ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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ようやく投稿です……。


エクスカリバー破壊団結成!

「ぐっ!くっ……!ぬぅぅぅぅ、がぁぁあああ……!」

 

 

「我慢してなさい。アーシア、朱乃、もう少し強く」

 

 

「は、はい!」

 

 

「はい、部長」

 

 

リベンジ終了後、新はリアスと朱乃の魔力、アーシアの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』による再生治療を受けていた

 

 

さっきまで痛みの事など頭に入っていなかったためか、肉体に激痛が走る

 

 

少しずつくっついてはいるが、痛いものは痛かった

 

 

やがて切断された右腕は完全に元の状態にまで回復した

 

 

「っはぁ!はぁ……はぁ……はぁ……超(いて)ぇ。もう少し優しくしてくれたって良いだろ……?」

 

 

「痛くても我慢しなさい。一度ならず二度までも私達に心配を掛けて!さっきは本当に消滅したと思ったんだから!」

 

 

「ぎゃぁあああっ!腕を叩くなーっ!」

 

 

結合部を思いっきり叩かれた新はその箇所を押さえながら転がる

 

 

腕が繋がったとはいえ、まだ痛みは消えていない

 

 

新はその後、心配を掛けた罰としてリアス達から説教をされる羽目となった

 

 

――――――――――

 

 

 

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』はもう動いている……か。白い龍って事は、一誠の赤龍帝と何か関係があるのか?」

 

 

次の休日、新は競馬場を出ながら考えていた

 

 

ゼノヴィアが学園から去る直前に言っていた『白い龍(バニシング・ドラゴン)

 

 

彼女達が探しているエクソシスト―――――神代剣護について

 

 

だが、どちらも―――――特に神代剣護には心当たりが無いので……やはり考えがつかなかった

 

 

「もう少し酒場で情報を集めた方が良いかも知れねぇな。今日は大穴を当てたから、財布に余裕があるし」

 

 

そう言いながら財布の中に潜む福沢諭吉の枚数を数えていると……妙に見覚えのあるローブが新の視界に入り込んだ

 

 

「え~、迷える子羊にお恵みを~」

 

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉぉっ!」

 

 

道の真ん中で小さなカゴを傍らに祈りを捧げるおかしな2人組――――それは昨日学園に押し掛けてきたゼノヴィアとイリナだった

 

 

道行く人達も奇異の視線を向けながら彼女達を避けて通り過ぎる

 

 

「何してんだあいつら……?」と新は口を半開きにして佇む

 

 

「なんて事だ……。これが超先進国にして経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

 

「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうやって異教徒達の慈悲無しでは食事も摂れないのよ?ああ……パン1つさえ買えない私達!」

 

 

まるで悲劇のヒロインの如く惨めな自分達を強調し続ける様子は胡散臭さ以外感じられない

 

 

新も出来れば関与したくない思いでいっぱいだった

 

 

「元はと言えばイリナが詐欺紛いの絵画を購入したから、こんな事をする羽目になっているんじゃないか!」

 

 

「何を言うの!この絵画には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の関係者もそんな事を言ってたわ!」

 

 

「じゃあ誰だか分かるのか?私には誰一人脳裏に浮かばないぞ」

 

 

ゼノヴィアの視線の先には1枚の絵画が置いてあった

 

 

その絵画には頭に輪を浮かばせただけで何処にでもいそうな人物とラッパを吹いて宙を舞う数人の赤ちゃん天使が描かれているだけだった……

 

 

素人でも分かる下手くそな絵画は贋作よりも酷い代物で、これは明らかに騙されたと言えよう

 

 

『……アホだな~』

 

 

「全く、これだからプロテスタントは異教徒だと言うんだ!」

 

 

「何よ!カトリックの方が異教徒じゃない!」

 

 

今度は自分達が所属する教会の事で喧嘩し始めたゼノヴィアとイリナ

 

 

しかし、ここで2人の腹の虫が大きく鳴り……彼女達は溜め息混じりにガックリと肩を落とした

 

 

「……やめましょう」

 

 

「……そうだな」

 

 

いがみ合っても腹が膨れる訳がないと悟ったゼノヴィアとイリナは喧嘩を止めた

 

 

新は近くの自販機でカフェオレを買い、飲みながらもう暫く様子を見る事にした

 

 

すると、イリナが何かを思い付く

 

 

「そうだ!異教徒を脅してお金を貰うってのは?異教徒相手なら主もお許しになると思うの」

 

 

ブフーーーーッ!

 

 

新の口に侵入したカフェオレが一気に吹き出された……

 

 

イリナが出したアイデアは紛れも無い犯罪行為である

 

 

ゼノヴィアも続くように自らの提案を出す

 

 

「寺とやらを襲撃して賽銭箱を奪うと言うのもあるな」

 

 

物騒なアイデアの流出は止まる事を知らず……

 

 

このまま放置したら間違いなく2人は犯罪者となるだろう

 

 

敵対関係とはいえ、流石にこれ以上はマズイと見兼ねた新は2人の所へ歩いていった

 

 

「おい、そこのおバカさん2人。往来で白昼堂々と犯罪計画を立てるな。俺が逮捕していろいろ尋問するぞ」

 

 

「……っ。君は――――竜崎新!いつの間に……」

 

 

「私達が空腹の時に仕掛けてくるなんて卑怯よ!」

 

 

「カツアゲに賽銭強盗をしようとしたお前らに言われたくねぇ!ったく、教会出身の奴らはマヌケしかいねぇのか……」

 

 

新は懐から財布を取り出し、競馬で稼いだ札束を扇状にして2人に見せる

 

 

「腹減ってんだろ?飯ぐらいなら俺が奢ってやる。まぁ別に食いたくねぇってんなら――――あ、食うんだな……」

 

 

2人のキラキラと輝く眼差しを肯定の意味として受け取った新はその直後、ゼノヴィアとイリナを探し回っている一誠、小猫、匙とも合流した

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「うまい!日本の食事は美味いな!」

 

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

 

余程空腹だったのか、近くのファミレスに着くや否やゼノヴィアとイリナはメニューを片っ端から注文

 

 

料理が届いては勢い良く食べ尽くしている

 

「はふぅ~、ご馳走さまでした。ああ、主よ。心優しきこの者にに祝福を」

 

 

胸で十字を切るイリナ

 

 

その瞬間、新、一誠、小猫、匙は頭痛に襲われ頭を押さえる

 

どうやら悪魔は目の前で十字を切られると軽くダメージを受けるようだ

 

「あー、ゴメンなさい。つい十字を切ってしまったわ」

 

テヘッと可愛く笑うイリナに新は「テヘッじゃねぇだろ」と軽く突っ込む

 

 

空腹が満たされ、落ち着いた所でゼノヴィアが問う

 

 

「それで、私達に接触した理由は?」

 

 

「わざわざ話があるからって言うぐらいだ。それなりの理由があるんだろ?」

 

 

新の言葉に一誠は真剣な面持ちになり、2人を探していた訳を打ち明けた

 

 

「単刀直入に言えば、エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

 

一誠の言葉を聞いた2人は目を丸くしていた

 

 

敵対関係にある悪魔から聖剣の破壊に協力したいなどと誰も思うまい

 

 

流石の新も一誠の提案に目を細めた

 

 

この提案に対し、ゼノヴィアが口を開く

 

 

「……そうだな、1本ぐらい任せてもいいだろう。だが、そちらの正体を知られないようにしてくれ。関わりを持っているのは上にも敵にも知られたくない」

 

 

「ちょっとゼノヴィア、相手はイッセーくんと……竜崎くんとはいえ悪魔なのよ?」

 

 

「正直言って、私達だけでは聖剣3本とコカビエルの戦闘は(つら)い」

 

 

「それは分かるわ!でも……」

 

 

イリナは提案されたエクスカリバー破壊の共同戦線に納得がいかない様子だが、

 

 

「最低でも私達は3本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰れば良い。私達のエクスカリバーが奪われるぐらいなら、自らの手で破壊すれば良い。奥の手を使ったとしても任務を終えて、無事帰れる確率は3割程度だ」

 

「それでも高い確率だと私達は覚悟を決めてこの国に来た筈よ」

 

「上にも任務遂行して来いと言われた。自己犠牲に等しい」

 

「それこそ信徒の本懐じゃないの」

 

「気が変わったのさ。私の信仰は柔軟でね、いつでもベストな形で動き出す」

 

「前々から思っていたけど、信仰心が微妙におかしいわ!」

 

「否定はしないよ。だが、任務を遂行して無事帰る事が本当の信仰と信じる。生きて、これからも主のために戦う。違うか?」

 

「違わないわ、でも……」

 

「だからこそ、悪魔の力は借りない。代わりにドラゴンと蝙蝠の力を借りる。上も゛ドラゴンとハンターの力を借りるな゛とは言っていない」

 

矛盾してるようで矛盾していない理屈にイリナは戸惑い、その間に新は一誠にある疑問を投げ掛けた

 

「おい、一誠。お前この事はリアス部長に言ったのかよ?」

 

「いや、部長に言ったら間違いなく反対されると思って……」

 

「つまりお前の独断って訳か。しかも、エクスカリバーを破壊する為のねぇ……。お前さぁ、いくら祐斗の為とはいえゼノヴィアとイリナは教会側についてる人間だぞ?その問題に首を突っ込んだら、どんな惨事を招くか分かる筈だ。悪魔歴が浅い直球バカのお前でもな」

 

「分かってるけど……木場は俺達の仲間なんだ。エクスカリバーに対する復讐を木場の手で終わらせてやりたい。だから、新も協力してくれ!」

 

一誠が新に頭を下げる

 

正直に言ってしまえば、この問題はあくまで教会側の問題なので新達が干渉する必要など何1つ無い

 

新も面倒事は極力避けたいが……乗り掛かった船だと言い聞かせて諦めた

 

一誠の仲間意識具合は恐らく梃子(てこ)でも動かせないだろうと踏んだのだ

 

「わぁーったよ、俺も協力してやる。そこのお二人さん、何か問題はあるか?」

 

「いや、無いぞ。寧ろ君が加わってくれるのは好都合だ。何せ私達2人を退けた強者だからね」

 

「ここまで話が進んじゃった事だし……仕方無いわよね」

 

ゼノヴィアからは直ぐに了承を得て、イリナも渋々ながら承知してくれた

 

新の共同戦線加入が決定した所で一誠は電話で祐斗の呼び出しに掛かった

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「……話は分かったよ。正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 

「随分な言い様だね。そちらが『はぐれ』だったら問答無用で斬り捨てているところだ」

 

共同戦線前なのに一触即発の空気になってしまうが、新が落ち着かせる

 

「やはり、『聖剣計画』の事で恨みを持っているのね?エクスカリバーと―――――教会に」

 

「当然だよ」

 

「でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応出来る使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

祐斗はイリナに憎悪の眼差しを向ける

 

確かに神に仕える信徒がやるには非人道的過ぎる行いである

 

彼女が反応に困るのも無理なかった

 

そこへゼノヴィアが言う

 

「その事件は、私達の間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人さ」

 

「堕天使側に?その者の名は?」

 

「―――――バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

仇敵の名前を聞いた祐斗の目に決意みたいな物が生まれた

 

聖剣計画の当事者―――――目標が分かっただけでも、祐斗にとっては大きな前進である

 

「僕も情報を提供した方が良いようだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を1人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね」

 

この場にいる全員が祐斗の言葉に驚愕した

 

特にゼノヴィアとイリナは尋常じゃない慌てぶりを見せる

 

「エクスカリバーを……っ?」

 

「その者はどんな奴だった!?まさか……剣護さんが……?」

 

「いや、相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

 

フリード・セルゼンとは、アーシアとの一件で完全に敵対している白髪神父の名前だ

 

ゼノヴィアとイリナはホッとした様な雰囲気で胸を撫で下ろす

 

「つーか、あのクソ神父まだいるのかよ」

 

「なるほど、奴か」

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。13歳でエクソシストとなった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

「だが奴はあまりにやり過ぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。フリードには信仰心なんてものは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

「あいつ天才だったのか?とてもそんな風には感じられなかったが」

 

「――――っ?竜崎くんはフリードと戦った事があるの?」

 

「あの時は新が一方的に圧倒したんだっけ」

 

新はエヘンと自慢気に威張る

 

そして、さっき異常な様子を見せた2人に新はある質問をする

 

「さっき真っ先に、お前らが探している先輩とやらの名前が出たんだが……その男もヴァチカンに?」

 

「……そうだ。神代剣護(かみしろけんご)さんも、かつてヴァチカン法王庁に仕えていたエクソシストだ。私達の上司……8本あるエクスカリバーの内の1本、炎を操る『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』の使い手で、エクソシストのトップに相応しい実力の持ち主―――――私達信徒の憧れだ」

 

「でも、数年前に突然姿を消してしまったの……エクスカリバーを持ったまま……」

 

沈んだ顔をするゼノヴィアとイリナだったが、直ぐに気落ちから復活する

 

「……けど、私達は考え過ぎてたみたいだ。剣護さんは誰よりも神を信仰し、思いやりのある人だから―――――そんな事をする人じゃない」

 

「そうよね。きっと、何処かの町で人々を救っている筈よ!」

 

「そうだな。とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

ゼノヴィアはペンを取り出して、メモ用紙に自分達の連絡先を書き記す

 

「何かあったらそこへ連絡をくれ」

 

「サンキュー。なら、俺達の携帯番号も教えておこう。常備しているからな」

 

「イッセーくんのケータイ番号はおばさまからいただいているわ」

 

「マジかよ!母さん!勝手な事を!」

 

こうして、エクスカリバー破壊団が結成された


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