もうすぐ新刊も発売されるのに、本当に何とかしなければ……。
とは言え、ようやく更新できたこの回、ヤバヤバな空気を味わってください……
あれから、どれだけ時間が経ったのだろうか……
何度斬られたのだろうか……
閉鎖され、
途切れ途切れになる呼吸
新はミカサの凶刃を受け続け、心身ともにボロボロとなっていた……
その悲惨な光景を静観するキリヒコ
『これだけの攻撃を受けても反撃すらしないとは……。あの時もそうでしたが、ヒトの感情と言うものは本当に理解し
異国で初めて対峙した時の事を思い出し、眉根を寄せる
このままでは
その指示を受けたミカサは静かに
左手を前に突き出し、
『
けたたましい射撃音と共に飛び出す銃弾
その全てが新の肉体を
腕、足、腹を撃ち抜かれた新は
ミカサは銃口を
右手で拳を作り、新の腹に重い一撃を食らわせた
しかし、それだけに
そこからも火が噴き出し、インパクトの威力を底上げする
重く鈍い打撃音が響き、新は血を吐き出しながら後方へと吹き飛ぶ
『
ミカサの背中が開き、そこから出てきた幾つもの砲門が新に狙いを定める
『
砲門から無数のミサイルが射出され、寸分の狂いも無く新に命中
肉と血が飛び散り、
再び左手を前に突き出すが―――今度は左手その物が巨大な砲身と化す
『
砲身から放射された太いレーザーが空を走り、新の脇腹を
肉だけでなく骨まで焼かれるような痛みに新は苦痛の声を挙げる
「…………ガハ……ッ!」
既に満身創痍、全身を穴だらけにされている新
それでもミカサは冷淡に、冷酷に追撃を続ける
『
今度は両肩から二又に分かれた砲身が出現し、バチバチと
照準が新に定まり―――紫電の塊が放たれる
一直線に飛来してきた紫電は新に直撃し、彼の全身を焼く
「――――ッッ!…………ッッ!」
もはや叫び声すら上げられない程の激痛が新を
膝も震え、今にも倒れそうになっていた
そんな様子を見てキリヒコは
「
嫌みったらしくミカサを殺す事を進言してくるキリヒコ
無言で見据えるミカサに対し、新は裂傷と血にまみれた体を動かせずにいた
ミカサを殺さない限り、デスゲーム『クロニクル』は終わりを迎えない……
しかし、そうすれば……新は再び“仲間殺し”の汚名を
絶望の瀬戸際とも言える
新の煮え切らない態度に―――キリヒコは最悪の発破を掛けた
「……仕方ありませんね。あなたに戦う意志が無いと言うのなら、ここで
キリヒコの言葉を聞いた瞬間、新の頭の中に忌まわしい過去がフラッシュバックされる……
自分の手で仲間を殺した、その時の光景……
何度も何度も記憶に
“もう、あんな思いはしたくない……っ”
しかし、このままではリアス達がミカサに殺されてしまう……
“もう2度と、失いたくない……っ”
相反する思いに心を裂かれそうになる新
血だらけの体に鞭を打ち、絶望的な選択肢に対して答えを導き出した
「…………殺るしか、無いのか……っ」
涙混じりの選択
新はリアス達を守る為に、再び“仲間殺し”を決意する
生涯
しかし、このまま放っておけば―――ミカサはリアス達を殺してしまう
そんな後輩に、これ以上の殺戮をさせたくない
……っ
新はリアス達を守る為に、そして何より……ミカサを止める為に―――決して拭い去れない汚名を
全身から火竜のオーラを揺らめかせ、殺戮マシーンと化したミカサの前に立つ
だが、新の手は今も震えている……
ようやく決意したと言えど、まだ抵抗感がある表れなのだろう
しかし、今は一刻の猶予も無い……
新は再びミカサを見据え、滲み出てきた火竜のオーラを右手に集束させる
燃え盛る炎と共に雷も
どうやら一撃で仕留めるつもりなのだろう……
“せめてもの情け”―――と言えば、聞こえは良いかもしれない
それでも結局は過去と同じ
『……本当に、なんでこんな事になっちまったんだろう……っ。悪い夢なら覚めてほしいぜ……っ』
新は“この場、この瞬間が夢であってほしい”と切なく願った
だが、その願いは決して届かない……
そんな新の心中など察する事無く、無感情のミカサが向かってくる
左手からの銃撃、レールガンでの砲撃
また同じ罪を犯す自分への
新は回避行動を一切取らず、ミカサは空いた手で
剣が新の脳天に直撃する刹那―――鈍い音が場内に響いた
ポタポタと
―――新の右腕はミカサの腹部を
ミカサは長剣を振り下ろす体勢のまま、腹を貫かれたのだ
『……
手から長剣が離れて、金属音を立てて地面に落ち―――言葉と共に動きがどんどん鈍くなっていく
新が右腕を引き抜くと……ミカサは膝から崩れ落ちた
『
軽快な音楽と共に流れてくるクリア宣言
空気を読まないにも程がある……
そこへ更に空気を読まないキリヒコがパチパチと拍手を贈る
「
徹底的に神経を逆撫でする言動を繰り返すキリヒコ
新は今すぐにでも
そんな中、キリヒコは新のもとに歩み寄り―――
「感謝しますよ、
ズン……ッッ!
闇にまみれたキリヒコの左手が新の体内にめり込み、ズブズブと入り込んでいく
息が詰まるような窒息感に襲われ、キリヒコが勢い良く左手を引き抜いた
その手には―――以前、新の体内に埋め込んだ『クロニクル』のマスター版の端末が握られていた
意味深な笑みを浮かべるキリヒコは、右手に例の
「これで私も更なる力を手に出来ます。あなた方にとっては更なる脅威になるでしょうけどね。―――
そう告げた直後、キリヒコは右手に展開した
やがて端末は粒子となって
おどろおどろしい紫色から一変して―――鮮やかなメタリックグリーンカラーとなった
それを見てキリヒコが口の端を吊り上げる
「完成しましたよ、私の新しい力が。ご協力、
キリヒコは紳士的に頭を下げ、完成したばかりの
ニ門の銃口から黒い霧を散布し、自分の周りを色濃く覆っていく
「今夜はゆっくりお休みください。また近い内に会いましょう。その時に私の新しい力をお披露目します。それと……そのゴミは捨てるなり埋めるなり、ご自由にしてください。もう私には必要の無い物ですので。それでは―――
そう言ってキリヒコは黒い霧に包まれ―――消えていった
最初に対峙した時と同じように、再び煮え湯を飲まされてしまった新
しかし、今はそんな事を考えている暇など無い
いや、視野にすら入れてなかったと言う方が正しいのかもしれない……
激痛に
既に手足は
新はミカサの上半身を抱き上げる
「…………ミカサ……、お前は……本当にただの機械だったのかよ……?」
涙混じりに問い掛けるが―――ミカサからの返事は一切無し
元々冷たい感触が更に冷たさを増していく……
「レイナーレ達と話してた時のお前も……酒を飲んでた時のお前も……飯を食ってた時のお前も……全部、嘘だったのかよ……っ?」
何度も何度も問い掛ける……だが、それでも現状は変わらない
ミカサの冷たい体を
外はすっかり雨模様となっており、今の新の心境を
雨の中を1歩1歩進み、
振り続ける雨、晴れる事の無い暗雲
ギリリと歯を食い縛った後、新は空に向かって慟哭した
「―――アアァァァッ、アアアアァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア……ッッ!」
その後、新はアザゼルやリアス達がいる病院に戻り、『クロニクル』の終了を伝えた
ずぶ濡れ且つ事切れたミカサを抱える新に、誰もが言葉を失った
新はミカサの
こうして、デスゲーム『クロニクル』に染まった悪夢の三連休はようやく終わりを迎えた
だが、その代償はあまりに大きなもの……
三大勢力の誰もが対処の1つも出来ないまま、総計36471人の
―――――――――――――――
「……あれから1週間か。リアス、新の様子はどうだった?」
「今朝早く出掛けていったわ。バウンティハンター協会からの呼び出しらしくて。……それまでの彼は
「そうか……。それでもマシになった方だもんな」
リアスからの報告に、アザゼルを始めとする部室内の全員の表情が暗くなる
実際、『クロニクル』終了後の新は酷い有り様だった
“ミカサを自分の手で殺した”―――その自責に駆られたせいでまともに眠れず、食事も殆ど摂らず、学校にも来なかった……
レイナーレ達も何とか励まそうと策を講じてみたが、効果は無し
結果、バウンティハンター協会からの呼び出しが来るまで―――新の心の傷は全く癒えなかったのだ……
亡骸となったミカサはアザゼルに託されたものの、アザゼルはそれをアジュカの研究施設へと預けた
このまま
その為に調査の依頼も兼ねてアジュカに預けたのだ
『クロニクル』が終了した途端、世界中に出回っていた端末は煙の如く消滅
更には『クロニクル』に関わる一切の記憶がプレイヤー達の脳から消去されていた
“リア充になる”と息巻いていた一誠の友人、松田と元浜も『クロニクル』の存在を綺麗サッパリ忘れた
アザゼルの話によれば、『クロニクル』の端末には
仕掛けられた術式がプレイヤー達の記憶から『クロニクル』に関する情報を一切合切消去し、またも三大勢力の出鼻を
それゆえに調査できるのは新が託してきたミカサの残骸しか無い……
新には悪いと思いつつ、少しでも情報を集める為には仕方なかった
想像以上に心を
ここまで末恐ろしい組織は他に見ないだろう……
すると、アザゼルは何かをキャッチしたのか通信用の小型魔法陣を耳元に開く
「おう、サーゼクスか。…………え?新がどうしたって?―――――――――は……っ?それ、本当か……?」
サーゼクスからの通信らしいが、アザゼルの顔付きが驚愕一色に染まる
その後も興奮した様子で会話を続けていたが、次第に表情が険しくなり、「分かった……」と
全員の視線がアザゼルに集中し、リアスが訊いてくる
「アザゼル、何かあったの?お兄さまから連絡が来ていたみたいだけれど」
「お前がさっき言ってたバウンティハンター協会からの呼び出しについてだ。その内容は―――新のライセンス昇格だったよ」
ここで思いも寄らぬ吉報、バウンティハンター協会が新を呼び出したのは―――ライセンスの昇格を推薦する為だった
今回の『クロニクル』の1件が協会の目に留まり、たった独りで事態を終局させた新の活躍が評価され……昇格を推薦する事になったそうだ
本来、ライセンスの昇格は任務の成功率を
それは極めて異例な昇格推薦
新は現在
本来なら喜ばしい
それを見てリアスが再び訊く
「……新に、何かあったの?」
「……………………」
「先生、なんで黙ってるんスか!」
茶を濁すような態度を取るアザゼルに、一誠が
他の皆からの視線も突き刺さるような雰囲気になった途端、アザゼルは溜め息を吐いて白状する事に……
その内容とは―――絶望的なものだった
「……新がライセンスの昇格を辞退したそうだ」
その場にいた誰もが理解できなかった……
ザワつきが収まらず、アザゼルは事の顛末を打ち明けた
協会に着いた新は直ぐに役員達が集まる部屋へ呼ばれ、全世界に被害をもたらした『クロニクル』の件について賞賛された
犠牲者を多く出してしまったのは居たたまれないが、それでも短期間
三大勢力ですら対処できなかった『クロニクル』を終局させた功績を
バウンティハンターの中でも最高クラスのライセンス
新にとっては願ったり叶ったりの推薦だった
しかし、その話を持ち掛けられた直後、新はハッキリと告げた
『俺にはそんな資格なんて無い……ッ。後輩を殺した手で、そのライセンスを受け取りたくない……ッッ』
そう言って新は
そして、問題はここからだった……
役員達はライセンスの昇格辞退を撤回するよう、何度も止めてきたらしい
何故なら―――推薦昇格を辞退すれば、2度と昇格が出来なくなるからだ
つまり、新は
「そ、そんな……っ」
あまりの衝撃を受けて声を震わせるリアス
一誠は納得がいかない剣幕でアザゼルに詰め寄った
「先生ッ!そんなのを知らされて、黙ってるだけなんスか⁉何とかならないんスか⁉今すぐ協会に行って説得しましょうよッ!」
「……イッセー、気持ちは分かるが無理だ。たとえ協会の連中を説得できたとしても、新がそれを呑むわけが無い。アイツ自身が昇格を拒んでる以上、俺達にはどうする事も出来ないんだよ……」
「そんなぁ……っ!だからって、こんなの―――」
「んな事は分かってるッ!納得いかないのは俺も同じだッ!だがな、ここにいる誰よりも歯痒い思いしてんのは新だ。アイツだってこんな形で推薦昇格を放り出したくなかった筈だ。……けど、昇格したとしても―――新はもっともっと苦しむだろう……。今まで“仲間殺し”と言う不名誉なレッテルを貼られて生きてきたんだ。その上、初めて出来た後輩を殺しちまった……。そんな血に汚れた手でライセンスを受け取ったら、アイツはずっと重荷を背負う事になる。……それがどれだけツラいものか、分かるか……?」
アザゼルは怒りと悲しみを混ぜて一誠達を止める
本来なら一誠の意見に賛成したい筈だが、そうしたところで新は
結局、何も出来ない面々は肩を落とすばかり……
ゼノヴィアは怒りに震え、机に拳を叩き付ける
「……許さない。絶対に許さないッッ!次に姿を見せた時は、真っ先に斬り殺してやるッッ!」
「ゼノヴィア、今はその怒りを取っておけ。全員が同じ気持ちだ。……正直、ここまでやる腐れ外道だとは思わなかった……っ!」
アザゼルもキリヒコの手腕に堪忍袋の緒が切れかけていた
恐らく、次に対峙した時は即決戦に発展するだろう……
少しでも新の無念を晴らす為に……
しかし、彼らはまだ知らなかった
ユナイト・キリヒコは予想を遥かに超える悪であり、邪悪で凶悪な力を手に入れていた事に……
――――――――――――――――
薄暗い闇の中、独りで
完成したばかりの新しい
そして、右腕を高く掲げ―――円を描くように1周させる
「さあ、遂に
そう言った刹那、右腕の
『
次回でクロニクル編がラストを迎えます!
そして……遂にキリヒコが“あの姿”にパワーアップ……!
ガクブル必至の次回をお楽しみに!