ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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お待たせしました!ゾーマ編、開始の章です!


第17章 魔剣聖のヴァンキッシュとゾーマ
情報戦はいつの時代でも大事なので怠らないようにしよう!


「いい加減に自覚なさってください。あなたは極度の方向音痴なのですから、勝手に動かれては面倒事が増えてしまいます。ご自分の立場を理解しているのですか?」

 

「ったく、面倒臭い説教なんざ聞きたくねぇんだよ。ちょっと散歩してただけだ。どう動こうが俺の勝手だろ、シルコ」

 

「シルバーです。その“散歩”とやらで何故オホーツク海を経由した挙げ句、国外の密林地帯を徘徊していらっしゃったのか説明をお願いします」

 

「オホーツク海?沖縄じゃなかったのか。何か氷が海に浮いてるなーと思ったら、俺はそんな所にいたのか」

 

「……間違っても沖縄に流氷など来ません。せめて暑い寒いの違いで気付いてください」

 

「しっかし、日本も随分と変わっちまったもんだな。頭にポリ袋を(かぶ)ってる奴らがワンサカいてよ」

 

「何処の民族の話ですか」

 

「あと、背中から変な植物が生えてたな」

 

「何処の星の話ですか」

 

「まあ、味は悪くなかったから良いんだけどよ」

 

「食べたんですか。……あなたが今まで何処にいたのか、これ以上詮索しない方がよろしいみたいですね」

 

「おう、そうしとけユバーバ」

 

「シルバーです。……さて、本題に戻りましょう」

 

「本題?……ああ、例の駒王町(くおうちょう)って所か。確か……グレイシー?いや、ヒキコモリーか。そんな奴らの管轄―――」

 

「グレモリーです。それとシトリー家の悪魔もいます。奴らの功績は耳に入っていますか?」

 

「知らね、何かしたのか?」

 

「……情報ぐらいは入れてくださいよ。良いですか?グリゴリの元堕天使総督アザゼルが手掛けたグレモリー眷属は、この短期間で目まぐるしい程の成長と功績を収めています。幾度(いくど)にも(わた)って『禍の団(カオス・ブリゲード)』の襲撃を退(しりぞ)けた挙げ句、旧魔王派と英雄派を事実上活動停止にまで追い込み、更には三大勢力の仇敵(きゅうてき)だった闇人(やみびと)とも和解を果たしています。特に悪神ロキの討伐、竜の末裔(まつえい)と呼ばれるリュオーガ族の撃退、冥界での魔獣騒動(まじゅうそうどう)鎮圧でも実力が如実に語られ、強さは最上級悪魔クラスを超えると言っても過言ではありません。これが今までの戦闘の様子です」

 

「ふーん……」

 

「奴らの戦闘データ、あなたの目から見てどうですか?」

 

「………………“ガキのチャンバラごっこ”だな」

 

「え?」

 

「“ガキのチャンバラごっこ”だっつってんだよ。ゼニーバ、テメェはこんな薄っぺらい強さしか持ってねぇような奴らにビビってんのか」

 

「シルバーです。……では、あなたにとっては大した障害にすらならないと?」

 

「ああ、取るに足らねぇヤツを殺って(いき)がってるだけだろうが。要するに、今まで退(しりぞ)けてきた奴らが弱かったんだよ。旧魔王派って連中は無駄に自尊心とプライドを振りかざしただけの無能。英雄派は“人からバケモノの領域”に踏み出せなかったヘタレ集団。闇人(やみびと)って奴らも、確固たる信条を持たずに安寧(あんねい)に逃げた腰抜け。ドラゴンの奴らは慢心と(おご)りで足元を(すく)われただけじゃねぇか。強さもクソも()ぇ―――言うなりゃガラスの杖だ。鉄の斧の一振りで簡単に砕けちまう」

 

「あなたから見て、グレモリー眷属はその“鉄の斧”に至ってないと……?」

 

「ああ、アイツらは少し固い木の棒ってところだ。あの程度の奴なら、俺が暴れ回ってた時代の全盛期には腐る程いたぜ」

 

「さすがは元SSS(トリプルエス)級のバウンティハンター、豪胆に言い切りますね」

 

「所詮、アイツらは“井の中の(かわず)”だ。そんな狭い場所の一番争いなんざ、俺の眼中に()ぇんだよ」

 

「では……グレモリーとシトリー、両陣営の殲滅に取り掛かり―――」

 

阿呆(アホ)か、バジルソース。速攻で潰したらつまんねぇだろ。少しは昔馴染みの顔を見るぐらいの時間を寄越せよ」

 

「シルバーです。……あの町に昔馴染みとやらがいるのですか?」

 

「ああ、丁度良い機会だ。俺達も挨拶しとこうや」

 

 

―――――――――――――――

 

 

“よぉ、竜の字。道にでも迷ってたのか?”

 

『……お前、なんでここに……っ?』

 

“なんでって言われてもなぁ。面白そうな匂いがしたから来てみただけだ”

 

『…………これ、お前が殺ったのか……っ⁉』

 

“見りゃ分かんだろ。俺以外に誰が殺ったっつうんだよ?”

 

『何故だ……!何故コイツらを殺したッ⁉』

 

“あー、邪魔だった”

 

『邪魔……?それだけの理由で……⁉』

 

“いや、もう1つあるぜ。コイツらは弱ェくせにテメェを侮辱した”

 

『侮辱、だと……っ?』

 

“ああ、同業者を殺る覚悟も()ェくせに、テメェをボロクソに(けな)した。それが気に入らなかった、だから殺したんだよ”

 

『なんでお前はそんな極端な考えしか―――』

 

“弱ければ死に、強ければ生き残る。それが世の常だ。その流れに乗れない奴、仕組みを理解しようとしない奴は―――ただの負け犬なんだよ”

 

『……ッ!貴様ァ……ッッ!』

 

“俺が憎いか、竜の字?だったら、来いよ。テメェの牙が俺を喰い千切(ちぎ)れるかどうか……殺ってみろ”

 

『アアアアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!』

 

 

―――――――――――――

 

 

「おい、大丈夫か、新?」

 

「……ッ?一誠……?」

 

ユナイト・クロノス・キリヒコに手酷くやられてから数週間が経ち、学園生活に復帰した新は昼休みの教室で一誠に起こされていた

 

机に突っ伏した状態で寝てしまい、冷や汗にまみれた(ひたい)を手で(ぬぐ)

 

“……嫌な夢を見ちまったな”と心中で毒づく新だが、不穏な点に気付く

 

『なんで今更“アイツ”が出てくる夢を見たんだ……?』

 

新の見た夢は―――本人にとって忘れたいと願う過去の記憶だった

 

自分がこの世で最も忌み嫌う男……

 

しかし、それは忘れたくても忘れ(がた)く、心髄(しんずい)にまで刻まれた嫌な記憶……

 

普段は心の深奥に閉じ込めていた記憶が、何故今頃になって脳裏を(よぎ)ってくるのか……?

 

『……頼むから、これ以上イヤな事は起こらないでくれよ……。特に“アイツ”が出てきたら、周りの何もかもが壊されちまう……っ』

 

嫌な記憶のフラッシュバックに新は(くちびる)を噛み締め、早く忘れようと別の事を考える

 

とりあえず弁当箱を取り出し、中に入っている唐揚げに箸を伸ばそうとするのだが……その1つが横から急に奪われた

 

「てめっ、コラァ!1年坊!俺の唐揚げを返しやがれ!」

 

「や~だよっ♪ク○ボー先輩もノ○ノコ先輩もトロいね~♪」

 

「その呼び方もやめろっ!このクソガキ!」

 

松田と元浜の怒声と共に剽軽な声が飛び交ってくる

 

新や一誠を含め、グレモリー眷属の頭を悩ませる造魔(ゾーマ)の一員―――シド・ヴァルディが今日も教室に乱入していた

 

流れから察するに、松田と元浜の弁当に入っていた唐揚げを横取りでもしたのだろう

 

松田と元浜がブサイクな顔芸で追いかけるも、シドはヒラリと回避する

 

鬼ごっこをしつつ、女子生徒の弁当からも唐揚げを貰い、舌鼓(したつづみ)を打つ

 

唐揚げを奪われてしまった新だが、怒る事もせず―――ハァッと溜め息を吐くだけだった

 

シドは次に一誠の弁当に入っている唐揚げに目をつけ、その気配に気付いた一誠は渡すまいと身構える

 

「さあ、イッセー先輩。その唐揚げを僕にちょうだい」

 

「ふざけんな!これはアーシアが一生懸命作ってくれた唐揚げなんだ!てめぇなんかには絶対に渡さねぇぞ!」

 

「フフンッ、こう見えても僕は“全日本唐揚げの(つま)み食い大会”で優勝する程の腕なのさ。優勝者に贈られる称号―――唐揚げ職人(カラアゲスト)の名に懸けて、アーシア先輩の唐揚げを絶対に攻略してあげるよ」

 

「そんな大会も称号も聞いた事もねぇよ⁉」

 

「そりゃそうだよね。どっちも僕がたった今作ったんだもんっ」

 

「お前が捏造(ねつぞう)したんかい!いや、そんな事はどうでも良い!とにかく、お前なんかにアーシアの唐揚げは―――」

 

「あっ、あそこで巨乳の女の子がパンチラしてる」

 

「「「ナニィッ⁉」」」

 

シドの安直な陽動に一誠、松田、元浜は即座に視線を移すが―――勿論、巨乳の女子もパンチラも存在せず……

 

気が逸れた隙を突いてシドは唐揚げを奪取し、まんまと教室から逃げていった

 

一誠は唐揚げを奪われた事に、松田と元浜は巨乳の女子のパンチラが無かった事に落胆する

 

「くぅぅ……っ、ゴメン、アーシア……っ。せっかく作ってくれた唐揚げを守れなかった……っ」

 

「大丈夫ですよ、イッセーさん。私のを分けてあげますから」

 

一誠はアーシアがお裾分けしてくれた唐揚げを食べるが……学園の外でも中でもシドの良いように(もてあそ)ばれ、面目(めんもく)が立たない現状に苦慮してしまう

 

学園内で事を荒立てては、周りの生徒にも危害が及びかねない

 

『チクショウ……っ、完全に向こうのペースに乗せられっぱなしだ……っ。いったい、どうすりゃ良いんだよ……?』

 

一誠はそんな事を考えながら、弁当のおかずに箸を伸ばすのだった……

 

 

――――――――――――

 

 

「ふっふ~んっ、アーシア先輩の唐揚げをフライングゲット~♪まだまだ僕には敵わないようだね、イッセー先輩。それじゃあ、戦利品を堪能させてもらおうかな」

 

パクッ……!

 

「…………ッッ!こ、これは……⁉瑞々(みずみず)しくジューシーな噛み応え……カリッカリに揚がった(ころも)……そして、全体に染み渡った胡麻(ゴマ)と醤油ベースのタレの香り……っ。こんな美味しい唐揚げ……食べた事が無い……!」

 

ペロ……ッ

 

「イッセー先輩の劇的なパワーアップの秘訣は……おっぱいだけじゃない……っ。この素晴らしく美味しい唐揚げも合わさった奇跡の産物だったんだね……っ?それを独り占めするなんて、ズルいなぁ……!こうなったら、何がなんでもアーシア先輩を攻略してみたくなっちゃったよ……!イッセー先輩、次に遊ぶ時は―――大事な物を懸けて勝負(あそ)ぼうねぇ……っ!」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「皆、今日は朗報が来てるぞ。ここ数週間かけて、ようやく造魔(ゾーマ)に関する一部の情報を入手できた」

 

放課後のオカルト研究部部室にて、アザゼルが開口一番に告げる

 

待ちかねたとも言うべき造魔(ゾーマ)に関する情報の入手にグレモリーとシトリーの両陣営がざわつく

 

ほんの一部だが、それでもありがたい

 

アザゼルが情報入手の経緯を語る

 

「アジュカの情報網を(もと)幽神(ゆうがみ)兄弟にも情報収集に行ってもらってたんだ。独立の諜報部隊だから、俺達が動けない間でも繰り出せる」

 

「何かもう、ヴァーリチームみたいな役職っすね。アイツらも随分と丸くなったんだなぁ」

 

「そうでもないぞ、イッセー?特に幽神正義(ゆうがみまさよし)は少し茶化した程度で『蹴り殺すぞ』って脅してくるぐらいだ」

 

「そりゃ先生が(あお)るからでしょ!いい加減にしとかないとフォロー出来ない―――と言うより、あの兄弟に襲撃されてもフォローしませんよ?」

 

「へいへい、分かってるよ。……さて、真面目な話に戻るか」

 

アザゼルが目の前に映写用の魔法陣を展開し、造魔(ゾーマ)についての情報が映し出される

 

「まず、造魔(ゾーマ)は普通のテロ組織じゃなく、依頼と独断によって他のテロ組織を潰す傭兵に近い組織だ。俺達みたいな正規の組織では出来ないような汚れ仕事をこなし、方々(ほうぼう)から支持を得ている。国からも、人民からも、あらゆる意味で厄介極まりない。しかも、ヤツらは鼠算(ねずみざん)式に傘下(さんか)を増やしている。それゆえに物量的な戦力も(はか)り知れんと言うわけだ」

 

「他の組織を潰しているのに傘下を増やせるなんて事があるの?」

 

リアスの問いにアザゼルが嘆息する

 

「要するに会社の吸収合併と同じさ。造魔(ゾーマ)と言う大企業が周りの小さな企業(そしき)を吸収し、傘下にしちまう。経緯は交渉だったり武力行使だったり……とにかく、これまでの組織と比べてクセが強い連中って事だ。そして、それを可能にしているのが―――造魔(ゾーマ)の中枢を(にな)う幹部どもだ」

 

アザゼルが魔法陣を操作すると、次は造魔(ゾーマ)の幹部達の姿が映る

 

すると、ここで一誠がおかしな点に気付く

 

「あれ?先生、確か造魔(ゾーマ)の幹部は全部で12人いる筈なんスよね?シドとキリヒコは知ってるから除いたとしても7人しか映ってませんけど……」

 

「ああ、その点については後で話そう。まずは映像に映っている奴らの情報から説明する」

 

アザゼルが魔法陣を操作し、最初にメガネを掛けた銀髪の男の映像が映される

 

「このメガネの優男(やさおとこ)、こいつの名はシルバー・ゼーレイド。造魔(ゾーマ)内の執政官(しっせいかん)―――つまり中間管理職的なポジションにいる奴だ。資金面や傘下組織の管理を(にな)っている。交渉事には大体こいつが出張(でば)ってくると言っても良いだろう」

 

「要は大公アガレス家みたいなヤツって事すか?」

 

「平たく言えば、そうだな。んで、気を付けるべきはこいつが持つ異能だ。お前ら悪魔にとっては1番の天敵となり得る」

 

「その男は悪魔祓い(エクソシスト)……と解釈して良いのかしら?」

 

リアスの問いに対して、アザゼルは首を横に振る

 

「そんな生易(なまやさ)しいもんじゃない。このメガネは悪魔を(めっ)する一族―――滅悪祓士(デビル・スレイヤー)ってヤツの末裔らしい」

 

「「「「デビル・スレイヤー⁉」」」」

 

初めて聞いた言葉に全員が驚愕し、アザゼルが話を続ける

 

「驚くのも無理はない、俺だって初めて聞いたんだからな。だが以前、幽神兄弟に任せたアスタロト家とヴァサーゴ家の護衛の1件から存在が判明した。天使の光撃(こうげき)なんかとは比べ物にならない、悪魔に対して必殺の威力を有する異能―――それが滅悪祓士(デビル・スレイヤー)だ。悪魔祓い(エクソシスト)ってのは、祓魔(ふつま)の威力を弱めた派生品に過ぎないらしい」

 

「そ、そんなヤバい能力を持ってるヤツがいたんスか……っ」

 

「ああ、実際相当ヤバいらしいからな。悪魔を滅する力でありながら、限りなく悪魔に近しいとさえ言われている。この男……シルバーはその中でも特に氷と風に(ひい)でた滅悪祓士(デビル・スレイヤー)で、前に武装勢力を国ごと凍り漬けにした張本人でもある。まさに冷血漢ってヤツだ」

 

アザゼルが魔法陣を操作して、次の造魔(ゾーマ)人員―――異形の者を映す

 

「この緑色のバケモノはギルグレイ・ジャーグ。造魔(ゾーマ)の中でもかなり好戦的な上、血を好む殺戮野郎だ。ここまではよく見る腐れ外道だが、コイツには神器狩り(セイクリッド・ハンター)って肩書きが付いてやがる」

 

「セイクリッド・ハンター?」

 

「要は神器(セイクリッド・ギア)所有者を好んで狩るハンターって事だ。これまでヤツが仕留めた神器(セイクリッド・ギア)所有者は―――判明しているだけでも99人。神器(セイクリッド・ギア)所有者を多数(かか)えている三大勢力は、ヤツにとって格好の標的になっちまうわけだ」

 

次は漆黒の鎧兜に包まれた造魔(ゾーマ)幹部、牙鬼斬月(きばおにざんげつ)に目を向ける

 

「この鎧武者―――牙鬼斬月は単独で100隻以上の海賊船を沈めた奴だ。天下五剣(てんがごけん)って剣技(けんぎ)を使ってくるらしい」

 

“天下五剣”とは数ある日本刀の中で室町時代より名刀と言われた五振りの業物(わざもの)の総称

 

童子切安綱(どうじきりやすつな)鬼丸國綱(おにまるくにつな)三日月宗近(みかづきむねちか)数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)大典太光世(おおでんたみつよ)―――その殆どが国宝や重要文化財等に指定されている

 

「でも、おかしいですよ。管理されている筈の国宝や重要文化財がテロリストの手に渡っているとは考えられません」

 

ソーナの物言いに対し、アザゼルは嘆息して告げる

 

「耳が痛い話なんだが、日本に現存している天下五剣は諸説を基に真似て作られた―――つまりは(まが)い物。この鎧武者が持っているのが本物の天下五剣って事だ。噂ではデュランダルや魔帝剣(まていけん)グラムにも引けを取らない妖刀(ようとう)だと言われている」

 

話を聞くだけでも垣間見えてくる造魔(ゾーマ)の底知れぬ戦力、規格外の人員……

 

次に映されたのは、三国志のような鎧を纏った異形と壮年の男だった

 

「鎧を着けている異形はスメラギ・リュウゲン、こっちも噂程度だがドラゴン系統の神器(セイクリッド・ギア)を宿しているらしい。詳細はまだ分かっちゃいない。んで、こっちの目付きが悪い奴はスナイド・コブラ。名前から察するに、恐らく毒系統の神器(セイクリッド・ギア)を持っているそうだ」

 

「ドラゴン系統に毒系統って……物騒な奴らオンパレードじゃないスか……っ」

 

「イッセー、ゲンナリしたくなる気持ちは分かる。だがな、これから俺達が相手をするのはイカレた奴らが山ほどいる組織だぞ?少しでも情報が入ってくるだけマシだと思ってくれ」

 

アザゼルは“次の奴らが問題だ”と前置きをしてから映像を映す

 

映されたのは―――骸骨と機械が混ざったような異形と……風神や雷神を彷彿させる出で立ちの異形

 

新は骸骨の方を見て、目を丸くする

 

「この骸骨、前にキリヒコと一緒にいた奴じゃねぇか。確か……」

 

「ブラッドマン・クルーガー、造魔(ゾーマ)の中ではバケモノ三人格と呼ばれる奴らの1人で、“死神”と呼ばれ恐れられている。さっき見せたスナイドってヤツもバケモノ三人格の1人だ。この骸骨野郎は特にヤバくてな、大抵の奴は近付いただけで死に至るらしい……」

 

「近付くだけで死ぬ⁉そんな奴とどう戦えって言うんですか⁉」

 

「知らん。とにかく、ヤツの力が判明するまでは絶対に近付かんのが得策だ」

 

「そんな無責任な……」

 

項垂(うなだ)れるイッセーを尻目に、アザゼルは話を続ける

 

「んで、造魔(ゾーマ)の指揮官ディザスター。……コイツは本当にヤバい、別次元の強さらしい」

 

「どういう事なの?」

 

「バケモノ三人格の中では1番の実力者で、あらゆる災害を操ると言われている。噂では神滅具(ロンギヌス)―――『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』を超える力を持っているとか……」

 

「ロ、神滅具(ロンギヌス)を超える力ッ⁉」

 

一誠だけでなく、他の皆も度肝を抜かれた

 

煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』は天界の切り札役(ジョーカー)が所持する上位神滅具(ロンギヌス)で、あらゆる天候を支配する

 

神をも(ほふ)神器(セイクリッド・ギア)さえ凌駕する力とは、いったい何なのか……?

 

「まさか神滅具(ロンギヌス)持ちか……?仮にそうだとしたら、俺や三大勢力が嗅ぎ付けられないのはおかしい……。“まだ知られていない未知の神滅具(ロンギヌス)”……?そんなもんがあるのか……?」

 

アザゼルは独りでブツブツと(つぶや)くものの、色々あり過ぎて考えが纏まらない

 

すると、ここで一誠が気になっていた事について訊く

 

「先生、さっきの答えを聞かせてくださいよ」

 

「さっきの?……ああ、造魔(ゾーマ)の幹部が全部で12人いるのに、なんで7人分しか情報が入手できなかったのか。それはな……」

 

「それは?」

 

「―――残り3人の幹部が女だからだ」

 

ズコッッ!と盛大にコケる一誠、ポカーンと開いた口が塞がらない新

 

リアスがキョトンとした表情で(たず)ねる

 

「……アザゼル、そんな理由で情報が入手できなかったの?」

 

「仕方ねぇだろ、情報収集に動いたのは女にめっぽう弱い幽神兄弟なんだぜ?調べさせたところで鼻血エンドになるのがオチだからな(笑)」

 

「先生、そんなに笑ってたらマジであの兄弟に殺されちゃいますよ……?」

 

「その時はイッセー、お前が止めてくれや」

 

「嫌ですよ⁉あんな鬼の化身みたいなヤツをどうやって止めろって言うんですか⁉」

 

「そこはホレ、アーシアをダシに使って―――」

 

「今のでハッキリしました。先生は一度、幽神兄弟に殺された方が良いかもしれないっスね。死んだら骨ぐらいは拾ってあげますよ」

 

「おいコラ!教え子のくせに先生を見捨てるのか⁉この恩知らず!」

 

「何とでも言え、このバカ監督!」

 

ギャーギャーと(わめ)教え子(イッセー)一応教師(アザゼル)

 

アザゼルは一通り説明が終わったところで映像を切り、新達の方を見据える

 

「さっきも言ったが、今回入手できた情報はごく一部に過ぎない。まだまだ分からん事は多々ある。このバケモノ揃いの幹部どもを束ねる首領もいるだろう……。だが、それでも俺達はやらなきゃならない。三大勢力が築いた和平をぶち壊そうとする奴らを放置してはいけない」

 

アザゼルが真剣な面持ちで告げる

 

「ここからが正念場だ。俺達もやられっぱなしのままじゃ、腹の虫が治まらん。俺達に喧嘩を売ったら無事ではいられないって事を、造魔(ゾーマ)の連中に嫌と言うほど叩き込んでやろうぜ」

 

「勿論よ、今まで煮え湯を飲まされてきたもの。これまでの屈辱を纏めて返した上で―――滅ぼしてやりましょう」

 

「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 

アザゼルとリアスの(げき)によって皆が一丸となり、造魔(ゾーマ)への対抗心を燃やす

 

だが、このように決起している間にも―――造魔(ゾーマ)は先手先手を打って行動している事を知る(よし)も無かった……

 

 

――――――――――――――

 

 

―――“ヒュルッ”―――

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁあああっ!」

 

―――“ボオッ”―――

 

「うわぁぁぁああああああっ!」

 

―――“ヒュルッ”―――

 

「いやぁぁぁぁぁぁんっ!」

 

―――“ドドンッ”―――

 

「そげぶぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 

「な、何なんだアレは……⁉いったい何が起きているんだ⁉」

 

「分かりませんッ!竜巻が発生したり、炎が噴いたり……奴がそれらの現象を引き起こしてるとしか言えません!」

 

「たった独りの敵に三大勢力の拠点が潰されていくのか……⁉」

 

「まさに……厄災(やくさい)だ……!アレはヒトの姿を借りた厄災だ……ッ!」

 

―――“ヒュルッ”―――

 

「「「ぐわぁぁぁぁああああああっ!」」」

 

「………………」

 

「うぅ……っ、貴様は……いったい、何者なんだ……っ⁉」

 

「我に名は無い。我は造魔(ゾーマ)にて生まれた深淵の欠片。―――ヒトは我を“厄災”と呼ぶ」

 

「……造魔(ゾーマ)の……厄災……ッ」

 

「深淵の扉、開かれる(とき)が近付いた。ゆえに脆弱(ぜいじゃく)な者どもに、闇の鉄槌を(くだ)す」

 

「……サーゼクスさま……っ!ミカエルさま……っ!アザゼルさま……っ!造魔(ゾーマ)は……想像を遥かに超えた、バケモノ集団です……っ!どうか……ご存命を……っ!」

 

「堕ちろ、闇の彼方(かなた)へ」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「ユナイト・キリヒコ、以前にも忠告した筈ですよ。あまり勝手な真似はしないようにと」

 

Oh(オー) la() la()、自由行動がこの組織の持ち味だと記憶していますが?目的さえ見失わなければ、お(とが)めも無い筈ですよ?それと今の私はユナイト・クロノス・キリヒコです。まあ、下の名前で呼んでいただいても構いません」

 

「……何処までも胡散臭い奴め。それで、あなたが新しく造ったと(のたま)尖兵(せんぺい)、トランザーとテンペスターとやらは何処に行ったんですか?」

 

「お二人には別任務に当たってもらいました。各地にある三大勢力の拠点を発見次第、制圧するようにと……」

 

「私が出向く前に手を打っておいた―――とでも言いたいのか?」

 

Oui(ウィ) Oui(ウィ) Oui(ウィ)、中間管理職はブラック一色のハードな役職ですからね。手を(わずら)わせないように配慮したつもりなんですが、お気に召しませんか?」

 

「……ふん、まあ良いでしょう。今のところは不問にしておいてあげます。ただし……あの御方(おかた)を敵に回すような事をしてみろ。その時は私が滅してきた悪魔どもと同じ末路を辿らせる。それを肝に命じておけ」

 

「ご忠告、Merci(メルシィ)


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