ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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また1ヶ月以上かかってしまいました……。

もうすぐ新刊も発売されるのに、本当に何とかしなければ……。

とは言え、ようやく更新できたこの回、ヤバヤバな空気を味わってください……


絶望……絶望……更なる絶望……っ

あれから、どれだけ時間が経ったのだろうか……

 

何度斬られたのだろうか……

 

閉鎖され、(さび)れたボウリング施設内で飛ぶ血飛沫(ちしぶき)

 

途切れ途切れになる呼吸

 

新はミカサの凶刃を受け続け、心身ともにボロボロとなっていた……

 

その悲惨な光景を静観するキリヒコ

 

『これだけの攻撃を受けても反撃すらしないとは……。あの時もそうでしたが、ヒトの感情と言うものは本当に理解し(がた)いですね』

 

異国で初めて対峙した時の事を思い出し、眉根を寄せる

 

このままでは(らち)が空かないと踏んだのか、キリヒコはミカサに“もっと苛烈な攻撃”をするよう指示

 

その指示を受けたミカサは静かに(うなず)き、更なる追撃を開始する

 

左手を前に突き出し、(てのひら)から銃口が出現する

 

10㎜弾機関砲(ジュウミリダンキカンホウ)―――発射(ファイア)

 

けたたましい射撃音と共に飛び出す銃弾

 

その全てが新の肉体を穿(うが)

 

腕、足、腹を撃ち抜かれた新は弾痕(だんこん)から血を流す

 

ミカサは銃口を(てのひら)に収納し、足から火を噴かせて駆け出す

 

右手で拳を作り、新の腹に重い一撃を食らわせた

 

しかし、それだけに(とど)まらず……打ち込んだ右手の周りに多数の噴射口が出現

 

そこからも火が噴き出し、インパクトの威力を底上げする

 

重く鈍い打撃音が響き、新は血を吐き出しながら後方へと吹き飛ぶ

 

標的(ヒョウテキ)生存(セイゾン)確認(カクニン)追撃(ツイゲキ)システムオープン』

 

ミカサの背中が開き、そこから出てきた幾つもの砲門が新に狙いを定める

 

追尾(ツイビ)ミサイル錬成(レンセイ)―――発射(ファイア)

 

砲門から無数のミサイルが射出され、寸分の狂いも無く新に命中

 

肉と血が飛び散り、爆煙(ばくえん)の中から転がり出てくる新に対して―――ミカサは追撃の手を緩めない……

 

再び左手を前に突き出すが―――今度は左手その物が巨大な砲身と化す

 

対魔獣(タイマジュウ)レーザー、掃射(ソウシャ)

 

砲身から放射された太いレーザーが空を走り、新の脇腹を(つらぬ)

 

肉だけでなく骨まで焼かれるような痛みに新は苦痛の声を挙げる

 

「…………ガハ……ッ!」

 

既に満身創痍、全身を穴だらけにされている新

 

それでもミカサは冷淡に、冷酷に追撃を続ける

 

荷電粒子砲(レールガン)錬成(レンセイ)

 

今度は両肩から二又に分かれた砲身が出現し、バチバチと紫電(しでん)(ほとばし)らせる

 

照準が新に定まり―――紫電の塊が放たれる

 

一直線に飛来してきた紫電は新に直撃し、彼の全身を焼く

 

「――――ッッ!…………ッッ!」

 

もはや叫び声すら上げられない程の激痛が新を(むしば)み、体の端々(はしばし)から黒煙が立ち込める

 

膝も震え、今にも倒れそうになっていた

 

そんな様子を見てキリヒコは(あわ)れみの視線を送る

 

Oh(オー) la() la()、まだ無抵抗の意志を(つらぬ)くつもりですか?それとも現実が受け入れられなくて、思考停止しているのでしょうか?今あなたの目の前にいるのは、あなたが知っている新人ハンターではありません。『クロニクル』のラスボスであり―――冷酷非情な殺戮マシーンです。遠慮する事はありませんよ?存分に戦って、(ほうむ)って差し上げなさい」

 

嫌みったらしくミカサを殺す事を進言してくるキリヒコ

 

無言で見据えるミカサに対し、新は裂傷と血にまみれた体を動かせずにいた

 

ミカサを殺さない限り、デスゲーム『クロニクル』は終わりを迎えない……

 

しかし、そうすれば……新は再び“仲間殺し”の汚名を(かぶ)る事になってしまう

 

絶望の瀬戸際とも言える窮地(きゅうち)……

 

新の煮え切らない態度に―――キリヒコは最悪の発破を掛けた

 

「……仕方ありませんね。あなたに戦う意志が無いと言うのなら、ここで死亡(ゲームオーバー)になってもらいましょう。その後は―――グレモリー眷属を彼女に殺させましょう。非正規プレイヤーである以上、彼らは何も出来ず、なす(すべ)無く無惨に殺されていく姿が目に浮かび上がってきますよ。ただ、その死にざまを見せてあげられないのが残念です」

 

キリヒコの言葉を聞いた瞬間、新の頭の中に忌まわしい過去がフラッシュバックされる……

 

自分の手で仲間を殺した、その時の光景……

 

何度も何度も記憶に(よみがえ)り、耐え(がた)い罪悪感に(さいな)まれる

 

“もう、あんな思いはしたくない……っ”

 

しかし、このままではリアス達がミカサに殺されてしまう……

 

“もう2度と、失いたくない……っ”

 

相反する思いに心を裂かれそうになる新

 

血だらけの体に鞭を打ち、絶望的な選択肢に対して答えを導き出した

 

「…………殺るしか、無いのか……っ」

 

涙混じりの選択

 

新はリアス達を守る為に、再び“仲間殺し”を決意する

 

生涯(ぬぐ)い去れない汚名と罪が新の背にのし掛かる事になるだろう……

 

しかし、このまま放っておけば―――ミカサはリアス達を殺してしまう

 

一時(いっとき)でしかなかったとは言え、ミカサは初めて出来た後輩

 

そんな後輩に、これ以上の殺戮をさせたくない

……っ

 

新はリアス達を守る為に、そして何より……ミカサを止める為に―――決して拭い去れない汚名を(かぶ)る覚悟を決めた

 

全身から火竜のオーラを揺らめかせ、殺戮マシーンと化したミカサの前に立つ

 

だが、新の手は今も震えている……

 

ようやく決意したと言えど、まだ抵抗感がある表れなのだろう

 

しかし、今は一刻の猶予も無い……

 

新は再びミカサを見据え、滲み出てきた火竜のオーラを右手に集束させる

 

燃え盛る炎と共に雷も(ほとばし)らせる

 

どうやら一撃で仕留めるつもりなのだろう……

 

“せめてもの情け”―――と言えば、聞こえは良いかもしれない

 

それでも結局は過去と同じ(あやま)ちを繰り返す事になるのだから……

 

『……本当に、なんでこんな事になっちまったんだろう……っ。悪い夢なら覚めてほしいぜ……っ』

 

新は“この場、この瞬間が夢であってほしい”と切なく願った

 

だが、その願いは決して届かない……

 

そんな新の心中など察する事無く、無感情のミカサが向かってくる

 

左手からの銃撃、レールガンでの砲撃

 

驟雨(しゅうう)の如く乱射される弾丸を、新は一切避けずに被弾する

 

また同じ罪を犯す自分への(いまし)めだろうか……

 

新は回避行動を一切取らず、ミカサは空いた手で(たずさ)えた長剣を振り下ろしてきた

 

剣が新の脳天に直撃する刹那―――鈍い音が場内に響いた

 

ポタポタと(しずく)(したた)り、バチバチと飛び散る火花

 

―――新の右腕はミカサの腹部を(つらぬ)き、その背中を突き破っていた……

 

ミカサは長剣を振り下ろす体勢のまま、腹を貫かれたのだ

 

『……深刻(シンコク)ナダメージ発生(ハッセイ)機能停止(キノウテイシ)……キノウテイシ……機ノウ停止……キ、能……テイ……シ……』

 

手から長剣が離れて、金属音を立てて地面に落ち―――言葉と共に動きがどんどん鈍くなっていく

 

新が右腕を引き抜くと……ミカサは膝から崩れ落ちた

 

Game(ゲーム) Clear(クリア)!!!!』

 

軽快な音楽と共に流れてくるクリア宣言

 

空気を読まないにも程がある……

 

そこへ更に空気を読まないキリヒコがパチパチと拍手を贈る

 

Trés bien(トレビアン)!見事に全てのボスを倒しましたね、おめでとうございます。如何(いかが)でしたか?3日間に及ぶ『クロニクル』のご感想は?」

 

徹底的に神経を逆撫でする言動を繰り返すキリヒコ

 

新は今すぐにでも怨敵(キリヒコ)を殺しそうなオーラを揺らめかせるが、蓄積されたダメージと傷のせいでまともに動く事が出来ない……

 

そんな中、キリヒコは新のもとに歩み寄り―――(みずか)らの左手に黒い霧を纏わせる

 

「感謝しますよ、Monsieur(ムッシュ)。あなた方のお陰で有意義なデータが多く集まりました。クリアを果たしたあなたの功績に免じて、『クロニクル』は現時刻を(もっ)て終了と致します。ですから―――最後に回収させていただきますよ」

 

ズン……ッッ!

 

闇にまみれたキリヒコの左手が新の体内にめり込み、ズブズブと入り込んでいく

 

息が詰まるような窒息感に襲われ、キリヒコが勢い良く左手を引き抜いた

 

その手には―――以前、新の体内に埋め込んだ『クロニクル』のマスター版の端末が握られていた

 

意味深な笑みを浮かべるキリヒコは、右手に例の装置(デバイス)を出現させる

 

「これで私も更なる力を手に出来ます。あなた方にとっては更なる脅威になるでしょうけどね。―――S'il vous plâit(シルブプレ)

 

そう告げた直後、キリヒコは右手に展開した装置(デバイス)に回収したマスター版の『クロニクル』端末を挿し込んだ

 

やがて端末は粒子となって装置(デバイス)に同化し、装置(デバイス)の色が変化していく

 

おどろおどろしい紫色から一変して―――鮮やかなメタリックグリーンカラーとなった装置(デバイス)

 

それを見てキリヒコが口の端を吊り上げる

 

「完成しましたよ、私の新しい力が。ご協力、Merci(メルシィ)

 

キリヒコは紳士的に頭を下げ、完成したばかりの装置(デバイス)を起動させる

 

ニ門の銃口から黒い霧を散布し、自分の周りを色濃く覆っていく

 

「今夜はゆっくりお休みください。また近い内に会いましょう。その時に私の新しい力をお披露目します。それと……そのゴミは捨てるなり埋めるなり、ご自由にしてください。もう私には必要の無い物ですので。それでは―――Adieu(アデュー)

 

そう言ってキリヒコは黒い霧に包まれ―――消えていった

 

最初に対峙した時と同じように、再び煮え湯を飲まされてしまった新

 

しかし、今はそんな事を考えている暇など無い

 

いや、視野にすら入れてなかったと言う方が正しいのかもしれない……

 

激痛に(きし)む体を動かし、(みずか)ら手に掛けてしまったミカサの残骸へと歩み寄っていく

 

既に手足は千切(ちぎ)れ、血管代わりの配線も剥き出しになっており、もはやヒトの形すら逸脱していた……

 

新はミカサの上半身を抱き上げる

 

「…………ミカサ……、お前は……本当にただの機械だったのかよ……?」

 

涙混じりに問い掛けるが―――ミカサからの返事は一切無し

 

元々冷たい感触が更に冷たさを増していく……

 

「レイナーレ達と話してた時のお前も……酒を飲んでた時のお前も……飯を食ってた時のお前も……全部、嘘だったのかよ……っ?」

 

何度も何度も問い掛ける……だが、それでも現状は変わらない

 

ミカサの冷たい体を(かか)え、ボウリング場から外へ出る新

 

外はすっかり雨模様となっており、今の新の心境を(あらわ)すかの如く大粒の雨が降っていた

 

雨の中を1歩1歩進み、(しばら)く歩いたところで雨雲を見上げる

 

振り続ける雨、晴れる事の無い暗雲

 

ギリリと歯を食い縛った後、新は空に向かって慟哭した

 

「―――アアァァァッ、アアアアァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア……ッッ!」

 

その後、新はアザゼルやリアス達がいる病院に戻り、『クロニクル』の終了を伝えた

 

ずぶ濡れ且つ事切れたミカサを抱える新に、誰もが言葉を失った

 

新はミカサの亡骸(なきがら)をアザゼルに託し、「手厚く(とむら)ってやってくれ」と告げた直後、意識を失って即入院

 

こうして、デスゲーム『クロニクル』に染まった悪夢の三連休はようやく終わりを迎えた

 

だが、その代償はあまりに大きなもの……

 

三大勢力の誰もが対処の1つも出来ないまま、総計36471人の死亡者(ゲームオーバー)を輩出させてしまった……

 

 

―――――――――――――――

 

 

「……あれから1週間か。リアス、新の様子はどうだった?」

 

「今朝早く出掛けていったわ。バウンティハンター協会からの呼び出しらしくて。……それまでの彼は(ほとん)ど抜け殻みたいな状態だったわ」

 

「そうか……。それでもマシになった方だもんな」

 

リアスからの報告に、アザゼルを始めとする部室内の全員の表情が暗くなる

 

実際、『クロニクル』終了後の新は酷い有り様だった

 

“ミカサを自分の手で殺した”―――その自責に駆られたせいでまともに眠れず、食事も殆ど摂らず、学校にも来なかった……

 

レイナーレ達も何とか励まそうと策を講じてみたが、効果は無し

 

結果、バウンティハンター協会からの呼び出しが来るまで―――新の心の傷は全く癒えなかったのだ……

 

亡骸となったミカサはアザゼルに託されたものの、アザゼルはそれをアジュカの研究施設へと預けた

 

このまま(とむら)うより、少しでも情報を採取しなければ(むく)われない……

 

その為に調査の依頼も兼ねてアジュカに預けたのだ

 

造魔(ゾーマ)―――特にキリヒコは抜かりの無い事後処理まで(ほどこ)していた

 

『クロニクル』が終了した途端、世界中に出回っていた端末は煙の如く消滅

 

更には『クロニクル』に関わる一切の記憶がプレイヤー達の脳から消去されていた

 

“リア充になる”と息巻いていた一誠の友人、松田と元浜も『クロニクル』の存在を綺麗サッパリ忘れた

 

アザゼルの話によれば、『クロニクル』の端末には(あらかじ)め特殊な術式が仕掛けられており―――『クロニクル』のボスを全て倒してクリアした瞬間、術式が発動

 

仕掛けられた術式がプレイヤー達の記憶から『クロニクル』に関する情報を一切合切消去し、またも三大勢力の出鼻を(くじ)いた

 

それゆえに調査できるのは新が託してきたミカサの残骸しか無い……

 

新には悪いと思いつつ、少しでも情報を集める為には仕方なかった

 

度重(たびかさ)なる敗北と屈辱にアザゼルは勿論、リアス達も気が気でなかった

 

想像以上に心を(えぐ)ってくるキリヒコの手腕、その背後に控えている造魔(ゾーマ)

 

ここまで末恐ろしい組織は他に見ないだろう……

 

すると、アザゼルは何かをキャッチしたのか通信用の小型魔法陣を耳元に開く

 

「おう、サーゼクスか。…………え?新がどうしたって?―――――――――は……っ?それ、本当か……?」

 

サーゼクスからの通信らしいが、アザゼルの顔付きが驚愕一色に染まる

 

その後も興奮した様子で会話を続けていたが、次第に表情が険しくなり、「分かった……」と(つぶや)いて通信を切った

 

全員の視線がアザゼルに集中し、リアスが訊いてくる

 

「アザゼル、何かあったの?お兄さまから連絡が来ていたみたいだけれど」

 

「お前がさっき言ってたバウンティハンター協会からの呼び出しについてだ。その内容は―――新のライセンス昇格だったよ」

 

ここで思いも寄らぬ吉報、バウンティハンター協会が新を呼び出したのは―――ライセンスの昇格を推薦する為だった

 

今回の『クロニクル』の1件が協会の目に留まり、たった独りで事態を終局させた新の活躍が評価され……昇格を推薦する事になったそうだ

 

本来、ライセンスの昇格は任務の成功率を吟味(ぎんみ)し、正式な手続きのもとで(おこな)われるのだが―――協会の上層部から直接昇格の手続きをするよう申し出があった

 

それは極めて異例な昇格推薦

 

新は現在SS(ダブルエス)級なので、この推薦を受ければランクはSSS(トリプルエス)級―――(すなわ)ち、目標でもあったトップクラスのバウンティハンターになれる事を意味する

 

本来なら喜ばしい(しら)せの筈だが……アザゼルは未だに浮かない顔をしていた

 

それを見てリアスが再び訊く

 

「……新に、何かあったの?」

 

「……………………」

 

「先生、なんで黙ってるんスか!」

 

茶を濁すような態度を取るアザゼルに、一誠が(たま)らず怒鳴る

 

他の皆からの視線も突き刺さるような雰囲気になった途端、アザゼルは溜め息を吐いて白状する事に……

 

その内容とは―――絶望的なものだった

 

「……新がライセンスの昇格を辞退したそうだ」

 

その場にいた誰もが理解できなかった……

 

ザワつきが収まらず、アザゼルは事の顛末を打ち明けた

 

協会に着いた新は直ぐに役員達が集まる部屋へ呼ばれ、全世界に被害をもたらした『クロニクル』の件について賞賛された

 

犠牲者を多く出してしまったのは居たたまれないが、それでも短期間()つたった独りで事態を終局させた事は快挙と言わざるを得ない

 

三大勢力ですら対処できなかった『クロニクル』を終局させた功績を(たた)え、新にSSS(トリプルエス)級への推薦昇格を持ち掛けてきた

 

バウンティハンターの中でも最高クラスのライセンス

 

新にとっては願ったり叶ったりの推薦だった

 

しかし、その話を持ち掛けられた直後、新はハッキリと告げた

 

『俺にはそんな資格なんて無い……ッ。後輩を殺した手で、そのライセンスを受け取りたくない……ッッ』

 

そう言って新は(みずか)らライセンスの昇格を辞退したのだ

 

そして、問題はここからだった……

 

役員達はライセンスの昇格辞退を撤回するよう、何度も止めてきたらしい

 

何故なら―――推薦昇格を辞退すれば、2度と昇格が出来なくなるからだ

 

SSS(トリプルエス)級と言うランクは厳粛な管理制度に(もと)づいている為、辞退した者は通常の昇格も受けられなくなってしまう

 

つまり、新はSSS(トリプルエス)級になる道を(みずか)ら絶ってしまった……

 

「そ、そんな……っ」

 

あまりの衝撃を受けて声を震わせるリアス

 

一誠は納得がいかない剣幕でアザゼルに詰め寄った

 

「先生ッ!そんなのを知らされて、黙ってるだけなんスか⁉何とかならないんスか⁉今すぐ協会に行って説得しましょうよッ!」

 

「……イッセー、気持ちは分かるが無理だ。たとえ協会の連中を説得できたとしても、新がそれを呑むわけが無い。アイツ自身が昇格を拒んでる以上、俺達にはどうする事も出来ないんだよ……」

 

「そんなぁ……っ!だからって、こんなの―――」

 

「んな事は分かってるッ!納得いかないのは俺も同じだッ!だがな、ここにいる誰よりも歯痒い思いしてんのは新だ。アイツだってこんな形で推薦昇格を放り出したくなかった筈だ。……けど、昇格したとしても―――新はもっともっと苦しむだろう……。今まで“仲間殺し”と言う不名誉なレッテルを貼られて生きてきたんだ。その上、初めて出来た後輩を殺しちまった……。そんな血に汚れた手でライセンスを受け取ったら、アイツはずっと重荷を背負う事になる。……それがどれだけツラいものか、分かるか……?」

 

アザゼルは怒りと悲しみを混ぜて一誠達を止める

 

本来なら一誠の意見に賛成したい筈だが、そうしたところで新は(かたく)なに昇格を拒むだろう

 

(むな)しく新の傷を深く(えぐ)るだけになってしまう……

 

結局、何も出来ない面々は肩を落とすばかり……

 

ゼノヴィアは怒りに震え、机に拳を叩き付ける

 

「……許さない。絶対に許さないッッ!次に姿を見せた時は、真っ先に斬り殺してやるッッ!」

 

「ゼノヴィア、今はその怒りを取っておけ。全員が同じ気持ちだ。……正直、ここまでやる腐れ外道だとは思わなかった……っ!」

 

アザゼルもキリヒコの手腕に堪忍袋の緒が切れかけていた

 

恐らく、次に対峙した時は即決戦に発展するだろう……

 

少しでも新の無念を晴らす為に……

 

しかし、彼らはまだ知らなかった

 

ユナイト・キリヒコは予想を遥かに超える悪であり、邪悪で凶悪な力を手に入れていた事に……

 

 

――――――――――――――――

 

 

薄暗い闇の中、独りで(たたず)むのは騒動の発端にして諸悪の根源―――ユナイト・キリヒコ

 

完成したばかりの新しい装置(デバイス)を右腕に展開し、ジッと見据えていた

 

そして、右腕を高く掲げ―――円を描くように1周させる

 

「さあ、遂に(とき)は来ました。ここからが……本当のRequiem(レクイエム)の始まりです」

 

そう言った刹那、右腕の装置(デバイス)が妖しく輝く

 

Unite(ユナイト) Chronus(クロノス) Chronicle(クロニクル) Breaker(ブレイカー)……!!!!』

 

 

(テン)()ライテ

 

 

()(ムシバ)

 

 

(キザ)メ、(ヤミ)ノクロニクル……ッッ!

 

 

(イマ)コソ(トキ)(キワ)マレリ……ッッ!




次回でクロニクル編がラストを迎えます!

そして……遂にキリヒコが“あの姿”にパワーアップ……!

ガクブル必至の次回をお楽しみに!

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