「驚きましたよ。まさか、これ程の剣士がいるなんて」
「私も
「そのようですね。それでも、ここを通しませんよ。僕達にも心強い仲間がいるんでね」
祐斗は聖魔剣を聖剣にチェンジし、
全ての龍騎士が剣を構え、サーベル男を取り囲む
四方八方から攻めてくる龍騎士に対し、サーベル男は鞘も使った二刀流で突き崩す
全ての龍騎士を突きで倒し、残された祐斗にも突きを放つ
ドズッ!と切っ先が刺さり、サーベル男はニヤリと笑むが―――
「……ッ⁉」
サーベル男は仰天していた
何故なら……刺した筈の祐斗の体が徐々に透けていき、遂には消えてしまったからだ
驚愕に包まれる中、倒された龍騎士の1体が起き上がり―――その場を駆け出す
「―――ッ!しまった!」
目の前の祐斗が魔力で作られた
しかし、コンマ1秒の差で祐斗がサーベル男の腹を斬り払った
サーベル男は口から血を吐き、龍騎士の兜を外した祐斗が告げる
「あなたの剣の腕も素晴らしいものでした。出来れば、もっと違う形で剣を交えかった」
「ふふ……っ、見事だ……。若いのに大したものだよ……」
サーベル男は満足げな表情で倒れ伏し、意識を失った
――――――――――――――
南門エリア、ここでは小猫とロスヴァイセが豪快に立ち回っていた
猫又モードと化した小猫が打撃で敵を打ち倒していき、ロスヴァイセが魔術砲撃で遠距離から敵を倒していく
グレモリー眷属の強さに
「くそっ、こいつら強すぎんだろ⁉」
「こんなチビ相手に―――ブゲァァッ!」
「……チビって言った人、もう1回殴ります」
「いや、俺は
「……変態も殴ります」
「じゃあ、俺の事はお兄ちゃんと呼んで欲し―――ダムルグッ!」
「……ツラい(精神的に)」
「小猫さん、随分と荒れてますね……」
どうやら、ここには変態どもが集まっていたようだ……
小猫は不快感を明らかにして敵兵を殴り倒すのだが、きっと終わる頃には心身ともに疲弊しているだろう……
――――――――――――――
北門エリア、ここを警備する一誠も皆と同じく
「……俺、1番のハズレを引いちゃったかも……っ」
悲壮な表情で
彼の眼前には―――水晶のような輝きを放つ異形が大勢飛来していた
背中には羽根らしき物が生え、様々な種類の敵が確認できる
球体のボディに裂けた口だけが存在するタイプや、光の剣を
聖なる力や光の攻撃は悪魔にとって猛毒
一誠は冷や汗を流しながら目の前の大群と対峙する
その時、異形の大群の中から何者かが降りてくる
「邪魔は許さないゾ、悪魔の子。邪魔するなら―――天使が裁いちゃうゾ♪」
それだけでも一誠にとっては嬉しい情報だが、更に嬉しい事に―――その女性はとてつもない露出度の服装をしていた
最低限の部分、胸元と下半身のみをフワフワした羽のような衣装で隠しているものの……胸元は大きく開いており、
水色がかった長い銀髪に黒いリボン、輪っかを形作ったアホ毛
奇抜な格好をした女性が地面に降り立つと、ウインクしながら言う
「ワタシの可愛い天使達が月に代わってお仕置きしちゃうゾ♪」
『……この
一誠はだらしなく鼻の下を伸ばしてエロい顔付きになる……
顔芸満載のエロ顔で凝視する一誠に、謎の女性は不敵な笑みを見せる
「キミが噂の
「酷い噂が立ってるな⁉俺ってそんな認識されてるの⁉てか、俺はおっぱいを食べたり飲んだりしない!」
「じゃあ、どうしたいんだゾ?」
「揉んで吸いたい!……って、何言わせるんだ⁉」
「アハハハッ、キミって面白いゾ♪」
銀髪の女性は可愛く笑い、一誠は顔を赤くしてしまう
しかし、この女性も
油断は出来ない……
銀髪の女性が胸元から
「ワタシはこれからやらなきゃいけないお仕事があるんだゾ。悪いけど……邪魔するなら容赦しないゾ」
そう言って女性は手元のコインを複数枚投げる
すると、投げたコインが輝き始め―――周りの異形と同じ怪物が生み出された
その光景に一誠は驚愕する
「コ、コインが怪物に変わった⁉」
「失礼だなっ、怪物じゃないゾ。この子達はワタシが生み出した―――天使だゾ」
「これが天使っ⁉こんなバケモノみたいな天使がいるのか⁉」
「正確には“ほぼ天使”だゾ。これはコインをコストに様々な天使を創れる
天使を創る
直ぐに
「さあ、ワタシの可愛い天使達。このソラノ・アンジェルに勝利をもたらすんだゾ」
銀髪の女性―――ソラノ・アンジェルが指を突きつけると同時に天使軍団が突撃していく
『……ん?“アンジェル”?……何処かで聞いた事がある名前のような―――』
一誠はふと違和感を覚えたが、天使軍団の猛攻が迫ってきた為、考えを中断する
騎士型の天使達は光の剣を振るい、杖を携行した天使達は遠距離から光線を放つ
球体型の天使は一誠の周りを飛び交い、鋭い牙で噛みつこうとしてくる
一誠は天使軍団の攻撃を回避しつつ、拳や蹴り、ドラゴンショット等で天使達を倒していく
しかし、倒しても倒してもソラノが次々と新たな天使を創り出すので数を減らせない……
そこで一誠は天使軍団の根源を狙う事にした
「女性相手なら必勝の策がある!いくぜ―――
一誠は溜めた魔力を解放し、謎の夢空間を生み出した
ソラノを射程距離に
「さあ、エロいお姉さんのおっぱいちゃん!何を考えてるのか教えてくれ!」
“これで決まった!”と気持ちを
―――“妹を……助けて……っ”―――
「…………え……っ?」
思わぬ言葉に一誠は当惑し、一瞬動きを止めてしまう
ソラノのおっぱいから発せられた悲痛な叫び……
いったいどういう事なのか?
一誠は思いきって真意を訊いてみる事にした
「あのー、聞いても良いスか?」
「うん?何だゾ?ワタシのスリーサイズでも知りたいのか?」
「アンタ、妹さんを助ける為に……こんな事をしてるのか?」
一誠の指摘にソラノの表情が陰りを見せ、それに呼応するように天使軍団の動きも止まる
「……お前、人のプライバシーにズカズカと踏み込んでくるのは悪い事だゾ。気を付けないと嫌われるゾ」
「すんません……。でも、アンタのおっぱいが―――いや、あなた自身が助けを求めてるんじゃないのか?本当はこんな事したくないのに、妹さんを助ける為に……」
黙り込むソラノを見て、一誠は確信を
ソラノは
一誠は説得を
「その妹さんを助けたいんだろ?だったら、俺達が協力する!俺達が妹さんを助けるから―――」
「……無理だゾ。妹とは幼い頃に生き別れたから
彼女もきっと本心では妹を助けてもらいたいのだが、背後に
ましてや、身内の命を狙われているなら尚更……
「結局ワタシは従う他ないんだゾ……。
「―――っ?ちょっと待った。今、“ユキノ”って言わなかったか?」
「……?そうだゾ。―――ユキノ・アンジェル、それがワタシの妹の名だゾ」
「……ッ!やっぱり、そうか!何か聞き覚えのある名前だなぁと思ったら―――アンタ、ユキノさんのお姉さんだったのか!」
「―――ッ⁉ユキノを知ってるのか⁉」
思わぬ好機を得た一誠はユキノとの接点をソラノに打ち明けた
ユキノが現在グリゴリの管理下に置かれ、無事である事を伝えると……ソラノは歓喜の涙を流し、戦闘の意思を消してくれた
生み出した天使軍団をコインに戻し、その場に座り込む
「良かった……良かったゾ……。ユキノは無事なんだな……」
「ああ、大丈夫っスよ。これでもうアンタがこんな事をする理由は無い筈だ」
「……でも、ワタシが裏切れば
「そんなの関係ねぇ!俺が、俺達がブッ飛ばす!相手が誰だろうと―――俺がユキノさんを守ります!」
一誠の力強い台詞にソラノは次第に心を開き、涙を指で
妙な形ではあるが、とにかくこの場を切り抜けた―――と思ったその矢先……
「念の為にと来てみれば、戦わずに和解か。
突如、何者かの声音と共に重厚なプレッシャーが襲ってくる
その方向へ顔を向けると―――そこには
ズシ……ズシ……と重く鈍い足音を鳴らし近付いてくるのは―――赤紫色の体皮に
サメ男が放つ異様な重圧に一誠は思わずたじろいだ
「な……何だコイツ……!とんでもなく邪悪なオーラに満ちてやがる……ッ!何なんだ、お前は⁉」
「
聞いた事の無い名前だが、
恐らく、このトランザーと言う男は三大勢力の拠点を潰し回っている
淡々と名乗りを終えたトランザーは―――瞬時に距離を詰め、ソラノ目掛けて太い右腕に生えた
「―――ッ⁉」
一誠は咄嗟に横っ飛びでソラノを救出
トランザーの刃は空を斬り、そのまま地面を叩き割った
「あっぶねぇ……!大丈夫か⁉」
「へ、平気だゾ。ちょっと服が破れただけだゾ」
先程の風圧によるものか、ただでさえ露出度の高いソラノの服が破れ―――おっぱいが丸出しになっていた
たわわな果実を直視した一誠はお馴染みの顔芸となる
「ウホッ♪良いおっぱい♪」
「……キミって顔が面白いゾ」
「よく言われま―――ッ⁉」
一誠は背後から迫ってくる殺気を感じ取り、振り向き様に拳打を放つ
ガキンッ!と一誠の拳がトランザーの刃と衝突し、風圧が周りの地面を
防いだだけでも拳が
「ほう、オレの
「テメェ……いきなりこの
「何がおかしい?弱い奴を先に片付けておくのは戦闘の基本だろう。余計な邪魔をしなければ一撃で死なせてやれたものを。和解なんぞした今、この女はもはや敵対者でしかない」
「ふざけんな!人質を取って無理矢理こんな事させやがったくせに!」
「人質?ああ、そんな話もあったな。だが、それは指揮官とキリヒコが進言した事だ。オレには関係無い」
悪びれる様子を微塵も見せないトランザーに、一誠は怒り心頭で拳を叩き込もうとする
トランザーは冷徹に一誠の拳打を太い両腕で
重く鈍い打撃音が
一誠は負けじとオーラを高めた拳打で対抗
ガゴンッ!と衝突し合う音が鳴り、トランザーが地面を滑るように
首をゴキッと鳴らすトランザーは表情を一切変えず、逆に拳を痛めた一誠は苦悶の声を漏らす
「ぐ……っ!ちくしょう……ッ、何なんだ、コイツの体は……ッ⁉硬すぎる……っ!まるで鋼鉄の塊を殴ってるみたいだ……!」
「フン、オレの強さにお前が泣いたか。涙を拭きたければ今の内に拭いておけ」
「誰が泣くかよ……ッ!」
一誠は魔力を高め、増大させたドラゴンショットを
向かってくる赤い奔流に対し、トランザーは―――その場を動く事無く両腕の
呆気なくドラゴンショットを霧散させられ、驚愕する一誠
トランザーが嘆息して言う
「つまらんな。
「何だと……ッ!」
「人間界の
淡々と見下してくるトランザー
自尊心を
それを見て、トランザーは更に嘆息した
「安い挑発にすぐ乗せられる、それもお前達の愚かな部分だ。現に
「……っ⁉どういう事だよ⁉」
「分からんのか?お前達が必死に守っている後ろの施設、その内部には既にもう1人―――“
なんと、施設内には既に
つまり、外部からの襲撃は陽動
主戦力を外で足止め、内部より崩すのが奴らの目的だったのだ……
またも
「この野郎……ッ!」
「中に何人残っているかは知らんが、それでも終わるだろう。いずれにしろ、中の者は滅びる。―――“厄災”の手に掛かってな」
―――――――――――
「……新くん、遅いですね」
その頃、内部を警備中のソーナ達は戻ってこない新を案じてソワソワしていた
落ち着かない様子のソーナに、セラフォルーが小声で言う
『ソーナちゃん、もしかして新くんの事が心配っ?』
『い、いえ、そういうわけではありません。ただ……彼の様子がいつもと違っていたので、不審に思っただけです』
『ウフフッ♪ソーナちゃんってば、ジ~ッと新くんを見つめていたのね☆』
「……ッ!もうっ、お姉さま!こんな時に茶化さないでくださいっ!」
「あぁっ、そんなソーナちゃんも可愛い~!」
セラフォルーはソーナに頬擦りし、ソーナは先程の指摘に顔を真っ赤にしながらセラフォルーを引き離そうとする
結局、シトリー眷属総出でセラフォルーを引き離し……警戒の方へと意識を集中させた
その直後、扉の開く音が聞こえてくる
「やっと戻ってきたのか。おい、竜崎!あんまり会長や俺達に迷惑をかけるんじゃ―――」
そこまで言いかけた匙だったが、途中で言葉を止める
理由は当然―――そこに現れたのが新ではなかったからだ……
フードを目深に
「あなた、何者ですか?」
「……我に名は無い、
そう、このフードを被った男こそ……実はトランザーと同じく三大勢力の拠点を次々と壊滅させた“厄災”
真の名は―――“厄災”のテンペスター……
「ヒュルッ」
その一言と共に現れた無数の竜巻