情報戦はいつの時代でも大事なので怠らないようにしよう!
「いい加減に自覚なさってください。あなたは極度の方向音痴なのですから、勝手に動かれては面倒事が増えてしまいます。ご自分の立場を理解しているのですか?」
「ったく、面倒臭い説教なんざ聞きたくねぇんだよ。ちょっと散歩してただけだ。どう動こうが俺の勝手だろ、シルコ」
「シルバーです。その“散歩”とやらで何故オホーツク海を経由した挙げ句、国外の密林地帯を徘徊していらっしゃったのか説明をお願いします」
「オホーツク海?沖縄じゃなかったのか。何か氷が海に浮いてるなーと思ったら、俺はそんな所にいたのか」
「……間違っても沖縄に流氷など来ません。せめて暑い寒いの違いで気付いてください」
「しっかし、日本も随分と変わっちまったもんだな。頭にポリ袋を
「何処の民族の話ですか」
「あと、背中から変な植物が生えてたな」
「何処の星の話ですか」
「まあ、味は悪くなかったから良いんだけどよ」
「食べたんですか。……あなたが今まで何処にいたのか、これ以上詮索しない方がよろしいみたいですね」
「おう、そうしとけユバーバ」
「シルバーです。……さて、本題に戻りましょう」
「本題?……ああ、例の
「グレモリーです。それとシトリー家の悪魔もいます。奴らの功績は耳に入っていますか?」
「知らね、何かしたのか?」
「……情報ぐらいは入れてくださいよ。良いですか?グリゴリの元堕天使総督アザゼルが手掛けたグレモリー眷属は、この短期間で目まぐるしい程の成長と功績を収めています。
「ふーん……」
「奴らの戦闘データ、あなたの目から見てどうですか?」
「………………“ガキのチャンバラごっこ”だな」
「え?」
「“ガキのチャンバラごっこ”だっつってんだよ。ゼニーバ、テメェはこんな薄っぺらい強さしか持ってねぇような奴らにビビってんのか」
「シルバーです。……では、あなたにとっては大した障害にすらならないと?」
「ああ、取るに足らねぇヤツを殺って
「あなたから見て、グレモリー眷属はその“鉄の斧”に至ってないと……?」
「ああ、アイツらは少し固い木の棒ってところだ。あの程度の奴なら、俺が暴れ回ってた時代の全盛期には腐る程いたぜ」
「さすがは元
「所詮、アイツらは“井の中の
「では……グレモリーとシトリー、両陣営の殲滅に取り掛かり―――」
「
「シルバーです。……あの町に昔馴染みとやらがいるのですか?」
「ああ、丁度良い機会だ。俺達も挨拶しとこうや」
―――――――――――――――
“よぉ、竜の字。道にでも迷ってたのか?”
『……お前、なんでここに……っ?』
“なんでって言われてもなぁ。面白そうな匂いがしたから来てみただけだ”
『…………これ、お前が殺ったのか……っ⁉』
“見りゃ分かんだろ。俺以外に誰が殺ったっつうんだよ?”
『何故だ……!何故コイツらを殺したッ⁉』
“あー、邪魔だった”
『邪魔……?それだけの理由で……⁉』
“いや、もう1つあるぜ。コイツらは弱ェくせにテメェを侮辱した”
『侮辱、だと……っ?』
“ああ、同業者を殺る覚悟も
『なんでお前はそんな極端な考えしか―――』
“弱ければ死に、強ければ生き残る。それが世の常だ。その流れに乗れない奴、仕組みを理解しようとしない奴は―――ただの負け犬なんだよ”
『……ッ!貴様ァ……ッッ!』
“俺が憎いか、竜の字?だったら、来いよ。テメェの牙が俺を喰い
『アアアアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!』
―――――――――――――
「おい、大丈夫か、新?」
「……ッ?一誠……?」
ユナイト・クロノス・キリヒコに手酷くやられてから数週間が経ち、学園生活に復帰した新は昼休みの教室で一誠に起こされていた
机に突っ伏した状態で寝てしまい、冷や汗にまみれた
“……嫌な夢を見ちまったな”と心中で毒づく新だが、不穏な点に気付く
『なんで今更“アイツ”が出てくる夢を見たんだ……?』
新の見た夢は―――本人にとって忘れたいと願う過去の記憶だった
自分がこの世で最も忌み嫌う男……
しかし、それは忘れたくても忘れ
普段は心の深奥に閉じ込めていた記憶が、何故今頃になって脳裏を
『……頼むから、これ以上イヤな事は起こらないでくれよ……。特に“アイツ”が出てきたら、周りの何もかもが壊されちまう……っ』
嫌な記憶のフラッシュバックに新は
とりあえず弁当箱を取り出し、中に入っている唐揚げに箸を伸ばそうとするのだが……その1つが横から急に奪われた
「てめっ、コラァ!1年坊!俺の唐揚げを返しやがれ!」
「や~だよっ♪ク○ボー先輩もノ○ノコ先輩もトロいね~♪」
「その呼び方もやめろっ!このクソガキ!」
松田と元浜の怒声と共に剽軽な声が飛び交ってくる
新や一誠を含め、グレモリー眷属の頭を悩ませる
流れから察するに、松田と元浜の弁当に入っていた唐揚げを横取りでもしたのだろう
松田と元浜がブサイクな顔芸で追いかけるも、シドはヒラリと回避する
鬼ごっこをしつつ、女子生徒の弁当からも唐揚げを貰い、
唐揚げを奪われてしまった新だが、怒る事もせず―――ハァッと溜め息を吐くだけだった
シドは次に一誠の弁当に入っている唐揚げに目をつけ、その気配に気付いた一誠は渡すまいと身構える
「さあ、イッセー先輩。その唐揚げを僕にちょうだい」
「ふざけんな!これはアーシアが一生懸命作ってくれた唐揚げなんだ!てめぇなんかには絶対に渡さねぇぞ!」
「フフンッ、こう見えても僕は“全日本唐揚げの
「そんな大会も称号も聞いた事もねぇよ⁉」
「そりゃそうだよね。どっちも僕がたった今作ったんだもんっ」
「お前が
「あっ、あそこで巨乳の女の子がパンチラしてる」
「「「ナニィッ⁉」」」
シドの安直な陽動に一誠、松田、元浜は即座に視線を移すが―――勿論、巨乳の女子もパンチラも存在せず……
気が逸れた隙を突いてシドは唐揚げを奪取し、まんまと教室から逃げていった
一誠は唐揚げを奪われた事に、松田と元浜は巨乳の女子のパンチラが無かった事に落胆する
「くぅぅ……っ、ゴメン、アーシア……っ。せっかく作ってくれた唐揚げを守れなかった……っ」
「大丈夫ですよ、イッセーさん。私のを分けてあげますから」
一誠はアーシアがお裾分けしてくれた唐揚げを食べるが……学園の外でも中でもシドの良いように
学園内で事を荒立てては、周りの生徒にも危害が及びかねない
『チクショウ……っ、完全に向こうのペースに乗せられっぱなしだ……っ。いったい、どうすりゃ良いんだよ……?』
一誠はそんな事を考えながら、弁当のおかずに箸を伸ばすのだった……
――――――――――――
「ふっふ~んっ、アーシア先輩の唐揚げをフライングゲット~♪まだまだ僕には敵わないようだね、イッセー先輩。それじゃあ、戦利品を堪能させてもらおうかな」
パクッ……!
「…………ッッ!こ、これは……⁉
ペロ……ッ
「イッセー先輩の劇的なパワーアップの秘訣は……おっぱいだけじゃない……っ。この素晴らしく美味しい唐揚げも合わさった奇跡の産物だったんだね……っ?それを独り占めするなんて、ズルいなぁ……!こうなったら、何がなんでもアーシア先輩を攻略してみたくなっちゃったよ……!イッセー先輩、次に遊ぶ時は―――大事な物を懸けて
――――――――――――――――
「皆、今日は朗報が来てるぞ。ここ数週間かけて、ようやく
放課後のオカルト研究部部室にて、アザゼルが開口一番に告げる
待ちかねたとも言うべき
ほんの一部だが、それでもありがたい
アザゼルが情報入手の経緯を語る
「アジュカの情報網を
「何かもう、ヴァーリチームみたいな役職っすね。アイツらも随分と丸くなったんだなぁ」
「そうでもないぞ、イッセー?特に
「そりゃ先生が
「へいへい、分かってるよ。……さて、真面目な話に戻るか」
アザゼルが目の前に映写用の魔法陣を展開し、
「まず、
「他の組織を潰しているのに傘下を増やせるなんて事があるの?」
リアスの問いにアザゼルが嘆息する
「要するに会社の吸収合併と同じさ。
アザゼルが魔法陣を操作すると、次は
すると、ここで一誠がおかしな点に気付く
「あれ?先生、確か
「ああ、その点については後で話そう。まずは映像に映っている奴らの情報から説明する」
アザゼルが魔法陣を操作し、最初にメガネを掛けた銀髪の男の映像が映される
「このメガネの
「要は大公アガレス家みたいなヤツって事すか?」
「平たく言えば、そうだな。んで、気を付けるべきはこいつが持つ異能だ。お前ら悪魔にとっては1番の天敵となり得る」
「その男は
リアスの問いに対して、アザゼルは首を横に振る
「そんな
「「「「デビル・スレイヤー⁉」」」」
初めて聞いた言葉に全員が驚愕し、アザゼルが話を続ける
「驚くのも無理はない、俺だって初めて聞いたんだからな。だが以前、幽神兄弟に任せたアスタロト家とヴァサーゴ家の護衛の1件から存在が判明した。天使の
「そ、そんなヤバい能力を持ってるヤツがいたんスか……っ」
「ああ、実際相当ヤバいらしいからな。悪魔を滅する力でありながら、限りなく悪魔に近しいとさえ言われている。この男……シルバーはその中でも特に氷と風に
アザゼルが魔法陣を操作して、次の
「この緑色のバケモノはギルグレイ・ジャーグ。
「セイクリッド・ハンター?」
「要は
次は漆黒の鎧兜に包まれた
「この鎧武者―――牙鬼斬月は単独で100隻以上の海賊船を沈めた奴だ。
“天下五剣”とは数ある日本刀の中で室町時代より名刀と言われた五振りの
「でも、おかしいですよ。管理されている筈の国宝や重要文化財がテロリストの手に渡っているとは考えられません」
ソーナの物言いに対し、アザゼルは嘆息して告げる
「耳が痛い話なんだが、日本に現存している天下五剣は諸説を基に真似て作られた―――つまりは
話を聞くだけでも垣間見えてくる
次に映されたのは、三国志のような鎧を纏った異形と壮年の男だった
「鎧を着けている異形はスメラギ・リュウゲン、こっちも噂程度だがドラゴン系統の
「ドラゴン系統に毒系統って……物騒な奴らオンパレードじゃないスか……っ」
「イッセー、ゲンナリしたくなる気持ちは分かる。だがな、これから俺達が相手をするのはイカレた奴らが山ほどいる組織だぞ?少しでも情報が入ってくるだけマシだと思ってくれ」
アザゼルは“次の奴らが問題だ”と前置きをしてから映像を映す
映されたのは―――骸骨と機械が混ざったような異形と……風神や雷神を彷彿させる出で立ちの異形
新は骸骨の方を見て、目を丸くする
「この骸骨、前にキリヒコと一緒にいた奴じゃねぇか。確か……」
「ブラッドマン・クルーガー、
「近付くだけで死ぬ⁉そんな奴とどう戦えって言うんですか⁉」
「知らん。とにかく、ヤツの力が判明するまでは絶対に近付かんのが得策だ」
「そんな無責任な……」
「んで、
「どういう事なの?」
「バケモノ三人格の中では1番の実力者で、あらゆる災害を操ると言われている。噂では
「ロ、
一誠だけでなく、他の皆も度肝を抜かれた
『
神をも
「まさか
アザゼルは独りでブツブツと
すると、ここで一誠が気になっていた事について訊く
「先生、さっきの答えを聞かせてくださいよ」
「さっきの?……ああ、
「それは?」
「―――残り3人の幹部が女だからだ」
ズコッッ!と盛大にコケる一誠、ポカーンと開いた口が塞がらない新
リアスがキョトンとした表情で
「……アザゼル、そんな理由で情報が入手できなかったの?」
「仕方ねぇだろ、情報収集に動いたのは女にめっぽう弱い幽神兄弟なんだぜ?調べさせたところで鼻血エンドになるのがオチだからな(笑)」
「先生、そんなに笑ってたらマジであの兄弟に殺されちゃいますよ……?」
「その時はイッセー、お前が止めてくれや」
「嫌ですよ⁉あんな鬼の化身みたいなヤツをどうやって止めろって言うんですか⁉」
「そこはホレ、アーシアをダシに使って―――」
「今のでハッキリしました。先生は一度、幽神兄弟に殺された方が良いかもしれないっスね。死んだら骨ぐらいは拾ってあげますよ」
「おいコラ!教え子のくせに先生を見捨てるのか⁉この恩知らず!」
「何とでも言え、このバカ監督!」
ギャーギャーと
アザゼルは一通り説明が終わったところで映像を切り、新達の方を見据える
「さっきも言ったが、今回入手できた情報はごく一部に過ぎない。まだまだ分からん事は多々ある。このバケモノ揃いの幹部どもを束ねる首領もいるだろう……。だが、それでも俺達はやらなきゃならない。三大勢力が築いた和平をぶち壊そうとする奴らを放置してはいけない」
アザゼルが真剣な面持ちで告げる
「ここからが正念場だ。俺達もやられっぱなしのままじゃ、腹の虫が治まらん。俺達に喧嘩を売ったら無事ではいられないって事を、
「勿論よ、今まで煮え湯を飲まされてきたもの。これまでの屈辱を纏めて返した上で―――滅ぼしてやりましょう」
「「「「「「「はいっ!」」」」」」」
アザゼルとリアスの
だが、このように決起している間にも―――
――――――――――――――
―――“ヒュルッ”―――
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁあああっ!」
―――“ボオッ”―――
「うわぁぁぁああああああっ!」
―――“ヒュルッ”―――
「いやぁぁぁぁぁぁんっ!」
―――“ドドンッ”―――
「そげぶぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
「な、何なんだアレは……⁉いったい何が起きているんだ⁉」
「分かりませんッ!竜巻が発生したり、炎が噴いたり……奴がそれらの現象を引き起こしてるとしか言えません!」
「たった独りの敵に三大勢力の拠点が潰されていくのか……⁉」
「まさに……
―――“ヒュルッ”―――
「「「ぐわぁぁぁぁああああああっ!」」」
「………………」
「うぅ……っ、貴様は……いったい、何者なんだ……っ⁉」
「我に名は無い。我は
「……
「深淵の扉、開かれる
「……サーゼクスさま……っ!ミカエルさま……っ!アザゼルさま……っ!
「堕ちろ、闇の
――――――――――――――――
「ユナイト・キリヒコ、以前にも忠告した筈ですよ。あまり勝手な真似はしないようにと」
「
「……何処までも胡散臭い奴め。それで、あなたが新しく造ったと
「お二人には別任務に当たってもらいました。各地にある三大勢力の拠点を発見次第、制圧するようにと……」
「私が出向く前に手を打っておいた―――とでも言いたいのか?」
「
「……ふん、まあ良いでしょう。今のところは不問にしておいてあげます。ただし……あの
「ご忠告、