ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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リベンジマッチ

ゼノヴィア、イリナと言う2人の教会関係者に遭遇した後の夜、新は酒場でカルーアミルクを飲んでいた

 

 

沈んだ表情でチョビチョビと……

 

 

「「「アハハハハハハハハハハハ!」」」

 

 

「笑うなコンチキショーーーッ!!」

 

 

新の脱がし術が効かなかった話を聞いたレイナーレ、カラワーナ、ミッテルトはバイト中なのを忘れてしまうくらい大爆笑した

 

 

酒場のマスターも机を叩きながら……

 

 

「ハッハッハッハッハ!そうかそうか!そいつぁ落ち込むのも無理はねぇや!何せ新の無敗記録が破られちまったもんなぁ!」

 

 

「えぇ。プクククッ……!その時のアラタの顔、拝みたかったわ」

 

 

「よしよしアラタ。うちがナデナデして慰めてあげる〜♪」

 

 

「ふふっ、ミッテルト。アラタが逆に萎れているぞ」

 

 

「傷心の男をもっと労りやがれ!」

 

 

新は残ったカルーアミルクを飲み干し、だらしなく机に突っ伏す

 

 

数々の女性を脱がし、啼かせてきた新には相当ショックだった事であろう

 

 

「クソォ……次に会った時はぜってぇリベンジしてやる……!汚れを知らない教会関係者程、堕ちてからの反動は期待出来る筈。弄って弄って弄り倒すまでだ!」

 

 

「はははっ。気合入れまくってるな新。けどよ、その2人が何処にいるか分かるのか?お前高校生になったし、そんな時間は無いんじゃないのか?」

 

 

新は肝心な事を忘れていた

 

 

名前は判明しても、普段何処にいるのかが分からなければリベンジしようにも出来ない

 

 

新は"屈辱を晴らせないまま、二度と会えないのだろうか"と再び気を落とした

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「む?貴様は」

 

 

「あ、あん時の……」

 

 

翌日の放課後、部室であっさり例の2人――――――ゼノヴィアとイリナに出くわした

 

 

と言うより、彼女逹の方から訪問してきたらしい

 

 

「新、知ってるの?」

 

 

「知ってるも何も、昨日教会で偶然出くわしたんだよ」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

オカルト研究部員、祐斗以外のメンバーは全員驚く

 

 

自分達の敵地である教会に行っただけでも許されないのに、更に教会関係者と遭遇したのだから無理もなかった

 

 

「新!どうして昨日教会に行ったのよ!?」

 

 

「い、いや……聖剣計画の話を聞かされてから妙に気になっちまって……気が付いたら足を運んでたんだ……スマナイ」

 

 

新はリアス逹に深々と頭を下げる

 

 

リアスは新の頭を撫でた

 

 

「はぁ……あまり危険な事ばかりしないでちょうだい。イッセーやアーシアだけでなく、あなたまで失ってしまったらと……不安で押し潰されそうだったわ」

 

 

「危険な事に首を突っ込むのはバウンティハンターの(さが)―――――と言っても、今回ばかりは浅はか過ぎた。本当にごめんなさい」

 

 

新の謝罪が終わると、イリナが口を開く

 

 

「イッセーくん!あのハレンチ悪魔もあなたの仲間なの!?」

 

 

「ん?あの女、一誠を知ってるのか?」

 

 

「そういえば話してなかったわね。彼女の本名は紫藤イリナ―――――イッセーの幼馴染みだそうよ」

 

 

新は目玉が飛び出しそうになった

 

 

一誠に教会関係者の幼馴染みがいたとは予想だにしていなかった

 

 

「新。お前ハレンチ悪魔って」

 

 

「あの男は昨日、私の服を切り刻んで裸にしたんだ。その後急に戦意を無くして逃げ去っていったのだが、あの時はよくも神を愚弄してくれたな」

 

 

リアスと朱乃の眉がピクッと動き、新の方を向く

 

 

「新……?あなた昨日、いったい何をやらかしたのかしら?」

 

 

「新さん?このお二人に何をやらかしたんですか?」

 

 

「えっ?えっ!?何か顔が怖いんだけど!お、俺はただ自分の身を守るために――――――」

 

 

その時、リアスと朱乃の魔力を込めたビンタは……今まで受けたどの攻撃よりも痛かった

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「だから、俺は少なくとも目の前に存在しない神なんざ信じてないって言ったんだ」

 

 

「教会に喧嘩を売ってるようなものよ?」

 

 

「別に構わねぇ。俺はただ目の前で見た事実しか認めたくない性格なんでね」

 

 

両頬が腫れていては折角の場面が台無しだと思う

 

 

殺伐とする空気の中、イリナが話を切り出した

 

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

 

話は更に続けられる

 

 

エクスカリバーは大昔の戦争で折れたが、その欠片を拾い集め、錬金術によって新しく8本のエクスカリバーが作られた

 

 

因みに、ゼノヴィアが持っているのはカトリックが管理している『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)

 

 

イリナの方はプロテスタントが管理しており、自由自在に形を変化出来る『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』と呼ばれる代物らしい

 

 

それらを含む8本のエクスカリバーはカトリック、プロテスタント、正教会でそれぞれ管理されているのだが―――――その内の3本が盗まれ、犯人はこの地に持ち運んだらしい

 

 

しかも、エクスカリバーを奪ったのは堕天使の幹部コカビエル

 

 

(いにしえ)の戦いから生き残っている猛者だった

 

 

「私達の依頼――――――いや、注文とは私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入してこない事。――――――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

 

 

「早い話、俺達や他の悪魔を信用してないって事かよ」

 

 

好き勝手な言い分にリアスの目は冷たい怒りを宿し、新が珍しく目を細めて2人に問い質す

 

 

「まさかとは思うがよ。お前ら、たった2人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪い返すつもりか?無謀過ぎるな。死ぬぞ?」

 

 

「そうよ」

 

 

「私もイリナと同意見だが、出来るだけ死にたくはないな」

 

 

「――――っ。死ぬ覚悟でこの日本に来たというの?相変わらず、あなた逹の信仰は常軌を逸しているのね」

 

 

「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」

 

 

「まぁね。それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが全て消滅しても構わないと決定した。私達の役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手からなくす事だ。そのためなら、私達は死んでもいいのさ。エクスカリバーに対抗出来るのはエクスカリバーだけだよ」

 

 

エクスカリバーを堕天使に利用されない為なら、自分達は死んでもいい

 

 

新はその態度が気に入らなかった

 

 

その後、会話が途絶したところでイリナとゼノヴィアは帰ろうとしたが、アーシアに視線を集中させた

 

 

アーシアも昔はシスター

 

 

『魔女』の烙印を押され、追放されてしまった『聖女』だから、2人に言い寄られ対応に困る

 

 

「聖女と呼ばれていた者が堕ちるところまで堕ちたものだな。まだ我らの神を信じているか?」

 

 

 

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰している筈はないでしょう?」

 

 

 

2人の言葉に新と一誠の目付きが変わる

 

 

 

「いや、その子から信仰の匂い―――――香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと同じものがその子から伝わってくるんだよ」

 

 

 

「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

 

 

 

イリナの問いにアーシアは悲しそうな表情で言った

 

 

 

「……捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから……」

 

 

 

「そうか。それならば、今すぐ私達に斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださる筈だ」

 

 

 

ゼノヴィアがエクスカリバーをアーシアに突き付けた瞬間――――――

 

 

 

ガンッ!

 

 

 

新が机を蹴飛ばして威嚇し、一誠がアーシアを庇うように立った

 

 

 

「おい。いくら女でも、もうこれ以上我慢しねぇぞコラ」

 

 

 

「アーシアに近づいたら、俺が許さない。あんた、アーシアを『魔女』だと言ったな?」

 

 

 

「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」

 

 

 

遂に一誠の怒りが爆発する

 

 

 

「ふざけるなッ!救いを求めていた彼女を誰一人助けなかったんだろう!?アーシアの優しさを理解出来ない連中なんか、ただのバカ野郎だ!友達になってくれる奴もいないなんて、そんなの間違っている!」

 

 

 

「『聖女』に友人が必要だと思うか?大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めた時、『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけがあれば生きていけた筈なんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格は無かったのだろう」

 

 

 

当然の様に言うゼノヴィアの頬を、爪がかすった

 

 

 

よく見ると……新が鎧に覆われた右手を振り抜いていた

 

 

 

「いい加減にしやがれ。だったらテメェらも味わってみろや。勝手に『聖女』にされて、少しでも求めていた者と違ったら見限られる(つら)さをよぉ。神だの愛だの好き勝手ほざきやがって、女1人救おうとしない神なんざ―――――いねぇ方が清々すらぁ」

 

 

「なんですって!?今のは神に対して最大級の侮辱よ!」

 

 

「それは私達―――――我らの教会全てに対する挑戦と受け取って良いんだな?」

 

 

「新。お止め――――――――っ!」

 

 

リアスや一誠が止めようとしても止められなかった

 

 

新の顔は、今までにない怒りを見せていたから

 

 

女が相手なら、一番に口説いたり脱がしたり弄ったりしていた新が――――――キレている

 

 

そこへ先程からゼノヴィアとイリナに殺意を向けていた祐斗が新の前に出る

 

 

「待ちなよ竜崎くん。ここは僕に―――――ッ!」

 

 

 

「退け祐斗。俺は思った程大人じゃねぇんだ。それに神の為なら、いつ死んでもいいとか言ってるこいつらの態度が俺は気に入らねぇ」

 

 

 

祐斗を出させまいとする新

 

 

 

祐斗よりも特大の怒りを放出していた

 

 

 

「誰もが1つしか持ってない命を簡単に奪おうとしたり捨てようとしやがって。一誠の言う通り、お前ら教会の奴らはただのバカ共だ」

 

 

 

「貴様……!これ以上の愚弄は許せん……!戦え!」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

全員は球技大会練習場に移動した

 

 

 

神を愚弄された事に怒りを露にするゼノヴィアとイリナ

 

 

 

その視線の先には、闇皇に変異済みの新が闇皇剣を出していた

 

 

 

リアスも立場的に対応に苦慮したのだが、新が「この喧嘩は俺とあいつらの私闘だ。殺さなきゃ問題は無い」と無茶苦茶な提案をしてきた

 

 

 

ゼノヴィアとイリナにも『この事はお互いに一切口外しない、殺し合いに発展させない』と言う条件を材料に承諾させた

 

 

 

朱乃さんが張る結界の外では、3人を除く全員が不安な表情で見守っている

 

 

 

「始めるぞ。殺さないだけ感謝しておくがいい」

 

 

 

ゼノヴィアとイリナはローブを脱ぎ捨て、ボンテージみたいな黒い戦闘服姿となる

 

 

 

「ほぅ。どっちも良い体してやがるが……多少傷付いたところで恨むなよ?」

 

 

 

新が刀身に魔力を込めると同時に、ゼノヴィアとイリナがエクスカリバーを向ける

 

 

 

「覚悟なさいハレンチ悪魔!この聖剣で断罪してあげる!アーメン!」

 

 

 

「2対1だから卑怯だとでも言うなよ!」

 

 

 

ゼノヴィアがエクスカリバーを天に翳し、地面に突き立てると――――――地面が轟音を発して抉れた

 

 

 

()ぜた土がイリナと離れていた新にかかる

 

 

 

「なっ!?クレーターが出来た!?」

 

 

 

あまりの破壊力に一誠は驚く

 

 

エクスカリバーを引き抜いたゼノヴィアは得意気に言う

 

 

 

「我が聖剣は破壊の権化。本気を出せば砕けぬ物はない」

 

 

 

「真のエクスカリバーでなくてもこの破壊力。8本全部消滅させるのは修羅の道か」

 

 

祐斗の目に映る憎悪を他所に新は被った土を落として言う

 

 

「あん時は本気を出していなかったってか……上等だ。こっちも本気出してやる」

 

 

低い声音を発し、新は赤と黒の魔力を放出させる

 

 

「この感覚だ……ライザーの時と同じ、力を流し込む……!」

 

 

 

グキグキグキ……!

 

 

 

頭部を覆う兜の口が開き、両肩と両腕、更に両足のカカトから刃物状の爪が隆起してくる

 

 

 

コォォォォ……ホォォォォ……

 

 

 

奇怪な呼吸音を出す新は、全てに戦慄を与える

 

 

 

「っ!な、何なの……?この魔力……あれが新なの……!?」

 

 

 

「あの時と同じだ……新が、ライザーの『女王(クイーン)』と戦った時の……」

 

 

新の魔力に当てられた木々の葉が枯れ、幹も(しお)れ、儚い音を立てながら折れていく

 

 

 

「……っ!昨日とは桁違いの気迫だな。イリナ、同時に仕掛けるぞ!」

 

 

「わ、分かったわ!」

 

 

 

ゼノヴィアは左、イリナは右からエクスカリバーで斬りかかる

 

 

 

新はゼノヴィアの聖剣を左腕の刃で、イリナの聖剣を剣で防御

 

 

 

「昨日も思ったけど、どうして悪魔の苦手な聖剣を前にしても平気なの!?」

 

 

 

「この男は普通の悪魔ではないと言う事だろう!」

 

 

 

新が魔力を込めた剣で真一文字に斬ろうとしたが、2人は危険を察知して回避する

 

 

 

すると、新は両肩の刃を折ってイリナに投げつける

 

 

 

「――――っ!?避けろイリナ!」

 

 

 

「きゃあっ!」

 

 

 

イリナはエクスカリバーで受け止めようとしたが、刃の勢いに肉体が耐えきれず吹っ飛ばされた

 

 

 

シュゥゥウウウウ……

 

 

 

しかも、折った両肩の刃が再生した

 

 

 

「やはり、この男は危険過ぎる……!我が『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』で倒れろっ!はぁぁぁぁああああっ!」

 

 

 

ゼノヴィアの全力を出した剣撃と新の剣がぶつかり合い――――――豪快な音と地響き、土煙をあげた

 

 

 

その衝撃は結界の外まで響き渡り、一誠達は体勢を崩す

 

 

 

「部長!これじゃあ何も見えません!」

 

 

 

「朱乃!結界を解いて!」

 

 

 

リアスは急いで朱乃に結界を解かせる

 

 

 

やがて晴れた土煙の中にいたのは……投げつけた刃で吹っ飛ばされたイリナ、聖剣を振り切ったまま荒く呼吸をするゼノヴィア

 

 

そして剣を握ったまま、地に転がる鎧の腕―――――新の右腕だけだった

 

 

「新!?新ァァァァッ!」

 

 

目の前で起きた信じられない出来事に一誠は叫び、アーシアは両手で顔を覆う

 

 

「嘘でしょ……?新!返事をしなさい!新!」

 

 

「新さん!?新さん!」

 

 

「先輩!」

 

 

仲間の呼び掛けも虚しく響くだけ、ゼノヴィアは聖剣を収めて深呼吸する

 

 

「……加減が出来なかった。勢い余って消滅させてしまったようだ――――――アーメン」

 

 

ボコッ……

 

 

ゼノヴィアの背後から、何かがせり出てくる音

 

 

嫌な気配を感じ取ったゼノヴィアが振り返ると――――――片腕を失った新が、左手を前に突き出していた

 

 

 

「グアァァァァアアッ!」

 

 

 

雄叫びと共に左手から放出された魔力の衝撃波

 

 

ゼノヴィアの戦闘服と聖剣を吹き飛ばし、彼女の裸体が木に叩きつけられる

 

 

「ぐあっ!」

 

 

更に目を疑う出来事―――――千切れた新の右腕がビクビク動き出し、飛び掛かってゼノヴィアの両腕を拘束した

 

 

「き、斬られた腕が動いた……!?」

 

 

「な、何なんだこの男は……!本当に悪魔なのか……!?」

 

 

 

ゼノヴィアとイリナは今までにない恐怖を感じ取った

 

 

新は拘束したゼノヴィアに歩み寄り、左手の爪を向ける

 

 

イリナは直ぐにゼノヴィアを助けようと駆け出し、背後から『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を振り下ろした刹那――――新は振り返りもせず左腕の刃で聖剣を防いだ

 

 

「そ、そんなっ!」

 

 

「グルルルルル……ッ!グガアッ!」

 

 

獣の如く唸り声を上げながら新は刀身を掴み、引っこ抜くようにイリナをゼノヴィアの隣に位置する樹木に叩きつけた

 

 

そして左手の爪に凶悪なオーラを纏わせ、イリナの胸の前を一閃する

 

 

恐怖で目を閉じたイリナは自身に何の異変も無い事に疑問を持ち、恐る恐る目を開ける

 

 

その直後……イリナの着ている戦闘服が細切れの破片と化し、彼女の裸体があらわとなった

 

 

雪の如く白い柔肌と健康的に膨らんだ胸、弾みの良さそうな尻と桃色の乳首はいつもの新なら喜ぶ事間違いなしだろう

 

 

「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

裸にされた事に気付いたイリナは絶叫し、手で裸体を隠しながらしゃがんだ

 

 

一誠は真っ先に歓喜の雄叫びを上げようとしたが、小猫に鳩尾を殴られて地面に突っ伏す

 

 

更に言ってしまえば、今の新は半ば暴走しているのでそんな事をしている場合ではない

 

 

しかし、リアス達は暴走新の覇気にたじろいでしまい思う様に体を動かせなかった

 

 

新の爪がゼノヴィアの顔に近づいていく

 

 

『や、殺られる……!』

 

 

ゼノヴィアは殺される恐怖に目を閉じた

 

 

モニュッ……プニョプニョ……

 

 

「……っ?んぁっ……な、何を……?」

 

 

目を開けてみると、暴走新はゼノヴィアの乳を優しく揉んでいた

 

 

一通り揉んだ所で手を離し、今度はしゃがみ込んでいるイリナの乳を先程と同じ様に優しく揉む

 

 

「ひぁんっ!ちょっ、なに……っ!?や、やめてぇ……っ!」

 

 

「ふぅ……俺の勝ちだな」

 

 

2人の乳を揉み終わった新はゼノヴィアを拘束してる右腕を引っこ抜き、自分の剣を回収する

 

 

ゼノヴィアは力が抜け、ペタリと座り込む

 

 

「……何故攻撃しなかったんだ?今の状況、お前は攻撃出来た筈なのに」

 

 

「お前らさぁ、今"殺される"って思ったろ?そん時どう思った?」

 

 

新は兜を解除して言う

 

 

「殺られる時に"怖い"って思ったろ?死ぬ事に対して怖いと思った筈だ。どうだ?」

 

 

ゼノヴィアは新の問いに無言で頷き、イリナも続くように頷いた

 

 

「それはお前らが本当は死にたくないって思ってる証拠だ。死んじまったら何も出来なくなる……動く事も喋る事も出来ない、ただの肉の塊になっちまうんだ。神の為なら死んでもいいとか、そんな事は例え冗談でも言うな。命ってのは1つしか持てない……悪魔も、天使も、堕天使も、全ての生き物も皆同じなんだよ」

 

 

千切れた右腕を持って、新は一誠達の方へ歩いていく

 

 

勝負はもう決まったようだ

 

 

「待ってくれ」

 

 

ゼノヴィアが呼び掛け、新は足を止めて振り向く

 

 

「何だよ。まだ何かあるのか?早いトコ腕をくっ付けたいんだが?」

 

 

「教えてくれ。君は何者なんだ?その力はいったい何なのだ?」

 

 

「俺は―――――闇皇(やみおう)の蝙蝠だ。自分で名付けたんだが、カッコいいだろ?」

 

 

「千切れた腕を持ちながら言う台詞じゃないでしょ……」

 

 

イリナの指摘はその通りだった

 

 

ゼノヴィアとイリナはローブで裸体を隠して立ち上がる

 

 

「変な男だな。君は」

 

 

「男っつうのは少しバカで変なぐらいが丁度良いんだよ。ほら、もう勝負は着いたんだ。さっさと帰ってくれ」

 

 

「分かった。だが、1つだけ私の質問に答えてくれ。この写真の男に見覚えはないか?」

 

 

ゼノヴィアはローブから一枚の写真を取り出し、新達に見せる

 

 

写っていたのはゼノヴィアとイリナ

 

 

そして聖剣を肩に乗せる悪魔祓い(エクソシスト)の男だった

 

 

「……見た事ねぇな。こいつ誰だ?お前らの知り合いか?」

 

 

「そうだ。私とイリナの上司であり、8本あるエクスカリバーの内の1つ、『灼熱の聖剣(エクスカリバー・イグニッション)』を使う悪魔祓い(エクソシスト)―――――神代剣護(かみしろけんご)。数年前に蒸発してしまい、今も探している先輩だ。知らないのなら仕方がない、他を探してみるよ」

 

 

「こ、今回は私達の完敗だけど……次に会った時は断罪しちゃうからね!変態蝙蝠の悪魔さん!」

 

 

「うっせぇこのっ」

 

 

新は最後にイリナのローブを足で蹴り上げ、捲れたローブの下から見えた裸体を拝む

 

 

イリナは顔を真っ赤にしてローブを押さえ、涙目で捨て台詞を吐いていった

 

 

「も、もうっ!絶対絶対断罪しちゃうんだからぁっ!」

 

 

急ぎ足で去っていくイリナ

 

 

彼女の後ろ姿を見ながら新はこう呟いていた

 

 

「な~んか妙に懐かしみがある感覚だったよな……何だ……?」


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