ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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新年初投稿です!お待たせしました!

名前に反してエグい展開になりました……


序盤から難易度高いのはバ○オだけで充分!

「クソ……ッ!何処をどう調べても手がかり1つ見つからねぇ……!」

 

舌打ちをする新

 

『クロニクル』に関する情報収集を開始してから1時間ほど経つが、未だに有益な情報を得られずにいた

 

幾つかの班に分かれて情報収集に取り掛かっているが、新どころか他の皆も情報を見つけられない

 

アザゼルの方も何とか探っているものの、結果は同じ……

 

世界規模で蔓延しているにもかかわらず、情報流出が一切無し

 

なので、今は町中をしらみ潰しに探し回るしかなかった

 

捜索範囲を広げつつ、走り回る

 

何もしないよりマシとはいえ、これではいつまで経っても進展できない……

 

イライラが(つの)る中、新の前に1人の人物が姿を見せる

 

Bonjour(ボンジュール)

 

フランス語で挨拶してきたのは……以前、新が異国で対峙した『造魔(ゾーマ)』の幹部―――ユナイト・キリヒコ

 

突然の登場に新は不意を突かれるが、直ぐに睨みを利かせる

 

「キリヒコ……ッ!やっぱり、このふざけたゲームはテメェらの仕業だったのか……!」

 

Oui(ウィ) Oui(ウィ) Oui(ウィ)、『造魔(ゾーマ)』のバックアップを得て完成させた最先端のゲーム―――『クロニクル』です。お気に召していただけましたか?」

 

「気に入るわけねぇだろ……っ。何の真似だ、一般人を巻き込むような物を作りやがって」

 

Non(ノン) Non(ノン) Non(ノン)、単なる余興ですよ。『造魔(ゾーマ)』が本格的に動き出す前祝いとして、皆さんにも楽しんでいただこうと思いまして。聞けば―――あなた方は異形の存在でありながら、安穏な日常をお求めになっているらしいですね。しかし、人間と言う生き物は退屈な日々に飽きていらっしゃる。非常に皮肉な話だと思いませんか?あなた方が裏で安全を保障しているのに、その人間自身が安全を(こころよ)く思っていない」

 

キリヒコは両手を広げ、アピールするように言う

 

「ですから、我々がプロデュースしてあげたのです。退屈な日常の中で刺激的なスリルを味わえる(もよお)し物をね」

 

「何が目的なんだ……ッ!」

 

「さあ、何でしょう?」

 

余裕たっぷりにわざとらしく(とぼ)けるキリヒコ

 

新は舌打ちをして、“関わっていられない”とばかりに(きびす)を返そうとする……が―――

 

Oh(オー) la() la()、よろしいのですか?せっかく、プレイヤー達の集まるポイントを教えて差し上げようと思ったのですが」

 

キリヒコの言葉に新は反射的に足を止め、振り向いて「……どういう事だ?」と(たず)ねる

 

キリヒコは不敵に笑い、タブレット型の端末機を取り出し、操作して画面を見せる

 

それは『クロニクル』のプレイヤー達の位置情報やコメント欄を表示しており、現在地から1番近いであろう場所を映していた

 

「こちらの町外れの廃材置き場にプレイヤー達が集まっています。そこを目指すと良いでしょう」

 

“何が目的なのか?”

 

“何故、敵である俺達にアッサリと情報を教えるのか?”

 

キリヒコの動向が全く読めない新

 

この情報がガセネタと言う事も考えられるが、このまま自分達だけで情報を集めようとしても手がかりは掴めないだろう

 

……少しでも有益な情報を拾えるのなら、たとえ罠だとしても拾うしかない

 

新は直ぐにスマホを取り出し、オカルト研究部のメンバー全員にメッセージを一斉送信

 

プレイヤー達の集まっている場所を知らせ、自分も直ぐに向かうと連絡する

 

メッセージを送信し終えた新は再びキリヒコに視線を移す

 

「……お前、本当に何を(たくら)んでるんだ?俺達に情報を教えるのは、お前にとって不利益しか生まないんじゃねぇのか?」

 

「どう思うかはご自由にお考えください。私はただ見たいのです。―――あなた方がどう動くのか、どのように我々『造魔(ゾーマ)』に噛み付いてくるのか。そして……どのように踊ってくれるのかをね」

 

「……相変わらず気味悪い野郎だな」

 

「人聞きが悪いですね。我々はただ“スリル満点のゲーム”を提供しているだけですよ。あなた方も是非お楽しみください。それでは―――Bonne chance(ボヌシャンス)

 

そういった直後、キリヒコは黒い霧を自分の周りに撒き散らし……その場から消えた

 

新は腑に落ちないと思いつつも、タブレットに表示されていた町外れの廃材置き場に急行した

 

 

―――――――――――――――

 

 

「ここか、新が言ってた廃材置き場ってのは……」

 

連絡を受けて、先に町外れの廃材置き場に到着したのは一誠とアーシアの2人だった

 

周りを警戒しつつ歩き回っていると……

 

ドガッ!バキッ!ボコッ!

 

鈍い打撃音が遠くの方から聞こえてくる

 

音がする方へ急行する一誠とアーシア

 

そこには今朝と同じように―――茶色の戦士(プレイヤー)達がモンスターの群れと戦っていた

 

プレイヤーの人数は10人程で、近くには『クロニクル』五大ボスのソルティーユもいた

 

「アーシア、ここで待っててくれ。こんなふざけたゲームをすぐに終わらせる!」

 

「は、はい。気を付けてください、イッセーさん」

 

アーシアを物陰に待機させた一誠は、少し離れた場所で禁手(バランス・ブレイカー)となる

 

未だにドライグは眠ったままなのでトリアイナや『真・女王(クイーン)』の力を使えないが……悠長な事を言っている暇は無い

 

背中のブーストを噴かせ、ソルティーユに突っ込んでいく

 

「―――っ?おい、何だあいつ?」

 

「あれもプレイヤーか?」

 

「随分赤いな」

 

プレイヤー達が奇異の視線で一誠を見るが、脇目も触れずに一誠はソルティーユのもとまで辿り着いた

 

一誠に気付いたソルティーユが仰々(ぎょうぎょう)しく口を開く

 

『ンッフフフフ、これはこれは。招かれざる客の乱入か。それもまた「クロニクル」を盛り上げる為の最高のスパイス!しかし……残念ながらキミに私を攻略する事は出来ない!』

 

「うるせえっ!お前は俺がぶっ倒すッ!」

 

一誠は拳を握り締め、ソルティーユに突っ込んでいく

 

ソルティーユが放ってくる電撃を回避しながら距離を詰め、まずは拳打を入れる

 

ソルティーユは大きく仰け反り、すかさず一誠は蹴りも叩き込み―――そこから思い付く限りの体術を繰り出していく

 

殴って、蹴って、また殴って……とにかく一心不乱にソルティーユを攻撃していった

 

『松田を……元浜を……俺のダチをふざけたゲームに巻き込みやがって……!そんなもん、1つ残らずぶっ潰してやる……ッッ!』

 

激しい(いきどお)りなのか、もしくは焦りなのか……それらの感情をぶつけるが如く殴打しまくる一誠

 

何度も何度も打ち込む毎にソルティーユの顔や体が大きく歪んでいく

 

鬼気迫る乱打もフィニッシュを迎え、一誠は力一杯ソルティーユを殴り倒した

 

転げ回り、倒れ伏すソルティーユ

 

「えー、もう倒しちまったよ」

 

「早すぎんだろ」

 

「俺ら出番無しかよ」

 

周りのプレイヤー達が不満を漏らす中、一誠はそんな野次も耳に入らず大きく息を切らす

 

“これで、この場は終わる”

 

そう思った矢先だった……

 

突如、倒れているソルティーユの体が発光し―――全ての傷が消えて復活する

 

あまりにも早すぎる復活に一誠だけでなく、周りにいたプレイヤー達も驚き、ソルティーユは体を(ほぐ)しながら高笑いする

 

『ンッフフフフ!残念だったね、乱入者くん!「クロニクル」のボスは正規のプレイヤーでなければ倒せないのだよ!それどころか……キミが倒しても我々は即座に復活し、更にレベルアップしていくのだ!キミが倒してくれたお陰で、さっきまでレベル5だった私はレベル10にまで上がった!感謝しよう!』

 

「そ、そんな……!嘘だろ……っ⁉」

 

なんという事か……っ!

 

『クロニクル』のボスは正規のプレイヤー……つまり、『クロニクル』の端末を使用している者でなければ倒せないらしく、他の者(非正規プレイヤー)が倒してもレベルアップと共に復活してしまうようだ……!

 

ゲームを終わらせるつもりで倒した一誠だったが、この想定外の結果にプレイヤー達は―――

 

「はあ⁉ふざけんなよ!」

 

「なに余計な事してくれてんだよ!」

 

「せっかくレベル上げたのに台無しじゃねえか!」

 

「死ねよ、クズが!」

 

これでもかと言わんばかりの非難と罵声を一誠に浴びせ始めた

 

周りからの熾烈な罵声に一誠はたじろぐしかない……

 

そんな中、復活したてのソルティーユが“ある朗報”をプレイヤー達に告げる

 

『さて、プレイヤーの諸君!圧倒的不利になってしまったキミ達に朗報だ!ボスとのレベル差を埋める方法を教えよう!』

 

ソルティーユの知らせに耳を傾けるプレイヤー達

 

朗報の正体が明らかとなる……

 

『この「クロニクル」には―――そこの赤い者と同じように様々なレアキャラが潜んでいる!そのレアキャラにダメージを与えれば、ゲームに有利なアイテムや装備の入ったボックスがフィールド内に出現する!レアキャラを見付けたらチャンスだ!たくさんダメージを与えれば、それだけボックスも多く出現するのだ!さあ、プレイヤー達で協力して、レアキャラにダメージを与えたまえ!』

 

言うまでもなく一誠は仰天、周りのプレイヤー達は一誠を凝視し……デフォルト装備の短剣を構える

 

「レアキャラって……あいつか!」

 

「あいつをぶっ倒せば、お宝が出てくるのか!」

 

「丁度良いぜ。余計な事しやがったからムカついてんだ」

 

敵意に満ちた視線が一誠に集中する

 

プレイヤー達は一旦ソルティーユへの攻撃を止め、一誠への攻撃を開始した

 

我先にと一誠に襲い掛かるプレイヤー達

 

一誠は相手が一般人な為か、不用意に攻撃を仕掛けられず、(かわ)す事しか出来なかった

 

「や、やめろ!やめろって!俺は敵じゃない!」

 

「うるせえ!てめえのせいでボスのレベルが上がっちまったんだぞ!責任取れや!」

 

「悪いと思ってんなら、殴らせろ!アイテム落とせ!」

 

「「「アイテム寄越せ!アイテム寄越せ!」」」

 

プレイヤー達は一誠に対する怒りと欲望に満ちた言葉を吐き連ねながら、攻撃を仕掛け続ける

 

(かわ)し続ける一誠だが、背後にいたプレイヤーが二人がかりで一誠を捕まえて動きを封じる

 

抵抗する一誠に対し、プレイヤー達はチャンスだとばかりに短剣を振るってくる

 

鈍く重い打撃音がフィールド内に響き、滅多打ちにされる一誠

 

いくら一誠と言えど、数多くのプレイヤーに集中砲火されてしまっては一溜(ひとたま)りもない

 

そして、フルスイングの総攻撃をまともに食らってしまい……大きく吹っ飛ばされる

 

吹き飛ばされ、規定以上のダメージを受けてしまった一誠

 

禁手(バランス・ブレイカー)の鎧も強制解除され、フィールド内に複数のボックスが出現する

 

「出たぞ!宝箱だ!」

 

プレイヤーの1人の発言を切っ掛けに、飴に(たか)る蟻の如く宝箱に向かっていく

 

箱を開けると……その中には武器が入っていた

 

ある者は長剣を手に入れ、また他の者はハンマーや弓、棍棒などの武器を手にする

 

それぞれが宝箱の中の武器を装備し、今度こそはとソルティーユに突っ込んでいく

 

周りにいるザコ敵を蹴散らしながら向かっていくが、レベルアップしたソルティーユは更に強力なボスキャラとなっていた

 

『ンッフフフフ!くらえ、スパイシー電気ショック!』

 

腕を地面に叩き付けると、広範囲の電撃が地を走り―――プレイヤー達の行く手を阻む

 

その隙にソルティーユは今朝と同じように、サークル状の光に包まれ―――姿を消した

 

「何だよ、また逃げられちまった!」

 

「せっかく武器を手にいれたのに」

 

「どうする?また追いかけんのか?」

 

「……いや、待て。良いこと思い付いたぞ」

 

1人のプレイヤーの発言に他のプレイヤー達が耳を傾ける

 

そして、一誠の方に視線を移しながら―――こう言った

 

「あのレアキャラ、もっとボコればアイテム出せるんじゃね?」

 

「――――っ⁉」

 

なんと……標的をソルティーユから一誠に変更しようとしていた

 

“レアキャラをボコりまくれば、アイテムもたくさん出てくる”

 

そう解釈したのだろう……

 

まさかの事態に絶句する一誠を尻目に、プレイヤー達の欲望が加速する

 

「それもそうだよな」

 

「今のままじゃボスキャラに勝てねーんだし、もっとアイテム集めようぜ!」

 

「まだまだ殴り足りねえんだ、もっとボコってやる!」

 

プレイヤー達は完全にハイエナ状態と化し、未だにダメージを引きずる一誠を狙うべく構えた

 

「な、なに言ってんだ……⁉やめろ!目を覚ませ!」

 

「うるせえ!レアキャラはおとなしくボコられろ!」

 

一誠の制止など聞くわけも無い……

 

10人のプレイヤーが一誠を取り囲んだ直後、物陰に隠れていたアーシアが一誠の前に駆け出してくる

 

「もう……もうやめてくださいっ!これ以上、イッセーさんをいじめないでください!」

 

「アーシア……⁉何やってんだ!逃げろ!」

 

一誠はアーシアに逃げるよう警告するが、アーシアは首を振って尚も一誠を庇う

 

そんな彼女を前にしてもプレイヤー達の凶行は止まらない……

 

「何だ、この女?」

 

「こいつもレアキャラか?」

 

「だったら、まとめてやっちまおうぜ!」

 

アーシアをもレアキャラと断定し、プレイヤー達は短剣を向ける

 

“アーシアを守らなければ……!”

 

一誠は懸命に体を動かそうとするが、ダメージが予想以上に大きいせいでまともに動く事が出来ない

 

欲を(かか)えたプレイヤー達が短剣を振り上げた刹那―――

 

「あー、見~つけたっ」

 

突然飛んできた陽気な声

 

それは一誠が探している人物の声だった

 

マゼンダ色の髪にゴーグルを着けた少年にして『造魔(ゾーマ)』の一員―――シド・ヴァルディ

 

シドは出てくるや否や、一誠に向かって毒づく

 

「先輩さぁ、本当は強いんでしょ?なんでやられっぱなしなの?サンドバッグじゃ面白くないよ」

 

「……っ!シ、ド……ッ!」

 

一誠はシドを睨み付ける

 

それも当然、シドはこの『クロニクル』の主犯の1人……

 

プレイヤー達は奇異な視線でシドを見るが、直ぐに「邪魔すんなよ」と(まく)し立てる

 

すると、シドがプレイヤー達に視線を移す

 

「……キミ達もさぁ、戦う気の無い相手にワンサイドゲームなんて、つまんないでしょ?だから代わりに―――僕が遊び相手になってあげるよ」

 

低いトーンで宣戦布告するシド

 

手に黒い魔法陣を浮かび上がらせ、自分の前に解き放つ

 

魔法陣はシドの体を飲み込み、彼を戦闘形態へと変えた

 

シド・ヴァルディ―――『連携操師(パズリングフォーム)

 

メタリックブルーの装甲に巨大な肩アーマー、スマートなボディに加え、彼が得意とする錬金術―――『深淵の闇錬成術(パーフェクト・アルケマイズ)』に特化した姿である

 

「おっ?こいつもレアキャラだったのか」

 

「ラッキー!俺がぶっ倒してやる!」

 

「いいや、俺の獲物だぞ!」

 

プレイヤー達はレアキャラの登場だと思い込み、嬉々として盛り上がる

 

一誠が「や、やめろっ!」と叫んでもお構い無し

 

プレイヤー達はシドに群がっていった

 

シドは次々と繰り出される攻撃を掻い(くぐ)り、パンチやキックを叩き込んでいく

 

シドの攻撃によってプレイヤー達は良いように(もてあそ)ばれる

 

たまにプレイヤーの攻撃が当たっても、シドには全く通用しない……

 

シドはプレイヤー達の総攻撃をものともせず、強烈な回し蹴りで10人を纏めて吹っ飛ばした

 

その間にシドは錬成術の魔法陣を展開し、地面から大量の強化メダルを生成

 

「さーて、そろそろフィニッシュタイムだ」

 

不敵な声音と共にメダルを選別し、選んだ3枚を自身のマスクに投入する

 

Kousoku(高速) Energy(エナジー)‼』

 

Jump(ジャンプ) Energy(エナジー)‼』

 

Muscle(マッスル) Energy(エナジー)‼』

 

「……っ⁉嘘だろ……⁉おいっ、相手は一般人だぞッ!」

 

必殺技の前兆とも言える音声に一誠は声を荒らげた

 

シドの全身が鬼気に満ちたオーラを発し始め、それを見たプレイヤー達はさすがに危険を感じた

 

「お、おい……何かやベェぞ!」

 

プレイヤー達は只ならぬ雰囲気にたじろぎ、逃げようとするが……そうは問屋(とんや)が卸さない

 

「悪いけど、逃がさないよ」

 

その刹那、シドは凄まじいスピードで駆け出し―――プレイヤー達全員を空中へ跳ね上げた

 

なす(すべ)無く宙を舞うプレイヤー達に更なる追撃

 

強化した跳躍力でシドは縦横無尽に跳び回り、必殺の蹴りを叩き込んでいった

 

1人残らず蹴り落として着地

 

シドの攻撃によってプレイヤー達は装備が強制解除され―――

 

Game(ゲーム) Over(オーバー)……‼』

 

おどろおどろしい音声が流れ、元の姿に戻ったプレイヤー達は痛みに呻き苦しむ

 

(さいわ)いにも松田と元浜はこのメンツの中にいなかった

 

「いってぇ……いてぇよぉ……!」

 

「ちくしょう……!もう1回だっ!もう1回やらせろ!」

 

懲りずにプレイヤー達は躍起になるが、シドは不敵に笑みながら一蹴する

 

「残念だけど、1度でも負けたら……次は無いんだよ」

 

「はあ?」

 

プレイヤーの1人が疑問に思っていると―――信じられない現象が起こる

 

サァァァァァァァァ……ッ

 

まるで砂が落ちるような音

 

それは男達の手や足が徐々に消えていく音だった……!

 

自分達の体が消えていくのを目の当たりにした男達は狼狽(ろうばい)し始める

 

「え……?な、何だよこれ!どうなってんだ⁉」

 

異常な光景に一誠とアーシアも戦慄し、狼狽(うろた)えるプレイヤー達にシドが告げる

 

「良いこと教えてあげる。もしも、この『クロニクル』をプレイして負けたプレイヤーは―――この世から消滅する。つ・ま・り……死んじゃうんだよ♪」

 

「「――――っ⁉」」

 

シドの言葉に一誠とアーシアは絶句、プレイヤー達もワナワナと恐怖に震える

 

「……消……滅……っ?」

 

理解が追い付かなかったが、消えていく自分の体を見てようやく目の前で起きている現象に気付く

 

否、思い知らされると言った方が正しい……

 

そこへ新とリアス達も集まってきたが、既に遅すぎた

 

目の前で人が消滅していく惨状を目の当たりにして、同じように言葉を失う

 

「い、嫌だ……!何だよ!死にたくねえよぉぉっ!」

 

「助けてぇぇぇ!助けてくれぇぇぇっ!」

 

「アア、アアアアアアアアアッ!嫌だァッ!嫌だァァァァァァァァッ!」

 

発狂し、泣き叫ぶプレイヤー達……だが、残酷で無慈悲な現実は止まってくれない

 

敗北したプレイヤーは次々と消滅していき、最後の1人も―――

 

「アアアアアアアアアッ!助けてッ!助けてくれぇぇぇぇぇええええええええっ!」

 

恐怖、絶望に(いろど)られた表情で一誠に助けを求めるが……叶わず消滅していった

 

その場にいたプレイヤーは全て死亡(ゲームオーバー)を迎え、シドが元の姿に戻る

 

「どう、イッセー先輩?こんなにエキサイティングなゲームは他に無いでしょ?」

 

生き生きした表情で言うシドに対し、一誠は拳を震わせる

 

「……お前ぇ……ッ!なんで、こんな酷い事を……ッ!」

 

「酷い?酷いのはさっきの人達の方でしょ。戦おうともしない先輩もマヌケだけど、それを良い事に大勢でフルボッコにしたんだよ?群れなきゃ何も出来ない、弱っちい人間(クズ)のくせに―――許せないんだよ。そんな奴らが偉そうにふんぞり返ってるのがさぁ」

 

一般人、人間を憎々しげに見下すシドは更に話を続ける

 

「だって、力を持ってない奴らが世界の中心だなんておかしいでしょ。先輩達も力があるのにヒッソリと生きていこうとか、ヌル過ぎて嫌になっちゃうよ。―――だから、この『クロニクル』を作ったのさ」

 

「……何だと……っ⁉」

 

「『クロニクル』は人間を楽しませるゲームじゃない。この世から弱っちい人間を消す為のデスゲームなんだよ」

 

『クロニクル』を始めた目的を明かし始めたシド

 

その目的とは……弱い人間を消し去る事だった……

 

あまりにも理不尽かつ残虐な目的に戦慄する一同

 

シドは続けて言う

 

「勿論、目的はそれだけじゃないけどね。とにかく、のうのうと生きているだけの弱っちい人間なんていらない。低レベルなモンスターなんて持ってても無駄、それと同じさ」

 

「同じ、だと……っ?……ふざけんなよ……ッ!あの人達は一般人なんだぞ⁉それをお前は―――」

 

「殺したって言うつもり?残念っ、力を持った時点でそいつは“一般人”じゃない。力を持てば、誰だって“一般”や“普通”と言う領域から逸脱する。だから、僕が殺したのは“力を持ったのに弱い人間(クズ)”―――そういう奴らなんだよ」

 

……あまりにも酷く、あまりにも狂った考えだった

 

(みずか)ら危険な代物を振り撒いておきながら、殺した相手を終始クズ呼ばわり

 

シドの態度は逆鱗に触れるには充分すぎた

 

「この……外道ッッ!」

 

激怒したリアスが極大の消滅魔力を撃ち放つ

 

しかし……シドはそれを片腕で難無く弾き飛ばし、邪気を含んだ笑顔で言う

 

「先輩達だって、こんな風に悪者(わるもの)を攻略していったんだよ?攻略された苦しみと痛みは……攻略された者にしか分からない。タップリ味わいなよ、ゲームで攻略される側の気分を」

 

それだけ言い残したシドは転移用の魔法陣を展開し、発光と共にその場から姿を消した

 

グレモリー眷属だけが残され、アーシアは一誠の治療をする

 

シドの凶行、目の前でプレイヤー達が死んだ惨状に対し、何も出来なかった一誠は悔しさに歯噛みするしかなかった

 

何度も地に拳を打ち付け、涙まじりに吼える

 

「ちくしょう……ッッ!ちくしょぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおッッ!」

 

一誠の慟哭(どうこく)に呼応したのか、静かに雨が降り始める

 

しかし、無情な悪夢(クロニクル)は終わらない……




ようやく新年初投稿、それと共に明らかになったデスゲームの全貌……!

新年早々イヤな展開を突きつけて申し訳ないです……

でも、この『クロニクル』編はカ○ジのようにドロドロした展開を書こうと決めてますので、ご容赦ください!


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